年始の内にもう1話上げられたらと思っています。
私の初恋は、シロだった。
アルちゃんに招待されて行った遊園地で、マムと共に誘拐されかけた所を彼は自身の身一つのみで助けてくれたらしい。
気絶していたからその時のことはよく覚えていないけれど、私達を守る為に見えたシロの背中を見てとても安心しました。
そんなシロのことを、いつの間にか大好きになっていました。
そのことをダッドとマムに伝えた時のことはよく覚えています。
ダッドは表情を青白くしているのに対して、マムはそんなダッドの反応を見て面白そうにしていましたから。
『…ライ、考え直してくれ…。せめて
『何言ってるのよクロ。この子がシロのことを好きになるのはある意味当然じゃない?』
『…リン。楽しんでいる場合じゃないだろう。それを言われる私の立場にでもなってくれ…』
…………
けれど、私の初恋はあっけなく砕け散りました。
だって、私がシロに出会うずっと昔に。
『……そうですか。ライも、シロのことを愛しているんですね』
シロはアルトリアさんと、既に
▽▽▽▽▽
【恋太郎side】
「どうしてそう思ったのか、聞かせてもらえるかしら?」
…………
笑顔とは本来、動物の『威嚇』が起源という説があると聞いたことがある。
歯を見せる行為は『敵意はない、降伏する』というメッセージと同時に、『これ以上近付くと攻撃するぞ』という警告の二つの意味を持つということも。
目の前にいるライさんは笑顔を絶やさないでいる。
その笑顔を前にして俺は思わず身を翻したくなったが、なんとか耐えることが出来た。
『どうしてそんなに、俺たちに嫌われようとしているんだ?』
『……いきなり何を言い出すかと思えば……。『私が皆に嫌われたい』だなんて、面白いことを言うね?恋太郎くん』
『えっと、あの……』
それはこのライさんの笑顔を俺が見たのが、これで2回目なことも大いに関係しているだろうと思う。
でも、それだけじゃなくて。
前回とは違い、目の前にいるライさんから
……ふぅ。
一拍息を入れた後、俺はライさんに説明を始めた。
「…キッカケは、ライさんがライちゃんのことを指してニセモノと言っていたことだ。俺はそれを聞いて、ライさんが嘘を吐いているのに気づけたんだ」
それに……
『そもそも、1つの身体に2つの人格が存在すること自体身体に何らかの障害が出てもおかしくない。だから
『…当たり前でしょう。
「あの時、ライさんはまたしても嘘を吐いた。あれが嘘だとしたら、
「…………」
ライさんは何も言わない。今のところ反論は無いのか、一度最後まで俺の話を聞いてからまとめてするつもりなのかは分からないけれど。依然としてライさんはあの時の笑顔を崩さないままだった。
それならば、俺は止まることなく意見を続けることにした。
「『ライさんが消えるつもり』だと仮定すると、それまでずっと謎だった『ライさんがずっと俺たちに嫌われようとしていた』答えも見えてくるんだ」
ライさん、君は……
「1人残ったライちゃんの為にわざと青鬼を演じたんじゃないか?」
『泣いた赤鬼』というお話がある。
とある山の中に、一人の心優しい赤鬼が住んでいた。赤鬼はずっと人間と仲良くなりたいと思って行動していたが、人間たちは疑い、誰一人として赤鬼の家に遊びに来ることはなかった。
一人悲しみに暮れていた頃、友達の青鬼が赤鬼の元を訪れる。
赤鬼の話を聞いた青鬼は『ぼくが人間の村へ出かけて大暴れをする。そこへ君が出てきて、こらしめる。そうすれば人間たちにも君がやさしい鬼だということがわかるだろう』という策を思いつく。
そして、作戦は実行された。青鬼がわざと村の人達を襲い、赤鬼が懸命に防ぎ助ける。作戦は成功し、おかげで赤鬼は人間と仲良くなり、村人達は赤鬼の家に遊びに来るようになった。人間の友達が出来た赤鬼は毎日毎日遊び続け、充実した毎日を送ることが出来ましたとさ。
めでたし、めでたし。
……しかし、話はそこで終わらなかった。
充実した毎日を送る赤鬼には一つ気になることがあった。それは、親友である青鬼があれから一度も遊びに来ないことであった。赤鬼は近況報告もかねて青鬼の家を訪ねることにした。
しかし、青鬼の家の戸は固くしまっており、戸の脇に『赤鬼くん、人間たちと仲良くして、楽しく暮らしてください。もし、ぼくが、このまま君と付き合っていると、君も悪い鬼だと思われるかもしれません。それで、ぼくは、旅に出ることにしました。長い長い旅に出るけれども、いつまでも君を忘れません。さようなら、体を大事にしてください。ぼくはどこまでも君の友達です。青鬼』という青鬼からの置き手紙が張ってあった。
赤鬼は黙ってそれを2度も3度も読み上げ、涙を流すのだった。
「…俺はライちゃんの日記を読んだことがないから分からないけれど。その日記に書かれていたんじゃないかな?」
『自分よりも他の彼女を優先されることへの疎外感』も、
『誘拐犯の魔の手が俺たちに迫るかもしれない』ことも。
「…ライちゃんの口から話し辛いことを代わりにライさんは口にした。これでライちゃんの悩みを俺たちに共有させることが出来た。
でも、ライさんの狙いはそれだけじゃなかった」
そうだ。これだけじゃない。
ライさんがどうして“ライちゃん”の演技をしている間もずっと俺たちに対して悪辣に振る舞っていた理由がまだ残っている。
……きっと、その理由は……
「……ライさんが消えたことで、俺たちに罪悪感を覚えさせないようにするため……」
『泣いた赤鬼』でもそうだ。
もし、赤鬼が『やさしい鬼』だということが村人に認知されたら。
もし、青鬼の作戦が村人にバレてしまったら。
だって、
村の人々を襲った悪辣非道な
それを恐れた
…………
ライさんとライちゃんの関係は、青鬼と赤鬼の関係とは少し異なるだろうけれど。
ライさんの言うとおり、ライさんとライちゃんのどちらかが消えなければいけないとしたら……
ライさんが消えたことに、残されたライちゃんや俺たちが寂寥感や罪悪感を抱かないようにするために。
ライさんは自分自身を、
これが、俺の答えだ。
「これが俺の推理だ…どうだろう、何か間違っているところはあるかな?」
俺は目の前のライさんの目をじっと見る。
ライさんは俺の話を聞いている間ずっと笑顔を崩さないでいたけれど。
フッ…と、ライさんの周りに張られていた空気が弛緩されたのが分かった。
「…貴方ってよく分からない人ね。初めて会った時の貴方はそこまで頭が回る人だとは夢にも思わなかったわ」
……っ!!
「でも、1つだけ間違っている所があるわね」
「…聞いてもいいかな?」
「私が貴方たちに嫌われようとした理由よ。最後こそその認識で間違いないけれど最初の頃は違うわ。
あの子の日記の最後に、こう書かれていたからよ」
だから、
よろしく、お願いします
「…っ!?それって…!」
「理由については、貴方が言ったことが日記にも書かれていたわ。『自分よりも他の彼女を優先されることへの疎外感』は書かれていなかったけれど、“別れたい”理由付けの為に私が勝手に付け加えさせてもらったの」
「そうだったんだ…」
「最初はあの子に言われたからそうしただけだった。別にあの子を押しのけてまで生きたい理由は無いけれど、あの子の代わりに私が消えようとも思わなかった。
その理由が変わったのは……そうね……」
『……
『当然だ。あんな理由だけじゃ受け入れられる訳がない。俺は
「あの時の大槻さんはライさんです!!私たちへの思いが無いと、こんな行動が出来るわけがありません!!」
『あの時のライさんが、ウソじゃなかったってことだけは分かる…!』
「この疑問には私ではなくあなたが突き止めるべき。でないと、納得できないまま終わってしまう事になる」
「楠莉はずっと前からライと一緒にいるのだ!!そんな楠莉だから断言するのだ!!目の前にいるライはニセモノなんかじゃない、ホンモノのライなのだ!!」
「貴方たち全員が良い子で…あの子の良い
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私の初恋は最初から実らないものだった。
シロには既にアルトリアさんというパートナーがいたことも大きいですが、小さい頃の私は恋に恋していたから…というのも大きかったと思います。
初恋が実らないとされる理由は多岐にわたると聞いたことがある。
恋愛経験がほとんどないから、恋愛感情がどのようなものかよくわかっていないから、相手のことを容姿や上辺だけでしか判断していないから、告白できないまま終わってしまうから、満足してしまうから、話しかけられるのを待つだけという受け身の姿勢から、憧れの対象なので近づけないから。
それにこの頃の私は知りませんでしたが、シロは私の実の父親だったから。
私の初恋は『パパとけっこんする~!』という可愛い子供らしいものでしかありませんでした。だからこそ、
…まぁ、
その2人と比べると、アルトリアさんは子どもにしかすぎない私に対しても誠実に対応してくれたんだと思います。
『…ライがシロを好ましく思うのは分かります。けれど、あえて言わせて貰います。いくら貴女相手でもシロの妻の座を渡すことはできません』
『ライからしてみれば、私は憎き恋敵と見えることでしょう。ですが、これだけは譲れません。私はシロのことを愛していますから。他の女に譲ることなど、出来るはずがありません
大人げないと蔑んでいただいて構いません』
『……ですが、ライ。私は貴女と
子どもである私に向けるには、少しまっすぐすぎる言葉ではあったけれども。
私の初恋をけっして子どもの物だからと下に見ることなく、
ましてや、と同等の立場として関係を結ぶことを許してくれたアルトリアさんのおかげで、私の初恋は変に拗らせることなく綺麗に昇華することができました。
その日から私はアルトリアさんと
学校で友達を作ることが出来なかった私にとって、アルトリアさんは私の
…………
だからこそ、私は私を許せない。
多忙に多忙を重ねるアルトリアさんと数年越しに会うことができることが決まった11歳の冬の頃、嬉しくてたまらなかった私はこのことを誰かと共有したかった。
けれど、友達らしい友達がいない私はそれを
『……なるほど。セイバーは近いうちにライの元を訪ねるということか』
『うん!私の方からイギリスに行くことは多かったけれど、アルトリアさんが
ちょっと薬の工場での仕事が溜まっているからしばらくの間缶詰になるとも言っていたけれど、それさえ片付ければすぐにでも来られるって』
『…そうか。であれば、その前に終わらせるか…』
『…?
それから数日後、アルトリアさんが亡くなったとクロから聞いて私は部屋に閉じこもりました。
その頃は誰がアルトリアさんを殺したのかまでは分かりませんでしたが、両親の交換日記を見て加害者がボスであることを知った今の私は……。
私があの時、アルトリアさんの所在をボスに教えたからではないか……
そう考えることを止められなかった。
羽々里さんの台詞を1字表記する際何て書く
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羽々里さんの『々』
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羽々里さんは皆の『ママ』より『マ』
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羽々里さんは羽香里の『お母様』より『母』
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ヤツ(♀)より『ヤ』
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羽香里を『香』で羽々里さんを『羽』表記
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その他