0人目の嘘吐き彼女   作:モーン21

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先日、嘘吐き-13のサブタイトルを変更したのは、今話の為でした。
“運命”の原典にしても、今丁度アニメが放送されている『Fake』にしても。
『真アサ●ン』とか『偽ア●シン』って名前からして格好いいよね!!という、中二心がうずいた結果です。反省はしている。

拙作の中で今話は特にニケさん制作の『キミのニセモノに恋をする』に影響を受けた話です。
ちなみに、今この作品のリメイク版開発の為のクラウドファンディングが行われているみたいですね。
30分程で全エンド解放できる為未プレイの方は是非プレイを、プレイ済の方は是非支援を。

私も支援したので

では、本編どうぞ

【2/22 11:55追記】 文末に選択肢のリンクをつけました


嘘吐き-17 大槻さん(偽)

【ライ(偽)side】

 

 あの日、全てを思い出し。

 

 ドンドン!!と外に出ようとしたきり静かになった大槻ライ(本物)

 

 きっかけはたしかにあった。

 

『いやぁすごいな!これが()()(ぞの)フラワーパークか…!』

 

 最早恒例となった皆でのデート中の恋太郎くんをぼんやりと眺めながら。

 

 今日が、自分(偽物)自分(大槻ライ)でいられる最期の日である事を。

 

 本能的に、悟ってしまった。

 

 

 

 

 

▽▽▽▽▽

 

 私の名前は、大槻ライ。

 

 新しく中学3年生になる春休みに交通事故に遭った。

 

 幸い()()()()()のおかげで頭を打つだけにとどまったけれど。

 

 どうやら、その際軽度の記憶喪失になったらしい。

 

 といっても、日常生活に不備が生じる程のレベルではない。

 

 失った物といえば…

 

 父親と母親。そして、ベルノさん、シロさん、アルトリアさん、ケリィさんといった、もうこの世にいない人たちと過ごしたかつての記憶だった。

 

 普通なら、記憶を失ったことに対して動揺すべきなのかもだけれど。私は特にそういったことはなかった。

 

 だって別に、()()()()()()()()()()

 

 これが今一緒に暮らしているお爺ちゃんとの記憶であれば違ったかもしれない。けれど、()()()()()()()()()の記憶を失った所で、別にそれを悲しむ人もいないのだから。

 

 ……こんなことを考える私は、周りの人とズレていると思いながら。

 

 けれど、

 

 

 

『……うん。俺は()()()()()()()かな』 

 

 

『そりゃあ、正直忘れられるのは辛いよ。その人との思い出が()()()()()()になるんだから。出来ることなら、すぐにでも思い出して欲しいぐらい』

 

『でも、その人もきっと()()()()()()()()()()()()()()()()()()。戸惑い、苦しんでいる人に無理に記憶を思い出させる訳にもいかないだろ?

 だから、俺は()()()()()()()って思う』

 

『それに、思い出なんて、これから幾らでも作れるんだから!その本人の前で暗い顔をするよりも、どうせなら楽しく明るく過ごしていきたいなって、俺は思うかな』

 

 

 

 恋太郎くんのおかげで心がポカポカと暖まるのが分かった。

 

 ……今にして思えば、この時から恋太郎くんへ向ける視線が変わったのかもしれない。

 

 恋太郎くんと、おしゃべりしたい。

 

 恋太郎くんに、楽しんでもらいたい。

 

 恋太郎くんの、色んな表情を見たい。

 

 恋太郎くんと、ずっと一緒にいたい。

 

 恋太郎くんを、他の人に奪われたくない。

 

 中学3年生の彼と過ごしてきた日々は、記憶の中にあるどの1年よりも充実したものだった。

 

 けれど、卒業式のあの日。私は……

 

 

 

 

 

 晴れて恋太郎くんの彼女になったあの日から、私は。

 

 恋太郎くんの、役に立ちたかった。

 

 こんな私を彼女として迎え入れてくれた恋太郎くんにこの恩を返すには、それしか無いと思っていたから。

 

 だから、慣れない人間関係の構築もがんばった。

 

 本当は、恋太郎くんの傍に私以外の女の子なんて居て欲しくないけれど。

 

 幸せになる事が出来なければ、他の女(本物)はともかく恋太郎くんの身にも不幸な出来事が起こり死ぬというのであれば致し方ない。

 

 第一、 恋太郎くんは優しい人だから。

 

 自分よりも他人を優先する、お人好しな人だから。

 

 この汚い本音は、絶対に外に漏らしてはいけなかった。

 

 だから、私は()()()()()()()()()()

 

 恋太郎くんの運命の人である羽香里ちゃんと唐音ちゃんと仲良くなる為にも、生まれて初めて他人(2人)をお家に招いた。

 

 時には嘘を吐いて、偶には演技をして。

 

 グループ内で不和が生じないように、自分なりに頑張っていたけれど。

 

『と……言うわけで。好本(よしもと)(しずか)ちゃんを新しい彼女として迎え入れさせて頂いてもよろしいでしょうか』

 

 恋太郎くんは、新しい彼女(本物)を連れてきた。

 

 私には、何の連絡も寄越さずに。

 

 回る口とは対照的に、私の視線はズズンと冷え切っていた。

 

 …目隠しをしていて、本当に良かった。

 

 …仮面(ペルソナ)を被っていて、本当によかった。

 

『“大槻(おおつき)さん”“はスラッとした”『体躯をお持ながら』『目隠し』“により”“ミステリアスで捉え所のない”『お方と』『お聞きしていた』。“が”、“実際は”『こんな私にも』“話しやすくなるように”『嘘を駆使し』“場を盛り上げる”“心優しい”『御仁であった』』

 

 だって、そのお陰で静ちゃんたちを騙せたから。

 

 

 

 ……けれど、一難去ってまた一難。

 

栄逢(えいあい)凪乃(なの)さんを新しい彼女として迎え入れさせていただいてもよろしいでしょうか……!』

 

 学年1の才女が新しく恋太郎くんの彼女になって、

 

『…薬膳(やくぜん)楠莉(くすり)さんを新しい彼女として迎え入れさせていただいてもよろしい……』

 

『やーやーよろしく。薬膳楠莉なのだ!』

 

 私の知る中で1番の天才(楠莉ちゃん)が新しく恋太郎くんの彼女になった時、私は怖かった。

 

 このままじゃ、いずれ私は()()()()になってしまう。

 

 ましてや、これから95人もの()()()()が次々と現れれば、私みたいなお古の女は見向きもされなくなるだろう、と。

 

 だから、楠莉ちゃんから貰った『嘘が吐けなくなる薬』で大槻ライ()が【変身】できることを思い出した時はコレだ!と思った。

 

 【変身】(これ)さえあれば、恋太郎くんに飽きられることはないはずだ!と。

 

 『大好きな人とチューしたくてしたくてたまらなくなる薬』を飲んで羽香里ちゃんたちが恋太郎くんを追いかけに行きもぬけの殻になった屋上で、私は早速【変身】しようとした。

 

 けれど、できなかった。

 

 いくら力んでも、頑張っても。私は【変身】することができなかった。

 

 この時になってようやく、目を逸らしてきた記憶(事実)と向き合った。

 

 大槻ライ(本物)は別にいるということを。

 

 私が、偽物だということを。

 

 だから、【変身】できないんだということを。

 

 

 

 その後は、恋太郎くんが来るまでずっと、『自分が男である』と思い込む力業で衝動を抑える事にした。

 

 本物だったら、こんな惨めなことしなくてもすんだのに。

 

 そんなことを、考えながら。

 

 

 

 

 

▽▽▽▽▽

 

 ショックではなかった。

 

 いつかこの日が訪れる事は分かっていたから。

 

 それでも、残りの時間を考えると

 

 焦る気持ちを抑える事はできなかった。

 

『あっ』

 

『“ライさん”『どうかしたのかい?』』

 

『あそこでサングラス落としちゃった。ちょっと取ってくるね』

 

『いってらっしゃいなのだ!』

 

 恋太郎くんがタキシードを、羽香里ちゃんがウェディングドレスを着用しての皆での写真。

 

 当初は2人のみのはずだったけれども、当たりを引いた羽香里ちゃんの計らいで皆が入ることになった。

 

 今恋太郎くんの傍には羽香里ちゃん唯一人。

 

 別れを告げるには、今が最後のチャンス。

 

 そう思い2人の元へと向かっていたが、

 

 

 

…恋太郎君……私と――

 

私とお別れしてください

 

 

 

 ……そっか、バレちゃったんだね羽香里ちゃん。

 

 あぁ…なんて運の悪い……

 

 先、超されちゃった……。

 

 

 

 

 

▽▽▽▽▽

 

 だから、明日の(本物の)私。恋太郎くんに別れを告げてください。

 

 よろしく、お願いします

 

 そこまで記し、日記帳を閉じる。

 

 お爺ちゃんには、さっき直接全てを話した。

 

 今日が、自分(偽物)自分(大槻ライ)でいられる最期の日である事を。

 

 明日が、自分(本物)自分(大槻ライ)に戻る最初の日である事を。

 

 お爺ちゃんは何も言わなかった。ただ、顔を俯かせるだけだった。

 

 私は居間にお爺ちゃんを置いて、自室へと戻った。

 

 …………そうだよね。

 

 お爺ちゃんにとっては、大槻ライ(偽物)よりも、大槻ライ(本物)が大事なんだ。

 

 だから、大槻ライ(偽物)の話を聞いて心底嬉しかったはず。

 

 けれど、大槻ライ(偽物)の前で喜ぶのは憚られる。だから、あぁしていたんだ。

 

 そうじゃなかったら……

 

 

 

 最期に、恋太郎くん()に会いたいと思った。

 

 その時だった。

 

 

 

「ぐうゥあああアァッ!!!」

 

 

 

 ガッ!!

 

 その願いは、どこかに届いたみたいだ。

 

 部屋に立てかけていた護身用の双剣を携帯して表へと向かう。

 

 もしかしたら、倉庫にあるお爺ちゃんやダッドの集めた骨董品を狙った強盗かもしれない。

 

 今のお爺ちゃんは唯の子どもだから。応援が来るまで対処できるのは私のみ。

 

 勇気を出して音の発生源の元へと駆けつけると、そこにいたのは…

 

「恋太郎くん!?そんな所で何をしているの!!?」

 

 最期に会いたいと思った、恋太郎くんだった。

 

 運命のイタズラか、はたまた神様のお節介か。

 

 私の最期の願いは、こうして叶えられた。

 

 

 

 

 

▽▽▽▽▽

 

 恋太郎くんの様子がおかしい。

 

 お爺ちゃんに紹介した時もそうだ。

 

 いつもの恋太郎くんなら、あれぐらいの圧なんて物ともしないはずなのに。

 

 だから、居間に案内した後事情を聞くことにした。

 

 …まぁ、ある程度予想はついていたけれど。

 

 羽香里ちゃんの母親に6股の蛆虫(恋太郎くん)と付き合っていることがバレたこと。

 

 6股の蛆虫(恋太郎くん)から娘を守る為に、行き先も知らない場所へと明日引っ越しするということ。

 

 …まぁ、過剰すぎる行動力だと言えばそうなんだけれども。

 

 羽香里ちゃんの母親の性格と境遇からしたら、そう行動するのも致し方ない。

 

 実際、この行動は悪い男から離れる為なら最善策とも言えるだろう。

 

 恋太郎くんと離れたことにより、『近いうちなんやかんや不幸な目にあった後死ぬ』という障害が無かったらの話だが。

 

 私は落ち込む恋太郎くんを元気づけながら、心の中で舌打ちする。

 

 けれど、それは未来の話だ。

 

 不幸な目にあうのは、少なくとも今日じゃない。

 

 今日が最期の日である大槻ライ(偽物)に言わせれば、なんて贅沢な悩みなんだろう。

 

 今日という日は、自分にとっては最期の日でも、

 

 恋太郎くん()にとっては羽香里ちゃんの為の(何てことのない)一日で、

 

 それが少しだけ寂しかった。

 

 バカだなぁ、私。

 

 それが嫌なら、全てを恋太郎くんに暴露すればいいだけなのに。

 

 そうすれば、羽香里ちゃんではなく大槻ライ(偽物)の手を取ってくれる可能性もあっただろうに。

 

 でも、それはどうしても出来なかった。

 

 

 

 …………怖かったんだ。

 

 恋太郎くんに、仮面(ペルソナ)を外した汚く醜いありのままの私を見せるのが。

 

 恋太郎くんに、大槻ライ(偽物)本物(羽香里ちゃん)を天秤に乗せた結果明確に答えを出されることが。

 

 恋太郎くんに、大槻ライ(偽物)なんかの事情でこれ以上(運命の人)の重荷を背負わせることが。

 

 それに、事情はどうあれ。

 

 今の私は、恋太郎くんの()()()()()()()

 

 唐音ちゃん(本物)でも、

 

 静ちゃん(本物)でも、

 

 凪乃ちゃん(本物)でも、

 

 楠莉ちゃん(本物)でもない、この大槻ライ(偽物)が。

 

 大槻ライ(偽物)の言葉で、恋太郎くんは立ち直った。

 

 あの日の走り高跳びのことを例に挙げて。

 

 大槻ライ(偽物)ではない、大槻ライ(本物)の記憶によって。

 

 ……何も悔しくなんかない。

 

「これから屋敷に忍び込んで羽香里(はかり)を迎えに行く」

 

「…どこまで…いつまで逃げられるかは分からない。でも、とにかく俺にできる事は…羽香里を幸せにするため“精一杯頑張る”事だけなんだ!!」

 

 大槻ライ(偽物)の目の前で羽香里ちゃん(本物)を助けることを宣言する恋太郎くんを眺めながら。

 

「今の俺にできる精一杯を――“全て”を懸けて!!!」

 

 

 

 最期に恋太郎くんに迷惑をかけたくないと思った。

 

「うん、それでこそ恋太郎くんだ」

 

 だって、どうせ最期なら。

 

 大好きな人(恋太郎くん)には、キレイな私を見ていてほしいから。

 

 

 

 

 

▽▽▽▽▽

 

 失敗した。

 

 時間切れが近いからか動かない身体を恋太郎くんに補助してもらって羽香里ちゃん救助の為に用意した道具を渡す所までは良かった。

 

 けれど、恋太郎くんがまだ目の前にいるこの状況下で消えかけるのは想定外だった。

 

 だって、まだ終わっていない。

 

 日記以外の恋太郎くんや皆との思い出も全て処分できていない。

 

 明日の自分(本物)が、恋太郎くんに近付かないように。

 

 明日の自分(本物)に、恋太郎くんが恋をしないように。

 

 やるべきことが、まだ、たくさんあるんだ。

 

「…っライちゃん!!?」

 

「……あぁ……ごめんねぇ、恋太郎くぅん……。実は丁度恋太郎くんが来る()()に楠莉ちゃんの『睡眠薬』を飲んでて……さっきまでは()()()()で効果を誤魔化してきたんだけど、もう耐えきれなくて……」

 

 笑えてくる。

 

 こんな状況でも、自然に流れるように嘘を吐く大槻ライ(偽物)自身に。

 

 でも、少し嬉しかったりする。

 

 こんなギリギリの状態でも、いつものように嘘を吐ける私自身に。

 

 私にも、大槻ライ(本物)のように、演技の才能があったんだって思えたから。

 

「……私のことは気にしないでいいから。解決するまで、恋太郎くんは羽香里ちゃんのことだけに集中して……」

 

「……うん。本当にありがとう、ライちゃん」

 

 これでいい。

 

 駆け落ちが成功しようと失敗しようと、私はどちらでも良かった。

 

 どちらにしても、恋太郎くんは大槻ライ(偽物)のことを考える余裕なんて無いだろうから。

 

 数ヶ月も経てば、大槻ライ(本物)の前に恋太郎くんが現れたとて大槻ライ(偽物)に対する恋慕なんて消え去っているだろうから。

 

 我ながら、ひどいやつだなぁ…

 

 でもこれで、とりあえずできることは終わった。

 

 ……そうだ。

 

「…それと……お願いしたいことが…いい?」

 

「うん。何でも言って!!」

 

 恋太郎くんの、色々な表情が見たかった。

 

 恋太郎くんのあの絶望した表情を私は目の前で見たことは無かったから。

 

 最期に試してみたかった。

 

 それに、もう大槻ライ(偽物)は恋太郎くんとはお別れだから。

 

 最期くらい…ワガママを言っても許されるよね?

 

「…恋太郎くん……私と……」

 

「お別れしてくれる?」

 

 言い終わってから、ようやく気付いた。

 

 目隠ししているから、恋太郎くんの細かい表情まで私は見ることが出来ないということに。

 

 

 

 バカだなぁ、私。

 

 ごめんなさい、恋太郎くん。

 

 大好きだよ…

 

 

 

 

 

▽▽▽▽▽

 

 消えると、思っていた。

 

 けれど、目を開けると目の前には()()にあるシロがいたので話を聞いた。

 

 ここは大槻ライ(本物)の深層世界で。

 

 大槻ライ(偽物)の代わりに彼が消えることにより、私は消えずにすむらしい。

 

 …………あぁ。

 

 これが大槻ライ(本物)なら『他者による【自己犠牲】』で癇癪を起こすだろうけれど。

 

 私の感情は、何も揺らがなかった。

 

 その事実が、私自身偽物であることを再認識させてくれた。

 

「……そうですか」

 

「ライちゃん?」

 

「……もう、いいんです。私にはもう、悔いはありませんから」

 

 それは嘘偽り無い、本音だった。

 

 本当だったら、深層世界(ここ)から外の出来事なんて分からないけれど。

 

 シロが投影し(作っ)たテレビによって、外の出来事を観ることができた。

 

 だから、恋太郎くんが大槻ライ(本物)に告白している所もバッチリ観ていた。

 

 そして、それを受けた大槻ライ(本物)もやぶさかではない様子なのも。

 

 ……もう、いいんだ。

 

 だって、最初からおかしかったんだ。

 

 大好きな人(恋太郎くん)と目を合わせるだけでダイッキライ!!と叫んでしまう偽物なんて。存在からしておかしかったんだ。

 

 そうだ、唯でさえ恋太郎くんには100人もの運命の人(本物)がいるんだから。

 

 だから、正直恋太郎くんには大槻ライ(本物)をバッサリ脈無しだって切って欲しかった、というのが本音だけれど。

 

 そうだよね。

 

 恋太郎くんはこんな大槻ライ(偽物)を彼女にしてくれるぐらいお人好しで優しい人だから。

 

 だから、私は前任者(シロ)から役割を引き継いだ裏方として。

 

 大槻ライ(本物)が【変身】する為のサポート等色々な仕事を頑張って、

 

 大槻ライ(本物)の、そして恋太郎くんの役に立とうと思った。

 

 そう、思って、いたのに。

 

「…入るよ」

 

「……ライちゃん」

 

 あぁ。

 

 ダメだ、こりゃ。

 

 恋太郎くん(大好きな人)が、来た。

 

 大槻ライ(偽物)の元に来てくれた。それだけで、

 

 さっきの覚悟が、ガラガラと崩れ落ちるのがわかった。

 

 

 

 大槻ライ(偽物)を選んで。

 

 大槻ライ(本物)運命の人(本物)も全て捨てて。

 

 

 

 やっぱり、恋愛は危険だ。

 

 理性では、そんな事は出来っこないってわかりきっているのに。

 

 本能が、そうして欲しいと叫んでいる。

 

 でも、良い機会かもしれない。

 

 良い子の仮面(ペルソナ)を捨てた私を恋太郎くんの前にさらけ出せば、

 

 いくら優しい恋太郎くんでも、愛想を尽くしてくれるはず。

 

 それに、これから恋太郎くんが運命の人(本物)と出会って、彼女が増えていくのであれば、

 

 今ここで大槻ライ(偽物)に見切りをつけてくれた方が、お互いダメージを抑える事が出来る。

 

 

 

『女の子はね、特別扱いされたがるものなの。もし、この時愛城くんが告白を受けでもしたら大変だよ?彼女が増えるだけでも大変なのに、“運命の人”でない“異分子”がグループに存在するだけで崩壊する危険があるの。百害あって一利なしね』

 

『そんなこと、俺が絶対させない!!』

 

『愛城くんは一人しかいないんだよ?どうしても目が届かなくなる場面が出てくる。“運命”レベルで惹かれる彼女ならともかく、そうでない人には耐えきれない場面が絶対出てくる。だから“普通の恋愛”をしたい女の子の告白は最初から拒絶するべきなの。愛城くんと運命の人たちだけじゃなくて、その女の子の為にもね』

 

 

 

 そういえば、こんな事もあの日恋太郎くんの部屋で言ったんだった。

 

 そうだ、所詮運命の人(本物)ではない私が恋太郎くんと付き合えるはずがなかったんだ。

 

 だから、最初から破綻することは決まっていたんだ。

 

 だからこれは、ただの授業だ。

 

 恋太郎くんに運命の人(本物)ではない人と付き合ったらどうなるかを教える為の。

 

 『背中に乳房のひとつやふたつ押しつけられても拒まなければいけない』という卑しい大槻ライ(偽物)の身体を使った高~い授業。

 

 だから、恋太郎くん。

 

 恋太郎くんなら、

 

 大槻ライ(偽物)の手を拒んでくれるよね?取ってくれるよね?

 

 

 

 

 

▽▽▽▽▽

 

【No side】

 

 …………

 

 しばらくの間、

 

 2人の間に、沈黙が流れた。

 

 これまで育んできた思い出や絆が、

 

 恋太郎の心をどうしようもなく揺さぶる。

 

 そして恋太郎は――

 

 

 

 

 選択肢A ☠ ライちゃんの手を取った

 

 選択肢B   ライちゃんの手を拒んだ




※次話が投稿されるまでアンケートを開設します。

※どちらも、最期は『ハッピーエンド』です。過程は異なりますが……

※是非皆さんの清き一票を、お願いします。

恋太郎は――

  • ☠ ライちゃんの手を取った
  •   ライちゃんの手を拒んだ
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