難産でした。書いている途中で『こっちの方がいいんじゃないか?』とばかり考えてしまった結果です。プロットを立てないで行き当たりばったりで書いているからこうなる。本当に申し訳無い。
愛城恋太郎の中学生時代のねつ造が入りました。ご注意ください。
この話を書くにあたり、とあるノベルゲームから大分引っ張ってきました。分かる方には分かると思いますが、予めご了承ください。
原作とは違い四葉のクローバーを見つけていない為、恋太郎は未だ立ち直れていません。
ちなみに、本文にも書いていますがライちゃんの服装は蘭舞園フラワーパークからずっと胸元を強調した白ワンピース(劇場版間○桜)+赤紫の洋風アイマスク(ライダー“メ○ゥーサ”)でした。
※7/26 22:10 誤字修正+オリ主台詞前の『おもむろに立ち上がった』を削除しました。
【恋太郎side】
『大槻ちゃんのお爺ちゃん、いつなら三者面談来れそう?』
『……すいません先生。祖父は仕事が忙しいらしく、ここしばらくは家にも戻ってこられないとのことで…』
『マジかぁ~!うーん、どうしたもんか……』
忘れ物を取りに教室まで戻ってドアに手をかけようとしたその時、クラス担任の先生と大槻さんが2人で何かを話していた。俺は二人に悪いとは思いながらも、思わず盗み聞きをしてしまう。
……大槻さんのウワサは本人の以外にも家族についてのも多かった。
それは、大槻さんが帰国子女だからか、両親と共に暮らしていないからか、原因は分からないけれど。
やれ、『大槻さんはアメリカで
やれ、『保護観察*1の為親元から離れて暮らしている』とか。
本人についてのウワサと合わせて大槻さんが全然否定しないからと止める人が誰もいないウワサはどんどん尾ひれを付けながらも広まっていった。
それも中学3年になった今では大分落ち着いてきたけれど、ヒドい時は本当にヒドかった。面白ければなんでも良いとばかりに根も葉もないウワサまで出たりしていたし。
何故か3年生になってから『祖父の身体が縮んでしまった』なんていうウワサも聞くし。どこの名探偵コ○ンだよと内心でツッコんだりもした。
だから、俺を含めたクラスの人達は全員大槻さんには家族の話を振らないというのが半ば不文律のようになっていた。だから、こうして家族の話が出るとちょっとビックリする。
『……うーん、たしかこの日はお爺ちゃんも家に帰れるって言ってたんだっけ?』
『…確かにそうですが、飛行機の関係上放課後までには到底間に合いそうにないですよ?』
『いんや?学校じゃなくて私が大槻ちゃん家にお邪魔するの。8時くらいならお爺ちゃんも流石に家に着いてんでしょ?』
『…私達は助かりますが、よろしいんですか?』
『良いの良いの!!上からは色々言われるかもだけど。大槻ちゃん、成績も素行も良いから
『…ありがとうございます』
『それに、その時間なら大槻ちゃんたちも夜ご飯食べる頃合いでしょ?どうせならご相半にあずかれないかなぁ~って。手作りの料理なんてここしばらく食べてないから楽しみ~!』
『……ふふっ、先生の好物をお出ししますね?』
『マジ!!?さっすが大槻ちゃ~ん!!将来は良いお嫁さんになること間違いなしね~!!』
…………
その時の俺は、結局教室に入ることなくその場から退散した。
▽▽▽▽▽
ライちゃんの祖父は多忙らしい。中学校では
だから、俺は大槻さんのお爺さんがどんな人なのか実際の所少し気になっていたんだ。どんな人なんだろうって。
『そうだ恋太郎くん。この間のお泊まり会でお爺ちゃんに、彼氏が出来たことと
『!!!!??』
……付き合い始めた今では、
ライちゃんの家の塀に頭を打ち付けていた俺を心配したライちゃんが俺を家へと上げてくれた。俺の分のスリッパも用意してくれているライちゃんにお礼を言いながら履き替えていると、廊下の奥から誰かがこちらへと近づいてきた。
「はっ、初めまして!!大槻
「……お邪魔しています。俺はライさんとお付き合いをさせていただいている
「…なんじゃ、ライちゃんよ。前回*2と違うて、こやつには既に伝えておったのか?」
「いや、伝えてないよ。……恋太郎くん、どうして分かったの?」
「ちゅ、中学校にいた頃『大槻さんのお爺さんの身体が縮んだ』ってウワサを聞いたことがあって、
お爺さんも、『不老不死の薬』を飲まれたのですか?」
最初は見た目相応の子供みたいだったのに、俺の返事を聞いて態度を一変したお爺さんに少し緊張したまま2人に理由を話す。……正直未だに信じられないけれど……。
「なんじゃ、
「うん。それに
「ライちゃん!!?」
いきなりとんでもないことをカミングアウトしたライちゃんに驚いて大声で呼んでしまった。が、肝心のライちゃんはそんな俺の焦りをまったく気にしていないのかクスクスと笑っている。
「……なんじゃ、1月も経たん間にこの間来た2人以外に
ビリビリビリビリ
……!!
ライちゃんのお爺さんは先程の俺みたいに大声を上げたり荒げたりはしていない。けれど、俺の目を射貫かんとばかりに睨み付けてくるその姿からは子供の見た目以上の貫禄や重圧感を感じた。
俺は、試されている。
「……俺は……俺は……!!」
応えられるはずだった。ライちゃんのお爺さんからの問いに。いつもの俺だったなら。でも……
『たかが高校生の害虫一匹いつだって駆除できるのよ』
『――
この時の俺は、頭の中でさっきの言葉たちがフラッシュバックし頭の中がまっ白になってしまった。
「…恋太郎くん?」
「…なんじゃ。ライちゃんが選んだ男というから少しは期待しておったが、どうやら
「…………」
「ライちゃんよ。言っていた通り儂はもう出る。すまんが夜は一人で済ませてくれ。後は……」
お爺さんがライちゃんに向けてそう言った後視線を下げたままの俺を一瞥した後吐き捨てるように告げた。
「お主には聞いてみたい事があったのじゃが、まだ
▽▽▽▽▽
「そっか、解散した後でそんな事が……」
「…………」
玄関から居間に場所を移した俺たちはテーブルを挟んで向かい合っている。俺の視線の先には先程持っていた短剣?を横に置いて、頭を整理しているらしいライちゃんが自身が煎れたお茶を両手で抱えている。いつもの和風のアイマスクと羽織ではない、紫色の洋風のアイマスクと白のワンピースという装いだったけれど、全然違和感がなかった。
『ごめんね、うちのお爺ちゃんが』
『……ありがとう。でも、今のは俺が悪いから』
『……恋太郎くん、皆と別れた後何かあった?さっきもうちの塀に頭打ち付けていたし。良ければ聞かせてくれる?』
お爺さんが外出した後、俺はライちゃんに手を引かれながら案内に従って居間へと向かった。居間に着いた後テーブルを挟んで向かい合った俺は皆と別れた後の経緯をライちゃんに伝えた。アイマスクを着けていたからかもだけど、ライちゃんは終始落ち着いていて、動揺している様子は一切無かった。
クッと湯飲みを呷ったライちゃんがふぅっと長く息を吐いた。一息入れた後ライちゃんは俺に向かってこう言った。
「…『この世にどうにもならないことなんてのはごまんとある』か。それについては私も同意かな。それも何の特技も持ちえない
…………そっか、そうだよな……
裏切られたような感傷を覚えた時にようやく俺は、無意識に慰められるのを期待していたことに気付く。
……バカ野郎…!ライちゃんに何か言われた所で俺が出来る事が何もないっていう事実は変わらないっていうのに……!!
ライちゃんに声を掛けられる前のあの時と同じ事をもう一度考え始めようとする俺を止めたのは、ライちゃんだった。
「……でも、恋太郎くんは
「……え?」
心の自傷を始めるより先に聞こえてきた思わぬ内容に、俺は思わず聞き返していた。
「だってそうでしょ?
「……そうかな。俺
「やっぱり、恋太郎くんは自己評価が低すぎるよ。少なくとも、徹夜でピンクの四葉のクローバーを2人分探したり*3、相手の目を見て会話する為に徹夜で本の内容を手で打ち写したり*4、幸せな時間には意義があるって言う事を1日のデートで実感させたり*5、薬開発に関する全てのトラブルにも一緒に対応するって答えられる*6男の子は、恋太郎くんしか知らないかな」
「…………」
べた褒めするライちゃんに何か言い返そうと思ったけれど、これを否定すると皆のことを否定することにも繋がってしまうと思ったら何も言い返すことができなかった。
俺への賛辞を一通り述べて満足したからか、ライちゃんは飲み干したはずの湯飲みを両手で手慰みにしている。特に追加をお代わりしたい訳でもないのかそんなライちゃんをただ眺めていると、
「――恋太郎くん、覚えてる?」
俺ではなく湯飲みを見つめたまま、ライちゃんは言った。
「……?覚えてるかって、何を」
「ずっと昔の話。私がまだ、恋太郎くんを知らなかったころの話」
「えっと、つまりライちゃんと知り合う前の話……?」
「うん。三年前、私が入学してしばらく経った頃。
日本の学校にようやく慣れてきて、1人であてもなく廊下を歩いている時、私不思議なものを見たんだよ?」
昔を懐かしんでいるらしいライちゃんは楽しそうに話し始めた。
「……うん。あれはいったいどういう経緯だったのかな。
もう放課後で、グランドには陸上部の人もいないっていうのに、誰かが一人だけで走っていたの。何をしているのかなって見てみると、その人、一人で走り高跳びをしていた」
くすり、という音。
それは微笑ましい記憶なのか、ライちゃんは幸せそうに笑っていた。
「真っ赤な夕焼けだった。校庭も廊下もみんな真っ赤で、キレイだけど寂しかった。
そんな中で、一人でずっと走っていたの。走って、跳んで、棒を落として、また繰り返して。まわりには誰もいなくて、その高さは超えられないって判っているのに、ずっと試し続けてた」
「頑張ればなんとかなるって問題じゃなかったんだよ?だってその棒、その人の身長より高かった。
私から見ても無理だって判るんだから、その人だってとっくに跳べないって判ってたと思うの」
「……?」
話はわかったけど、それがどうしたんだろうか。
放課後、居残りでしごかれるヤツなんて珍しくもないと思うけど。
「私、その時
けど、なかなか諦めてくれなかったんだ、その人。
何度も何度も、見ているこっちが怖くなるぐらいできっこない事を繰り返して、ぜんぜん泣き言を言わなかった」
「……うーん。よっぽど切羽詰まっていたのかな?明日がレギュラー選定で、その高さを跳べないと選ばれないとか」
「いいや、それは違うよ。だってその人、陸上部でもなんでもない人だったから」
そうなのか。
……それはいいけど、なんでそこで笑うの?ライちゃん。
「それでね。私見ているうちに気がついたんだ。その人、別にどちらでもいいんだろうなって。
そうして日が落ちて、その人は一人で片付けをして帰っちゃったの。すごく疲れてるのに、なんでもなかったみたいに平然とどっか行っちゃったんだ」
「……わからない人だね。けどやめたって事は跳べたんでしょ、その人。何メートルぐらいの高さだったか、分かる?」
「ふふっ。これがね、結局跳べなかったの。その人、三時間もずーっと走って、どうやっても自分じゃ跳べないって納得しただけなんだ」
「……えぇ」
まさかのオチに俺は言葉を無くした。
「うん。あんまりにも真っ直ぐすぎて、その人の心配をしちゃったぐらい。
その人はきっと、すごく頼りがいのある人だと思うの。
けどそこが不安で、寂しかった」
そう呟いたライちゃんの声が寂しそうで、庭から差す夕焼けの赤色に飲み込まれそうだった。
「……うん、話は分かったけど。それがどうしたの、ライちゃん」
「いいや、分からないならいいの。私にはそう見えただけで、その人自身にとっては日常茶飯事だったということで」
さっきの暗さとは一転して、ライちゃんの口元が柔らかな笑みを浮かべる。
「……」
……と。
ここに来てようやく思い出した。
三年前と言ったら、俺も1年生だ。たしかその頃、2つ上の3年生の陸上部の女子部長が全国区の女子走り高跳びの選手で、たまたま放課後の練習で跳んでいるのを見かけた事があった。その頃の俺はその2つ上の先輩に惚れたのだろう。
結局跳べないまま翌日告白したら見事に振られちゃった訳だけど。
「……あー、ライちゃん。つまり、それは」
「うん、いま私の前にいる同級生くんでした。
あの頃は周りに興味なんてなかったから、同い年かどうかなんてまったく気にしていなかったけれど」
……そっか。そうだったのか。
何故か俺は嬉しくなった。
俺がライちゃんのことをウワサで知っていたのと同じように、ライちゃんも俺のことを知っていたんだな。
「そういう事。私、その時から恋太郎くんのことを知っていたんだよ。
……まぁ、あの時の男の子と
「嘘でしょ!!?中学時代俺そんなあだ名で呼ばれていたの!!?」
「いいじゃん、“恋愛勇者”私はカッコイイと思うよ?」
「口元で笑っているの、分かってるからね?ライちゃん」
「ふふっ」
「もう……ははっ」
「……やっと笑ってくれた」
まさかの事実に慌てふためいたけれど、ライちゃんが笑っている所を見た今はそれでいいかなと思う。こう思ってしまうあたり、この先俺はライちゃんには頭が上がらないんだろうなと痛感する。
「……さて、恋太郎くん。君はこれからどうするのか聞いてもいい?」
「……うん、ありがとうライちゃん」
「……ん」
仕切り直したライちゃんに返事をしながら感謝を告げる。
ライちゃんとの会話のおかげで俺は顔を上げることができた。
そもそも、羽香里を助ける為には下を向いている暇は無いっていうのに。さっきまでの俺はそんな事にまで頭が回っていなかった。本当にライちゃんには敵わないな。
1つ息を入れた後、俺はライちゃんに告げた。
「これから屋敷に忍び込んで
俺の犯罪行為をも厭わない決断に対してもライちゃんは何も言わない。何も言わないその姿勢が俺の決断を後押ししている気がして本当に頼もしく思う。
「…どこまで…いつまで逃げられるかは分からない。でも、とにかく俺にできる事は…羽香里を幸せにするため“精一杯頑張る”事だけなんだ!!」
「今の俺にできる精一杯を――“全て”を懸けて!!!」
「うん、それでこそ恋太郎くんだ」
……気のせいだろうか。
俺の決意を聞いたライちゃんが俺の宣言を聞いて微かに悲しんでいるような気がした。
※走り高跳び中の恋太郎は、憧れの先輩の最高記録であるバーの高さを設定して跳び続けることで、成功したらそれはそれでよし。失敗しても“これを跳べる先輩はスゴい!”と実感する為に跳び続けていました。オリ主は詳細の理由までは分かっていませんが、“どちらでもいい”というのだけは見ていて分かったらしいです。
※女子中学生の走り高跳びの日本記録は『1m63』みたいです。恋太郎が惚れた相手もそれぐらいの高さでバーを設定して跳べている設定です。12歳の男子中学生の平均身長が150前半らしいので一応身長より高めですが、元ネタ(運命)は『その棒、その人の身長よりずっと高かった』らしいです。なので、一部台詞改修しました。
※ちなみに、その女子陸上部部長も恋太郎が跳んでいる所をたまたま目撃していました。その愚直に跳び続ける恋太郎のやる気に『熱いヤツだな!』と好印象でしたが、案の定告白の時に『好きだけどダメ!!』となってしまいました。おのれクソ神、許すマジ。
羽々里さんの台詞を1字表記する際何て書く
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その他