13巻収録第105話の内容と少し被りますが、それでも私はこの話を投稿します。
少しだけシリアス注意。
静ちゃんと私たちの顔合わせを終えた夜、私と恋太郎くんとで軽く打ち合わせをしていた。
議題は『これから恋太郎くんが新しい“運命の人”と出会う時、その娘と仲良くなる間のいざこざについて私に教えるか否か』だ。
それなりに時間のかかったこの議題だったけれど、結局『恋太郎くんの判断に任せる』というケースバイケースの結論に至った。
まぁ、その恋太郎くんが『ライちゃんは羽香里や唐音、静ちゃんと同じくただ幸せに暮らしてくれれば』というスタンスだから、実質私には関わらせないようになるとは思うけれど。
私としては
……“運命の人”云々を知っているんだからもう手遅れだと思うけれど……。
当然今日のことについても恋太郎くんからは何も聞いていなかった。
だから、
「あ、2人が動き出しました!!私達も行きましょう!!」
「ちょっと、いきなり動くんじゃないわよ!危ないじゃない!!」
「『行くぜ、野郎ども』」
まさか、私達の
▽▽▽▽▽
2日前の金曜日。
「…………」
「…どうかした、ライちゃん?」
「……恋太郎くん、日曜日は1日用事があるって言っていたよね?」
「うん、そうだけど。何か困り事?」
「いや、降って湧いた幸運のチケットのお話。じゃあ次恋太郎くんと次会えるのは月曜日だね。バイバイ」
「……うん!じゃあねライちゃん!!」
恋太郎は少し怪訝そうにしていたけれど、特に困り事ではないと伝えたからか最後には笑顔で別れてくれた。
次の日曜まで使える遊園地1日優待券*1。羽香里ちゃん達と別れて恋太郎くんと2人きりになった時にお爺ちゃんから急に連絡が来たから驚いた。
でも、恋太郎くんは土日どちらも用事があるらしいし、かく言う私も明日は1日お休みのお爺ちゃんと一緒に買い物に行く用事があった。日曜日はフリーだけれど、肝心の恋太郎くんと一緒に行けないのであれば宝の持ち腐れだ。
恋太郎くんとは付き合うことになってから未だデートしたことがないから、時間さえ合えばこれほど好条件が揃ったデートなんて無いぐらいだったけれど、ウダウダ言っても仕方が無い。
お爺ちゃんに断わりの連絡を入れようと思った時、脳裏に過ぎったのは羽香里ちゃん達だった。
……次の日曜日の予定なんて、3人ともそう都合良く空いている訳ないよね。
そう思いながらも駄目元で3人に連絡を入れてみた。これで駄目なら今度こそお爺ちゃんに断わろうとそう思いながら。
「まさか、3人から即OKの返信をもらえるなんて……」
「何か言いましたか?ライさん」
「いや、こっちの話」
日曜日の朝。集合場所に揃った3人をグルッと見渡しながら私は思わずそう呟いた。
ちなみに、今日の私はアイマスクを着けていない。恋太郎くんが不在なことと数日前のテスト結果発表の時よりも人混みがスゴいのは分かりきっていたから当然の判断だ。
一応バッグの底に用意してあるけれど。
羽香里ちゃん達の私服を見るのも今日が初めてだ。やっぱり皆おしゃれさんだ。羽香里ちゃんと唐音ちゃんはさることながら、“地味”とも“暗い”とも自称していた静ちゃんもよく似合った服を着こなしていた。元々のセンスが良いんだろうな。
「にしても、あんたのお爺さんも突然ね。こんな急じゃなかったら恋太郎とも一緒に来れたのに」
「会社で書類整理したらたまたま出て来たみたいだから仕方ないよ」
「……まぁ、こんなお得すぎるチケットを私たちに譲ってくれるってんだから、感謝の1つぐらいしてあげてもいいわよ」
「そこは『ありがとう』で良いじゃないですか。相変わらず素直じゃないんですから」
「わ、悪かったわよ……ありがと」
「私からもありがとうございます♪ここの遊園地結構気になっていたんですよね!」
「『恩に着る』」
「3人ともどういたしまして。お爺ちゃんには私から伝えておくね」
そう3人に言って私達は受付に向かった。もらったチケットを見せると受付の人は大分慌てていたけれどそれ以外は何事も無く入場することができた。
「じゃあ、皆どこか気になる所とかある?無いなら私が先導するけど…」
「私は特に何もありませんね。お2人はどうですか?」
「べ…別にあんたに案内を任せたら安心だな、なんて、思ってないんだからね!!」
「『我も異論は無い』」
「ありがとう。じゃあまずは…………!!?」
後ろに振り向いて3人に説明をしようとした直後。不意打ち気味に襲いかかってきたのは1ヶ月前から頻繁に来る嫌悪感。ということはつまり……。
恋太郎くんがここに来ているってこと!!?
でも、なんで!!?恋太郎くんは今日1日用事があるって私達全員に言っていた。家族と共に来ているのであれば金曜日私がお爺ちゃんとの土曜日の予定を話題に出した時にでも言わないのはおかしい。
無論、絶対じゃないけれど。でも、家族と一緒じゃないとすれば考えられるのは……!
「…こっち!!」
「ちょっ、いきなりどうしたのよライ!!」
「いいから隠れて!!」
慌てて3人を自動販売機の陰にまで誘導する。突然調子を変えた私に唐音ちゃんが声を掛けてきたが私自身慌てていてそれどころではなかった。
けれど、私のその様子に察しがついたのか移動後羽香里ちゃんが驚いたように声を上げる。
「あそこにいるのは…恋太郎君!!?」
「『それは誠か!!?』」
「はぁっ!!?なんで恋太郎が
「……違う。恋太郎くんが遊園地に来るなんて聞いていないし、そもそも私たちが今日遊園地に行くなんて事恋太郎くんに伝えてない」
「っ!!恋太郎君の後ろから人影が……あれは…
!!?
……やってしまった。
まさか、恋太郎くんの言う用事が“栄逢さんとのデート”だったなんて…!
なんで彼女になる前にデートしてるの!!?私達の誰ともデートしていないのに!!
仮にデートだとしても、なんで場所が被るの!!?
なんで、恋太郎くんは伝えてくれなかったの!この間どうするか取り決めたばっかりだったね!!
恋太郎くんへとのヘイトがどんどん生まれてくるけれど、それと同じかそれ以上に出てくるのは私自身の怠慢と失態だ。
なんで、私は今日のことを恋太郎くんに伝えていなかったの!!伝えていれば少なくとも恋太郎くんの方から何かしらの対応をしていたはずなのに!!
それに突然のことで慌てすぎた。恋太郎くんがいると気付いた時点でそれとなく皆を誘導していればこんなことにはならなかった。けれど、突如視界から与えられた嫌悪感に反応が過敏になりすぎた。
色々と頭の中で文句が出てくるけど、慌ててそれを押さえ込む。今すべきなのはそうじゃないって頭では分かっているから。羽香里ちゃん達がどう動くか次第では
だって……下手したらこれからの行動次第で
「恋太郎君の用事って……栄逢さんとのデートだったんですね……」
「ライは知らなかったのよね?」
「……うん」
「ははっ、すごい偶然ね」
「“…………”」
3人が各々反応する。唐音ちゃんの問いにだけは何とか応えられたけれど、それも応えたと言えるものではなかった。。
恋太郎くんと栄逢さんは受付を済ませると軽く会話している。おそらくどのアトラクションを回りたいのか恋太郎くんが栄逢さんに聞いているんだと思う。私達の存在に気付いていないから時折笑顔を交えながら。
なんて……憎らしい
「じゃあ私達はどうしましょうか。折角ですし、私は恋太郎君と栄逢さんのデートを尾行したいんですけれど」
「気が合うわね羽香里。私もそれに乗った」
「『お嬢さんら』『も悪よのう』」
「………え?」
皆、怒ってないの?
恋太郎くん、私達を置いて違う女の子とデートしているんだよ…?
皆…気にならないの?
「あっ、ごめんなさい!このチケットも元はといえばライさんのお爺様からのもらい物ですのに勝手に私が音頭を取ってしまって……」
「いや……」
羽香里ちゃんはどうやら私の驚いた反応を別の意味で捉えているらしい。
その時、頭の中で電流が流れたような感覚がした。
いいんじゃないかな?そのまま皆には誤解してもらえば。
何が原因かは分からないけれど、この流れはチャンスだ。
このまま皆と一緒に行動していれば、皆が恋太郎くんに突撃して栄逢さんとのデートを台無しにするという“最悪のケース”を防ぐことができる。
栄逢さんが“運命”により何らかの死が訪れれば残された私たちの関係に影響が及ぶのは当然とも言える。下手したら羽香里ちゃんたちだけじゃなく、恋太郎くんも……。
人のデートを尾行することに少しだけ罪の意識を感じるけれど、そんなことは人の生死がかかっている以上どうでもいい。後で恋太郎くんに報告すればそれで良いだろう。
だから、私が態々この流れに逆らう理由が無い。
このまま、話の流れに身を任せれば……。
『ライ…、アンタはなりたい自分になるのよ』
『ライ、嘘を吐くのは構わない。が、最後まで、貫き通せよ』
「……怒ら、ないの?」
「ライさん?」
「恋太郎くんは、私たち皆を裏切ったんだよ?用事があるって言って、私たちに隠れて別の女の子と遊園地デート。怒らない理由が無いじゃない……」
言ってしまった……。
せっかく誤魔化せきれる所だったのに、せっかくのチャンスを不意にしてしまった…。
その場でうずくまり顔を両手で覆い隠す。とてもじゃないけど皆を見る勇気がなかった。
「……ライさん……」 「“ライさん”……」
「……まったく、いきなり何を言い出すかと思えば……怒っていない訳が無いじゃない、あんな
「……唐音ちゃん」
うずくまる私に手を伸ばしてきたのは、唐音ちゃんだった。
「でもま、静と顔合わせした時にあいつなりの
「…………」
唐音ちゃんの次に私の下まで来たのは、羽香里ちゃんだった。
「……正直最初は恋太郎君に問いただそうと思いました。『なんで私達以外の女の子とデートしているんですか?』って。『私達のことを捨てるつもりなんですか?』って。
でも、恋太郎君は静さんを私達に紹介した時とその後にも私の不安に対して言葉を尽くしてくださいました。
だから、私は恋太郎君を信じます」
「…羽香里、ちゃん……」
「それに、栄逢さんがどの立場なのかも未だ定かじゃありませんからね。私達彼女がいることを知っているならまだしも、知らないのであれば彼女は唯の“被害者”です。
せっかくの遊園地デートが私達の手によって台無しになるのだけは、同じ女の子として避けたいですからね」
「…………」
最後に、静ちゃんが私の下まで来てくれた。
「“ラ…”“ライ…さん”……」
「……静ちゃんは、怖くないの?」
「『怖くて
「“ライさん”『が怖がっている』“のなら”『助けたい』“所存であった”」
「『我が恐れた時』“ライさん”『は我のことを』『助けてくれた』。“であるならば”“ライさん”『が恐れた時』『あの時のお礼として』『恩を返したい』“所存であった”」
「…………」
「“それに”『私を助け出した』“恋太郎君”『が考えなしの行動に出るとは思えない』。“きっと”『アニキなりにそう動かなきゃいけねぇ理由があったはずでやんす!!』」
……そっか……。
唐音ちゃんも、羽香里ちゃんも、静ちゃんも。
3人とも、恋太郎くんのことを信じてるんだね。
恋太郎くんや皆を信じられなかった私とは違って。
「…ライさんは、どうしますか?私たちはこう言いましたが、ライさんにそれを押しつけるつもりはありません。
ライさんは、どうなされますか?」
最後に羽香里ちゃんがそう私に呼びかけてきた。
…………
私は…
「……羽香里ちゃん達と一緒に恋太郎くん達を尾行するよ。私達のことを放っておいて恋太郎くんが栄逢さんをどうエスコートするのか、興味あるから」
「…いいじゃない。今のあんた、良い顔してるわよ」
「“ライさん”『お主も悪よのう』」
「あ、2人が動き出しました!!私達も行きましょう!!」
「ちょっと、いきなり動くんじゃないわよ!危ないじゃない!!」
「『行くぜ、野郎ども』」
「うん、行こっか」
こうして、開幕早々予想外のトラブルに見舞われた私達の女子会は始まったのであった。
※実際、原作で恋太郎は羽香里たちにどう言って凪乃とデートしに行ったのか分からないんですよね。この話みたいに『1日用事があるから』とぼかすのか、バカ正直に『ちょっと気になる娘がいるからアタックしてくるね!』は私の恋太郎像が破壊されるし。一応私としては消極的に前者かなと思ってこの話を投稿しました。
私はこう思う!との意見があれば是非コメント欄でお教えください(コメント乞食)。
※この次の話はコメディ中心でお送りする予定です。
羽々里さんの台詞を1字表記する際何て書く
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羽々里さんの『々』
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