その作品しかり、100カノしかり。高校生のラブコメなんて、なんぼあってもいいですからね。
それでは、本編どうぞ。
【羽香里side】
『言ったわよね?
『お願いしますお母様…ッ!!どうかお許しください…ッ!!』
『言いつけが守れないのならお母さんは――
……恋太郎君が夕方我が家の前まで来た後お母様と警備の方によって追い返された時、胸が引き裂かれる思いと共に感じたのは“安堵”でした。
あれだけ強く拒絶した後であれば恋太郎君はもう
私の胸に切り刻まれる心の痛みを無視しながら、私はそれが“最善”なんだと自分に言い聞かせることで平静を保つようにしました。
けれど……
バタン…ッ
恋太郎君と唐音さんがお母様に連れて行かれた後、気付けば私は2人が入ってきたドアにすがりついていました。先程突如現れた2人が夢なんかじゃなく現実なんだと自分に言い聞かせる為に。
恋太郎君は来てしまいました。お母様から『二度と
『迎えに来たんだ!!一緒に逃げよう
ギュウ…
…
――絶対に諦めてくれない……ッ!!
…どれだけ
『だからさ、私が羽香里ちゃんに悪い事をしたお詫びに。もし羽香里ちゃんのご家族が羽香里ちゃんを恋太郎くんや私たちから引き離そうとした時には、私が全力で止めてみせるから』
……あっ……。
思い出したのは、ライさんのお家にお泊まりをさせてもらった時のこと。あの時、取り乱した私をライさんは嫌な顔1つもしないで慰めて落ち着かせてくれました。
その時にライさんと交わした約束を、私は今この時になって思い出しました。
……今更思い出してももう遅いというのに。
ここまで来られたのは恋太郎君と唐音さんだけでしたが、ライさんを除いて2人だけがこの屋敷に来られたとは考え辛いです。静さん、凪乃さんや楠莉先輩ももしかしたら近くまで来ているかもしれません。
……私がライさんにあの時“助かりたい”だなんて言ってしまったから……。私のせいで、皆さんを巻き込んでしまいました……。
溢れ出る涙を両手で抑えても一向に止まりません。私のせいで事態は最悪なのに、私はただこの部屋でうずくまることしか出来ない事実が唯々情けなく思いました。
私と言う存在が……大好きな恋太郎君や皆さんを不幸にしてしまうのなら………、
私が“生きている限り”恋太郎君や皆さんの心を縛りつけ続けてしまうのなら………――――――
顔を上げた私の視界に映ったのは、この部屋からの扉以外の唯一の脱出口である窓でした。
▽▽▽▽▽
「――それ以上近づかないでくださいッ!!」
「…だっ駄目だ。興奮させては…」
「全員ドアから離れろ…ッ!!」
屋敷の外壁にある狭い幕板*1に両足を付けて、窓に両手を付ける。
完全に窓から外へと身を乗り出しているからか、近くに居る警備員の皆さんも私を止める為に近づくのではなく、私を興奮させない為にと遠巻きに見ることにしたようでした。
結果的に私の要望通りに事が進んでいることに喜ぶべきなのに、私の気は全然晴れません。行動したのは私なのに、後一歩飛び降りるだけで私の目標は完遂するというのに、私の両足はこれまでの道程とは正反対に微塵も動く気配がありませんでした。
ダダダダダダダダダダ
「お前!何を――」
「すみません、どいてくださいッ!!」
私が一歩を踏み出せないままでいると、後ろから警備員さんの驚いた声と何度も聞いた覚えの声が聞こえてきました。
……この声は、まさか……
恐る恐る後ろへと振り向きました。すると、そこには……
「もう大丈夫。迎えに来たよ
お母様達に捕まっていたはずの
「…
「――今、
どうして、恋太郎君がここにいるのかと疑問に思っていると、恋太郎君は軽く事情を説明してくれました。
そうですか……唐音さんが
今この時も必死にがんばっているだろう唐音さんに申し訳なく思いながら、私に手を差し伸べ続ける恋太郎君を一瞥した後前へと向き直る。
……ごめんなさい恋太郎君。私は、どうしてもその手を取ることはできないんです。
「――たとえ今逃げられても、一生追われ続けますよ。恋太郎君は私とお母様に囚われ続けてしまうんです…ッ!!」
「…
「私には耐えられません…ッ!!大好きな恋太郎君の人生を滅茶苦茶にしながら…ッ不幸にしながら…ッ生きていく人生なんかッッ!!!」
両手も私の身体を支える為に使っているから、溢れる涙を抑えることもできません。はしたないと思いながら、私は自分の思いを恋太郎君にぶつけました。
……そうです。
私が恋太郎君の彼女になったのは、あくまで私が恋太郎君と一緒にいたいからという自分勝手な理由でした。付き合ってからも、自分がしたいことを恋太郎君や唐音さん達にお願いしてきただけ。でしたら、私がここでいなくなった所で誰も困りません。
私の家族の問題でここまで皆さんを巻き込んで、これからもずっと巻き込み続けてしまうぐらいなら。
いっそ、私はここで、いなくなった方が……
「だったら!!!そんなことしないでくれよ……ッ!!」
……え?
「――
後ろを振り向く。恋太郎君は私とは違い涙を流しこそしていませんでしたが、その表情はとても悲しげでした。
その表情からして、嘘を吐いているようには見えません。でしたら、恋太郎君は本当に……
「たとえ、どんな日々を送る事になったって…
この部屋に来るまでにいくつもの障害があったのは確かです。それを乗り越える為に恋太郎君自身も傷ついていないはずがないのに。
それでも、こんなことを本心で言ってくれて……。
「………そんなの…ッそんな言い方…ッ…ずるいです…ッ!!」
恋太郎君にそこまで言われてしまったら……、私は、諦めていた自分の欲を抑えきれなくなってしまいます……!
恋太郎君が再度私に手を差し伸べてきました。そして、さっきの『ここから逃げよう』とは違う内容で、私にこう言いました。
「あなたの事を愛してます。これからもずっとずっと――一生俺と一緒にいてください」
月の光に照らされながら私にそう
状況は依然、最悪なままなのに。
この手を取れば、未来永劫恋太郎君や皆さんを不幸にしてしまうかもしれないのに。
……そんな
「恋…太郎…君……ッ!そんなの…ッ…そんな言い方…ッ…ずるいです…ッ!!」
「――はい……私もあなたの事を愛してます。――ずっとずっと一緒にいさせてください……!」
▽▽▽▽▽
【恋太郎side】
……よし。これでひとまずは安心だな。でも、まだ完全じゃない。
「…さぁ、部屋に入って…」
「……はい――」
一歩、慎重に羽香里に近づいて羽香里に言う。返事がきたことに安堵していると、
カタカタ…
羽香里の身体が徐々に震え始める。
さっきまでは大丈夫そうだったのにどうして……ッまさか…!!
――まずい!!落ち着いたせいで“恐怖”が――!!
「な……ハッ…ハッ…」
「
「ハッ…はい…!」
ガタガタガタガタ…!!
恐怖の為かガタガタ震える羽香里の両足。外履きとして履いていたヒールの片方がその揺れの為に、
「――ッ!!!」
ダッ!
ズリッ!
狭い石の板から、滑り落ちた。
必死に走る。
俺の視界から徐々に羽香里が消えていく。
死なない為に、生きる為に、一緒にいる為に。
唯一上に伸ばされた羽香里の左腕を俺は……
ガシィィィィ!!
なんとか、掴むことができた。
けれど……、
…ッ!!
「ハッ…!恋太郎…君…!」
ヤバい、体勢が…ッ…踏ん張れない…ッ!!
「く…ッ!!」
ズルズルと外に引きずり出される……!
「ぐおお…ッ!!やっと着いたわよ
「ぐぎぎ…恐るべし火事場の
このままじゃあ……!
「離してください恋太郎君ッ!!このままじゃ二人とも――ッ!!」
「離さない…ッ!!やっと掴めたんだ…ッ絶対に…二度と離すもんかッッ!!!!!」
あの時、羽香里に『お別れしてください』と言われてから、幾つもの障害を越えて、ようやくやっと、こんな近くまで来れたんだ!!
たとえ死んでも、この手を、離してたまるか……!!
「
「恋太郎ッ!!!」
…………
後ろから唐音と羽々里さんの声が聞こえた気がする。
けれど、もう、あと数秒、遅かった。
この時、俺の頭の中にあったのは1つだけだった。
絶対に守る!!!!
脳から発せられる緊急信号に、身体が思考を通さず反射レベルで動く。
両足を壁に近づけて少しでも落下の勢いを落とそうとするも、上手く行った気がしない。
バリンッッ!!!!
………………
「着水するぞ!大きく吸い込め!!」
正直色々ありすぎて、この時のことはよく覚えていない。
羽香里と一緒に窓から飛び降りたことでさえ非現実的だったから。その後に起きた出来事が本当の出来事だったのか、自信が無かったから。
……でも、もし俺が見た通りのことが起こったのであれば……。
確かにあの時、2階の窓が大きく割れたのと同時に、
一瞬のことだったから、その警備員に抱きかかえられた瞬間のことは、よく分からないけれど。
『もう大丈夫!』と言われたような、安心感に包まれた気がした。
▽▽▽▽▽
高所から池に叩きつけられて、俺がまず案じたのは羽香里の安否だった。
警備員と共に羽香里を両サイドで支えて陸まで運んだ後、俺はすぐ羽香里が大丈夫か確認した。
「ハァ…ッ!ハァ…ッ!」
その結果、羽香里がどこもケガをしていないことが分かって。
俺は、心底ホッとした。
「――よかった…ッ本当に…ッよかった……ッ!」
気付けば、俺は羽香里に抱きついていた。
どれだけそうしていたのか分からない。それはたった数秒だったかもしれないし、数分だったかもしれない。
羽香里を抱きしめている内に、いつの間にか屋敷の中から唐音と羽々里さんが出て来た。
「
「
!!!
「…よかっ………た……………ッ」
羽香里が無事なことに俺と同じく心底ホッとしたのか、羽々里さんはその場でペタンと膝を折っていた。
それとは対照的に、唐音はツカツカツカと俺たちの元へと歩みを止めない。
そして、
パンッ
羽香里の頬を、唐音が
唐音の予想外の行動に俺と羽香里も思わず目を疑った。けれど、その直後。
「ばかッッッ!!!!」
唐音の叫びによって、俺は唐音がどうしてこの行動に出たのかようやく理解できた。
「…ふ…ッ…うぅ…ッ」
俺はそんな二人に、ただ黙って胸を貸すことしかできなかった。
「
……楠莉先輩の声は聞かなかったことにしよう、と思いながら。
「…分かっているの……?…池への着水に失敗していたら………あなたは……」
羽々里さんが俺へとそう問いかけてきた。
この質問には、悩むことなく答えることができた。
「――言ったじゃないですか。
俺が答えると、羽々里さんは何か合点がいったのか、さっきまで一度も浮かべていない表情を出した後、両手を前に突いて俺に頭を下げてきた。
俺と羽香里、唐音は羽々里さんの
「
その羽々里さんを見て、ようやく分かった。
……すべて――羽香里のため。
俺と無理矢理引き離したりして、
すべては、“羽香里のため”。
なんて、
…でも、そんな生き方じゃ――
「――はい。必ず幸せにします」
俺は羽々里さんにそう答える。そして俺は覚悟を決めて、言葉を続けた。
「
「――――……え……?」
土下座する羽々里さんの手を両手で掴んでそう伝える。顔を上げた羽々里さんは、これまた見たことが無いような、驚きの表情だった。
俺は羽々里さんの目を見つめて、俺の羽々里さんへの気持ちを伝える。
「俺は
羽香里と羽々里さんの2人の過去を聞いて俺が思ったことだ。2人が今日まで苦労してきた分、これからは幸せになって欲しいと、心からそう思ったんだ。
「あなたにも一緒に歩んで欲しいんです。かつて羽々里さんが思い描いた―――幸せな人生の続きを!」
……羽々里さんへの、
けれど、羽々里さんに幸せになってほしいと思うこの気持ちは、決して、“間違い”なんかじゃないんだから。
「…う…嘘…っそんな…っそれって…っ!…あの時の…私からの告白の………答え……っ?」
「はい――“こちらこそよろしくお願いします”…!」
……よかった……これで、一件落着……
「おおおおお母様ッッ!!!?
…あっ、そういえば唐音はあの場に一緒にいたけど、羽香里はいなかったな。
チラッと周りを確認すると、その唐音も動揺していた。近くにいた静ちゃんや凪乃、楠莉先輩もそれは同じらしい。
皆へその説明をしようとした俺より先に、羽々里さんが動いた。
「…だって…ッだってだってだって…ッ!恋太郎ちゃん……ッ!!」
身体を震えながらそう言った羽々里さんは、突如俺の顔を両手で掴むと……
「こんなにかわいいんだもの~~~~ッッ!!!」
むぎゅ~!!!
「んむむーッ!!?」
突如胸元へと抱き留められ、頭をすり♡すり♡なで♡なで♡と甘やかされる。
娘である羽香里以上のその
「は…
「なぁに~?
慌てて羽々里さんに止めるよう伝えるも、羽々里さんはどこ吹く風と言わんばかりにまったく相手にしてくれない。
流石に
唐「か…彼女の母親…」
羽「実の母…」
楠「大人の女…」
静「『混沌』」
凪「親子丼…」
?「年上キラー…」
皆、あまりの情報量の多さに未だ頭の整理がついていないようだった。とりあえず、この状況を何とか脱しない限りはとがんばって羽々里さんの胸元から脱出しようと試みるも、成功の気配は見られなかった。
「そうだわ…!もうこんな時間だし…皆今夜はウチにお泊まりしていってちょうだい!♥」
そんな羽々里さんの提案で、俺達は全員で羽々里さんのお家にご招待されることになった。
▽▽▽▽▽
「……さて、あなたにお礼を言うのが遅れてしまったわね。……羽香里を助けてくれてありがとう」
「お、お止めください
「……そうね。あなたが
知らなかったかしら?ウチの警備員はね、私のことを“奥様”と呼ぶのよ。決して“マスター”とは呼ばないわ」
「……おや、これは一杯食わされたな」
「よく言うわよ。
「……私の名前は『大槻クロ』。愛城恋太郎が花園羽香里を奪還する“手助け”をするよう私の愛しの娘、ライからお願いされた、ただのしがない
※オリ主は両親が『いなくなった』とは言っていても、『死んだ』とは一言も言っていません。
羽々里さんの台詞を1字表記する際何て書く
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羽々里さんの『々』
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羽々里さんは皆の『ママ』より『マ』
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羽々里さんは羽香里の『お母様』より『母』
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ヤツ(♀)より『ヤ』
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羽香里を『香』で羽々里さんを『羽』表記
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その他