本当は、原作に早く戻りたいのもあって、次の唐音視点の話も合わせて投稿したい所でしたが、思った以上に難産でした。なので、こちらだけ先に上げることにします。
【羽香里side】
その後、ライさんのお爺様は自分の部屋へと戻られていきました。
私たち3人は当初
「ごめん、ちょっとおしゃべりに時間かかりすぎた。今からご飯作り始めないと間に合わない」
と、ライさんが4人分の夕ご飯作りの為に離脱。
それならば私たち2人もお手伝いを…と思ったのですが、台所が狭いからと断わられてしまいました。結局気持ちだけ有り難く受け取ると言うライさんに任せて、私と唐音さんは空き部屋をお借りしてアロマの選定を行うことになりました。
私たちはともかく恋太郎君がアロマに精通していないだろうということから比較的男性でも使いやすいであろうアロマキャンドルを渡すことに決め、丁度選び終わった頃にライさんが部屋まで声を掛けに来られました。
先程まで居た居間に戻りますと、そこにはくじらの竜田揚げをメインに煮物やほうれんそうのおひたし、お刺身やお味噌汁、キノコと山菜の炊き込みご飯が豪勢に配膳されていました。
これだけの料理をあの時間にたった1人で準備できる辺り、普段から台所を任されているライさんの慣れと手際の良さに私と唐音さんは驚いてしばらくその場から動けませんでした。
お爺様を呼びに部屋まで行っていたライさんが戻ってくるまで声を掛けてハッと座席に着いた私たちはお爺様の号令でご飯を食べ始めました。予想以上の美味しさに驚いて、気付けばご飯をペロリと平らげていたことに自分でも信じられないでいると、隣の唐音さんも同じことに気付いてお互い顔を赤くしてしまいました。空になったお茶碗に気付いたライさんに『遠慮しないで、どんどん食べてね』とよそわれると更に赤くなった気がしました。
色々あった夕食後。カラスの行水を自称するお爺様が1番にお風呂に行かれました。この家のお風呂はひのき風呂らしく、『遠慮せんで、寛いでいきなさい』とお爺様が自慢しながらそう告げられていました。
夕食の後片付け後、お爺様が上がられるまで時間が空いた私たちは…
「すごい!!この
「うわ…これとか
「1から説明するから、まず落ち着いて?」
ライさんのお部屋にお邪魔させていただいています。
▽▽▽▽▽
「私のマム…芸名リン・オオツキって言うんだけど、知ってる?」
「知っているも何も…日本が誇るハリウッドの大女優じゃないですか!!?アカデミー賞の
「はぁ……あんたスゴい人の娘だったのね……。言われてみればその人確かに『大槻』だったわ」
小さい頃から映画やドラマでよく見ていた女優さんや俳優さんの名前が出て来て、興奮が抑えきれないでいます。
「そのマムとヴィンヤード夫妻が一緒に仕事をしていく内に仲良くなったみたいで、特にベルノさんはよく家にお邪魔しに来ていたの。……アポイントもろくに取らずに、頼んでもいない自分のサイン付きのBDを私に押しつけてきて……」
「ウソ!!?あの人、インタビューでは終始クールな大人の人って印象でだったのに……」
「へぇ、プライベートと仕事では完全にスイッチを入れ替えていたって訳ね」
「……実際は、
「「……?」」
「何でもない、気にしないで」
途中ライさんが何を言ったのか聞こえませんでしたが、世界的大女優の貴重なプライベートのお話をまさかここで聞けるとは…!!
ライさんのマム…母親であるリン・オオツキさんは経歴こそ不明でしたが、主役の親友を演じた映画でその頼れる姉御肌のキャラクター性と類い希なる演技力で一斉に脚光を浴びていました。本人のキャラクターのせいか主役よりも脇役に振られることが多いことに苦笑する場面を見たこともありますが、主役を鼓舞する彼女の姿は小さい頃の私にとても印象強く残っていました。
そして、ヴィンヤード夫妻はリン・オオツキさんとは真逆で、どちらも華があるタイプだからか脇役よりも主役に抜擢されることが多かった2人です。それぞれ主演男優賞、主演女優賞にノミネートされて実際に受賞したこともあってか、彼らが出演する作品は良策だと断言されることすらあるぐらいでした。
ケリィさんはくたびれたコートに煙草の煙が良く似合う黒髪のイケてる中年男性、ベルノさんは銀髪赤眼という神秘的な見た目からは想像がつかない程喜怒哀楽の表現が素晴らしく、一部の映画では全く似合わないと思われる配役でもしっかり演じきられていて驚いた思い出です。
また、2人とも普通であればスタントマンを擁する場面の演技でも本人がやったと話題になったこともありました。上空数キロの飛行機からのダイブもノーヘルで街を疾走も、ビル街での屋上から屋上へのジャンプも、ヘリで山峡に突っ込むのも演技派でファン思いの2人はやり通したと言います。
「ねぇ、あんたのマムとかベルノさんから演技の指導とか受けてないの?」
「うん。受けていたよ。マムの指導のおかげで、今私がアイマスクしながら生活送れている所もあるし。ベルノさんの指導は……いや、
「なんて顔してるんですか……」
何故か遠い顔を浮かべているライさんにそう返す。いったい、どんな指導を受けてきたっていうんですか…。
「ふーん、じゃあライは将来女優になりたいの?」
「どうだろう、
そういえば、今リンさんはどちらに……
そう口にしそうになって、慌てて止めました。
ライさんのお爺様から聞いた『3年前のアメリカで
プライベート機墜落事故。
ヴィンヤード夫妻が所有するプライベート機に数十人が搭乗して航空中、
唯一判明したのがそのプライベート機を所有していた世界的に有名だったヴィンヤード夫妻だったこともあり、このニュースは全世界に大々的に報道されていたのですが……、
当時は不思議に思いながらもそれから次々に流れてくる別のニュースに目移りして興味が薄れたのもあって、2人が亡くなられたことはすごく悲しかったことしか覚えていませんでした。
ですが、ヴィンヤード夫妻とライさんのご家族に交流があったことをお聞きして、
であれば、ライさんがアメリカから日本に戻ってきたことにもご両親と一緒に過ごしていないことにも辻褄があう……。
そこまで考えてハッとしました。私は、ライさんのご家族で何てことを考えているんだと。仮に本当にそうだったとしても、ライさんの口からそうだと言わない限り不謹慎すぎると自分自身を恥じていました。
でも……、
その事故があってから、リン・オオツキさんを映画やドラマで見たことは無かったなって。1度頭に浮かべてしまった与太話に、記憶の中の情報がどんどん勝手に補足していくのを止められないでいると。
「うーん、今は将来のことはいいかな。恋太郎くんや羽香里ちゃん、唐音ちゃんと過ごしている方が楽しいし」
「はぁ!!?あんた、急に何てこと言ってんのよ!!?」
こんな事を考えている私を置いて、2人は会話を楽しんでいました。
そんな2人を見て、私はこれ幸いとばかりに便乗することにしました。
「あらぁ~もしかして、照れてるんですかぁ唐音さぁん?ライさんに嬉しいこと言われたからってぇ~」
「うっ嬉しいだなんて……別にそんなこと……」
「……違うの…?」 「……違うんですか…?」
「――~~~ッ!!う、嬉しいに決まってるじゃない!!はいはいこれで満足!!?」
「よかった。唐音ちゃん、ぎゅーっ」 「私もです♡」
「ああもう暑苦しいわね!!離れなさいよ!!」
唐音さんにライさんと一緒に絡みに行って、強引に切り替えることにしました。こういう時唐音さんの存在は本当にありがたいです。
唐音さんに2人して抱きついてからかっていると、部屋の外からお爺様の声が聞こえてきました。丁度お風呂が空いたみたいです。元々次に入る予定だった唐音さんがこれ幸いとばかりに私たち2人を引き剥がすとズンズンと部屋から出て行ってしまいました。
…………
騒がしさの元凶だった唐音さんが出て行ってしまって、残された私たち2人の間で沈黙が流れます。このままじゃマズいと何か話そうと考えていると、
「羽香里ちゃん、私のダッドとマムのことが気になる?」
…………ライさんには敵いませんね。
「……はい、ごめんなさいライさん」
「別に謝らないでいいよ。お爺ちゃんがあんなこと言ったのが悪いんだから」
謝罪する私に大丈夫と応えるライさん。
「羽香里ちゃんって頭良いからさ、大体察しているんでしょ?私の両親がどうなってるのかって」
「……私の頭が良いかどうかは分かりませんが、はい。大体こうなんじゃないかっていうのは……」
「うん。大体その想像通りで合っていると思うよ。でもゴメンね、私もまだ切り替えられてなくってさ」
「……ライさんは悪くないです。勝手に興味を持った私が悪いんですから」
「じゃあお互いが悪いってことで。いつかは恋太郎くんにも、羽香里ちゃんや唐音ちゃんにも話すからさ、それまで待っていてくれないかな?」
そう言って笑うライさん。勝手に素性を暴かれそうになったというのに、怒ることなく許してくれた。その優しさに何でか私の方が泣きたくなりました。
ダメだ。このままじゃ釣り合わない。
だから、私からも自分のことをライさんに明かすことにしました。
「……私、実は結構良いところのお嬢様なんです」
「……『花園グループ』だっけ?」
「…!知っていたんですか!!?」
「いや、思い出したのは今日だよ。中学の頃お爺ちゃんのお弁当を届けに行った時に、たまたま花園グループの代表の方とすれ違ったことがあったから」
「……そうだったんですね」
まさか、既に気付いているとは思いませんでしたが、実際にすれ違っていると言うのであれば納得です。私とお母様は親子ということもあって似ていますから。
「……でも、そっか……。あの人がお母さんってことなら……。恋太郎くんのことを認めて貰うのは難しいかもね。羽香里ちゃんには悪いけど、あの人身内はともかくそれ以外の人には厳しい印象だったから」
「……そうなんです。私にとっては尊敬できる大切なお母様なんですけれど……」
「どうりで、あの時居心地悪そうにしていた訳だ。……本当にごめんね」
「謝らないでいいですよ!!ライさんは何も悪くないんですから!!」
謝るライさんを慌てて止める。さっきも同じ事があったなと何処かで考える私がいました。
「……私は、どうしたらいいんでしょうか……。お爺様の言った通りにすれば……?」
「……私は羽香里ちゃんのお母さんのことはよく知らないけれど、羽香里ちゃんがダメだって思うのなら止めといた方がいいんじゃないかな。藪をつついて蛇でも出したらアレだし」
「じゃあ、一体どうしろって言うんですか!!?複数恋愛だなんて“普通じゃない事”お母様が許してくれる訳ありません!!伝えてもダメ、伝えなくてもいつかはバレてダメ!八方ふさがりじゃないですか!!?」
気付けば私はライさんを相手に怒鳴っていました。そして、怒鳴った自分自身に驚いて部屋から出て行こうとする私の手を、ライさんはパシッと掴んで逃がさないようにしました。
……最低です……。
勝手にライさんの両親のことを察しただけでなくて、ライさんには関係無い私自身の家族についてを代わりに明かした挙げ句、結局はこうして八つ当たりする始末。
「羽香里ちゃん、こっち向いて?」
あぁ……ライさんの声が聞こえます。
きっとこんなに自分勝手な私に呆れていますよね。怒っていますよね。
ライさんが私に抱いている感情に察しがついたからこそ、それが私に直接向いてしまうのが唯々怖かった。
でも、逃げていても仕方ありません。観念してライさんの方へと振り向くと……
ギュッ
……え?
気付けば、ライさんが私の頭を自身の胸元へと抱き込んでいました。ふわりと柔らかい感触と共にドクンドクンとライさんの心音が聞こえてきて唯々心地良い。先程までの荒れていた私の感情が収まっていくのが自分でも分かりました。
「…ゴメンね。羽香里ちゃんを怖がらせちゃった。お爺ちゃんに暴露した時も、私自分のことしか考えていなかった。お爺ちゃんが家にいるタイミングを逃しちゃいけないって、羽香里ちゃん達のことなんて全く考えてなかった」
「ラ…ライ…さん?」
私の頭を撫でながらそう告げるライさんの声はとても優しいものでした。
「きっと…私のお爺ちゃんの対応の方がおかしいだけで他の家では複数交際なんて許されないのがほとんどだと思う。だけど、それを気にしている本人の前で言うべきではなかった。『正論は人を傷つけることはあっても救うことは無い』って分かっていたのに。……本当にごめんなさい」
「ラ…ライさんが謝ることなんかじゃないです!!悪いのは私の家族で……」
「羽香里ちゃん、さっき自分で言ってたじゃない。『私にとっては尊敬できる大切なお母様』って。そんな大好きな相手のことを悪く言っちゃダメだよ。後で自分のことを許せなくなるから」
「…………」
私の声にも慌てること無く返してきたライさんに私は何も言うことができませんでした。
力が抜けた私に気付いたのか、ライさんは少しだけ間を置いた後話を進めました。
「だからさ、私が羽香里ちゃんに悪い事をしたお詫びに。もし羽香里ちゃんのご家族が羽香里ちゃんを恋太郎くんや私たちから引き離そうとした時には、私が全力で止めてみせるから」
「っ!!?そ…そんなの絶対無理です!!私のお母様は敵と認めた相手には本当に容赦しない人なんですよ!!?そんな事したらライさんが…!!」
「大丈夫、大丈夫。私は『大槻グループ』相談役の孫娘で、世界的大女優リン・オオツキの娘だから。黒船に乗ったつもりでいて」
「……大船の間違いですよ、それ」
「オォ…ニホンゴムズカシイデェス」
「……フフッ。なんですか、そのわざとらしいカタコト……」
「……大丈夫。私だけじゃなくて恋太郎くんや唐音ちゃんもいる。三人寄れば文殊の知恵。どんな難問だって解決できないことはないんだから」
「……そうですね。それなら……安心ですね……」
その後、唐音さんがお風呂から戻ってくるまで私はずっとライさんに抱きしめ続けられました。
当然戻ってきた唐音さんはすごい反応をしていましたが、そんな唐音さんに私たち2人がからかうと、お風呂で茹で上がっていた身体が更に赤くなっていくのが分かって唯々面白かったです。
未来のことは未だに分かりません。ですが、もしなにかがあっても恋太郎くんやライさん、唐音さんがいるのであればきっと大丈夫だろうと、何の根拠もありませんがそう思えるようになりました。
※羽香里が持っていたBD
タイトル:『気が合う2人』
内容:赤ん坊の頃家が火事に遭った後協会で暮らすことになった主人公の青年(ベルノ演)は事故の影響で凶暴な男の人格とは別に気弱な女の人格も持つ二重人格になった。ある日ハイスクールに転校してきた少女(リン演)とひょんなことから気が合うようになり、やがて付き合うことに。それからしばらく経って結婚のプロポーズをした主人公だったが…?
(なお、内容はほぼ名探偵コ○ンの75巻667・668話収録の『ウェディングイブ』と同じ)
オリ主が2話-3で恋太郎に渡そうとしていたR18の映画。ちなみにオリ主も内容は知らない。
※唐音が持っていたBD
タイトル:『ミッション:ゼロ』
内容:CIA諜報員のリスト「NOC」が一部流出した。CIAの特殊作戦部IMFに所属する主人公(ケリィ演)がリスト流出事件解明の指令を受けて任務に取りかかるというもの。ちなみに1作品目のヒロイン役(ベルノ演)は2、3作品目では主人公同様身体を張って主人公の相棒として任務に取りかかる。全3作品。4作品目の構想もあったらしいが…?
羽々里さんの台詞を1字表記する際何て書く
-
羽々里さんの『々』
-
羽々里さんは皆の『ママ』より『マ』
-
羽々里さんは羽香里の『お母様』より『母』
-
ヤツ(♀)より『ヤ』
-
羽香里を『香』で羽々里さんを『羽』表記
-
その他