前話更新からちょうど1ヶ月です。遅くなってすいません。難産でした。
ここまで遅くなった理由は、100%言い訳ですが私の中の恋太郎像が皆さんの恋太郎と剥離していないかがとにかく不安だったからです。
選択肢Aも恋太郎は選ばないだろうって?それはそう。
批判等はコメントなどでお願いします。
それでは、本編どうぞ。
『名前の由来?』
『うん。しゅくだいでダッドたちから聞いてこいって』
『ふむ。先にリビングに戻ってくれ』
『わかった』
▽▽▽▽▽
【ライ(偽)side】
「……ごめん。それはできない」
『皆と別れて。私だけと付き合ってください』
…………
わかっていた。恋太郎くんなら、そう答えるだろうって。
想定していた恋太郎くんの答えを聞いて。それでも、ショックを抑えきれないのは。
恋太郎くんに
でも、これでようやくケジメがついた。
こんな醜い本心を明かした、嘘吐きな私を。いくら恋太郎くんでも流石に見限っただろうと。
これからの
もしかしたら、
……そんなことを考えていたからだろうか。
目の前にの恋太郎くんが、今どんな状況なのかを認識するのが遅れた。
バシャバシャバシャ
「ブォエアアッ」
「
「オゲ…ッオゲーッッッ!!!!」
大量の血を吐きだす恋太郎くんに慌てて駆け寄る。
すべての後片付けを終え、恋太郎くんの赤い血が私の身体の至る所に付着している自分自身の身体を見下ろして、私は。
服を脱いでいて良かったな、って。
何処か他人事のように思った。
▽▽▽▽▽
大方を片付けた後血で汚れた私達は順番にシャワーを浴びて身体を清めた。
私も裸ではなく、先ほどの服をもう一度着て恋太郎くんと向き合う。
恋太郎くんの突然の
「……
「ライちゃんは俺に
「……何のことかな?」
「
俺達のこれからを思ってだよね?ライちゃんは優しいから」
「…………」
「まぁ、でもだからってライちゃんの手を取ることも拒むことも。やっぱり、俺には難しかったみたいだ」
「それであの量の血を吐いたの?」
思わずツッコミを挟んでしまったけれど、その後はただ恋太郎くんの独白に耳を傾ける。
「でも、これだけは訂正させてくれ。俺は等しく全員のことを1番大好きだって」
「皆が“運命の人”だからとか、付き合わないと死んでしまうからだとか、
本当に純粋に俺は、皆を愛しているんだ」
「…………本当、敵わないなぁ」
「ライちゃん…」
恋太郎くんの答えは、ほぼ予想していた通りだった。
恋太郎くんは私を、私達の誰かを見捨てることは無い。
つい先ほどまで消えてしまうかもしれないという恐怖で動揺していて、見向きもされなくなるんじゃないか、裏方に回った方が良いんじゃないかとも思っていたけれど。
シロの犠牲のおかげで消える未来もなくなり。
恋太郎くんがというか、人が吐血する所は初めて見たけれど。嘘吐きな私とは正反対の実直で誠実な立ち居振る舞いをする恋太郎くんにそれらの不安は綺麗に消え去った。
けれど、
「
「ライちゃん…?」
その1点が私の心に深く突き刺さった。
分かっている。
恋太郎くんは決して、問題を軽はずみに考えてなどいないということは。
恋太郎くんの言い方から察するに。
けれど、どうしても見過ごせなかった。
「時々考えたことがあるの。『もし、私が恋太郎くんと逆の立場だったらどうしていたか』って」
「それってつまり…ライちゃんのことが大大大大大好きな100人の彼女…ってこと?」
「彼女でも彼氏でもどっちでもいいけれど…私が言いたいのはもし私に運命の人が100人いたらだね」
「それは……」
恋太郎くんが答えに窮する。この話題の意図を分かりかねているみたいだ。
「私は恋太郎くんと違って実直でも誠実でもないただの嘘吐きだから。恋太郎くんみたいに正面から
「…………」
「まぁ、2、3人程度ならまだしも100人相手ともなればどこかで
「仮に絶交された後、《運命の人》のことを話しても信じてもらえないだろうしね」
「……ッ!!」
「その点恋太郎くんは本当にすごいよね。まだ少ないとはいえ、《運命の人》のことに触れなくても全員ちゃんと幸せにしているし…」
「……それは違うよ。俺は皆を幸せにしてるんじゃなく、皆に幸せにしてもらってるだけだから」
「そういう謙虚ところも高評価なんだろうなぁ」
そう笑って間を置く。
そして、ここまでの前置きを入れてようやく。私は本題に入った。
「だからね、私に運命の人が100人いた場合は私1人だけじゃ無理なんだ。
恋太郎くんの助けが無い限りはね」
「ねぇ、恋太郎くん」
「
『――だから…今夜俺と羽香里はこの町を出る事になる。どこへ…いつまで逃げるのか…今はまだ何も分からないけど…』
『でもいつか必ず俺達はここへ――ライちゃんの所へ帰ってくるからっ!!――…《《待っていてくれないかな…っ!!』
「あの時恋太郎くんは、待っていてくれって言ったんだよ?」
「たしかにあの時の私は時間切れが迫っていたから、頼られた所で何も出来なかったけどさ。唐音ちゃん達には頼れたのに。どうして、私だけ除け者にしたのかな?」
「私じゃあ、役に立たない?」
「そんなに私が頼りない?」
「ねぇ、答えてよ。恋太郎くん」
嘘吐き―18
▽▽▽▽▽
『……よめない』
『この文字は日本のカンジというものでな。この文字がライの名前の由来だ』
『痛くて苦しんでいる人がいれば、その人の頼りになって』
『もし自分が痛くて苦しい時には、誰かに頼ることができるように』
『そんな
『
『……わかった。がんばってみる』
▽▽▽▽▽
恋太郎くんは優しくて、とても良い人なのはたしかだ。
でなかったら、こんな面倒な私なんかとうに見捨てられていただろうから。
けれど、唯一の不満点を上げるとすれば。
《運命の人》の事情を知る唯一の共犯者である私を頼ってくれないことだ。
静ちゃんを私達に紹介してくれた時もそうだ。結果から見れば羽香里ちゃんも唐音ちゃんも拒絶することなく
羽香里ちゃんの救出もそうだ。今回はたまたま上手くいったけれど、羽々里さんの対応次第では誰かが犠牲になっていてもおかしくなかった。恋太郎くんは神様に愛されているとしか思えない。恋太郎くんに言ったら厭な顔をするだろうから言わないけれど。
これまで付き合ってきて分かったことがある。
恋太郎くんは恋人には、楽しいことだけ与えてあげたいんだろうなって。
悲しい思いも苦しい思いも味わってほしくない、全部引き受けてあげたい。
そんな恋太郎くんばかりが無理をする関係性を、恋太郎くん自身が望んでいる。
これが無関係な間柄だったら良かった。例えば漫画の登場人物とその読者であったなら、恋太郎くんの異常性に面食らいながらも面白おかしく眺めることができたかもしれないけれど。
恋太郎くんは、こうして私の目の前に存在しているから。
他の皆は《運命の人》の事情を恋太郎くんに聞かされていないから知るよしも無いけれど、唯一知ってしまっている私は、どうしても気に懸けてしまうから。
それに、第一。
私にとっての恋人は、支えたり支えられたり、頼ったり頼られたりしながら。ふたりで、皆で笑いながら歩いて行ける関係だから。
この際だからと、恋太郎くんにぶちまけることにした。
「…………ごめん」
私の問いに対する恋太郎くんの答えは、謝罪だった。
正座の体勢から両手を重ねて前に置き、身体を前に倒す土下座の動き。
その背筋は、和室の凜とした空気にも負けないぐらいピンと張っていた。
「あの時の俺は羽香里を助けるのは、彼氏である俺だけの問題だって勘違いしていたんだ」
「…そんな訳ないのにな。羽香里のことが大好きなのは、俺だけじゃないのに」
「…唐音も、静ちゃんも、凪乃も、楠莉先輩も、ライちゃんも。
「そんなことされたら相手はどう思うのかなんて、考えればすぐ分かるはずなのにな……」
「『待っていてくれ』って唐音たちに言った時、そう返された時になってようやく気づいた。本当ダメダメな彼氏だよ、俺ってやつは…」
恋太郎くんは、自分を責めていた。
私達の前ではいつも着丈に振る舞い、『大丈夫だから』と鼓舞することが多かった恋太郎くんが。
高校に入ってからは全く見かけなくなったけれど、中学時代にはそれなりに目撃していたそんな恋太郎くんの頭を。
私は、黙って胸元へと抱き込んだ。
「……ッ!!ラ、ライちゃ…っ!!」
「いいから」
慌てて離れようとする恋太郎くんを抑える。『ムッ!!』と声を上げた後恋太郎くんは無理に離れようとはしなくなった。胸元で感じる恋太郎くんの呼吸に微かに身体を震わせながら、私は恋太郎くんの背中をポンポンと叩き続けた。
慌てる恋太郎くんと、恋太郎くんを抱き込む私。
ようやく落ち着いたのか、恋太郎くんがぽつりと呟いた。
「……それなら、俺だってライちゃんに言いたい事があるよ」
言いたい事?
「なに?」
「俺はライちゃんが消えるって聞いた時、生きた心地がしなかった」
「…………」
「ライちゃんに別れを切り出されたことがショックだったのは否定しないけど、それよりも俺は『大好きなライちゃんが消えてしまう』ことがただただ怖かった。
ライちゃんがいない未来を考えるだけで、怖くて怖くて地面が消えたように感じた」
……そっか。
「……ごめんね」
「……どうして、教えてくれなかったんだ?」
……これは嘘を吐かず、正直にありのままを伝えるしかないか。
「…私の問題に恋太郎くんを巻き込みたくなかったからもあるけれど、どうせ最期ならキレイな私を見ていてほしかったからかな」
「……ッ!!そっか……。この気持ちがあの時皆にやったことなんだね。思っていた以上に、寂しくて、悲しいや…」
「…うん。だから、恋太郎くんがダメダメな彼氏なら、私はダメダメな彼女だね」
「そんなことな…ッ!!」
否定しようとする恋太郎くんを強く抱きしめて止める。まだ、言いたいことは残っているから。
「だから、一緒にがんばろう?ダメダメだってことは、これからは上にしか上がらないってことだから。
お互いにダメな所は指摘して、頼れるところは頼って、一緒に立派な彼氏彼女になろう?」
「……そうだね」
そうだ。
別に最初から完璧である必要なんてなかったんだ。
会話して、触れ合って。
嫌なことは嫌だってちゃんと伝えて、喧嘩したら仲直りして。
それらを重ねていくうちに段々と成長していけば良かったんだ。
嫌なことを伝えたら、汚い私を見せたら関係が壊れるかもしれないと不安がっていたけれど。終わった今となっては、そうしたことに達成感すら覚えている。
これから先も、私はネガティブになって落ち込んで一人抱え込むことがあるだろう。
恋太郎くんも私たちの為に無意識に無理を重ねることもあるだろう。
だから、そんな時はお互いがお互いに言ってやればいいんだ。
キミは、そんな風に生きないでくれって。
私(俺)を、頼ってくれって。
そんなことで、よかったんだ。
「これからもよろしくね、恋太郎くん」
「俺の方こそ!よろしく、ライちゃん!!」
「……話は終わったかしら?」
「「……ッ!!?」」
「ライさん……」
「…………」
※ちなみに、母親である鈴(ベルノ、リン)の名付け理由はまんま【嘘(Lie)】。
嘘を駆使しながらも社会という荒波を乗り越えて欲しいという思いを込めているとかいないとか。
※次話がオリ主編最終回です。最期までお付き合いください。