0人目の嘘吐き彼女   作:モーン21

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「街中@鈍感力」さん☆9評価ありがとうございます!!

少し更新遅れました。けれど、ここまで書き切りたかった。

これで“ライさん”編は終了です。最期までお付き合い頂けると幸いです。

このお話は1万文字を超えています。読み辛かったらすいません。

1/25 21:55追記 誤字修正


嘘吐き-15 ありがとう、さようなら

【恋太郎side】

 

「……それじゃあ()()は、私が“変身薬”を飲んだ時に読み込んだシロの記憶…という訳ね」

 

「その通りだよ、()()()()()

 

「……だったら、さっきのあれは何?【固有結界】だとか【掃除の神】は」

 

「あぁ、あれは()()()薬膳士呂(シロ)改めシロ・セイバーのことだ。薬の力で死んでは生き返って、死んでは生き返ってを繰り返しいたら神様にスカウトされたみたいでな。

 記憶にすぎない()は持っていないけれど、()()()のことをらいちゃんには知っておいてもらいたかったから」

 

「……()()()のことは、正直耳にも入れたくないのだけれど」

 

「らいちゃん……」

 

「……()()がそこまで言うなら……考え直してあげなくも、ない……」

 

「らいちゃんっ…!」 ギュッ!

 

「くっ苦しいっ…!」

 

「あぁっ!?ごめんな、らいちゃん!!」

 

 

 

 

 

 …………

 

 …………??

 

 俺は目の前の光景に思わず目を疑った。

 

 花園邸の屋上でライさんに手を差し出して、繋がった途端だった。

 

 視界がぐらりと歪んだ後、周りの景色は屋上から一変していた。

 

 そこは、果てなき荒野だった。

 

 そして、その至る所に無数の剣が突き刺さっていた。

 

 人っ子一人見当たらない荒れ果てた土地の中央に、彼はいた。

 

 その顔に、見覚えがあった。

 

 その理由はライちゃん…いや、ライさんが変身して見せてくれた彼女の家族の中に彼がいたからだ。

 

 自身を掃除の神と、薬膳士呂改めシロ・セイバーと名乗る彼の前に思わず身構えたけれど、

 

 

 

 

 

「…………戻して」

 

 

 

 

 

 ライさんの一声により、またもや視界がぐらりと歪んだ。

 

 

 

 目を開けると、そこは誰かの部屋のようだった。

 

 部屋全体が落ち着いた赤色で統一されており、ベッドの上や棚にぬいぐるみが数多く陳列されている。ドラマで時折見る、“女の子のお部屋”感満載のお部屋だった。

 

 突然のことに困惑が追いつかない俺を置いて、ライさんは彼に近付いた。

 

 ライさんと彼との距離が縮まっていく。俺はこの後どうなるのかとハラハラしていた。

 

 

 

『あんなバカのことなんかどーでもいいよ!!』

 

『あのバカはアルちゃんを見殺しにしただけじゃなくて、ベルノさんを自分の手で殺したんだ!!!どうせ死ぬのなら私の手で殺したかったぐらいだよ!!

 でもまぁ大切な人を殺すのが大好きらしいあんなバカは、助けたい人に裏切られて殺されるぐらい惨めな最後がお似合いだからね!!これがあのバカの運命だったんだよ!!』

 

 

 

 あの時不気味な笑みを浮かべ、悪意を纏いながら言い放ったライさんの姿が脳裏に浮かんだ。

 

 ライさんは彼を、とても嫌っている。

 

 そんな彼が目の前にいるこの状況下でライさんがどんな行動に出るのか、俺にはとてもじゃないが予想がつかなかった。

 

「まっ……!!」

 

 慌ててライさんに向けて手を伸ばす。が、その手が届く間もなくライさんは彼の元へとたどり着いた。

 

 そして、

 

「………シロ?」

 

「……久しぶり、らいちゃん。こうして話すのは小学校(エレメンタリースクール)以来だな」

 

「……てっきり、シロはイマジナリーフレンド*1だと思ってたけれど。

 急にいなくなったから。そういう、もの、なんだって。無理矢理、納得してた」

 

「ごめんな。色々諸事情があって、()は表に出ないようにしていたんだ」

 

「……そんな所まで、()()()に似なくてもいいのに……」

 

「…あはは、似てるもなにも()()()だからな」

 

 

 

 …………あれ?

 

 ライさんと彼は談笑を交わしている。

 

 その様子を見る限り。2人の関係は悪くなさそうに思えた。

 

 むしろ、良好にすら思える。

 

 

 

 …それからのことは、正直忘れられそうになかった。

 

「シロ、そこ座って」

 

「む、分かった。……ほら、らいちゃん。おいで?」

 

「ん」 ポスン…

 

 ライさんが彼をベッドの上に座らせて、その彼の上にライさんが座ったことも。

 

「シロ、髪やって」

 

「そのくらい自分でできるだろ?」

 

「いいから、やって」 プー

 

「はいはい、お姫様」

 

 彼にべったりと甘えるライさんの姿は、これまでの彼女のクールなイメージとは全く異なるものだったけれど。何故か元の鞘に収まったのだと感じた。

 

 きっと、昔のライさんはこうだったんだろうな。

 

 

 

 そんな俺が復帰した頃には、彼によるライさんの髪のセット*2が終わっていた。

 

 

 

 

 

▽▽▽▽▽

 

「……つまり、ここはライさんの“深層世界”で。シロさんは()()()シロさんではない、変身薬で読み込んだ記憶のシロさんっていうこと?」

 

「…そうよ」

 

「らいちゃん。もう愛城くんの前で取り繕っても遅いと思うぞ」

 

「…うるさい」

 

「いや!俺はクールな雰囲気をまといながらもどこか他人を突き放すことに後ろめたさを持っているライさんも、特に親しいシロさんみたいな人が相手だと俺がここにいることすら忘れて無意識に甘えようとしている所も、どっちも大好きだよ!!!」

 

「……………」

 

「らいちゃん、顔も耳も真っ赤だけど。どうかしたか?」

 

「うるさい」 ゴッ!

 

「なんでさ」

 

 

 

 ライさんの照れ隠しによる攻撃がシロさんを襲う。

 

 シロさんも不思議そうに首をひねっているけれど、特に気にしている様子はない。

 

 だって、ライさんは自身を後ろから自身のお腹に手を回してバックハグするヒロさんから決して逃れる様子を見せなかったから。

 

 クッションの上に腰掛けながら、2人の様子を真正面から見つめる。

 

 これが元来の二人の関係なんだと思うと、とても心温まるものを感じた。

 

 

 

 そんなことを考えながら、俺はふと周りを見渡してみる。

 

 俺は今日ライちゃんのお部屋を見させてもらった。その部屋は物があまり置かれていなかったから、ぬいぐるみで溢れかえっているこの部屋と同じ人のお部屋だとは到底思えなかった。

 

 そんな事を考えていると、

 

「らいちゃんは()()()()()()()()なぬいぐるみが大好きでね。確かアルトリアがプレゼントしたぬいぐるみがキッカケだったかな。それ以来誕生日の度にクロとリン(2人)にねだっていたんだ。

 それを貰った時のらいちゃんがとっても可愛くてな!愛城くんも、是非プレゼントの参考にしてみてくれ」

 

「ちょっとシロ、いきなり何を言っているの。

 私の好みを知った所で、恋太郎さんは何も……」

 

「本当ですか!!ありがとうございます、シロさん!!」

 

「…………」

 

「な?俺の言った通りだろ」

 

「黙って」 ゴッ!

 

「なんでさ」

 

 またもや、ライさんの照れ隠しがシロさんを襲う。

 

 そんな2人の仲良しさを眺めながら、俺は1人の、2人の部屋の様子の違いを回想する。

 

 どちらが良くて、どちらが悪いという訳ではないけれど。細かい所でライちゃんとライさんの違いが可視化されているみたいで、2人のことをもっとしれたような気がして、嬉しくなった。

 

 そんな事を考えていたからか、

 

「………軽蔑、するでしょう?」

 

「っえ!!?」

 

ライちゃん(あの子)の部屋とこの部屋を比べていたんでしょう?この歳にもなって、こんな子どもみたいな趣味」

 

「らいちゃんは子どもだよ」

 

「シロは黙ってて」

 

「いや、全然?可愛いものが好きなのに年齢は関係ないでしょ?」

 

「…………そう」

 

「照れてる?らいちゃん」

 

「…………」 ゴッ!

 

「せめて何か言って!?」

 

 特に理由のある暴力がシロさんを襲う。

 

 けれど、シロさんは笑っていた。ライさんも表情こそ変わらないままだけれど、雰囲気が和らいでいるのを感じた。

 

 シロさん曰く、シロさんがライさんと会話していたのは、小学校にいた頃以来らしい。

 

 2人とも、久しぶりの邂逅(かいこう)に身を任せていた。その姿は昔を懐かしんでいるようだった。

 

 俺は、そんな2人を微笑ましく眺めていた。

 

 家族を悉く失ってきたライさんにとって、この触れ合いはどれだけ得難いものだっただろうなんて、考えるまでも無かったから。

 

 …2人が、これからずっと一緒にいられますように。

 

 そう願ってしまったのは、きっと俺自身どこかで分かっていたからだろう。

 

 この時間が、終わりに近付いていることに。

 

「シロさん、質問があるんですけれど。いいですか?」

 

「ん、何?」

 

「この部屋に変わる前の()()()()は何ですか?」

 

「おっ、愛城くん興味ある?ここ(100カノ)とは別の世界線、魔術が存在する世界の俺が習得した“魔法”に最も近い“魔術”でね。

 俺が記憶だけの存在になったからか、()()()俺が神様になったからかは分からないけれど。俺は別世界の俺を認識することができるようになったんだ。

 あそこでは、自分の想像(イメージ)した剣を中心としたあらゆる武器をノータイムで投影することができるんだ…!」

 

()()()()……。へぇ…!かっこいいですね…!」

 

「分かるか、愛城くん!!だけど、かっこいいのはこれだけじゃなくてな。詠唱というものがあって……!」

 

「はい…!」

 

「…………」

 

「(何がかっこいいのか、全くわからない……)」

 

 

 

 

 

 

▽▽▽▽▽

 

「さて、本題に入ろうか。君たちの願いは『らいちゃんも、ライちゃんも。どちらも居なくならないですむハッピーエンド』だったな」

 

「……はい」

 

「…………」

 

 シロさんの言葉に俺だけが反応した。ライさんは何も言わずにただ顔を俯かせただけ。

 

 自身のお腹に回されたシロさんの両手を、ただギュッと握っただけだった。

 

 シロさんは、そんなライさんには目もくれずに話を進めた。

 

「結論から言うと……それはもう叶っている

 

 

 

 …………

 

 

 

 何故だろうか。嬉しいはずなのに、全然嬉しくない。

 

 それはライさんも同様だった。むしろシロさんのその台詞により、シロさんの腕を握る力が更に強まったのが見えた。

 

「…2人とも、なんとなく気がついているみたいだけれど。とりあえず説明を続けるぞ」

 

「愛城くんもらいちゃんが口酸っぱく言っていたからもう知っているだろうけれど。『1人の身体には1つの人格しか、1つの魂しか存在できない』これは絶対だ」

 

「………はい」

 

「…………」

 

「けれど、ここに例外は存在する。それはらいちゃん、君のことだ」

 

「ライ…さん…?」

 

「…………」

 

「愛城くん、らいちゃんから“変身薬”の効果はどう聞いている?」

 

「えっと…、『頭の中に思い浮かべた誰にでも変身できる』…でしたっけ?」

 

「うん。らいちゃんは確かにそう言っていた。よく覚えていたね」

 

「あっ、ありがとうございます…」

 

「けれど、厳密には違う。

 実際は、『記憶している人物()()()()()()()()を脳に叩きつける』薬だ。だから、普通の人がこれを服用すれば最後、処理しきれない情報量の多さに脳がパンクして廃人化する。らいちゃんが失敗作だって言っていたのはこれが1番の理由だ。

 らいちゃんが無事だったのは(すず)*3の仕事が多忙で忙しかったのもあって、記憶に残っていたのが俺ただ1人だったことと、まだ赤ん坊の頭脳だったから適応できた偶然があったからだ。…まぁ、1人素で耐えた人*4がいたようだけれど」

 

「えっ……」

 

「…………」

 

 俺は絶句していた。

 

 一歩でも間違っていればライさんの命はもう無かったことにも。

 

 その事実に、目の前のシロさんは事もなげに告げていたことにも。

 

 そういえば、シロさんは薬剤師で、あの楠莉先輩の叔父にあたる人だということを思い出した。

 

 ……いやいや、流石の楠莉先輩も人を廃人化するような薬なんて……

 

 

 

『ちなみに薬が全身に回りきる前に「打ち消しの薬*5」を飲ませなければ五人は一生このままなのだ

 

 

 

『事実上の人格の消滅(ニルヴァーナ)

 

 

 

 …………

 

 薬膳家の血…なのかなぁ…。

 

 そんなことを振り返っている間も、シロさんの説明は続いていた。

 

「そして、俺の記憶(たましい)が落っこちたことで。俺の記憶()とらいちゃんの人格()、2つの魂が1つの身体に存在することになった。

 変身薬を飲んでからの数年、発熱が多かったのはこれが原因。1つの身体で2つの魂がいる異常に身体を適応させる為に」

 

「…もしかして、シロさんが途中で姿を現すことを止めたのも…」

 

「そう。いくら2つの魂が存在できるからといっても限度がある。なるべく身体の疲れを最小限に抑える為にも、俺が活動を抑えることは必須だっただろう。

 ただでさえ、らいちゃんはクロとリンから()()を受けて疲れていたからな」

 

「…そうだったんですね」

 

「…………」

 

 ライさんの()()がどういったものなのか、少しだけ気になったけれど。ここは流すことにした。

 

 ……そんなことを、気にしている場合じゃないと肌で感じたから。

 

「そして、アルトリア、ケリィ、ベルノが死に、クロとリンが消失した。

 1人残されたらいちゃんは(義父)さんに引き取られた」

 

「そしてあの日、()()()()()が生まれた」

 

「代わりに()()()()()が眠りについたこと、俺が機能を縮小していたこともあって事なきを得た。が、1つの身体に2つどころか、3つもの魂を持つなんて前代未聞。」

 

「らいちゃんとライちゃん。2人のどちらも消えさせない為に必要なことは…」

 

 

 

 …………

 

 

 

 シロさんは一拍間を置いた後、俺たちに告白した。

 

 

 

()()()()()()()()()

 

 

 

 …子どもでも理解できる(分かる)単純明快な答えだった。

 

 目の前にいるシロさんは記憶という存在とはいえ、本物のシロさんとほぼ同一人物。

 

 世界()の為に、かつての妻を含む航空機の人々()を捨てられる人。

 

 それはシロ自身も例外ではない。ただ、それだけの話。

 

 

 

「…それ以外の、方法は無いんですか?」

 

 

 

 それが分かっているのに、こうしてシロさん自身に問い返してしまうのは。

 

 もしかしたら、目の前のシロさんなら何かウルトラCの解決策を持っているのではないかと期待してしまっていたから。

 

 けれど、

 

「無い」

 

 その期待は、あえなく砕け散った。

 

っ!じゃあ、俺も一緒に考えます!!それでも無理なら皆にも……」

 

「愛城くん」

 

 ライさんの為にも、そして俺自身の為にも。ここでシロさんに消えてもらいたくないと焦りに焦った俺を止めたのは、シロさんだった。

 

 シロさんは、俺の頭を軽く撫でながら言った。

 

「君は優しいな。らいちゃん達だけならともかく、俺にもそう言ってくれるとは夢にも思っていなかった」

 

「俺は読み込まれてからの十四、五年間、ずっとらいちゃん達を見守ってきた。

 らいちゃんとライちゃんは(2人とも)人付き合いが苦手だから。君みたいに誠実な男の子が傍にいてくれるのは本当に感謝してもしきれない」

 

「――ありがとう。これからは、()()()()()()2人を頼むよ」

 

 そう伝えるシロさんの言葉には、もう微塵も未練を感じられなかった。

 

 

 

 羽香里(はかり)のこと――――どうかよろしくお願いします』

 

 

 

 その姿は数時間前の羽々里さんを想起させられた。

 

 ……すべて――ライさんとライちゃんのため。

 

 その為なら、()()()()()()()()()()()()()

 

 すべては、“2人のため”。

 

 なんて、凜々(りり)しい人だろう。なんて、格好良い人だろう。

 

 …でも、それじゃダメなんだ。

 

 ダメだっていうことは、分かっているはずなのに。

 

 俺は何も、シロさんに言うことができなかった。

 

 

 

「……して」

 

 

 

 ライ、さん…?

 

 シロさんの話が始まってからずっと俯いて黙ったままだったライさんの微かな声が聞こえた。

 

 瞬間、ライさんの叫びが辺りに轟いた。

 

「どうして……どうしてシロたちはそうなの!?」

 

「誰が助けて欲しいなんて言ったの!?私がいつ頼んだの!!?」

 

「勝手に守って、勝手に助けて、勝手に犠牲になって……!」

 

「私が恋太郎さんに手を伸ばしたからだって言うの!?でも、シロが消えるって言うのなら、そんなのいらない!!」

 

「どうしても消えるって言うなら、私も一緒に連れてってよ!!どうして()()()置いていったの!!?」

 

 

 

 その叫びは、シロさんに対してのものだけとは思えなかった。

 

 アルトリアさん、ケリィさん、ベルノさん、クロさん、リンさん。

 

 ライさんを助ける為に犠牲になった、皆への恨みのような叫びに俺は聞こえた。

 

 

 

「ダイッキライ!!私を置いていく皆なんか、大大大大っ、ダイッキライ!!」

 

 

 

「遺された人の気持ちも――考えてよぉっ!」

 

 

 

 

 

▽▽▽▽▽

 

《らいちゃんside》

 

 ――らいちゃん。

 

 ダッドとマムは、たしかに私のことを愛してくれていた。

 

 でも、2人ともアメとムチならムチの比率が大きかったから。

 

 マムは女優としての仕事が。ダッドも近所の人からの手伝いに駆り出すことが多かったから。

 

 私が甘えられるのは、夢の中で会うことが出来るアルトリアさんの夫で私の初恋の人である“シロさん”と瓜二つの“シロ”だけだった。

 

 シロは、いつも私に優しい。

 

 私は人とあんまりうまくやっていけなくて、いつもひとりぼっち。

 

 上手くいかなくて泣いている時には、ずっと離れることなく傍にいてくれた。

 

 ――俺は●●●●●●だからな。

 

 ――らいちゃんが困ってる時は、●●●●●●になんでも話してくれ。

 

 世界中で●●●●●●だけが、私の唯一の味方。

 

 本当の私を見せられるのは●●●●●●だけ。

 

 もちろん秘密の共有も●●●●●●とだけ。

 

 ●●●●●●も私も、不思議な能力を持っていた。

 

 私は【変身】。●●●●●●は【投影】。

 

 私の能力はダッドとマムからあまり他の人の前で披露しないようにと言われていたから。

 私の要求した物をすべて作り出すことが出来る●●●●●●が少し羨ましかった。

 

 まるでテレビで見たことのある正義の味方(ヒーロー)みたいで、

 キラキラしてて、すごいなって。

 

 ――どうだ!俺の能力はすごいだろ!

 

 ――いつかは、俺の投影した物を現実世界に持って行けるようにしてみせる!

 

 ――さすがに、らいちゃんの代わりにテストを受けることは出来ないけれど。

 

 ――だからほら、悪い点だったからって泣くんじゃない。可愛い顔が台無しだぞ。

 

 

 

 だけど。そんなシロは急にいなくなった。

 

 何の挨拶もお知らせもなく。気付けば存在すらしていなかったかのように。

 

 私は急いでこのことをダッドに伝えた。

 

 ダッドは苦い顔を浮かべながらも、私にこう伝えた。

 

 きっと、彼はイマジナリーフレンドなのだろう、と。

 

 それは、私が成長するといつの間にか消えてしまうものなんだ、と。

 

 

 

 ――俺は●●●●●●だからな。

 

 ――らいちゃんが困ってる時は、●●●●●●になんでも話してくれ。

 

 

 

 ――うそつき。

 

 ――困ってる時は、いつでも傍に居るって言っていたのに。

 

 

 

 私は泣いた。これでもかといわんばかりに泣いた。

 

 そして、後悔した。まだシロに伝えたいことが山ほどあったのに。それを伝える間もなくシロが消えてしまったことに。

 

 消えてしまうって分かっていたら、もっと言いたいことがたくさんあったのに。

 

 

 

 だから、もし。もし、シロにもう一度会うことが出来たのなら。

 

 その時は、私の思いを何一つ隠すこと無くぶつけようと。強く心に誓った。

 

 

 

 

 

▽▽▽▽▽

 

【恋太郎side】

 

「……ごめんなさい」

 

 ぽつりと、ライさんが呟いた。

 

「ごめんなさい。私が()()()にアルトリアさんの場所を伝えたりしなければ。こんなことにはならなかったのに…」

 

「全部私のせい…。皆と一緒に過ごした幸せな日々に帰れないのは私のせいなのに…」

 

「ごめんなさい…ごめんなさい…」

 

 ライさんは泣きながら両手で顔を覆い、その場に跪いた。

 

 そんなライさんの元へとシロさんはゆっくりと駆け寄った。

 

 そして、頭を撫でながら静かに語りかけた。

 

「…大丈夫。皆、らいちゃんのことを恨んでいない。だって……」

 

 

 

「俺たちはお父ちゃん、お母ちゃんだからな。らいちゃん()を守るのは当たり前だろ?」

 

 

 

「―――…っ!」

 

 

 

「…そして、俺の方からも皆を代表して謝らせて欲しい」

 

「…えっ?」

 

「らいちゃんの言った通りだ。俺たちはらいちゃんの身を守ることだけに目が行ったせいで、遺されたらいちゃんの心の安寧を失念していた」

 

「ごめんな、らいちゃん」

 

 ライさんにそう言って謝るシロさん。

 

 けれど、それを受けたライさんは見るからに動揺していた。

 

「…………ちがう、ちがうの…」

 

「私は、シロに謝って欲しいわけじゃないの……」

 

「私はただ、皆に、“シロ”に罰して欲しいの……」

 

「私のせいで、シロの大切な、アルトリアさんが殺されて……」

 

「私のせいで、薬剤師だったシロがケリィさんやベルノさん達を殺した大量殺人者として世界に追われることになって……」

 

「そして、最期は守った人に裏切られて殺された……」

 

「“あの人”は、シロは。絶対そんな最期を迎えるような人じゃなかった……私のせいで……、私のせいで。シロの人生を歪めてしまった」

 

「だから、私を()()()()()よ!お願いだから私を罰してよ、シロ……」

 

 そう言うライさんの顔はとてつもなく暗かった。

 

 ライさんは自分自身を許せないんだ。

 

 自分自身の迂闊な行動の結果、大好きな家族の皆を死に陥れた結果になったことによる罪の重荷に心が耐えきれない。

 

 

 

『でも、ライさんがその罪の十字架に苦しんでいるのなら、俺も一緒に背負わせてくれ』

 

 

 

 さっき、俺はライさんにそう伝えた。けれど、それでも。こうしてシロともう一度会えたことがキッカケで、その罪の重さに折れかけていた。

 

「ライさ…っ!

 

 慌ててライさんの元へと駆け寄ろうとしたが、

 

 それは途中で断念せざるをえなかった。

 

 ギュッ……

 

「…えっ…?」

 

 シロさんが、ライさんの身体を抱きしめたのが目に入ったからだ。

 

「……わかった。それじゃあ俺がらいちゃんに罰を与えるよ」

 

「……お願い。どんな罰でも、なんでも受けるから」

 

 突然抱きしめられたことに最初は驚いたライさんだったけれど、シロさんから告げられる罰の内容がどういったものなのか。聞き逃さないように集中しているのが見ていて分かった。

 

 そういう俺も、どんな内容の罰なのかが気になっていた。

 

 そしてついに。シロさんの口が開き、ライさんへの罰が執行された。

 

 

 

 

 

「俺の代わりに、ライちゃん、あの子への説得を頼む。それが、俺からのらいちゃんへの罰だ」

 

 

 

「「……え?」」

 

 俺とライさんの口から同じ言葉が出た。

 

 それぐらい、シロさんの告げた罰の内容は驚きに満ちていた。

 

 

 

「実は、らいちゃんが現実世界()に戻った時俺はライちゃんと話をしていたんだ。『俺が消えるから、ライちゃんが消える必要は無いんだ』って」

 

「でも、ライちゃんは……」

 

 

 

 

 

『……もう、いいんです。私にはもう、悔いはありませんから』

 

 

 

「俺がいくら大丈夫だからと伝えても、ライちゃんが首を縦に振ることはなかった。

 ライちゃんがらいちゃんの代わりに表に出ていたこの1年間も、俺は中から見ていたけれど。そんな俺でもライちゃんがどうしてそんな事を言ったのか、全くもって見当が付かなかった」

 

「こんな事をらいちゃんにお願いするのは筋違いだっていうのは分かっている。けれど、ライちゃん()を助けられるのなら俺は、どんな手段だろうと行使する。

 だから、お願いできるかな?らいちゃん」

 

 

 

「……わかった。それが、シロからの私への罰だっていうのなら」

 

 ライさんは静かにただそう言った。

 

 そして、名残惜しそうにしながらもシロさんからの抱擁をライさん自身から抜け出してこう言った。

 

「…シロ、ありがとう。……そして、さようなら」

 

「シロの願い()は、私が代わりに叶えてみせるから」

 

「ああ―――安心した」

 

 そう言葉を交わした後、ライさんはシロさんに背中を向けて駆け出した。

 

 その背中に何も言わずにただ佇むシロさんに向けて、俺も自身の心の内を伝えた。

 

「シロさん、俺もライさんに付いて行きますからね」

 

「…正直、愛城くんにこれ以上任せるのは心苦しいのだけれど。退くつもりはないんだろう?」

 

「はい。こればかりはシロさんにいくら言われようとも退くつもりはありません。ライちゃんは俺の大事な彼女ですから!!

 

「……そうか。ライちゃんは幸せ者だな」

 

 そう苦笑するシロさん。

 

 ふと、気付いた。

 

 シロさんの身体から白い光が漏れ始めているのが。

 

 そして、シロさんの身体自身がどんどんと消えていくのも。

 

「し、シロさん…!!?」

 

「いいんだ。伝えるべきことはもう伝え終わった。俺の役割はここまでだ」

 

 慌てる俺に対して、シロさんは事もなげにそう言う。

 

 そんなシロさんを見て、俺は気付いた。

 

 もしかしたら、ずっと前から消失しかけていたのかもしれないと。

 

 けれど、ライさんの前だから。両親が消える所を目撃したライさんに、これ以上の心労をかけない為にも必死に耐えていたのだと。

 

 ……もしかしたら、ライさんも……。

 

「サポートを頼むよ愛城くん。らいちゃんは、結構抜けている所があるから」

 

「……分かりましたシロさん。本当に、ありがとうございます」

 

 そう言って、俺もシロさんに背を向けてライさんを追いかけた。

 

 後ろの方で、フッと何かが消えた音がしたけれど。俺は振り返ることはしなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ダイスキだったよ、おとーちゃん」

*1
子どもが作り出す『空想上の友達』のこと。本人にとっては実際にいるかのように感じられ、心の一部を支える大切な存在。発達段階における自然な現象で、想像力や言語脳旅行の表れとされ、多くは5~10歳頃に現れ、成長とともに自然に消えていく

*2
ツインアップ

*3
大槻鈴。ライの実の母親、ベルノ・ヴィンヤードの改名前の名前

*4
ボス 嘘吐き-8参照

*5
薬の効果を打ち消す薬




※掃除の神(人間時代の名前:薬膳士呂改めシロ・セイバー)
 人としての最後は紛争地帯でボランティアをしていた所、テロ首謀者として絞首刑にかけられた。*1しかし、絞首刑にかけられる前に『死亡してから3日後に生き返る薬』を摂取していたことにより生き返る。これを数度繰り返し*2ていると、現地の人々から●●●●の生まれ変わりだと言う信仰がキッカケで神様の目にとまり、神様になるようスカウトされ『掃除の神』として神の末席に入る。
 それからは、紛争地帯を中心として行動。人類の滅亡を防ぐ為にその原因となった加害者と被害者の全てを皆殺しにして起きたことを無かったことにする「掃除屋」としての仕事の他、他の神様の神社の掃除等。新人の神様だからか多種多様の仕事に追われている。

※シロ(ライの変身薬により読み込まれた記憶)
変身薬を飲むという事故により、ライの身体に取り込まれたシロの記憶。
ライの中にシロがいることを知っているのは、シロとクロのみ。他は知らない。
ベルノやリンに伝えていないのは娘の中に自身の記憶が存在することを伝えるのが忍ばれたから。
ちなみに変身薬の効果が切れた後もライが変身できるのはこのシロのお陰であり原因。
変身する為には、変身する魂とは別にその間自身の記憶を保持する魂が必要だから。
普通の人は魂が1つしか無い為耐えきれなくなり1時間を待つ間もなく廃人化する。
シロ曰く、『変身している間は記憶の津波に晒されている』ようなものらしい。
また別世界の自分を知覚することが出来るようになり、結構記憶ライフを満喫していた模様。
【投影】できるのは、()()()()の中だから。【変身】できるライが1人ぼっちにならないように平行世界の自分の記憶を頼りにやってみせた。

*1
嘘吐きー6に記載

*2
現地の子供に騙し討ち、物乞い人に背中から刺される。嘘吐き-6に記載

羽々里さんの台詞を1字表記する際何て書く

  • 羽々里さんの『々』
  • 羽々里さんは皆の『ママ』より『マ』
  • 羽々里さんは羽香里の『お母様』より『母』
  • ヤツ(♀)より『ヤ』
  • 羽香里を『香』で羽々里さんを『羽』表記
  • その他
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