“ライさん”編が終わったので今話から“ライちゃん”編の開始です。
5話程度で終わる予定…のはず。
静「『思えばあれから多くの時が流れたものじゃ…』」
オリジナルの話ばかりが続きますが、最後まで付いてきて頂けると嬉しいです。
今の所掲示板回は、オリ主編が終了してから2つ分投稿しようと思っています。
※嘘吐き-13のサブタイトルを『大槻さん(正)』→『大槻さん(真)』に変更しました。
【1年前 恋太郎が中学3年生の頃】
「おはよう、エブリワーン!!それでは、HRを始めまーす!!」
「せんせーい、大槻さんがいませーん」
「大槻さん?ホントだぁいないわねー……あぁ!そういえば、ご家族から『今日は
「先生、モノマネ下手くそー」 「子どもの声にしか聞こえなかったぞー」
「だまらっしゃい!!…っていう訳だから、皆は心置きなく勉学に励みなさい!!連絡事項は……」
「…………」
「おはよう、大槻さん!!」
「……愛城くん、おはよう」
「大槻さん、昨日は突然学校休んだからビックリしたよ」
「……ごめん」
「あ、ゴメン!そういう訳じゃなくって……」
「……昨日はお爺様と2人病院のカウンセリングの日だったから」
「カウンセリング?」
「……私の記憶に一部欠陥があるとかで、定期的に通っているの。いつもは放課後なんだけれど、昨日は
「っ!?それって、記憶喪失ってこと!!?」
「……声が大きい」
「ご、ごめん…」
「……愛城くんはさ。もしご家族の誰かが記憶喪失になったら、記憶を思い出して欲しいって思う?」
「え?……難しいな……」
「…………」
「……うん。俺は
「……どうして?」
「そりゃあ、正直忘れられるのは辛いよ。その人との思い出が
「…………」
「でも、その人もきっと
だから、俺は
「………」
「それに、思い出なんて、これから幾らでも作れるんだから!その本人の前で暗い顔をするよりも、どうせなら楽しく明るく過ごしていきたいなって、俺は思うかな」
「…そう、ありがとう」
「うん、どういたしまして」
▽▽▽▽▽
【恋太郎side】
道中、1度だけ分かれ道があったものの道案内の通りに進んでいけば残りは1本道だった。
最初は暗闇だった道のりも進んでいけば進んで行く程、徐々に明るくなってきた。おかげで自分が今どこにいるのかが分かった。
だってそこは、今日訪れたばかりの大槻邸だったから。
洋風の花園家とは違うベクトルで豪勢な和風の邸宅。辺り全体を覆う塀の中唯一出入りできる大きな門の前に俺はいつの間にかたどり着いていた。
「しかし、大きなお家だなぁ…」
ここは“深層世界”。だから、今目の前にある大槻邸は本物じゃない。ライちゃんかライさん、どちらかが
だけど、いくら見返しても。それが偽物だとは到底思えなかった。
…………
門を開けて中へと入る。
この広い屋敷の中からただ1人を見つけ出すのは容易なことでは無い。けれど、今の俺はライちゃんが何処にいるのか考えるまでもなく分かっていた。
玄関で靴を脱ぎ、居間を通り過ぎて廊下を歩く。
そして辿り着いたのは、ライちゃんの部屋。
襖の前に立ち止まると、中に人が居る気配を感じることができた。
…………
ノックを3回、すると。
「…入って」
部屋の中からライちゃんの声が聞こえた。
「…入るよ」
スルスルと、襖を開ける。
部屋の中は、昼間訪れた時の頃と変わりなかった。
奥に置かれている勉強机の両端の本棚に参考書や小説、漫画や映画のブルーレイディスクが整理されている以外物らしい物は見当たらなかった。
唯一、違う点を上げるとすれば。
部屋の中に敷かれている布団の上に、ライちゃんが毛布を膝に抱えながら佇んでいたことだけだ。
「……ライちゃん」
「…さっきぶり、恋太郎くん。なんだか随分久しぶりな気がするね」
「……………」
部屋にはライちゃん以外誰もいない。俺より先に走り出したライさんの姿はどこにも見当たらなかった。
「
「……恋太郎くんが、本物に告白していたのも」
…っ!!
俺が辺りを見渡したことから、ライちゃんに察せられてしまった。
「本物にはちょっと別の所に行って貰っているの。恋太郎くんと2人で話したかったから。
ほら、恋太郎くんも通って来たから分かるでしょ?途中の分かれ道」
「…そういえば、そんなのもあったけれど…」
ライちゃんに言われた分かれ道を思い出す。
そうだ、あの分かれ道のところにあった立て看板は……
▽▽▽▽▽
【ライ(真)side】
…………
こうみょうなわなね。
ええ、かかるのもしょうがなかった。
自分の近くに来た
恋太郎くん ふわふわ
←―――― ―――→
通路が分かれ右か左か、私は2択を迫られた。
走りながらどちらを選ぼうか考える。逡巡の結果私は……
右を選んだ。
私は“恋太郎くん”ではないもの。だから、消去法として私は
けっして、
そして、その選んだ道の先には……
メ~メ~
「なるほど、なかなかのふわふわ加減ね。今日一日肉体的にも精神的にも負荷が掛かり疲れている私の疲労を回復させるのに適しているふわふわ具合。
まさか、あの子の深層世界でこれ程のふわふわに出会えるとは思っていなかったわ。
やはり、あの子も私と同じくふわふわが大好きなのね。それならこれ程のふわふわを
それに加えて……」
メ~メ~
「あら?…ふふっ、ごめんなさい。……おいで?」
先ほど腕に抱えた
私は抱えていた
この
私の腕の中でもぞもぞと動く
そして、この
「……あの子はきっと、恋太郎さんと2人きりで話をしたいのでしょうね」
だからこうして、
そうボソッと呟いた後私は再度
「…………ふふっ」
そして、また。
▽▽▽▽▽
【恋太郎side】
「それにしても、私の部屋に来て早々
「ごっ、ごめん……」
「せっかく私と2人きりなのに。そんなに
「本物が恋太郎くんの彼女になったなら、私はもうお役御免かな?」
「っ!そんな訳ないじゃないか!!」
ライちゃん。
…ライさんが交通事故に遭った時にライさんの代わりに新しく生まれた人格。
…ライさんが【主人格】だとすれば、ライちゃんは【副人格】。
…ライさんを本物だとすれば、たしかにライちゃんは偽物だと言えるだろう。
……ウソだ!!
だって、ライちゃんは……。
『……!!ヘ…ヘンタイ!!!』
初めてライちゃんと会話した時に叩かれた時も。
『休憩しよ?これチョコレート。『疲れた時には甘い物が良い』って愛城くんの友人に聞いた』
初めてライちゃんからバレンタインのチョコレートを貰った時も。
『あ、愛城くん…ダ…ダイ…ダイスキ…です…。私と…付き合ってください…』
『……そっか、良かった…。私も…愛城…恋太郎くんのことがダイスキ…』
初めて俺からの告白が成功して、生まれて初めて彼女が出来た時も。
どんな時も、ライちゃんはライちゃんだった。
そんなライちゃんが、百歩譲って偽物だったとしても。
たとえライちゃんにだって否定なんかさせない。俺の世界で一番大好きなライちゃんのことを!
「…たしかに、ライちゃんの言うとおり俺はライさんに告白した。けれど、それはライちゃんの気持ちがライさんに移った訳じゃない」
例えるならそう…。今まであった
「俺はライちゃんの事も羽香里たちのことも。そしてライさんの事も。今まで以上に大切に思っている。静ちゃんのことをライちゃんたちに紹介したあの時の気持ちは、今でも変わらない」
あの時注文したドスは今は手元には無いけれど、いつでも俺自身のハラを切る覚悟はある。
大切な人を傷つける人間はこの世で一番のクズ。そんなやつに生きてる価値はない。
あの時からある程度経過したけれど。その気持ちが色褪せたことはない。
「でも…そんなのはいくら口で言っても仕方が無いし。俺は同じ身体のライちゃんとライさん2人とも大好きだけれど、それをライちゃんが信じられないというのも当然だと思う」
「だから、ライちゃん。そう感じられないと思っているのなら遠慮無く正直に言って欲しい。その時は俺も
ハラを切るから。と締めようとした所を。
「恋太郎くん」
ライちゃんに制された。
「……そういえば、そんな事を静ちゃんを紹介してくれた時に言ってくれていたね。あの時は羽香里ちゃんや唐音ちゃんに静ちゃんの事を受け入れてもらえるよう必死だったから内容まではよく覚えてなかったなぁ」
「ライちゃん…」
「あの時は
「うっ…!ご、ごめん…」
「……そうだったね。そういえば、そんなことを言ってくれていたんだったね、あの時恋太郎くんは……」
「ライちゃん…?」
小声だったから少し聞き取りづらかったけれど。ライちゃんはそう言うと布団から立ち上がった。
「ライちゃん…?」
「恋太郎くんはそこから動かないで」
ライちゃんに釣られて立ち上がりかけた俺をライちゃんが止める。座り直した俺を一瞥した後ライちゃんは俺の後ろへと回って。
スルッ
その時、何らかの布が落ちたような軽い音がした
そして……
むぎゅっ
ぷにっ
ライちゃんが俺の後ろから抱きついてきた。
そして、ライちゃんと俺の境目にあるはずの布の境界線がいつもよりも
この柔らかい感触は…しかもそれが
「ラっラララ…ライちゃん!!?」
「振り向かないで」
「いや、ライちゃん!!服は!!服はどうしたの!!?」
「…私に言わせたいの?……エッチ」
「理不尽!!」
「それにしてもこんなに動揺してくれるなんて嬉しいなぁ。いつも羽香里ちゃんとかに抱きつかれているから、私みたいな『ひんそーでひんにゅーでちんちくりん』な身体でそんな反応してくれるだなんて。嬉しい誤算だね」
「ライちゃんは俺をなんだと思ってるの!!?」
俺が正座なのに対してライちゃんは膝立ちの体制だからだろうか。身長に差があるはずなのに、ライちゃんの声が俺の顔の横、耳元から聞こえた。
ライちゃんは、いつの間にか着ていたワンピースを脱いでいた。
だからか、ライちゃんの身体がダイレクトに伝わって。俺は死ぬほど動揺した。なのにライちゃんはそんな俺の反応を楽しむかのように揶揄ってくるので俺は慌てて返す。
ライちゃんと数巡軽口を交わしたけれど、それも俺の腹へと回したライちゃんの腕が微かに震えたのが分かって。俺は口を閉ざした。
そんな俺の内心が分かったのか、ライちゃんも黙った。
俺とライちゃん。2人とも黙りこくったまま時間がただ流れていく。
そんな中静粛を破ったのは、ライちゃんだった。
「恋太郎くん、もう一度お願いしたいことがあるんだけど。いいかな?」
お願い。
『…恋太郎くん……私と……お別れしてくれる?』
その言葉はありふれたものだった。けれど、今日の夕方ライちゃんに言われたお願いだったから。それを思い出した俺はビクッと身体を震わせてしまった。
「……ごめんね、恋太郎くん。あの時も、今も。私のお願いは恋太郎くんを苦しませてばっかりだね」
「そんなことっ!!」
「今から言うお願い事も、きっと恋太郎くんを苦しませることになると思う。正直言って、恋太郎くんが叶えてくれるとは到底思っていない。言うだけ無駄だっていうことは分かっているんだけどさ……」
「どうしても、言わなきゃって思っちゃったの。良い子じゃない悪い子な私を。本物じゃない偽物な私を。ずっと恋太郎くんには隠してきた
…………
「……ライちゃん、ありがとう。でも、大丈夫だよ」
「覚えてるかな?あの時俺の部屋で言ったこと」
『……こんな悪い子な私を…、それでも大好きだって、言ってくれるの…?』
『あぁ、何度だって言うよ。俺は大槻さんが大好きだ。これから先大槻さんが悪いことをしたら叱ることはあっても、嫌いになることは絶対ない』
「俺はどんなライちゃんだって受け入れる。どんな悪い事をしても嫌いにはならないし、偽物だったとライちゃんが何度思っても、その度俺が否定してみせる」
「だから、ライちゃん。俺からもお願いだ。ライちゃんの隠してきた気持ちを俺に教えてくれないか?」
そう言って俺は、ライちゃんの両腕を優しく上から重ねた。
それに安心したのか、ライちゃんの震えは止まった。
「……恋太郎くん」
そして、ライちゃんはようやく。その重い口を開いた。
「皆と別れて。私だけと付き合ってください」
※アンケートは終了させていただきます。投票してくれた方々ありがとうございました。参考にさせていただきますね。