0人目の嘘吐き彼女   作:モーン21

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この度、アンケートを設けようと思います。

お題は「羽々里さんの台詞を1字表記する際に何て書くか」です。

このお話では『羽』が羽香里の為『々』を羽々里さんとして表記していますが、次話以降では皆さんのアンケート結果を参考に変更するかもしれません。

皆さんの意見を参考にしたいのもありますが、私がアンケート機能に慣れる為というのもありますので、是非お気楽にご投票ください。


21話 4つのホラー

【恋太郎side】

 

「大槻さん!?どうしてここに!!?」

 

「なに、()()が一段落したのでね。折角だから入らせてもらうことにした。君もそうだろう?」

 

「そ、そうですね…」

 

「今日初めて会ったばかりの相手と一緒の風呂は緊張するだろう。先を譲ろうか?」

 

「い、いえ!そういうことでしたら先に風呂場(ここ)に着いていた大槻さんどうぞ!!」

 

「では、選択権は私にある訳だな?では一緒に入ろうか。私としても、娘と同い年の子に我慢を強いるのは本意ではない。それに、この偶然もきっと“運命”の巡り合わせだろうからな」

 

「わ、わかりました…」

 

 と、ひょんな事から大槻さんと一緒に入浴することになった。

 

 これが一般的なお風呂だったらスペースの問題があったかもしれないけれど、そこは羽々里さんが所有するお屋敷がすごかった。

 脱衣所を出ると、そこは十数人が一度に入っても快適に過ごせるだろうことは間違いない。正直、イメージしていたよりも広大で業勢な浴室だったのもあって俺は開いた口が塞がらなかった。

 

「それにしても……すごい、大きいですよね。羽々里さん家(ここ)のお風呂」

 

「さながら“金持ちの家の風呂”だな」

 

「…………」

 

「言いたい事があるなら聞くが?」

 

「ッいや!なんでもないです!!」

 

 あの荘厳な邸宅を所有するお金持ちが何を言っているんだろうと怪訝に見ていたのがバレたことに焦った俺は、慌てて誤魔化した上でシャワー前の椅子に座って身体を洗い始める。

 

 俺も大槻さんも、腰にはタオルを巻いている。“念の為に”と伝えたけれど、大槻さんが俺の言う事を聞いてくれてちょっとホッとしたり。

 

 ……それにしても……

 

 チラリと横で頭を洗っている大槻さんの身体を盗み見る。

 

 服を着ている時も鍛えられている印象だったけれど、こうして裸の時だとその印象がより強まった。アスリートみたいに無駄なく鍛えられた肉体に男である俺も目を奪われそうになる。

 

 ……それに比べて……。

 

 自分の身体へと目を落とす。小さい頃から自分磨きとして色々頑張って来たおかげで無駄な脂肪こそ無いけれど、大槻さんほどマッチョかと言われれば100人中100人が否定することだろう。

 

 …羽香里たちもマッチョの男が好きなのかな…?

 

 帰ったら、日課の自分磨きのメニューを改良することを心に決めた。

 

「…愛城(あいじょう)恋太郎(れんたろう)?」

 

「ッな、なんでもないです!!」

 

「……気に病む必要はない。“適度な運動”と“適度な食事”、そして“十分な睡眠”を取っていれば私みたいに自然と筋肉も出来上がる。精々、精進することだな」

 

「ッ!!あ、ありがとうございます……」

 

 ……バレてた……

 

 お見通しだと分かり恥ずかしくなった。顔が赤くなっているのだけでも誤魔化そうと大槻さんがいる方とは反対側の窓の方へ顔を向けてゴシゴシと身体を洗うことに集中する。

 

 そうしていると……、

 

 カタ

 

 窓の方から何か音がした。

 

 ん…?物音…?

 

 何の気負いも無く気になって窓の方へと顔を向けると……

 

 

 

 

 

「う゛ぁあああああああああ!!!?!!??!!!?」*1

 

 

 

 

 

 ま、ままッッ、窓の上に、なッななッッ、生首ッ!!??

 

 も、もしかして……ゆ、幽霊ッ……!!?

 

「…嘘だ……嘘だろ……?」

 

「…愛城恋太郎?」

 

ッッ!!……お、大槻さん……」

 

 そうだった…風呂場(ここ)には俺1人だけじゃなかったんだ。恥ずかしい所を見せたことよりも、この場に俺1人じゃない事実が唯々頼もしく有り難かった。

 

「どうした急に。そんなに大声を出して」

 

まっ、窓の外に!…ひっ、人の…生首がッ…!!

 

「?……何も見当たらないが」

 

「えっ!!?……本当だ……。…そ…そうですよね……そんなの、あるはずないですよね……あ、あはははは!……」

 

 虚勢だと分かっているけれど少しでも笑うことでさっきの光景を忘れるようにと自分に言い聞かせた。さっきのは見間違いなんだと自分に再認識させる為に。

 

 ピチョン

 

「ほわッ!!!」

 

 でも、天井から落ちてきた水滴が落ちてきただけで変な声を上げた今は。この場に大槻さんがいることによる頼もしさと恥ずかしさの天秤が先程とは逆に動いたけれど。

 

「…す、すいません……急に大声出して……」

 

「謝ることはない。…それより愛城恋太郎、君はホラーが苦手か?」

 

「…はい。お恥ずかしながら……」

 

 大槻さんに聞かれれたので正直に答える。小さい頃から自分磨きの一環として取り組んだこともあったけれど、こればかりは克服できる気がしなかった。

 

 “習うより慣れろ”でとにかくホラー映画やドラマ等の映像作品を観まくったこともあったけれど、その結果夜トイレに行くことができなくなる夜が立て続けに発生するだけで、全く成長できた気がしなかった。

 

 情けなく思い縮こまっていると、これまで俺をからかうことが多かった大槻さんだったけど、今回は俺をからかうつもりは無いみたいだった。

 

「……大槻さん?」

 

「いや、私の妻とライはどちらもホラーが得意だったからな。君みたいなホラーが苦手な者と対面するのは随分久しいと思ってな」

 

「……!!もしかして、大槻さんもホラー苦手なんですか!!?」

 

 大槻さんの言い方からして、もしかしたら大槻さんもホラーが苦手なのかと思った俺は半ば興奮したまま問いかけた。

 

 が、そんなことは無かった。

 

「期待している所申し訳無いが、私は別にホラーは苦手ではないぞ?むしろ好きと言えるな」

 

「…そ、そうですか……」

 

「…まぁ、私も最初の頃は違ったが。わざわざお金や時間を使ってまでホラーを見たいとは思えない性分でね」

 

「え…?じゃあどうして…」

 

「なに、妻と娘(2人)と一緒に過ごしている間に、2人の好みが私に移っただけ……愛城恋太郎?」

 

「……え?」

 

「その顔はどうした。急に頬を緩めたり等。今の話のどこにそんな要素があった?」

 

 大槻さんがホラーが苦手(仲間)じゃないことに少しだけ落胆したけれど、大槻さんの話を聞いていると逆に大槻さんに聞かれてしまった。

 

「えっ?だって……」

 

 なんでそんなことを聞くのかと不思議に思ったけれど、俺の考えをそのまま伝えることにした。

 

「2人のことを話す大槻さんの顔が、とても優しさで溢れていましたから。2人のことを心底大切にしているんだなって思って」

 

「……一緒に暮らしていないのも何か事情があるんですよね?

今日までライさんからお2人のことを聞いたことはなかったので、正直さっきまで緊張してましたけど、ホッとしました」

 

「ライさんと出会えたのもお2人のおかげなんだなと思うと、なんだか嬉しくなって。気を悪くしたのなら、ごめんなさい」

 

 俺の素直な気持ちを全て大槻さんに伝えた。

 

 ……いや、全てじゃないな。ライちゃんから『別れてください』と言われてから録に会話できていない今言う事じゃないだろうと言わないでいたことが1つあった。

 

 本当は大槻さんに、『ありがとう』と伝えたかった。

 

 ライちゃんをこの世に産んでくれて――…そして…俺が出会う前のアメリカにいた頃のライちゃんに“幸せな時間”を与えてくれていたことに。どうしてもお礼を伝えたかった。

 

 どうしてライちゃんと一緒に暮らしていないのか、とか聞きたいことは色々あるけれど。大槻さんが良い人だって分かったからこれから少しずつ教えて貰えればいい。

 

 この感謝の気持ちもライちゃんに『お別れ』の理由を聞いて、しっかり会話を重ねた後にでも伝えれば良いだろうと思う事にした。

 

 照れ恥ずかしくていつの間にか下げていた顔を上げる。

 

 けれど、顔を上げた先にあったものは俺が想像していたのとは全然違った。

 

「……違う。……私は……私は…!」

 

「お、大槻……さん…?」

 

 生意気な事を言った俺を、会ったばかりみたいに皮肉交じりにからかわれるかもと思っていたら、それとは全然違う反応だった。

 

 両手で顔を覆った大槻さんは、震えながら否定の言葉を重ねるだけだった。

 

 唯ならぬ様子に慌てて俺は大槻さんに駆け寄る。一体どうしたんだろうと、もしもの時は助けを呼ぶべきかと考えていると、

 

 

 

 

 

ドンドン!!

 

バンバンバンッ!!

 

バタバタ!!

 

 

 

 

 

 お風呂場には俺と大槻さんしかいないはずなのに、まるで()()()()()()がいるみたいにお風呂場全体にラップ音が響き渡る。

 

 幽霊が唯でさえ苦手な俺は、不意打ち気味に襲いかかってきたそれらに平静でいられる訳もなく。

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!わ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!許してください許してくださいいいいいいいいい!!!!お願いですからぁぁぁぁ!!!!」

 

 この場所の中で唯一安心できる彼の下に走りだそうとして思いっきり、

 

「あ゛ッ!!」

 

 ッルーン……ポフッ!

 

「あッ…愛城恋太郎!!?」

 

 滑って大槻さんの胸元に思いっきり頭をぶつけた。

 

 驚きの出来事が一気に起こりすぎて俺はパニックに陥った。だからか、この時俺の頭の中にあったのは。

 

 突然震えだした大槻さんの心配でも、

 

 お風呂場に突如轟き始めたラップ音についてでも、

 

 俺の不注意で大槻さんにぶつかってしまった申し訳なさでもなく。

 

 (……あッ…思っていたよりも硬くない……?たしか質の良い筋肉って柔らかいって聞くからそれか…?)

 

 ……大槻さんとぶつかった時に受けた衝撃が想像よりも()()()()()()ことだった。

 

 大槻さんも突然俺がぶつかってきて驚いただろうに、俺の恐怖で震える様子と聞こえてくるラップ音で事情が分かったらしく。両手で俺の両耳を抑えてラップ音を聞こえなくしてくれるだけでなく、俺の頭を胸元へと抱えて少しでも安心するようにしてくれた。

 

 …あっ、ラップ音の代わりに大槻さんの心音が聞こえる……。

 

 ドクッドクッと、俺みたいに恐怖で慌てていないからか一定の間隔で鳴り響くそれのおかげで俺はようやく落ち着くことができた。

 

 …聞いた事がある。たしか、生まれる前にお母さんのお腹の中にいるときにお母さんの心臓の音を聞いた経験から、他人の心臓の鼓動を聞くことで無性に安心感を覚えるって。

 

 ……大槻さんには後でお礼を伝えなきゃと強く思った。もし、この場に俺1人しかいなかったらと思うと、絶対平静でいられる自信が無かったから。

 

 そうして大槻さんの胸の中で小さくなっていると、少しだけ()()()を覚えた。

 

 …………?

 

 抱きついた初めの頃よりも、()()()()()()()()()()気がする。

 

 たしか、基本的に筋肉は力が入ると硬く、逆に力を抜くと柔らかくなるらしい。だとしたら、俺がぶつかったことで緊張していた大槻さんの筋肉が時間が経過したことで力が抜けたからなのか。理屈は通っている。

 

 でも、これはなんとなくそうじゃない気がする。どちらかと言えばそう、池に飛び降りた際に大槻さんに抱きかかえられた時よりもその後、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。体勢的にも今みたいな感じだった。

 

 ……いやいやいや、有り得ない。大槻さんは男だ。それはさっき大槻さんの上半身をちらちら見ていた俺が1番分かっていることだろう?

 

 でも、この安心感は……。

 

 そんな風に思いながら頭の中の記憶枢(きおくすう)をフル回転していると、ちょうど今のような柔らかさを感じた時のことを思い出すことができた。

 

 そうだ、あれは………

 

 

 

 

 

ウィーン

 

ゴロロロロッ

 

ボチャーンッ

 

 

 

「ミ゛ャア゛ァ゛――ッッ!!!!!!!?」

 

「……ッ!!」

 

 俺がその時のことを思い出すのと同時に、風呂場と脱衣所の間を隔てる自動ドアが開いたと同時に()()が勢いよく入ってきた。

 

 大槻さんに耳を抑えてもらっているとはいえ、またしても不意打ちで驚かされたことで加減の『か』の字も無いぐらいの大声を上げてしまった。大槻さん、ごめんなさい…。

 

「ぅええ…ッ!!?な…なん…」

 

 俺はこの時になってようやく大槻さんから離れて音がした方に振り向いた後、ずっと閉じたままだった眼を開いた。

 

 心臓がバックンッバックンッと強く脈を打っているのが分かるけれど、その()()は浴槽に入ったようで水面にコポポポ…と息らしき水泡が立っていることからして明らかだったのもあって俺は自らの手で落ち着くように自分自身を律した。

 

 それは、男子高校生であるにも関わらず、ライちゃんの父親に守られたことによる不甲斐なさも関係していた。けれど、そんなプライドも数秒後に浮き出てくる()()を視界に写すと無残に消え去ってしまった。

 

 なぜなら、

 

 そいつの腰近くまである長い髪を身体に張り付かせたまま少しずつ水面から浮かび上がってくる()()はまさしく、ホラーの常套句とも言える、貞子(さだこ)のそれに瓜二つだったからだ。

 

「オ゛ア゛ア゛――――ッッ!!!!!!!?!!!!」

 

ズバーン

 

「ォ゛ボヂュ」

 

「愛城恋太郎!!?」

 

 またしても盛大に滑ってしまった。今度は前ではなく後ろに。盛大に頭を打ってしまってすごく頭が痛い。後ろには大槻さんがいたはずだから、もしかして大槻さんにまたしてもぶつけてしまったのではと血の気が引いたけど、俺がぶつけたのは間違いなく床のタイルであることが分かって小さくホッとした。

 

 ホッとしながら頭を回転させる。すると、先程目撃した『貞子』らしき姿が何かを考える。けれど、それはそれをもう一度視界に入れただけで解決した。

 

「――ッ…って――(しずか)ちゃんッ!!?

 

「ふっ…ふ、ふぇぇ…」

 

 ついさっき、パジャマパーティーでのウサギの着ぐるみパジャマを着用したまま濡れに濡れた静ちゃんの姿が、そこにあった。

 

「だ…大丈夫…!?なんでこんな所に……で、でもよかった…てっきり――」

 

 貞子かと……

 

 未だ浴槽のお湯に身体の半分を浸したままの静ちゃんに駆け寄りながらそう言おうとしたけれど、

 

それは静ちゃんの視線が俺の顔よりも下に下がったのと同時に、

 

 先程までずっと着用していて感じていた腰に巻いていたタオルの感触がハラリ…となくなったことにより強制終了させられた。

 

 

 

「「「…………」」」

 

 

 

 俺と静ちゃんと大槻さん、3人の動きが一様に止まる。けれど、それも長く続くことはなかった。

 

 ププーッ

 

 バチャーンッ

 

(しずか)ちゃん!!!!」

 

 俺の股間へと視線を落としていた静ちゃんが鼻血を勢いよく噴き上げながらお風呂のお湯へと倒れ込む。そんな静ちゃんを目撃することで、俺もようやく動き出すことが出来た。

 

 急いで腰にタオルを結び直して急いで静ちゃんを腕に横抱きにする。そしてそのままの勢いで風呂場から脱衣場へと急いだ。

 

「すぐに氷枕を――」

 

 静ちゃんに裸を目撃された羞恥は静ちゃんの心配に上書きされた。そして、風呂場を脱して脱衣所に辿り着いた俺が見たのは…

 

「――ん?」

 

「な…ッ!!金持ちの(いえ)の猫!またアンタだったのね!!」

 

恋太郎(れんたろう)君ッ…!?」

 

 俺が入るよりも先にお風呂を済ませていたはずの、静ちゃん以外の彼女5人の姿だった。

 

「皆…これは一体…?」

 

「い、いえその、皆でかくれんぼをしてましてっ!」

 

「そうそう、それで天井裏に隠れてたのよ~!」

 

「暗闇に身を隠すのが効率的」

 

楠莉(くすり)、かくれんぼ大好きなのだ!」

 

 俺の疑問に皆がそれぞれ答えていく。

 

 ……なぜこんな所でかくれんぼをしたのかは甚だ疑問だけれど、それ以外は今のところおかしい所は無かった。

 

「そっそうよ!ただ隠れてただけで…別にあんたの風呂を覗こうとしてたわけじゃないんだからねっ!!」

 

 …………

 

 ハァーーーーッ

 

 盛大に暴露した唐音の後ろで他4人が苦悶の表情で頭を抱えているのが見えた。俺も大きくため息を吐いて、とりあえずまず皆に言わなければいけないことを伝えた。

 

「百歩譲って彼氏である()()覗きはいいとして、中には大槻さんもいるんですよ?皆、訴えられても知りませんからね!!?」

 

「ッ!!本当ですかッ、恋太郎君!!?」

 

「こんな時に嘘を吐く訳無いだろ羽香里…とにかく、皆一回外に出て。大槻さんも俺も着替えないとだし、それよりもまず、静ちゃんを安静にさせないと……」

 

 

 

 

 

「……いやぁ、前もってバスタオル用意していて正解だったわ。流石私ね……!」

 

 

 

 俺が羽香里の問いに返しながらそう皆に伝えようとするよりも先にお風呂場へと通じる扉が開かれようとした。

 

 俺は焦った。中にいる大槻さんはここに羽香里たちがいることに気付いている訳がない。流石の大槻さんも異性の人達に裸を見られて良い気持ちにはならないだろう。

 

 それに、ついさっき俺が言ったけれど羽香里たちが『覗き魔』として訴えられてしまうかもしれない恐怖に俺はまたしても震えた。流石の俺も彼女達が裁判所に罪人として招かれるのは本意ではない。どうやれば矛が収まるのか頭をフル回転させた。

 

 扉が開かれるよりも先に声が漏れ出てきたけれど、その声音は聞き慣れないものだった。中にいるのはのライちゃんのお父さんのはずなのに、聞こえてきた声はどう考えても……

 

 

 

 ウィーン

 

「…あら?皆お揃いで。どうかしたのかしら?」

 

 自動ドアが開き、お風呂特有の湯気が見え隠れしながらではあったけれど、時間が経てばそれも消えていき中から出て来た人の姿がばっちりと見えた。

 

 

 

 まず断言できるのは、その“人”は間違いなく“男”ではなく“女”だった。

 

 大きいバスタオルで身体全体を覆い、腰まである長い黒髪を別のタオルで乾燥させながら悠々と脱衣所へと歩を進めるその姿は自信に満ちていて、俺含む皆が“彼女”を見て驚いているのが間違いであると言わんばかりだった。

 

「お…大槻……さん……?」

 

 事態が飲み込めないまま俺は“彼女”に声を掛けた。“彼女”が『大槻さん』であるはずがないのに思わずそう声を掛けたのは、俺自身目の前の現実を未だに受け入れられていないからだろう。

 

「あら、愛城(あいじょう)くん。よく私の名前が分かったわね。私まだあなたに自己紹介していないのに。もしかして、どこかで会っていたかしら?」

 

「でも、ごめんなさいね。愛城くんは分かっていても他の皆は知らないみたいだし。改めて自己紹介させてもらうわね」

 

 でも、てっきり何の反応も返さないと思っていたのに。“彼女”は何てことなく呼びかけに応えると同時に俺たち全員(静ちゃんは除く)に顔を向けてこう言った。

 

「……私の名前は『大槻リン』。数年前までアメリカで女優業をしていた()()()()()よ。『リン・オオツキ』という名前は聞いたことがないかしら?知らなくても別に良いけど、とりあえず()()()()()だってことだけでも分かってもらえれば充分よ」

 

*1
「ま、まずい!バレたかもなのだ!!」「「回収――ッッ!!!」」




※サブタイトルの4つのホラーはそれぞれ、

○窓の外の生首(楠莉)

○お風呂場に響くタップ音(金持ちの猫による羽香里達への悪戯)

○浴槽の貞子(金持ちの犬に急かされてゴロゴロ回って来た静ちゃん)

○大槻さん

でした。

※次の話からようやくオリ主の長編が始まります。ペースを落とさず投稿していきたい所存なので、読者の皆さんもついて来て頂けると嬉しいです。

羽々里さんの台詞を1字表記する際何て書く

  • 羽々里さんの『々』
  • 羽々里さんは皆の『ママ』より『マ』
  • 羽々里さんは羽香里の『お母様』より『母』
  • ヤツ(♀)より『ヤ』
  • 羽香里を『香』で羽々里さんを『羽』表記
  • その他
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