0人目の嘘吐き彼女   作:モーン21

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なお、恋太郎視点の為序盤のお風呂描写はカットされる模様。

この話は少し短めです。


20話 文字だけでもはたして“ご褒美回”と呼べるのか

【恋太郎side】

 

 あの後、羽々里さんの案内の元羽香里たちはお風呂場へと直行した。俺は気付いていなかったけど、静ちゃんや凪乃、楠莉先輩も俺たちを助ける為に池へと飛び込んでいたらしい。2人とも溺れた静ちゃんを助けに行ったらしいけれど。皆、羽香里を助けようと必死だったんだって分かって嬉しかった

 

 花園家のお風呂はとても大きいけれど1つしかないと聞いたから、俺は羽香里たちに先にお風呂へ入るようにと伝えた。

 もちろん俺も濡れてはいたけれど、メイドさんにタオルと代わりの着替えをすぐ貰えたから特に問題はない。

 

 ……そんなことよりも、俺の頭を占めているのは。

 

『……私の名前は『大槻クロ』。愛城恋太郎が花園羽香里を奪還する“手助け”するよう私の愛しの娘、ライからお願いされた、ただのしがない父親(ダッド)だよ』

 

 俺と羽香里を助けてくれたあの警備員は、ライちゃんの父親の変装だったということだ。

 

『大槻さんはアメリカで()()()()()()()()

 

『保護観察の為親元から離れて暮らしている』

 

 両親については中学生の頃噂で聞いたことはあったけれど、センシティブな話だから直接ライちゃんに尋ねるようなことはしなかったし、ライちゃんの方から話すこともしなかったからそれで正解だと思っていた。

 だから、高校生に上がってから羽香里や唐音たちとのおしゃべりの際に両親のことを話した時は驚いた。

 

 だからか、羽々里さんと俺達にそう告げるライちゃんのお父さんを俺はつい目で追ってしまっていた。

 

 俺よりも頭1つ2つ大きい体躯に色黒の肌とは対照的な白い髪。警備員の服を着ているからいまいちよく分からないけれど、鍛えられている印象を受ける。

 

 そのライちゃんのお父さんは羽々里さんと2、3小声で何かを話したかと思ったら、俺と同じく部屋まで案内したメイドさんからタオルと着替えをもらっていた。道中何か話さなければと緊張する俺とは反対に何の気兼ねもなく彼の方から話しかけてきた。

 

「…愛城(あいじょう)恋太郎(れんたろう)。君のことはライから聞いている。彼女の一人を助ける為に我が身も投げ出すとは、聞きしに勝る蛮勇さだったが」

 

「…すみません。あの時はもう必死だったので…。助けて頂いて、本当にありがとうございます」

 

「謙遜しなくていい。私が飛び出さなくても、君ならきっと彼女を助けていただろう。むしろ、謝るべきなのは私の方だ。

 せっかくの、()()()()()()()になる場面を奪ってしまったのだからな」

 

「っ!いきなりなにを言い出すんですかっ!!」

 

「ふっ、すまない。久しぶりに君のような骨のある者を見れたのが嬉しくて、ついからかってしまった。気を悪くしたのであれば謝ろう」

 

 そう言って軽く頭を下げたライちゃんのお父さんだけど、浮かべる表情からしてまったく悪いことをしたと思っていないのは明らかだった。

 

 ……うん。こういう所はライちゃんにそっくりかもしれない。

 

 ほほえみを絶やさないメイドさんに案内された部屋で身体を拭き着替えを終えるとすぐにライちゃんのお父さんが部屋を出て行こうとするので、俺は慌てて呼び止めた。

 

「おっ、大槻さん?どちらに行かれるんですか?」

 

「なに、少しばかりこの屋敷を探索しようかと思ってね。このメイドを()()()として連れ歩くことを条件に花園羽々里から許可は取っている」

 

「なら俺も……」

 

「君は今日の昼から休めていないだろう?休める時には休んだ方がいい。それに、しばらくすれば()()()()()()()()も風呂から上がることだろう。

 彼女達の湯上がり姿など、高校生である君ではそうお目にかかれるものではないだろう?存分に堪能するが良い」

 

「…なッ!!?」

 

 からかわれたことに気付いて顔が赤くなるのが分かる。慌てて顔を逸らしたけれど、きっとそんな俺の反応も分かっていたんだろう、軽く笑うと再度部屋から出て行こうとしていた。

 

「あっ、あの…!!」

 

「ん、なんだね?」

 

 慌てて呼び止める。これが2回目だというのにライちゃんのお父さんは全然嫌そうにしていない。それに申し訳無く思いながら俺はずっと聞きたかったことを口にした。

 

「ラ…、ライさんは……」

 

 どんな様子でしたか?

 

 震えながらそう言おうとしたけれど、俺の台詞は途中で止まった。

 

 『…恋太郎くん……私と……お別れしてくれる?

 

 夕方、羽香里の屋敷を出て偶然ライちゃんの邸宅に辿り着いた時。最後にライちゃんに言われた言葉が俺に再度突き刺さった。

 

『……私のことは気にしないでいいから、解決するまで、恋太郎くんは羽香里ちゃんのことだけに集中して……』

 

 ライちゃんがその後眠ってしまってこれ以上話をすることが出来なくなったことと、制限時間(タイムリミット)があったこと。そして、その言葉を直接ライちゃんから聞いたから。俺は羽香里を助けることだけに集中することができた。

 

 でも、最終的に羽香里との仲を羽々里さんに認めて貰えて。俺はようやく周りを見る余裕が生まれた。屋敷の風呂場へと向かう皆の中に“ライちゃんがいない”事実が俺に罪悪感を思い出させた。

 

 俺は、ライちゃんに甘えるばかりで何もしてこなかった。

 

 そんな俺が、今更こんなことを聞いてもいいのかと。最後まで言の葉を紡げなかった理由だった。

 

「……ライのことであれば問題ない。今は眠っているだけだ。もう夜も遅い。何か話すことがあるのなら明日学校で話せばいいだろう」

 

 こちらに振り向きすらせず、背中を向けたままそう応えたライちゃんのお父さんに俺は何も返せなかった。

 

「あんな脂肪袋肉弾戦じゃただの足枷…戦場では命取り…」

 

「ん?院田唐音、もう上がったのか…………」

 

「あっ、ライのお父さん。……ん?」

 

「いや、何でも無い。中には愛城恋太郎もいる。早く入ることだ」

 

「あっ、ありがとう……ございます。ライのお父さんは?」

 

「なに。私は少し、この可憐なメイドと逢い引きをしようと思ってね」

 

「堂々と浮気してんじゃないわよ」

 

 

 

 …………ガチャ

 

「…唐音(からね)あがったのか。早かったな」

 

「べっ別に…こんな家の風呂朝飯前だっただけよっ」

 

 …………

 

 ライちゃんのお父さんとメイドさんが部屋を出て行くとすぐに風呂から上がった唐音が部屋へと戻ってきた。

 

 その際、唐音のお腹がめくれていることに気付いた俺は。赤外線センサー越えた時の事思い出したのもあって、思わず顔を赤くして唐音から目を逸らしてしまった。

 

 結局その動きのせいで唐音に察せられて。楠莉先輩が部屋に戻ってくるまで2人で色々ドタバタしていたら、ブルーな気持ちはいつの間にか消え去っていた。

 

 

 

 

 

▽▽▽▽▽

 

 ……あの後、全員がお風呂から上がった後。羽々里さん主導の元パジャマパーティーが始まった。

 

 羽香里曰く、羽々里さんは大のかわいい物好きらしく。特にかわいい人の着せ替えに目がないんだとか。

 

 突如羽々里さん(彼女)に目の前で服を脱がされはじめる羽香里たち(彼女達)に慌てて視界を塞ぐも顔の赤らみは視界を開けた後も収まる気配は無かった。

 

 それからは、

 

「「キャーーーッッ!!!!♥♥♥」」

 

「「ぉんギャアアアアアアアアアアアア!!!!♥♥♥♥♥」」

 

 羽々里さんと共に羽々里さんプレゼンツの彼女たちのパジャマ姿のあまりにもの可愛さに俺は感涙しながら歓喜の声を上げていた。

 

 いつも目にする制服や休日に目にする私服姿とは違う印象を受ける彼女たちのパジャマ姿は、とても新鮮だった。

 

 その後、特にサン○オ名乗っても許されるくらいかわいい*1静ちゃんと楠莉先輩に同時にほっぺにちゅーをされたことで召されそうになったりもしたけれど……。

 

「興奮しすぎたわ…」

 

「お母様鼻血が…」

 

「キッチンでお水を…」

 

「肩貸しますよ」

 

 キッチンへと行こうと部屋から出て行く羽々里さんに付いていく。用事を済ませ皆の所へ戻っていると羽々里さんが身体を震わせながら俺にこう告げた。

 

「恋太郎ちゃん……ごめんなさい…私…もう……ッ…我慢できないの…ッ

 

「…羽々里さん…?」

 

「私の部屋に…………来て……?」

 

 様子がおかしい羽々里さんを怪訝に思いながら羽々里さんに付いて行った。

 

 その後は……あまり思い出したくない。

 

「ハァ…ッ」 「ハァ」 「ハッ…」 「ハァッ」

 

「ああ…ッいいわ…ッ!恋太郎(れんたろう)ちゃん…ッ!

 

「……ッだッダメッです…ッ!羽々里(ははり)さんッこんなの…ッ!」

 

「あああンンッ!!いいッ!!いいのぉッ!!お願いッ恋太郎ちゃん…!!もっと…ッ!!♥♥」

 

「ああぁッ…!!羽々里さ…ッ!!ダメです…ッダメ…ッ!!

 

 

 

 

 

 バンッ!!

 

「お母様ッ!!!」

 

 なんとか、最後の砦(パンツ)だけは死守できた俺だけど、それ以外は羽々里さんの暴走に身を任せるしかなかった。

 

 その結果……

 

「み…皆ッ!!?」

 

ああァ~~ん世界一かわいいわ恋太郎(れんたろう)ちゃんッ♥」

 

 羽々里さんにパンツ以外の全てをひん剥かれ、ミニスカートとルーズソックス等の代わりの着替えを渡されて、ウィッグも着けられて。

 

 気付けば、女装させられていた。

 

「お母様…!!私はあなたの娘でよかった…!!」

 

羽々里(ははり)お姉様と呼ばせて欲しいのだ…っ!!」

 

「…一生ついて行くわ…ッ!!」

 

「歴史に名を残す逸材(いつざい)…!!」

 

貴方(あなた)こそがマイロードだ』

 

 女装に着替えさせられたこと事態大分キていたのに。羽々里さんだけではなく、羽香里たちにもこの姿を見られたことがトドメだった。

 

「そ…そんな…ッ皆に…こんな姿…み…見られ……ッ」

 

 恥ずかしさのあまり、俺は……

 

ボンッ

 

バターン

 

「ちょちょちょ恋太郎(れんたろう)ッ!!?」

 

「恥ずか()したのだ!!?」

 

 その場で気を失ってしまった。

 

 

 

 

 

▽▽▽▽▽

「もう…ッ!!皆あがった事ですし、俺もお風呂お借りしますからねっ!!」

 

 バタンッ

 

 羽々里さんに渡された服を畳んで返して最後にウィッグに手を掛けながら部屋から出て行く。

 

 勢いのまま扉を閉める。数歩進んだ後で、あれは良くなかったなと自省したけれど。

 

 ……皆にあんな姿を見られてすごく恥ずかしかった。もう二度とやりたくないって思っていたのに。

 

 ……皆があんなに喜んでくれたのが嬉しいと思ってしまう俺もいるのに気がついて。そんな俺の気持ちを皆に知られたくなかったからあんな風に動く事しかできなかった。

 

 顔の赤らみをなんとか抑えながら廊下を進む。途中ライちゃんのお父さんについて行っていたメイドさんとすれ違ったけれど、この時の俺はそれすら気づきもしなかった。

 

 お風呂への道は最初に教えられたから覚えている。ライちゃんから貰った間取り図は最初警備員に回収されていたけれど、和解後にはこちらへと戻ってきた。でも、大槻家の所有物だからということで最終的にはライちゃんのお父さんに戻っていったけれど。

 

 お風呂場へと辿り着いた。何の気負いもなく俺はそこへと手を掛けて開け放つと。

 

「おや、君も入りに来たのか?」

 

「おッ、大槻さん!!?」

 

 そこには自身の衣服に手を掛けるライちゃんのお父さんの姿があった。

 

 

 

 

 

▽▽▽▽▽

 

 コンコン、ガチャ

 

「お持ちいたしました」

 

「ありがとう」

 

「それとこちらは、………になります。」

 

「確認するわ……ありがとう」

 

「な、なに?何かすんの?」

 

「何って……」

 

「「(のぞ)きに決まってるじゃない(ですか)」」

 

*1
「あんたサ○リオのなによ」

羽々里さんの台詞を1字表記する際何て書く

  • 羽々里さんの『々』
  • 羽々里さんは皆の『ママ』より『マ』
  • 羽々里さんは羽香里の『お母様』より『母』
  • ヤツ(♀)より『ヤ』
  • 羽香里を『香』で羽々里さんを『羽』表記
  • その他
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