幻想オン・ザ・ロック【完結】   作:darnylee

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加筆修正して再投稿しました。主に後半部分です


第十三話 *100キロで空を駆けろ!*

 

 

 「では霧夜さん、私に着いてきて下さい」

 

「……はい」

 

 食事のあと、膳を片付けていると聖からそう呼び止められた。

 

 俺は神妙な面持ちで返事をしたあと、その背中に大人しく着いていく。

 

 ……やっぱりこえー!

 

 俺もやっぱり南無三されるのか!?

 

 妖怪はともかく人間が食らったら死ぬだろあんなの!

 

 流石に聖は加減はしてくれるとは思うが、それなりに痛い思いをすることは覚悟しなければならない。

 

 俺がそんなことを考えていると、聖はとある部屋の一角で立ち止まった。

 

「こちらです」

 

 聖はそう言って、そこだけ襖ではなくドアで仕切られた部屋に入っていく。

 

 俺も続いて足を踏み入れると、そこには――

 

「えっ、何ここ? ガレージ?」

 

 木造ではなく、周囲を鉄で囲まれた近代的な空間が広がっていた。

 

 明らかに元々あったのではなく、後から増築したようだ。

 

 そしてその中心には――

 

「ば、バイク? このバイクはまさか……!」

 

 俺は思わず齧りつくようにそのバイクに近付いて凝視する。

 

 こ、これは……! 深秘録と憑依華で聖が乗ってたバイクじゃないか!

 

 え、これ実存してたの!? てっきりあの異変のあと、オカルトボールが消失してバイクも一緒に消えたんだと思ってたんだけど!

 

「ふふふ、気に入りましたか? 普段は河童の皆様に整備して頂いて、大事に仕舞っているのですが……たまに走りたい時はこうして倉庫から引っ張り出して来るんです」

 

 聖はそう言ったあと、俺にヘルメットを手渡す。

 

「では、お出かけしましょう。霧夜さんは危ないのでこれを被ってくださいね?」

 

「えっ!? お、俺も乗っていいんですか!?」

 

「もちろん。運転中は危ないので、振り落とされないようしっかり私に捕まってて下さいね」

 

「…………!」

 

 いいよっしゃあぁぁぁーーッ!

 

 俺は盛大に心の中でガッツポーズする。

 

 聖とあのバイクで二人乗り!? そんなもん東方ファンとしても、スケベ的な意味でも最高のシチュエーションじゃないか!

 

 聖に謝罪するつもりできたのにこんなに良い思いしていいのか!? 俺明日死ぬんじゃないか!?

 

 俺がそんな事を考えている合間に、聖は脱衣場で着替えてきたのか、既にライダースーツ姿に変わっていた。

 

 解放的に大きく胸元が開かれた、体のラインが強調されたぴっちり目のライダースーツ。

 

 ひじりんの両胸のたわわがこれ以上なく強調され、その谷間をドレスのデザインと同じバンドがキュッと引き締めている。

 

 えっっっっっろ!

 

 こうして見ると聖可愛すぎるよ……。

 

 っていうか聖って意外と身長小さいんだよな。いつものあのゴシックな法衣だと、母性とか威厳とかもあって実際よりちょっと大きく見える。

 

 だが実際には160前半くらいしかない。こういう活発的な服を着ると、見た目の歳もほぼ俺と変わらんし、普通に可愛いお姉さんって感じだ。

 

 フルフェイスのヘルメットで良かった……今間違いなくスケベ親父みたいな顔になってる自信があるので、見られて幻滅されずに済む。

 

「では行きましょうか。どうぞ私の後ろに」

 

『は、はい!』

 

 そうバイクに跨りながら言う聖に、俺はヘルメット越しにくぐもった返事をする。

 

 ぴっちりとしたライダースーツ越しに突き出されたお尻がめちゃくちゃエロい……。

 

 あまりに聖がえっち可愛いお姉さん過ぎて勃起しそうになるが、俺はどうにかそれを我慢しながら聖の後ろ側にまたがって、その腰に手を回す。

 

 腰、細っそ! あとめっちゃいい匂いする!

 

 俺が聖の爆乳に比較して華奢過ぎる身体に驚愕していると、聖はバイクのキックスターターで始動して、エンジンを思い切り吹かす。

 

 そして、ゴーグルを付けてから言った。

 

「それじゃ、行きますよ〜! 舌を噛まないように気を付けてくださいね?」

 

「えっ? のおおおおおおおおおッ!?」

 

 聖は初っ端からアクセル全開でぶっ飛ばして、ドンドン加速していく。

 

 坂もオフロードもお構い無し、ブレーキという概念すらないのか、前輪が軽く浮き上がっても力で無理やり制御して、悪路を強引に走破していく。

 

 ぬおおおお! 危ない、危ないってえ!!

 

 てかこれ何キロ出てんの!? 余裕で百キロ超えてるよね!?

 

 俺はもはや聖の身体の柔らかさとか、ほのかに甘い香りだとか、そんなもん気にする余裕もなく、「死にたくない」ただその一心で聖の身体にしがみつく。

 

 幻想郷には道交法もクソもないからってスピード出し過ぎィ! 頼むからちょっと抑えて……!

 

「ふふふ、さあもっとガンガン行きますよ〜!」

 

 俺の願いも虚しく、聖はそう宣言したあと何かのボタンをポチっと押す。

 

 どうやらこのバイクには二段階ブーストが着いているらしく、エンジン音が更に甲高くなり、とうとうバイクの車輪が地面を離れて宙に浮き始める。

 

「ちょおおおおおお!? もう降ろしてー! 死ぬ、ホントに死ぬから!」

 

「ふふふ……! まだこの子はこんなものじゃありませんよ! いざ、スピードの向こう側まで!!」

 

 こちらの絶叫もまるで耳に入らないのか、聖は珍しく自分の感情を顕にしながら、更にエンジンを加速させる。

 

 頭のネジがブッ飛んだヤンキーみたいなこと言ってる!?

 

 ハードラックとダンスっちまうからこれ以上はやめろォ!

 

 俺はその後悲鳴すらあげる余裕もなく、半ば宙に浮かんだバイクから振り落とされないよう必死にしがみつく。

 

 その後二十分ほどドライブしてようやく気が済んだのか、聖はバイクを減速して、小高い丘の上に降り立った。

 

「ふふ、ここは相変わらずいい風が吹いていますね。いつも一人で考えたい時はよくここに来るんです。ここには滅多に人も妖怪も来ませんから」

 

「はあ……はあ……」 

 

 聖が爽やかに髪をかきあげながら、なんか大事っぽいことを言っているが、こっちはそれどころじゃない。

 

 三半規管がシェイクされてぐるぐる視界が回り、今にも死にそうだ。

 

 むしろ聖のメット内に今朝の朝食をぶち撒けなかった自分自身を褒めてやりたい。

 

 やはり妖怪の生活規模に人間の身体で着いていくのは無理があるかも知れない……。

 

 あっ、ヤバっ……生き延びたって安心したら全身から力が……。

 

 俺はバイクから降りる余力もなく、そのままずり落ちる。

 

「!? どうしました!? 霧夜さん、大丈夫ですか?」

 

 聖が俺の異変に気付き慌てて駆け寄って来るも、俺はもはや返事をする余力すらなくそのまま意識を失った。

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