0人目の嘘吐き彼女   作:モーン21

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この話と次話以降の【フードファイトフェスティバス】はライダー(姉)視点で進めていく予定です。

【6/8 5:41追記】致命的な誤字修正
「恋太郎先輩と馴れ合うつもり~」→「恋太郎先輩以外と馴れ合うつもり~」


裏24話 サンドウィッチパーティー

 結局私は、日本(ここ)でも友達が作れないらしい。

 

 私は人とズレているからか、アメリカの(小さい)頃から同い年の友達が作れなかった。

 

 だから、日本に来てからは特に周りの人をよく見ることにした。

 周りの人が私にどんな反応を求めているか、この場面ではどう返すべきなのか。

 直接周りの人に聞いたり、()()()()したおかげで当初は上手くいっていたと思う。

 

 けれど、

 

『大槻、俺と付き合ってくれ!』

 

『……ご、ごめんなさい』

 

『…………』

 

『さ、さようなら!!』

 

 私に告白して来た人は隣のクラスの男の子だった。たしか、元・友達がその男の子が好きなのかよく話題に出していたから覚えている。たしか、サッカーが上手いんだとか。

 

 別に、その男の子と付き合うことがイヤだった訳じゃないけれど。元・友達が男の子が好きなのに私がOKするのも良くないと思ってしっかり後腐れなく断った後私はその場を後にした。これで、告白失敗により隙が出来た男の子に元・友達がアタックをかけてくれればと思いながら。

 

 ……でも結果はこの通り。

 

 悪口を言われた理由はこれだけじゃないみたいだけれど。

 

 私が男の子の告白を断ったことが原因で私は友達を失った。

 

 ここまで友達が出来ないとなると人間不信になりそうね。

 

 どうすればよかったのよと一人愚痴りながら、私はその場を後にした。

 

 教室にある忘れ物の回収を諦めて帰路につく途中、グラウンドに誰かがいるのが見えた。

 

 日が落ち始め夕焼けが見えるグラウンドで、高く設定されたバーを目掛け彼はただ愚直に飛び続けている。

 

 周りに誰もいない、孤独に飛び続ける物珍しいその光景に私は目を奪われた。

 

 その男の子の名は、愛城恋太郎。

 

 私が初めて彼を目にした時だった。

 

 

 

 

 

▽▽▽▽▽

 

【ライダー(姉)side】

 

「それじゃあね、華暮(かくれ)さん。教科書ありがとう。助かったわ」

 

「い…いえ…!こちらこそ……??」

 

 午前中最後の授業が終わる。朝バタバタしていたこともあって教科書を忘れてしまった大槻ライ()に対し快く貸してくれた華暮にお礼を伝えて恋太郎たちと一緒に屋上へと向かう。屋上には既に羽々里さんとお付きのメイドの2人がいて、今日も既に私達が座る為のマットが敷かれている他、日除け用の大きい傘の傍に大きい鍋とティーポットを載せるテーブルも用意されていた。相変わらず準備の手際が良いわね、あのメイド。うちにも欲しくなるわ。

 

 少し遅れて従姉(ねえ)さんが屋上に来て、全員揃ってのいただきますをする直前のこと。

 

「おべんと忘れちゃったのだーっ!!」

 

 従姉さんが頭を抱えながらそう叫ぶ。屋上(ここ)に来るまでの道中で気付かなかったのかと問いたくもなるけれど、今の私にとっては都合が良い。私は傍に置いていた大きめのバスケットを手前に出しながら声を掛けようとした……

 

「俺のあげますよ。ちょっと購買行ってきますね」 シュバッ

 

「従姉さ…あ……」

 

「“音速の”『(しもべ)…!!』」

 

 私よりも先に恋太郎が自身の弁当を従姉さんに渡し、すぐに屋上から出て行ってしまった。その早さは静がそう溢すほどのものだった。

 

「ごめんなー?恋太郎……あれ、()()()()どうしたのだ?」

 

「……いいえ、なんでもないわ」

 

「そういえば、今日は弁当箱じゃないんですねライダーさん。ライダーさんのバスケットなんて始めて見ました」

 

「花園羽香里の言う通り。珍しい」

 

「そうね~、何が入っているのか気になるわ~」

 

「あんたらが言うか」*1

 

 今日がライダー()の日だということを知っている皆がそう反応する。今日の朝は皆の集団登校に混ざれなかったから今まで伝えられなかったけれど、皆の助けが必要になる訳だから話を振ってくれた皆に感謝しながら私は口を開いた。

 

「えぇ。今日はサンドウィッチを用意したから」

 

「おぉ~!!美味しそうなのだ~!!」

 

 1つのバスケットを開帳して中身を皆に見せる。中身を確認した従姉さんがそう反応してくれたことに内心喜びながら私は次々と別のバスケットを開いていく。

 

「『これは……』『BLTサンドと…』『フルーツサンド』『かい?』」

 

羽「カツサンドにメンチカツサンド……焼きそばパンに目玉焼きパンもありますね」

 

マ「料理上手なのね~!」

 

「いや、多すぎない?」

 

凪「数十個のサンドウィッチ。どう考えても1人用とは思えない」

 

 ……そうなのよね。

 

 当然来ると思っていた唐音と凪乃の指摘に、私は遠い目になりながら答える。

 

「…先日お爺様が取引先から大量のパンを受け取ってね。もちろん冷凍保存することも考えたんだけど……」

 

『ちなみに、冷凍保存したらこのパンたちは爆発するとのウワサがあるのじゃ…』

 

『えぇ……――売り物として大丈夫なの?』

 

 

「…だからこうして飽きないように色々アレンジして持ってきた訳。

 ここに持ってきたのは、皆にも消費を手伝ってほしかったから」

 

「どんだけもらったのよ」

 

「ちなみに、家にはここにある物の倍以上残っているわ」

 

「どんだけもらったのよ」

 

『すまん…ライ、ライちゃん……』

 

 申し訳なさそうにしながら頭を下げるお爺様。その取引先は『提供する全品質を本気で』のモットーで知られる“本気グループ”の1つらしく、パン作りと営業にも命を掛けているらしく、とても断れる空気ではなかったらしい。

 冷凍保存したら爆発するっていうのは流石にウソだと思いたいけれど、あの“本気グループ”ならやりかねんというのが普段から付き合いのあるお爺様の見解。だから昨日は夜遅くまで皆に振る舞う為のサンドウィッチ作りに勤しんでいたという訳。

 まぁ、そのおかげで寝坊したおかげで朝はバタバタだったし、朝食にサンドウィッチをお腹いっぱい食べたライちゃんは食べ終わってからずっと深層世界(あそこ)でお昼寝しているんだけれども。……私?私は平気よ。お姉ちゃんだから。

 

 そんなこんなで、恋太郎を省いた皆で昼食を取ることになった。

 

「目玉焼きパン、昨日あったラピュタで出てたから食べたかったのだ~!」

 

「“この”『カツサンド』『馬』『馬』」

 

 従姉さんと静がそう反応を返してくれたことを嬉しく思いながら、私も箸を進めようとするけれど、どうしても今朝サンドウィッチを食べ過ぎて少し飽きてしまった私は進捗が遅くなってしまう。

 

 ライちゃんを起こして()()()を使おうかとも思ったけれど。

 

「ライダーさん、私の卵焼きと交換してもらえませんか?」

 

「私の唐揚げと交換してあげてもいいんだからね!!」

 

「サプリメント」

 

「フカヒレスープ」

 

 私の状況を察した羽香里を皮切りに皆が次々と自身の弁当?から食べ物を交換してくれたお陰で問題なく昼食を取ることができた。まぁ、私のサンドウィッチだけじゃなくて、従姉さんがもらった恋太郎のお弁当ともちゃっかり交換しているみたいだけれど。

 

 そうしている内に持ってきたサンドウィッチが粗方無くなった。全員に好評だったことからしても流石は本気グループね。皆に感謝していると、ようやく恋太郎が戻ってきた。

 

「ごめん、遅くなった!!……あれ?」

 

「遅いわよ恋太郎!!どこに行ってたのよ!!?」

 

「ごめん、ちょっと色々あって……あれ、ライ。それは?」

 

 唐音に怒られて首をすくめる恋太郎に事情を説明する。そして、分けておいていた恋太郎用のそれを渡した。

 

「これ、ライちゃんがあなた用に手作りしたサンドウィッチ……」

 

「本当!!?ありがたくいただくよ!!」

 

「反応が早いわね…」

 

 食い気味に反応した割に丁寧に受け取った恋太郎は、いただきますと呟いた後にサンドウィッチに食らいついた。

 

 目を閉じながら咀嚼を繰り返す恋太郎。その様子を私を含めた全員で見守っていると。

 

 ――…う~ん、お姉ちゃん……今何時…?

 

 …あ、ライちゃんが起きた。

 

「おいしいっ!!BLTサンドは丁寧に焼かれたベーコンのカリッとした香ばしさ、トマトやキュウリのみずみずしい食感が口いっぱいに広がるし。オレンジサンドは厚めのハムの塩気とオレンジの甘酸っぱさは予想以上に相性がよく、それらを包み込むレタスで美しいバランスが出来上がっている!

 うん!すっごくおいしいっ!!ありがとう、ライちゃん!!」

 

「どこの食レポタレントよ」

 

「…?……何の話?――良かったわね、ライちゃん。」

 

 寝起きの為か未だに状況が把握できていないライちゃん。そんな彼女に主導権を譲ろうとしたその時だった。

 

「オレンジサンドなんて初めて食べたのだ!甘くてしょっぱくてうめーのだ!!」

 

 残っていたオレンジサンドを手に取り口に含む従姉さんのそのコメントにより、私は昔々のある日のことを思い出した。

 

 

 

 

 

▽▽▽▽▽

 

『ねぇねぇねぇ、ダッド!!あっちにね、バナナがあったよ!!一緒に挟んだらおいしくなるかな!?やってみてもいい?』

 

『……フルーツを使ってみたいのかね?なら、バナナじゃなくてオレンジでもいいか?

そっちなら、今作っているハムとレタスに合わせられると思うのでね』

 

『オレンジ!わー、オレンジもいいねー!!じゃあじゃあ、わたしが皮をむくねっ!』

 

『むいたら、まな板の上に置いてくれ。輪切りにしてしまうから』

 

 

 

『おいしい~!!ダッドのサンドウィッチ、とってもとっても元気の出る味だ~!オレンジのも甘くて、しょっぱくて、おいしーね!!すごいすごーい!!』

 

『ふっ…お褒めにあずかり光栄だ。』

 

 

 

『……へぇ、中々おいしいじゃない』

 

『やったー!!マムあのね、それはね、いっぱい優しい味なんだよ!わたしがやりたーいって言ったこと、ダッド、ダメーって言わなかったもん

だから、優しいダッドが作った、優しい味のサンドウィッチなんだよ!』

 

『へ~~~?』

 

『……言いたいことがあるならさっさと言いたまえ』

 

 

 

 

 

▽▽▽▽▽

 

 ……私が初めて作った料理は、夜遅くまで仕事をするマムに差し入れする為のダッドの手を借りて作ったサンドウィッチだったわね。

 

 ――お姉ちゃん?――何でも無いわ。

 

 その日の放課後、私達は皆を我が家へ招待した。前回ライちゃんが招待した時は羽香里と唐音の2人だけだったけど、今回は人数が増えたのもあって事前にお爺様を通して黒服の人達にサポートをお願いした。

 和風ツナサンドや明太子サンドといった昼食に用意したものとは違うアレンジのものも用意しておいたから食べきれるかなとも思っていたけれど、最期は愛の力を発動させた恋太郎がライちゃん達彼女達のあーんしてもらったことにより食べきることに成功した。最期の一口が喉を通った後は黒服の人達も含めて全員が拍手喝采していたわね。

 

 そういえば、恋太郎に今日用意した色々なサンドウィッチのレシピを教えてくれと頼まれたから教えたけれど、料理に目覚めたのかしら?まぁ、レシピと一緒に揚げ物の水気をきちんと切る等の基礎的な注意点は教えたけれど。

 素直に感謝を伝えてくる恋太郎を見て、私自身も得も言われぬ高揚感を覚えた。

 

 ……ダッドもあの時、今の私と同じ気持ちだったのかしらね。

 それからは何も特筆するような事はなにもなく、朝を迎え私達は学校へと登校した。

 

▽▽▽▽▽

 

 ねぇ、恋太郎。

 

 私はライちゃんの記憶から、貴方が将来、100人もの運命の人と結ばれるということは知っているわ。

 

 それは貴方にとって避けられない不可抗力のもの。貴方自身が悪い訳じゃないというのは百も承知。それに、貴方自身が良い人だっていうのは、あの日の夜充分分からされたから。

 

 だから、私はライちゃんの呪いを代わりに引き受けた。貴方にならライちゃんを任せられると思えたから。貴方程の良い人と目を合わせられないことが、私の罰として相応しいと思えたから。

 

 でもね。

 

 貴方がどんなに清廉潔白な良い人でも、貴方と結ばれる運命の人がそうである保証はどこにもないの。

 

「…と言う次第でございまして…原賀(はらが)胡桃(くるみ)さんを新しい彼女として迎え入れさせていただいてもよろしいでしょうか……!」

 

「言っとくけど…あたしは別に恋太郎(れんたろう)先輩以外と馴れ合うつもりないから」

 

 人間関係は、お互いの歩み寄りが必要。それでもタイミングと運によるすれ違いによって仲違いが発生することはもちろんあるけれど。

 片方がどれだけ相手に尽くそうとしても、そもそももう片方がそれを受け入れなければ意味が無いの。

 

 …もっとも、皆とライちゃん()の友達という距離感を開けている私が言えた義理じゃないけれど。

 

*1
凪乃:サプリメントのみ、羽々里:屋上で盛られたスープ




※『BLTサンド』と『フルーツサンド』の色々はウマ娘のアドマイヤベガ【夏合宿イベント】より。久しぶりに読んでみたらすごく良かった。(小並感)
 ライダー(姉)のキャラ造形にアヤベさんを大分参考にしているため、これからも出てくるかもしれません。

※恋太郎はオリ主により前日に教えを受けていたおかげで、胡桃の為にメンチカツサンドを用意した時は油はねすることはなかった模様。
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