0人目の嘘吐き彼女   作:モーン21

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前話の通り、恋太郎視点のお話です。

恋太郎の中学時代のお話なのでねつ造が過分に含まれます。予めご了承ください。


1話-4 愛されたい

【恋太郎side】

 

 初めて彼女を見かけた時は可愛いよりも先にキレイな人だなと思った。

 

 俺が入学した中学校にこれといった特色はなかった。ただの公立の学校近くに住んでいる人がそのまま進学するだけの学校。小学校の卒業式も気になっていた女の子に告白して玉砕された訳だけど、普通にその子もこの中学校に進学している。特に気まずいなんて思わなかったけれど。

 

 だからか、まったく知らない女の子が突然しかもアメリカからの帰国子女だというのだから同学年だけじゃなくて学校全体が彼女に注目していた。

 

 帰国子女といっても髪が派手だったり鼻が高かったりといった容姿で目立つ要素はどこにもない。だけどなんていうか大げさかもしれないけれど、彼女の立ち居振る舞いからして俺たちとはどこか別世界の住人じゃないかと思わせる雰囲気が彼女にはあった。日本語に未だ慣れていないのか、片言の日本語でコミュニケーションに少し難はあったらしいけれど、それすら1つの魅力として周りには映っていた。

 

 でも、俺はその日まで知らなかった。自分達と違いすぎる異端は尊敬したり畏怖したりと遠巻きに見るけれど、自分達と少ししか変わらない異端に対しては多数派の圧で鎮圧することがあるということを。

 

 入学から数ヶ月後、彼女について色々なウワサが聞こえてきた。いわく彼女が未だ片言で過ごしているのは注目されたいからじゃないか。容姿が外国人らしくないのは帰国子女ということ自体が嘘だからじゃないか。そもそも彼女の名前(Lie)が英語で嘘という意味だから嘘吐きなんじゃないか。

 

 ほとんど言いがかりに近いものだったけれど、ウワサを流した人たちにとってそんなことはどうでも良かったんだろう。ただ彼女を貶めることが出来れば、退屈な日々の話題のネタになれば、彼女を貶めて自らの価値を少しでも上げる為。目的は人によって違ったみたいだけれど1つの目的の為に人は協力することができるらしい。

 

 気付いた頃にはその火を鎮火することはほぼ不可能だった。なんなら、『火の無い所に煙は立たぬ』とウワサがウワサを生む悪循環が生まれる始末。いつの間にかあれだけ人の注目を浴びていた彼女は誰からも相手されなくなっていた。

 

 その時の彼女の様子はヒドいモノだった。

 

 容姿こそ普段から気をつけているからか変わりはしないが、よく見てみると目元にクマらしきものが見えるし入学当初にあった彼女の高貴な印象はすっかり無くなっていた。

 

 彼女の長所であったはずの別世界の人間らしくない所はすっかり消え、ただの人に成り下がってしまった…そんな印象だった。

 

 その頃の俺は、小さい頃から自身に培われていた他者へ愛を与え、与えられたい欲求が年を重ねるにつれてどんどん大きくなっていた。生後8ヶ月の頃からだったらしい俺のその欲求はけれど1度も成功の芽を見ることはなかった。

 それからも幾度となく失恋を重ねて、自分磨きに励んだり、恋愛指南本を読み漁ったり、頑張って頑張って頑張ってきたけれどそれでも恋は叶わなかった。

 

 だから、3年生のクラス替えで彼女、大槻ライさんの隣の席になって話しかけた時は特に強い思い入れはなかった。ただ仲良く成りたかった。愛した分愛されたい。ただそれだけの欲しかあの時の俺にはなかった。

 

 だから、話しかけた。だけど、人を愛する為にはその人のことをよく知る必要があった。だから、ウワサだけでは分からない彼女のことをよく知りたいと思い質問を重ねた。

途中彼女が何故自虐を始めたのかは分からなかったけれど、俺が思うことを素直に伝えていくと彼女が突如泣き出してしまった時は思わず気が動転してしまった。

 

 泣き顔なんて他の人に見られたくないだろうと、慌てて彼女の手を引いて屋上へと向かった。彼女に泣かせてしまったことを謝ってしばらくすると、2人きりになったことに少しだけ緊張してしまった。すると、まさかの彼女の方から俺をからかってきた。その言葉に返しながら教室の中では見られなかった彼女の1面が見られて嬉しく思っていると彼女がフフッと笑った。

 

 その時、なにかが俺たちの間に流れていったのを感じた。今でも信じられない。まさか俺があんな気障ったらしいセリフと挙動を会って間もない女の子にするだなんて。

 

「……うん。やっぱり、大槻さんは顰めっ面でいるより笑っている方が可愛いよ」

 

 そう言うだけに留まらず、彼女の片頬を了承を得る前に撫でてしまった。

 

 

 

「……!!ヘ…ヘンタイ!!!」

 

「ぶべばらぁッ!!!」

 

 ……正直彼女が俺を叩いてくれてよかった。もしそうしてくれていなかったらもっとおかしなことをしてしまっていたかもしれなかったから。

 

 

 

 

 

 教室に戻ると彼女よりも俺の方に視線が集中したのは、きっと良くも悪くも彼女のウワサが影響していたんだろう。けれど、朝のHRが終わると、待ってました!と言わんばかりにクラスのヤツ等が俺の席の周りを、女の子達が彼女の席の周りにも集まっていった。

 聞かれるのは当然2人で教室を出て行った後のこと。俺の頬に紅葉が浮かんだ訳が特に多かったけれど、まさかセクハラをしたからと答える訳にもいかずなんとか誤魔化すことでお茶を濁した。

 

 話の途中でふと大槻さんの方を見てみると顔を赤くして机に突っ伏す大槻さんの姿があった。周りの女の子たちも流石にからかいすぎたかと介抱に回っているけれど俺はそんな彼女から目が離せなくなった。

 

 別に、この時大槻さんに惚れたとかそういう訳ではなかった…はず。ただ、あの大槻さんも人並みに恥ずかしがることがあるんだなと感心したぐらいだった。だけど、周りのヤツ等はそう思わなかったみたいで、そんな俺に対し、からかう声が増えていった。

 

 その後、やっと大槻さんと話せるタイミングで『殴られた理由なんで言わなかったの?』

と聞かれた。なんで聞いてきたのか分からなかったから『さすがにセクハラしたからなんて言えないよ…情けないけどさ』とありのまま答えたら、なんだか安堵したような残念なヤツを見るような複雑な顔をしていた。

 

 …まぁ、これに関しては俺が全面的に悪いと思ったから彼女にジュース1本奢ることで手打ちにさせてもらうことにした。

 

 

 

 

 

 それからはなんだかんだ大槻さんとは話をするようになった。なんでかクラスでペアやグループを作る時に周りが大槻さんと一緒になるように誘導しているのは分かっていたけど、あの時見た彼女の笑みが忘れられなくて皆のされるがままになっていた。

 

 大槻さんと交流を深める傍ら俺は一目惚れした相手に告白しては失敗する日々を送っていた。最初の頃は失恋して落ち込んでいる俺を見てジュースを奢ってくれていた大槻さんも、慣れてきたのか『今日も失恋して来たの?』と俺の友人みたいにからかってくる始末。でもまぁ、初めて会った時と比べて大分余裕があるのは見るからに明らかだったから、そんな大槻さんに俺も軽口で返すようになった。

 

 そんな大槻さんとの友人関係が変わってきたのは3学期の頃だった。受験が間近だということで同じ志望校で成績優秀な大槻さんに誘われて放課後教室で勉強を教えてもらっている時だった。

 

『大槻さん!ちょっといいですか!!?』

 

『……だれ?』

 

『隣のクラスの大弐(だいに)牡丹(ぼたん)です!!ちょっと、裏庭まで来て欲しいんだけど…』

 

『今愛城くんに勉強教えてて手が離せない。要件ならここで済ませて』

 

『…いや、その…』

 

『何?』

 

『いえ…なんでもないです……』

 

 緊張しながら誘う男の子に対し、無下無くバッサリと断わる大槻さん。最近こういうシーンをよく見かけるようになった。

 

 1時期はそうではなかったけれど、元々大槻さんは男の子からモテていた。あのウワサが広まる前はサッカー部の若きエースに告白されたけど断わったことは当時校内で話題になっていた。

ウワサのこともあって今の大槻さんは積極的に誰かに話しかけるといった積極性はない。けれど、話題を振られたらちゃんと答えるし時々冗談を言ったりすることもある。まだ完全にウワサは払拭しきれていない。だけど、少なくともウチのクラスで大槻さんを悪く言う人は誰もいないと言い切れるほど、彼女はよく笑うようになった。なんなら彼女自身が『ウソ』を用いて会話を盛り上げようとする所もよく見かけるようになったからか、男の子からの評価が上がってきたらしい。

 

 それと、卒業が近づいてきて進路が別れる焦りもあるのかもしれない。12月の途中から大槻さんが他クラスの男子から呼び出しを受けることが増えていった。最初の頃は律儀に誘いに乗っていた大槻さんだったけれど、今では誘いの段階から断わるぐらいに成長していた。

 

何回も告白してきた側である俺としては中々心に来る所があるけれど、どこかホッとしている自分もいた。

 

 おかしいな、大槻さんとは友達でそれ以上はないはずなのに。なんで俺が大槻さんの告白に一喜一憂しているんだろうか…?

 

「愛城くん…これ…」

 

「ッ!ゴメンっ大槻さ…ん…?」

 

 大槻さんに声をかけられてハッとする。考え事に熱中していてペンが止まっていることを注意されたのかと思い謝りながら顔を上げると、そこには少しだけ顔を赤くした大槻さんが可愛らしい包みを手に抱えていた。

 

「休憩しよ?これチョコレート。『疲れた時には甘い物が良い』って愛城くんの友人に聞いた」

 

「大槻さんが…俺に…?…っ、ありがとう!!」

 

 この勉強会を提案したのは大槻さんだけど、悲しいかな頭の良さの問題か質問するのは俺の方が多かった。だから、お礼として俺から大槻さんにジュースを1本奢るというのがこの勉強会の定番になっていた。だから、大槻さんの方から俺に何かをくれるなんてことは知り合って初期の失恋した俺の慰め以来全く無かったのもあって感謝を伝える声がちょっと大きくなってしまった。

 

 包みを開くと、不格好ながら四角の形で区切られた生チョコが入っているのが見えた。

 

「すごい……これ……大槻さんが……俺に……?」

 

「……早く食べて、感想聞かせて」

 

「うっ、うん!!」

 

 大槻さんに催促されるまま1つを手に取って口に入れる。途端に口の中に広がる甘い味付け。市販のチョコレートにはまず無いザラついた違和感を感じたけれど、そんなものよりも女子の手作りチョコを初めて手渡された多幸感が俺の身体中にほとばしっていた。

 

「美味しい……。チョコの甘さで勉強で疲れた頭が回復していくのを感じる…。それに、女の子から手作りチョコをもらうなんて初めてだったから、すっごく嬉しい……」

 

「……そう」

 

 よかった。

 

 脳死で思いついたことをそのまま出力した感想を伝えると、目の前の大槻さんは顔を赤くしたまま俺の感想を聞いて安心したのか、軽く微笑んでいた。

 

 その顔を見て、ようやく俺は理解できた。

 

 なんで、クラスの皆がことあるごとに俺と大槻さんを組ませようとしたのか。

 

 なんで、告白に失敗して心底落ち込んでいるはずなのに教室に入る頃にはそれが多少持ち直しているのか。

 

 なんで、最近大槻さんが告白される場面を目撃すると心が落ち着かなくなるのか。

 

 なんで、大槻さんの笑顔を見るとこんなにも心が満たされるのか。

 

 

 

 それは、俺が、愛城恋太郎が、大槻ライさんに恋しているからだ。

 




大弐(だいに)牡丹(ぼたん)はアニメ1話の序盤に出て来た第2ボタンを大量に用意していた男の子です(勝手に命名)。最初見た時意味が分からなかったけれど、2回3回と見直したときにようやく分かって笑った思い出。

※1巻巻末おまけを参考にしました。この過去があるから今の恋太郎(モンスター)がいるのは分かっているけれど、連続失恋記録が100も続いたことを覚えている程苦しかったことは誰にも茶化せるものではないと思います。
 オリ主が中学時代からの知り合いという設定にしたのは原作では誰も知らないこの時代の恋太郎を知る女の子が1人くらいはいても良いんじゃないかと思ったからです。
 なお、そのオリ主は恋太郎の告白を断わる訳なんですけれども。

羽々里さんの台詞を1字表記する際何て書く

  • 羽々里さんの『々』
  • 羽々里さんは皆の『ママ』より『マ』
  • 羽々里さんは羽香里の『お母様』より『母』
  • ヤツ(♀)より『ヤ』
  • 羽香里を『香』で羽々里さんを『羽』表記
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