幻想オン・ザ・ロック【完結】   作:darnylee

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第十二話 戦々恐々

 

 次の日の朝――俺は反省した。

 

 いやマジで猛省した。

 

 興味本位で妖怪のテリトリーにホイホイ着いていった挙句、危うく生命もギターもロストするところだった。

 

 こんなこと続けてたら近いうちに死ぬぞ……。

 

 でも次ギター弾く機会があったら、多少危なくても行っちゃうんだろうなあ俺。

 

 正直そうなると抗える気がしないが……今はただ反省しよう。

 

 そして聖にも謝罪しなければならない。

 

 自分の身を守る力もないのに、相談もなしに命蓮寺から勝手に抜け出した挙句、終いには聖のために手を貸してくれたぬえちゃんに助けてもらうという無様な始末。

 

 結局行き帰りで脱走がバレることはなかったが、ここまで世話になっておきながら勝手をして、黙っているのはあまりに不義理な気がする。

 

 謝罪はあって然るべきだが、そうなると俺が響子ちゃんに誘われて抜け出した経緯を説明せねばならない……。

 

 響子ちゃんやミスティアまで巻き込んで、俺のせいで鳥獣伎楽が解散、なんてことになったら目も当てられない。

 

 ぐおお、どうすればいいんだ!

 

 俺が頭を抱えて悶絶してると、突如として襖がトントン、と叩かれる。

 

「あ、はい、どうぞ!」

 

 俺が居住まいを正して返事をすると、襖が開かれる。

 

 なんとそこには――さきほどまで考えていた、聖白蓮本人が立っていた。

 

「はえっ!? ひ、聖!? なんでこんな所に……!?」

 

「ええ、今日は何故か響子が来てないようですので、私が代わりに起こしに参りました」

 

 そう言って聖は、いつも通りのたおやかな笑みを浮かべる。

 

 昨日一輪相手にオーバードライブ技を決めてたとは思えない、慈愛に満ちた笑みだ。

 

 ちなみに響子は帰る前にようやく目を覚まし、「今日は疲れた」と行って妖怪の山へ帰ってしまった。

 

 響子は元々通いで命蓮寺に来ているらしく、普段は山で暮らしているようだ。

 

「ふふ、起こされる前に既に身支度を整えているなんて、霧夜さんはとても素晴らしいですね。今から朝食ですので、私と一緒に参りましょう」

 

「ぐっ……!」

 

 どうやら昨日のことで聖は俺に真面目なイメージを持ってくれているらしい。

 

 ちょっとだけ好感度上がったかも、なんて喜んでた矢先にこんなことを報告するのは心苦しい……!

 

 でも、推しに嘘は吐きたくない……!

 

 苦渋の決断だが、俺は聖の前に土下座した。

 

「も、申し訳ありません、聖! 実は昨日、私は聖に対して非常に不義理なことを行いました! そのことに対して、謝罪と釈明をさせて下さい!」

 

「あらあら……そうなんですか? 分かりました。朝食の後にお話を聞きましょう。……ただ、私は初日に言いましたよね? 挨拶は――」

 

「は、はい! 心のオアシスでした。おはようございます」

 

「はい、おはようございます。ふふ、では食堂に向かいましょう」

 

 俺の突然の申し出にも、聖はなんの動揺も見せずに言った。

 

 正直に話したことで俺は幾分心は楽になったが、説明するのはこれからだ。

 

 どうにかミスティアや響子ちゃんの名前を出さずに、俺のやったことだけを上手く説明しなければならない。

 

 そんなこと出来るのかな……。

 

 俺は若干胃が痛くなりつつも、朝食の場に着く。

 

 朝食はいつも通り、聖を中心にして命蓮寺に暮らす面子が勢揃いして食事を戴く。

 

 唯一違うとこと言えば、先日までは居なかったメンバーが追加されていたことだ。

 

「あら、ぬえ。珍しいですね、あなたが朝食に顔を見せるだなんて」

 

「まあ……たまにはね」

 

 聖がそう話し掛けると、ぬえは若干居心地悪そうに返事をする。

 

 ぬえは一応命蓮寺で寝泊まりしているものの、勝手気ままな大妖怪に寺の生活は窮屈らしく、お勤めにも参加せずに基本的にずっと行方不明らしい。

 

 それは求聞口授にもあった。

 

 どういう心境の変化か今日はたまたま顔を見せに来たようだ。

 

 そして珍しい顔といえばもう一人いる。

 

 小傘だ。

 

 彼女も命蓮寺の末席に連なって座っている。その顔はしょんぼりしており、頭には特大のたんこぶが出来ていた。

 

 南無三されたか……。

 

 一輪も村紗も、どことなくゲッソリしている。

 

 村紗も結局捕まったのか……。まあそりゃそうだよな。あの聖から小細工で逃げられるとは思えない。

 

 二人とも本編撃破後のボロ絵みたくなってる辺り、昨日相当こってり絞られたらしい。

 

 俺も近々こうなるかも知れないと思うと他人事ではない。

 

「それでは今日も、食材に感謝して――いただきます」

 

「「いただきます」」

 

 全員でそう声を合わせたあと、いつも通りの食事が始まった。

 

 

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