0人目の嘘吐き彼女   作:モーン21

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本当はこの次の17話と一緒に投稿するつもりでしたが、ダイジェストがあんまり短くならなかったのと、合わせたら長くなりそうだったのでほぼ原作通り投稿。

なので、このお話は短めです。

8/9 21:00追記 誤字修正 


16話 ラブミッション:インポッシブル

【恋太郎side】

 

 ザッ…!!

 

「すげー!!お庭に噴水あるのだ!!」

 

「金持ちの(いえ)の庭…!!」

 

凪「噴水の水音に隠れて侵入するのは合理的

 

恋「いいな皆…羽香里の家(このやしき)は警備されてる。気を引き締めていこう…!!」

 

静「『任せときなブラザー』

 

恋「行くぞ皆で羽香里(はかり)を迎えに…!!恋太郎(れんたろう)ファミリー――任務(ミッション)開始(スタート)だ!!

 

「あんた、こう言うとこ割と男の子よね」

 

 噴水の水音に隠れて羽香里の家(やしき)に侵入した俺たちは、羽香里を迎えるという任務(ミッション)開始(スタート)した。

 

 まず俺が用意したのはロープとボールだ。

 

 夕方羽香里(はかり)がいた部屋の窓を目掛けて投げたボールで気づかせてロープで下りてきてもらう作戦。

 

 が、俺の投げたボールはあと少しの所で窓に届かなかった。

 次回はもう少し高めに投げようと考えていると、

 

恋「――あれ、ボールが…」

 

凪「見失った」

 

静「何処(いずこ)へ』

 

楠「暗くてよく見えないのだ」

 

 ボールが何処に行ったのか見失う始末。皆で慌てて探すも、

 

唐「ん?金持ちの(いえ)の猫…!!!

 

 羽香里の飼い猫らしきゴージャスな猫が俺の投げたボールでボール遊びしていた。慌てて唐音や楠莉先輩が猫を捕まえようとするも俊敏な動きで躱される。果てには、巡回中の警備員がボールごと飼い猫を回収していった。

 

 なんとか、近くの茂みに身を隠すことで、警備員に見つかる最悪なケース(ゲームオーバー)から逃れられたけれど、状況は決してよくなかった。

 

楠「ボール取られちゃったのだ…」

 

静「『姫の部屋』“の前も”『陣取られるとは』

 

恋「こうなったら、直接迎えに行くしか…」

 

唐「そんなの、どっから入るのよ…!」

 

恋「正面玄関のカギならあるんだが…」

 

「何でそんなもん持ってんのよ」

 

静「『でも、そこら一帯は』『屈強な騎士(ナイト)達が』

 

 ライちゃんに折角用意してもらったカギも、警備員が特に正面玄関(そこ)を重点的にパトロールしていたのもあり、仮にそこから入った場合警備員に見つかるのはほぼ必至だ。

 

 どこから、どうやって入るのか。任務開始早々いきなり壁にぶち当たった俺たちだったが、

 

凪「飼い猫がいるなら、()()がある可能性が」

 

 何かを閃いたらしい凪乃に正面玄関以外のドアがどこにあるのか聞かれた俺は、これまたライちゃんから貰った間取り図を見ながら辺りを見回ると、

 

「やっぱりあった――猫用出入り口(ペットドア)

 

 ドアの1つに後から付け足したらしい、数十センチ四方にくり抜かれた抜け穴を発見した。

 

凪「カギはかかってない」

 

静「『しかし、この大きさでは小人(こびと)でもない限り』

 

唐「楠莉。あんたの薬、もっと身体小さくできないの?」

 

楠「いや、これは身体が小さくなる薬じゃなくて、不老不死の薬の失敗作なのだ」

 

恋「何度聞いても言葉が強すぎる」

 

 が、ペットドアから人間が出入りするのは構造上不可能に近い。駄目元で手持ちのカギを差し込んでもみたがビクともしないし。再度俺たちは同じ壁にぶち当たった訳だったが。

 

唐「ん…?凪乃(なの)。なにそれ石?」

 

凪「庭から集めて来た」

 

 ペットドアに近づいた凪乃が何やらし始めた。すると、

 

 コッコッコッコッコッコッ……ガチャ

 

凪「()いた」

 

「何したの!!!?」

 

凪「窓の形状から鍵の位置とタイプを算出し、解錠(かいじょう)する位置に当たる角度と力加減を腕に記憶(プログラム)させ、精確(せいかく)に石を射出し続けただけ

 

「アンドロイドの所業(しょぎょう)

 

 凪乃の正確無比な行動によって俺たちは屋敷内部へと侵入することができた。

 

 が、代償は決して小さくなかった。

 

 凪乃の爪が割れて出血していたのだ。

 

恋「消毒液と絆創膏がリュックに!」

 

唐「借りるわよ!…バカっ!女子なのに爪そんなに…ッ」

 

凪「…精確(せいかく)さと威力のため爪で弾く(こうする)しかなかった」

 

「だからってそんな無茶…!!」

 

 俺と唐音で慌てながら治療に移るも肝心の凪乃はどこ吹く風だった。唐音が大声を上げるも、俺も唐音に賛成だったから特に止めようとは思わなかった。

 

 どうしてこんなことを……

 

「――私は花園(はなぞの)羽香里(はかり)に借りが――…いや――」

 

 ……羽香里と凪乃がスパリゾートでナンパされた時のことか…?

 

 が、凪乃は途中で口を噤むと先程の発言を取り消して言い直した。

 

花園(はなぞの)羽香里(はかり)を助けたいから……!」

 

 

 

 

 

▽▽▽▽▽

 

屋敷内部へと侵入した俺たちの前に、息を吐く間もなく障害が立ちはだかったが。

 

「ウウウウウゥ~…!!」

 

「金持ちの(いえ)の犬…!!!!」

 

 …………

 

『俺の(しかばね)を越えて()け』*1

 

(しずか)ちゃん!!!?」

 

 見るからに獰猛(どうもう)な大型犬が、腰が抜けて動けなくも覚悟を決めた静ちゃんの元に詰め寄った。が、一向に襲いかかる素振りは見せず、あろうことか静ちゃんが流す涙をペロペロと舐めるというあきらかに敵対者に向ける態度ではないムーブに俺たちは目を疑った。

 

 凪乃いわく、犬には動物や人の赤ん坊などの“弱い生き物”を守る本能があるらしい。そこから導き出された凪乃の推理は…!

 

凪「『好本静』と言う生き物の類い稀なるあまりの弱さが“縄張りを守る本能に打ち勝ったと言う事…!」

 

 !!!

 

恋「さすが俺達の静ちゃん。自然の摂理(せつり)すらも(くつがえ)究極のか弱さだったんだね…!!」

 

唐「やるじゃない静…これが被食者の戦い方なのね…!!」

 

楠「楠莉(くすり)達の静は自然界最弱のミジンコウサギなのだーっ!」

 

 俺は静ちゃんの身を挺した活躍に思わず感涙してしまったし、唐音と楠莉先輩も誇らしそうにしていた。*2

 

 その後は楠莉先輩の『睡眠薬』*3で一騒動があったけれど、静ちゃんの思わぬファインプレー*4により、無事大型犬の脅威から逃れることができた。

 

 

 

 

 

 間取り図に従い歩き扉を開けると、広くて長い廊下に出て来た。そのあまりの長さに感心している俺達の横から、

 

「ミニャーオ」

 

 庭で出会った猫が、俺たちより先に廊下を歩き始めた。

 

「なッ!!また出た金持ちの家の猫!!ボールどこやったのよッ!!」

 

「ボールはもういいから、ほっといて先に(すす)――」

 

 猫に怒鳴る唐音を宥めていると突然――

 

ジリリリリリリリリリリリリリリ!!

 

 警報音が辺り一帯にけたたましく鳴り響く。

 

 後ろから警備が来ているから後ろには戻れない。扉を開けられる前に廊下を駆け抜けようと考えたが、それは(しずか)ちゃんや楠莉先輩の事も考えれば不可能―!!

 

 どうすれば――!!!

 

 

 

 

 

 バタンッ!!

 

「誰かいるのかッ!!!」

 

「はぁ…やっぱりまた(おまえ)か……」

 

「これで何回目だ?この廊下の赤外線センサーにひっかかるのは……もうお前用の防犯設備だな…」

 

「ほらクッキーだぞ。こっち来―い」

 

「ミニャーッ」

 

 

 

 

 

 ドキドキドキドキバクバクバク

 

 慌てて両開きの扉の裏に隠れた俺達だったが、警備員がどちらも警報音の原因が猫の仕業だと“誤解”してくれたおかげで難を逃れることができた。

 

 情けは人の…猫の為ならずか。ボールの代償に俺たちの危機を助けてくれたというなら感謝の言葉しか浮かばない。

 

 ……いや、立ち位置的に考えて。さっき警備員が言っていた“赤外線センサー”に引っかかったのはもしかしなくても猫だった…?

 

 …………

 

 深く考えないようにしよう。

 

「――赤外線センサーだって……!?…それで警報が…」

 

『やっこさん、一筋縄じゃ通しちゃくれねぇみてぇだ』

 

「…赤外線ゴーグルもなく突破するのは99%不可能」

 

 唐音、静ちゃん、凪乃がそれぞれ反応する。

 

 俺も流石に赤外線ゴーグルなんか持ってきていないので、別の道から迂回できないかと間取り図を見ようとしたが、

 

「あ、ちょうど――『赤外線が見える目薬』を持ってるのだ!」

 

「恥も外聞(がいぶん)もないご都合展開」

 

 ここに、ご都合展開(例外)が存在する。

 

「なんでそんなピンポイントな薬持ってるんですか読者に怒られますよ!!

 

「そんな事言われたって…これ持ってコンビニ行く途中に恋太郎(れんたろう)から呼び出されただけで…まあ別に無理に使えとは言わないのだ…」

 

「いや、使います!!使いますからっ!!」

 

 いじけて薬をしまおうとする楠莉先輩に慌てて声を掛ける。なんとか楠莉先輩の機嫌も治って目薬を貰えたから早速さすことにする。

 

凪「その程度の偶然を取り上げて騒ぐなら、宇宙が誕生し生命が発生し私達全員が今ここにいる確率は0.0000000000000…」

 

静「『もうよい帰還せよ』」ゆさゆさ

 

楠「2滴分しか生成できなかったから慎重にさすのだ…!!ミスるなよ~…!!絶対ミスるなよ~…!!」

 

「フリみたいなのやめてくれません?やりかねないんでこの漫画(小説)

 

楠「あ、ちなみにそれをさすと効果が切れるまで赤外線以外なにも見えなくなるから注意するのだ」

 

「フリとかより先にそっち言ってくれません!!!?」

 

 その副作用、結構バカにできませんからね!!?

 

 でも、誰かしらはささなきゃいけないからなぁと呟きながらも『効果が出るまでしばらく目を閉じるのだ』と言う先輩の指示に従って目を閉じる。

 

唐「…ライは嬉々として使いそうね……ん?楠莉(くすり)なんか落としたわよ…封筒?」

 

凪「――…!その宛名(あてな)は…」

 

楠「!!こ、こんなの別にいいのだ!」

 

唐「え…?なに隠してんのよ。…あの宛名がなんなのよ。英語…?だったけど」

 

凪「…あれは――」

 

 視界が完全に閉じたことで声しか聞こえてこないけれど。状況を確認する為にも俺はただ皆の声に集中することにした。

 

凪「海外の巨大な薬学研究所を抱えている研究チーム」

 

 !!!?

 

唐「――…!!それって――前に楠莉(くすり)が言ってた…!!」

 

 ……それはたしか、楠莉先輩が皆に自己紹介した時*5のことだったはず。

 

 

 

楠『こんな感じで色々作っているけど、楠莉が憧れてる研究チームに応募用のが今一番気合いを入れてる薬なのだ!』

 

凪『研究チーム?』

 

楠『楠莉の夢なのだ!そのチームで研究をして、もっともっとすごい薬を作りたいのだ!』

 

 

 

凪「…たしかに、応募期日には今日送らなければ…」

 

唐「間に合わないの!!?ちょっと楠莉!!」

 

静「『そこでの修練が』“楠莉先輩”『の…』

 

楠「……」

 

恋「そんな大事な薬を――よかったんですか?」

 

 俺は楠莉先輩に問いかけた。先輩はそれに少しだけ間を置いた後こう告げた。

 

「……羽香里(はかり)は…楠莉が薬やわがままでいっぱい迷惑をかけてもお友達でいてくれてる…研究チームなんかよりも()()()()()()()大事な大事なお友達なのだっ!!

 

 ……そっか。

 

 楠莉先輩だけじゃない。凪乃や静ちゃんだって……

 

 凪乃は、自分の爪から出血することすら厭わずに。

 静ちゃんは、大型犬に襲われて死ぬほど怖かったはずなのに。

 楠莉先輩は、自身の夢を棒に振ってまで。

 

 ――皆…みんなみんな大好きな羽香里(はかり)を助けたい一心で……

 

 ……そんな皆に比べて俺は……

 

「そろそろ目薬の効果も出始めたはずなのだ!さー目を開けて羽香里を助けに行くのだーっ!!」

 

 …ハッ!!?

 

 慌てて思考の渦から頭を上げる。そうだ、今はそれよりも、羽香里を助けることに集中しないとだろ!!

 

 両頬をパンッと叩いて気付けをする。皆が驚いたのが音や気配で微かに分かって申し訳無く思う。

 

しっかりしろっ!!集中しないと助けられるものも助けられないだろうが…!!

 

 助ける―――必ず助けるんだ羽香里をッ!!!

 

 

 

 

 

ビッシーーーーーーーーーーーー

ビッシーーーーーーーーーーーー

ビッシーーーーーーーーーーーー

ビッシーーーーーーーーーーーー

ビッシーーーーーーーーーーーー

ビッシーーーーーーーーーーーー

ビッシーーーーーーーーーーーー

ビッシーーーーーーーーーーーー

ビッシーーーーーーーーーーーー

ビッシーーーーーーーーーーーー

ビッシーーーーーーーーーーーー

ビッシーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「トムクルーズ*6でもインポッシブルだッッ!!!」

 

*1
生贄(いけにえ)

*2
※皆、褒めてます

*3
どんな生き物も一瞬で眠らせる薬

*4
「二階からぼたもち」

*5
11話参照

*6
ケリィ・ヴィンヤード




※悲報 オリ主の餞別、あんまり役に立たなかった模様。せいぜい、ペットドアを見つけるまでの間で短縮ができたのと、屋敷に入ってからの速さ程度か。

羽々里さんの台詞を1字表記する際何て書く

  • 羽々里さんの『々』
  • 羽々里さんは皆の『ママ』より『マ』
  • 羽々里さんは羽香里の『お母様』より『母』
  • ヤツ(♀)より『ヤ』
  • 羽香里を『香』で羽々里さんを『羽』表記
  • その他
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