幻想オン・ザ・ロック【完結】   作:darnylee

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最終話 ファンタズマゴリア・オン・ザ・ロック

 

 俺たちがステージに戻って来るや否や、観客たちからアンコールの声が止まり、代わりに盛大な歓声が浴びせられる。

 

 それに応えるように手を振りながら、代表としてこいしがマイクを取って宣言した。

 

『これがホントのクライマックス! 最後は全員で演奏するから、皆も盛り上げてねっ!』

 

「「おおおおーーっ!!」」

 

 その雄叫びのような歓声が上がると同時に、全員が所定の位置に付く。

 

 そしてそのまま少し待ち続けると、徐々に騒ぎが収まり、シンとした一瞬の静寂が訪れる。

 

 それを見計らって――弁々が細かく弦の音を刻みながら演奏を開始した。

 

 カノンは一パートごとに楽器が増えていく楽曲だ。

 

 最初は単奏から、次に二重奏三重奏と増えて、最後に向かうにつれて盛り上がっていく。

 

 今回のカノンロックもそれに倣って、全ての楽器が見せ場があるようにパートを割り振っている。

 

 弁々の演奏にルナサのバイオリンが重なって、調和を奏でる。

 

 それにリリカの荘厳なキーボードが重なったあと――俺はビブラートを掛けて弦を高らかに掻き鳴らした。

 

「「…………!」」

 

 その瞬間、観客からざわめく様な声が聴こえてくる。

 

 いきなり曲の雰囲気が変わったことに驚いたのだろう。だが、この曲はこれからが本番だ。

 

「…………!」

 

 ミスティアが激しくギターを鳴らしてペースを上げると同時に、雷鼓さんが力強くビートを刻み始める。

 

『手拍子して! 皆で一緒に盛り上がろうよっ! ヘイっ! ヘイっ!』

 

「「おおおおーーっ!」」

 

 響子がマイクパフォーマンスしながら場内を煽ると、オーディエンスも一丸となって手拍子で曲を盛り上げる。

 

 幻想郷の住人はこういう時のノリがいいからイマイチ嫌いになれない。

 

 Bメロではメルランのトランペットの躁の音が鳴り響き、場内のボルテージはどんどん上がっていく。

 

 そして――サビ前の一瞬の静寂の合間に、八橋が琴でスウィープを再現するという離れ業を見せて、俺へと繋ぐ。

 

『みんなーっ! 今日は来てくれて本当にありがと〜! みんなのこと、大好きだよ〜!』

 

『だよー』

 

「「うおおおおおおッ!!」」

 

 こいここ二人の言葉に、前列の大きなお友達から怒号のような絶叫が上がる。

 

 カノンのサビは誰が聴いても盛り上がれる王道的なコードだ。だからこそ失敗出来ない。

 

 ここで俺が音を外したりなんかしたら興醒めだからな。

 

 俺は懸念とは裏腹に完璧に弾ききったあと、ミスティアへと繋ぐ。

 

 ミスティアもこのイベントまでにかなり上手くなった。

 

 前のミスティアならカノンロックなんて弾けなかっただろうけど、今は弾きながら自己流にアレンジも加えるくらい余裕が出てきてる。

 

 ……正直ちょっと追い付かれそうで焦りが出てきてるほどだ。

 

 だが、まだ負ける訳にはいかねえ!

 

 幻想郷で最強のギタリストは俺だ! それだけは譲らねえ!

 

 俺はそう心の中で宣言しながら、見せ付けるように高等テクニックの高速スウィープをアレンジで入れる。

 

「…………!?」

 

 相手もそれに気付いたのか、俺に対抗するように似たようなアレンジを入れてくる。

 

 ミスティアは弾きながら、してやったりとばかりに俺にニヤリと笑みを見せ付けてくる。

 

 ぐぐぐ、前は俺のほうが圧倒的に上手かったのに……!

 

 だが楽しい! 頼もしい仲間がどんどん成長して、俺も負けないようもっと上手くなりたいと思える。

 

 ここからは皆が仲間であり、そして皆が一番を競い合うライバルでもある。

 

 メルランが軽快なトランペットを鳴らしながら、更に場内を沸き立たせる。

 

 相変わらずメルランの能力はチートにも程がある。

 

 トランペット鳴らせば勝手に盛り上がるんだから。だが、能力に胡座をかいてる訳でもなく、演奏としてもかなりのもんだと素人目にも分かる。

 

 そりゃ一流になる訳だ。

 

 そして次のパートでは、リリカと八橋の二人が音を合わせ、雷鼓さんが優しくビートを刻みながら、何処となく穏やかな雰囲気に転調する。

 

 なんやかんややる気はないがリリカも上手い。プリズムリバー楽団は手を使わなくても楽器を演奏出来るが、一体どういう原理なんだろう。

 

 そんなことを考えているうちに俺の出番だ。

 

 動画撮影のためにアホほど練習したおかげか、カノンロックに関しては失敗する気がしない。

 

「!?」

 

 俺が順調に演奏していると、ルナサが突如としてパートに割り込んでくる。

 

 驚いて一瞬手を止めてしまったが、ルナサの演奏はまるで最初からそうだったかのようにスムーズで、俺の入り込む隙が見当たらない。

 

 ふと目が合うと、ルナサはこちらに挑戦的な眼差しを向けたままフッ、と笑みを浮かべ、俺のパートを完全に乗っ取ってしまう。

 

 その目には、『まだ頂点を譲るつもりはない』という確固たる意志が込められているように感じた。

 

 ……まったく内も外も強敵(とも)ばかりで嫌になるぞ。ここは世紀末かっての。

 

 だがこれでこそ幻想郷らしい。

 

 スペルカードルールでやり合った者たちが、後に宴会で友誼を結んで少しずつ世界が広がっていくように、俺は音楽で幻想郷の住人たちと競り合い、渡り合っていく。

 

 

 ――そう、これこそがまさに『幻想オン・ザ・ロック』だ!

 

 

 この地で、俺は外の世界ですら再現不可能な幻想のロックを作り出して見せる!

 

 なにせ幻想郷には能力がある。人を超えた妖怪や付喪神などの幻想の存在たちがいる。

 

 この先にはきっと、人の想像すら超えた、音楽の無限の可能性が広がっているのだろう。

 

 俺はその未来を思い描きながら、雷鳴のように降り注ぐ喝采に向かって高く拳を突き上げた。

 

 

 





これにて本編完結となります。
ここまでお付き合いいただき、本当にありがとうございました。
後日談などは今週末あたりに上げていくつもりです。
プロットもなくガリガリとノリだけで書いてた割には結構綺麗に畳めたんじゃないかと自画自賛しておきます。
本当は博麗神社の宴会で終わるはずが、そっから守矢神社のどうこうで話が広がって響子のEX化だったり主人公のキ〇ガイムーブだったり自分の予想外の方に話が転んでいくのはなかなか面白かったです。
出来るだけ多くの東方キャラを出して、その魅力を引き出していきたいと思って書いていましたが、一部キャラ崩壊著しいキャラもいたことはこの場を借りて陳謝いたします。
霧夜の物語はまだ続きますが、ここで一旦区切りとさせていただきます。

評価、感想等頂ければ泣いて喜びます。

ここまで応援ありがとうございました。
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