0人目の嘘吐き彼女   作:モーン21

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少し遅れました。

気がつけばあと半月で100カノ3期ですね。時の流れが恐ろしいのと同時に楽しみです。

ハーメルンの運営さん作の【フォント変更機能】を私もよく活用しているんですが、このフォントの一部に『花園フォントA、B』なる物があることにようやく気付きました。これからどんどん使わせていただきます。


25話 開幕!フードファイトフェスティバル 

【大槻ライ;中学2年生の頃】

 

(っしゃーマジ仕事おわったおわったー)

 

(今日も1日がんばったウホ)

 

(道ゆく全員(みんな)がアタシのツインテールを見てる……!)

 

(猫吸いて~)

 

(来世は猫に…)

 

 学校から帰宅して、途中ですれ違った人達1人1人に()()する。そうすることで読み取った各人の記憶をノートに書き留める。アメリカにいた頃世界的俳優のベルノさんに教えて貰ったこの練習も続けてきて早数年。書き記したノートも気がつけば数十冊に上る。

 

 メソッド演技法。

 

 演じる役柄の内面に注目し、感情を追体験することによって、より自然でリアリステックな演技・表現を行う特徴を持つ演技理論。

 

『せっかく変身できるんですもの。だったら生かしてなんぼじゃないかしら?』

 

 私にとって、変身は物心ついた時から当たり前にできる普通のこと。ダッドとマムにキツく言われたことで家族以外の人前で披露することこそしなかったけれど、最初の頃はどうして禁止されているのかが分からずに不貞腐れることが多かった。

 

 その時にベルノさんに教えて貰った。

 

 将来、マムみたいな女優さんになりたいのなら毎日続けて練習するようにって。

 

 ……うん。今日もバッチリ。

 

 最後に変身した『仕事に疲れたOL』の情報をノートに書き留めて一息をつく。

 

 この練習で多種多様な人々の思考と記憶を読み取れたおかげで私自身キャラクターの理解度が上がってきたのが分かる。ドラマに出てくる俳優にも変身す(化け)ることでプロの演技法も学べられる。1日1日、徐々に自身のスキルが上がることが実感できて私は思わず頬をほころばせた。

 

 …………

 

この上達した演技を見せる相手はいないけれど。

 

 ダッドとマムが()()()()()()()()もう2年になる。私がアメリカから日本に移ったのは私を連れて仕事に行けないからだとお爺様から聞いている。だから、いつか2人が帰ってきたら私の成長を見せるつもりだ。

 

 2人に言われたとおり演技以外の家事も勉強もがんばっている。バタバしていたタ1年生の頃よりも慣れてきたからか自由な時間が増えた。当初は黒服の人に任せていた屋敷の掃除や料理も自分1人で出来るようになった。

 

 ……まぁ、2人に言われていた【友達】は1年前に裏切られたあの時以降1人もできていないのだけれど。

 

 朝起きて、ランニングの後に朝食。学校を終えた放課後買い物と日課のメニューをこなした後は夕食。お爺様は会長業で忙しい為家を空けることが多いから学校での業務連絡以外では誰かと会話を交わすことはほぼ無いと言える日常。

 

 …………

 

 2人が戻るまでの間ぐらい、1人でも大丈夫だと思っていたけれど。

 

 存外、私は寂しがりだったようね。

 

 

 

 

▽▽▽▽▽

 

【ライダー(姉)side】

 

 7人目の彼女、原賀(はらが)胡桃(くるみ)を恋太郎が私達に紹介した日から数日後。

 

 ライちゃんを含む皆は恋太郎の提案でとある所に来ていた。

 

「ルールは説明不要!!とにかく食って食って食いまくった者が勝者だあァーーッッ!!!」

 

「ものすごい熱量ね…!」

 

「それではルール説明を行います」

 

「説明不要じゃねーのかよ」

 

『今日もツッコミ冴えてるね、唐音ちゃん』

 

 フードファイトフェスティバル。

 

 新しい彼女である原賀さんが恋太郎の説明曰くはらぺこ系らしい。ライちゃん達と馴染もうとしない原賀さんが得意な大食いを通して、皆が原賀さんと仲良くなる取っ掛かりになれればという恋太郎の意図はおそらくライちゃん以外の皆も察していることだろう。

 

 ……従姉(ねえ)さんはどうだろうか。…うん、気にしない方がいいわね。

 

 最初は『そんな大会一人で優勝できる』からと個人で参加しようとした原賀さんだけれど、参加要項に【中学生以下は保護者同伴】という決まりのおかげで原賀さんは私達と一緒のグループで参加することになった。

 それにしても、初対面の原賀さんに対してもママ呼びをお願いする辺り、羽々里さんの可愛いもの好き、グイグイ行ける所は筋金入りと言える。よっぽどママと呼ばれたいのね。

 

 この大会の参加人数は10人……いや、この世界(拙作)では11人だったわね。よかったわ。男性(恋太郎)もしくは成人(羽々里さん)は1人で2人換算だから、原賀さん含めた私達9人全員で参加できる辺り本当に()()()()()()わ。

 

 さて、現在【大槻ライ】(身体)の主導権はライちゃんの為、私は深層世界の自室でのんびりしている。椅子に座り紅茶を含みながら眺める外の世界で行われるフェスティバルをテレビのモニターで眺める光景は、さながら映画を見ているよう。

 

「…で?あんたのその格好は何よ」

 

『胡桃ちゃんのフード見て良いなって思ったからかな』

 

「ならパーカーにしなさいよ。なんで黄色のカッパなのよ」

 

『うーん、様式美?』

 

「答えになってないのよ」

 

 隣にいる唐音にライちゃんが突っ込まれている間に司会者のルール説明が入る。

 

 ・チーム制の全5回戦。各回戦参加人数に制限なし。

 

 ・各回戦ごとに順位に応じたポイントを獲得し、合計の高かったチームが優勝。

 

 と、大会としては単純なルールなことを考慮してか女司会者のセクシーポーズが説明の間モニターに大きく映し出されていたのだけれど、文字しかない拙作ではどうしようもないので割愛。律儀に唐音が『なんなのよ背景!!!』と女司会者に突っ込んでいたわね。

 

『――ですが!まずはその全5回戦の前に“予選”を行います!そこで食べていただく食べ物は――!!』

 

 セクシーポーズを止めた女司会者は何やらカメラに背を向けて準備を始める。再度前を向いた時には先ほどまで持っていなかった予選のお題らしき食べ物を携えていた。

 

“ご飯”です!!!そして会場にはありとあらゆる【おかず】が並んでいますが―――それらはいくら食べてもカウントされません!とにかくご飯をどれだけ食べれるかの勝負になります!』

 

恋「なるほど…ご飯だけひたすら食べ続けるのは苦しいけど…」

 

凪「おかずを食べれば胃が満たされて非効率的」

 

『駆け引きが必要っちゅうことじゃな』

 

 ……なるほど。いや私も何か言おうと思ったけれど、前者3人の返しが満点すぎて何も言うことがない。3人とも頭の回転がなめらかすぎる。ふつうに感動するわ。

 

恋「さて…予選には誰が出ようか?」

 

楠「全員で出るのが一番食べれるのだ!」

 

 従姉さんがそう言うが、本戦のことも考慮して予選で全力を出すわけには…と、二の足を踏む恋太郎。

 

 が、ここで1つ問題が起きた。

 

「別にいいよどうでも。予選もそのあとの5回戦もあたしは全部出るから。あんた達は出ても出なくても一緒だよ」

 

「なによそれ!私達は戦力外だってのっ!?」

 

「殴るなら俺を殴ってくれッ!!!」 バッ!!

 

「別に殴りかかる程キレてないわよ。どんな短気だと思ってんだ人の事」

 

『だって、唐音ちゃんだし』

 

「おう、ちょっと(ツラ)貸しなさいよ」

 

「まあまあまあまあ」

 

 原賀さんの余計な一言に唐音が突っかかる。一触即発な空気を察したのか恋太郎とライちゃんが2人に介入する。恋太郎はともかくライちゃんに揶揄われた唐音が今度はライちゃんに向くが羽香里が後ろから抑えることで事なきを得る。まぁ、【新入りの原賀さんへのヘイトを自分に向ける】ライちゃんの意図は唐音にも伝わっていたのか、唐音の語気も冗談混じりだった。

 

 結局、予選には原賀さんと恋太郎の2人が出る事に。まだ原賀さんとライちゃんたち皆の仲が深まりきっていない今の状態だと危ないと恋太郎は判断したのか、残った私達は胃を温存してくれという恋太郎の言葉に私達全員従うことになった。

 

 そして、予選開始。

 

羽「恋太郎君どうぞ!」

 

恋「ありがとう…いただきます!」

 

母「さぁ胡桃(くるみ)たんとお食べ♥」

 

「あんたに母親ヅラされる覚えないんだよ」

 

 参加者2人に不参加の私達7人が順番にご飯をよそう。

不参加の私達が準備をすることで2人はご飯を食べることのみに集中できる。

特にルールで禁止されている訳でもないし、他のグループも何組か同じようにしているから大丈夫でしょう。

 

 しかし、ここで更に問題発生。

 

「さあ食べるぞ胡桃っ!…胡桃?」 パクパクもぐもぐ

 

「焼き肉…!!とんかつ…!!」 じゅるりるッ

 

「開始ゼロ(くち)で」

 

「言われただろ胡桃(くるみ)おかずは食べただけ不利に―――」

 

「分かってるよ…ッ!!いただきます…!!」

 

 原賀さんが用意されたおかずに目を奪われていた。大量のご飯を食べ飽きた時用に用意されたおかずにまさか開始早々お邪魔されるとは、きっと運営側も想定していなかったでしょうね。

 

 けれど、ここで何を思ったのか恋太郎。

 

唐「恋太郎(れんたろう)…っ!?」

 

 勢いよく席を立つと用意されたおかずへ一目散へと駆けていった。

 

「しっこ漏れ――」

 

『楠莉ちゃん――従姉さん』

 

「『食事中ぞ』」

 

 下品なことを言いかける従姉さんの口を慌てて閉じさせている内に恋太郎が戻ってきた。その彼の手にはこんがり焼き上がったステーキが鎮座していた。

 

「おかず――食べていいぞ胡桃っ!」 タン!!

 

「は…!?なにわけ分かんない事――」

 

 さっきと正反対のことを言われた原賀さんは混乱する。そうよね。ルール的にも食べない方が合理的。食べるにしても、ご飯に飽き始めた頃に少しだけ……

 

 

 

 

 

「言ってんだよっ!!」 バクーっ!!

 

「食欲が理性超越してんぞ」

 

 

 

 なんてことはなく、がっつりステーキに齧りついていた。

 原賀さんの理性()とは正反対の食欲(行動)に唐音も呆れるしかない。

 

「何だあの子開始早々おかずを…」 「バカか…?」 「ルールを理解してないんじゃ…」 ザワザワザワ

 

「誰だ今バカって言ったやつ名乗り出ろ!!!!そっちの方から聞こえたぞ!!!!」

 

恋太郎(れんたろう)君」

 

 そんな原賀さんの様子を周りの参加者も見ていたのでしょう。口々に原賀さんへの驚きと(さげず)む声が聞こえてくるが、彼女をバカにされた恋太郎がこれに反発。ガンギマリの様子で今にも殴りかかろうとする恋太郎をまたも羽香里が止めることで事なきを得た。

 

 ……恋太郎の背中に胸を押し当てた羽香里の様子が少しおかしかった気がしたけれど、そっとしておきましょう。唐音が何とか対処するでしょうし。

 

唐「いや…でも本当に何考えてんのよ恋太郎」

 

ラ(妹)『何か作戦があるの?』

 

恋「見ててくれ…!」

 

唐「見ろったって…」

 

 落ち着いた恋太郎に唐音とライちゃんがそう尋ねるも、恋太郎はそう答えるにとどめた。仕方なく言われたとおりに原賀さんの方を見てみると。

 

 

 

 

 

「おいっしいいいいぃ~~~!!♥♥」 パァァ~♥

 

「誰これ」

 

 ……???

 

 それまでの取っつきにくい不機嫌ですと言わんばかりの表情から一転、幸福ですと言わんばかりの表情で頬を赤らめながら箸を進める原賀さんの姿がそこにあった。

 

「おいしいい~~~~!!♥」 パクパク

 

「な…なんて――」

 

『これは…すごいね、お姉ちゃん――そうね』

 

 唐音もライちゃんも口には出さないが、思っていることはきっと同じだろう。

 

 なんて、美味しそうにたべるんだろう。と

 

 そして、そう思うのは決して私達だけではなかった。

 

「――うまそうに食べるんだ」 ゴクリッ 「あの子……!!」

 

 そう、開始早々おかずに手を伸ばすというありえない行動を取った原賀さんに視線を向けていた他参加者達も徐々に原賀さんの様子に気がつき始めた。

 

 大食いのお題である【ご飯】のお供に【おかず】を食べるのではなく、美味しい【おかず】を食べるお供に【ご飯】を食べて幸せそうに顔をほころばせる原賀さんの様子に、徐々に知らず知らずの内に他参加者はペースを乱されていた。

 

「な…なあ…米だけ食うのって…」 「ああ…」

 

 たった1人でもいい。そう誤認した人が1人でも現れればすぐだった。

 

「お…俺もちょっとだけ食っちゃおうかな…」 「お、俺も…!」 ガタガタッ!

 

「ちょっとなら大丈夫だろ…!」 「ヤバい皆立ち始めた、いいおかず取られる!」 ガタガタッ!!

 

 集団心理というのは恐ろしい。予選開始前にあれだけ説明があったにも関わらず、今ではトラップである【おかず】を他参加者に奪われてたまるかと、一目散に駆けていく参加者が大勢現れた。

 

羽「まさか…これが恋太郎(れんたろう)君の完璧な計画…」

 

恋「ああ…!おかわりください!

 

楠「はいなのだ恋太郎!」

 

 恋太郎曰く、原賀さんはおかずを食べてもすぐに消化してお腹が()くから胃への負担は少ない。けれど、原賀さんにつられて食べた他の参加者達はそうはいかない。“皆で”食べる分には原賀さんがリードする一方だという。

 

 それにしても、恋太郎も原賀さんに出会って間もないというのに即興でこの作戦を思いついたのね。ライちゃん達7人を温存してたった2人での予選参加というハンデをこんな形で巻き返すとは。恋太郎の彼女1人1人への理解力、更に咄嗟の発想力と行動力には目を光るものがある。

 

 そして、恋太郎は計画を立案するだけでは終わらなかった。

 

「おかわりください!」 もぐもぐパクパク

 

母「はい、恋太郎ちゃん♥」

 

「おかわりください!」 もぐもぐパクパク

 

「『お持ちしましたわ』」

 

「おかわりください!」 もぐもぐパクパク

 

ラ(妹)『はい、どーぞ♥』

 

 

 

 …………

 

「おかわりください!」 もぐもぐパクパク

 

「んで、あんたはよくもまあ米だけ食ってられるわね!!!!」

 

 わんこそばのように淡々と一定のペースで食べ続ける恋太郎に耐えきれなくなったのか、ついに唐音が突っ込んだ。

 けれど、この完璧な計画には1つの欠点がある。それは、他参加者によってご飯のお供の【おかず】がほとんどなくなってしまうこと。

 開始早々に恋太郎が取りに行った【おかず】は全部原賀さん用のもの。つまり、恋太郎用の【おかず】は皆無。今から取りに行くことも考えたが、肝心の恋太郎自身の作戦により【おかず】はほとんど残っていなかった。

 

「とっくに飽きているはず」

 

「無理はしないでください…!」

 

 【ご飯】だけを食べる。飽きが来て当たり前。凪乃と羽香里が心配そうにそう声をかけるが。全然大丈夫だと恋太郎は答える。

 

 ライちゃんがよそったご飯…羽香里がよそったご飯…唐音がよそったご飯。

 静が…凪乃(なの)が…従姉(ねえ)さんが…羽々里(ははり)さんがよそってくれたご飯――

 

 

 

 全部、味が違うんだ…!!

 

 

 

 ………うわぁ。

 

 

 

 そう恋太郎が答えた時、正直申し訳ないと思いながら引いてしまった。

 そんなわけ無いでしょう、と。お米と水の配分とか炊き上がりまでの時間とか。その辺りの個性の違いで味が違うというのならまだしも、たかがお米のよそい方程度で味が変わる訳ないでしょうと。

 けれど、こうして箸が止まらない上に彼がウソを吐いていないことも分かる。

 恋太郎は彼女達が好き好き大好きなモンスターなのね……

 

 一歩引いた立ち位置からそう評価を落とした私だけれど。

 

 

 

「「「「キュン…!!!!♥♥♥」」」」

 

 …………

 

 どっこいどっこいね。

なんというか、私が寝静まった後にマムがダッドに甘えている所を目撃してしまった気恥ずかしさを感じる。

 

 深層世界にいる私にまで皆の甘い空気が入ってくるのが分かった私は、しばしここから立ち去ることにした。

 

 ――ライちゃん、()()()()()()()()()()()()()主導権譲ってちょうだい?

 

 ――え?あぁ…そう。あんまり遠くまで行かないでね。

 

 そうライちゃんに伝え、深層世界から現実へと移動した私はすぐに()()した。

 

 

 

 

 

▽▽▽▽▽

 

 変身薬により変身できるのは、決して他人だけではない。

 

 【過去の姿】、つまり子供の頃の自分に変身することもあれば、自己の想像力に依存するが、【自分の理想の未来の姿】になることもできるが、ここでは割愛する。

 

 ここで注目するのは、【過去の姿】。

 

 子供の頃の姿以外にも、過去に実際に体験したこと。つまり、【高熱が出て体調不良の私】や【転んで足の骨を折った私】といったものにも変身することができる。

 

 ということはつまり、()()()()()()()()により変化した私自身に変身できるという訳だ。

 

 

 

 

 

▽▽▽▽▽

 

 ……うん、成功ね。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()私は軽く1度息を吐く。

 

 私が変身したのは、【新しい自分に生まれ変わる薬】。以前屋上で失敗した結果【入れ替わり】が発生した薬の成功したものだ。

 

 後日、従姉さんのお手伝いとしてもう1度この薬を爆発することなく摂取した私達は()()()()身体から抜け出した魂の状態になることができた。

 お互いの身体に入ったり、他の物体に入ろうとしたり。魂の状態で空を飛んで遊んだり。実験は概ね成功した。

 

 まぁ、従姉さんがあと1歩の所で戻れなくなった時には私とライちゃんはすごく焦ったものだけれど。そんなことは今はどうでもいいわね。

 

 皆のいる所から離脱した私が向かったのは、恋太郎の計画に()()()()()()()()グループ。集団心理に惑わされることなく、自分という芯を持った相手が強敵であるというのは古代からの言い伝えだもの。

 

 本戦に出場できるグループ数は事前に言われなかったけれど、運営側へ潜り込んで本選通過のグループ数や本選に出てくる料理名などの情報を抜き取ることも考えたけれど…。

 

 

 

 流石に、それはやりすぎね。あくまで参加者が知り得る情報のみで戦う。それがフェアプレイというものでしょう。

 

 そんなことを考えているうちに、お目当てのグループ?が2つ見つかった。

 

 1つは鉢巻きを頭に結んだ4人と胸元をさらしで巻く彼女達を束ねるリーダーの計5人。ご飯のみを食べ続ける5人の近くには、ほのぼののような滝汗を流しながら応援する未成年の男子しかいない。

 あぁ、この人達は()()()連合チームの人達でしょうか。ライダー()が目覚める直前、ライちゃん達が行ったブーケトスイベントで屁理屈を捏ねて恋太郎たちを妨害した人達。その時大槻ライ()はいなかったけれど、()()()()()

 

 今の所、他グループの妨害をしている様子は見られない。けれど、一応の警戒はしておいた方がいいでしょう。

 

 そして、もう1つのグループは、というより、グループとは言えないわね。だって、たった1人だから。

 

 その人を一目見ての印象は…、とにかくデカいの一言。

 まるで、ワンピースの世界みたいなサイズ感の人だった。性別不明、同じ人間とは到底思えない。種族の差を感じさせる程のものであった。

 

 けれど、私はその人物をしばらく観察したところ、ある違和感を覚えた。

 

 昔から日課としている、メソッド演技法で【○○を演じる役者A】に変身した時のような、そんな違和感。

 なんだろう…【大男を演じる子供】とか、【ボスを騙る三下】みたいな…そんな印象を強く感じる。

 変身すれば分かるかもしれないけれど…この衆人環視の中じゃそれも難しい。()()()変身した後にその人の外見や記憶を読み取れるから、変身しない限り何も分からない。

 

 ……ッ!!

 

 そろそろ限界みたいね……ライちゃん達の所に戻りましょう。

 

 ゆらゆらと揺らめきながら元の場所へと戻ると、ちょうど予選の終了を告げるゴングが鳴る所だった。

 

 ――おかえり、お姉ちゃん。どうだった?

 

 ――ただいま。中々収穫はあったわ。

 

 ライちゃんとそう挨拶を交わす。羽香里たちにはライダー()がうろついていることを伝えていないのか特に反応は無い。恋太郎は何か言いたそうにこちらに視線を向けてくるが、女司会者さんの結果発表が始まったからか、ライちゃんはそちらを向く。

 

 予選通過は上位3組のチームと明かされ、

 

 ・3位 恋太郎(れんたろう)ファミリーチーム 男女計9人

 

 ・2位 ()()()連合チーム 成人女性5人

 

 ・1位 タケコ・スーパーデラックス選手    1人

 

 恋太郎と原賀さんの健闘がみのり、ギリギリではあるが予選を通過することができた。

 他の2組もちょうど私が幽体離脱中に注視していたチームだった。

 

 …………

 

 ライちゃんを含む7人を温存した私達恋太郎ファミリーとは違い、他の2組とも予選で誰も温存することなく全員で臨んでいた。

 だから、私達の方が優位に立っているはずなのに。2位の呉莉羅連合チームはともかく、1位通過のタケコ選手は甘く見たらやられると私の直感が告げてくる。

 それにあの違和感がどうしても気になる……。

 

 ――……お姉ちゃん?

 

 ――ライちゃん、やっぱり奥の手を使うわ。

 

 ――うん、分かった。

 

 全力を尽くさないと負ける、そんな気がしたから。

 

 ダッドとマムの言いつけを破ることになるけれど、ちゃんと黄色のカッパ(準備)はしてきたから。きっと大丈夫でしょう、うん。

 

 そうして、私はカッパを脱ぎ捨てた。

 

 

 

 

 

▽▽▽▽▽

 

【恋太郎side】

 

 俺の大大大大大好き胡桃の頑張りと俺の大大大大大好きな皆がよそってくれたご飯のおかげで無事に予選を通過することができた。

 

 けれど、予選の途中ライちゃんのよそうご飯を頂いた時違和感を覚えた。

 違和感と言えるほど大きなものではないけれど、そこにあって当然のものがいつの間にか無くなったように、深層世界(内側)にいるはずのライがいなくなったように感じたんだ。

 

『ライちゃん、ライは?』

 

『あぁ、ライは今お昼寝中だよ。大丈夫、すぐに起きる(戻る)だろうから!』

 

 ライちゃんはウソを吐いていなかった。予選通過して皆と喜びを分かち合っている時には先ほどまで覚えていた違和感は消え去っていたんだから。ライちゃんの言う通り眠っていただけだったのかな…?

 

 少し不思議に思いながら皆と共に俺たちよりも上位で通過したチームの名前を聞く。2位通過が()()(ぞの)フラワーパークのブーケトスイベントで遭遇した呉莉羅連合チームだと分かった時は驚いたけれど、1位通過のタケコ選手がワンピースの世界みたいなサイズ感の人が出てきた時は驚きを通りこしてただ呆然とするばかりだった。

 

「『タケコ・スーパーデラックス』現大食い世界王者の賞金王」

 

「なにーッ!!?」

 

 隣にいた凪乃がwikiみたいな解説をしてくれたけれど、冷や汗が止まらない。こちらはチーム(9人)、相手は1人というハンデこそあれど。世界レベルの人と対決することになって思わず気圧されそうになったけれど。

 

 

 

 

 

「大丈夫です!私がいますから!!」

 

 

 

 俺たちの近くから聞き慣れない声が聞こえたと思うと、ライちゃんが羽織っていた黄色いカッパがバッと空へと投げ出された。

 

 黄色いカッパが床にパサッと落ちた後、ライちゃんがいた方へと視線を戻すと、そこにはライちゃんではない、違う誰かがいた。

 

 光り輝く金髪をライちゃんが最近着け始めた母親の形見だという黒のリボンでポニーテールにし、目の色紫ではなく碧眼。身長も少しだけ小さくなったように感じる。

 

 ある程度種が分かっている俺たちはともかく、何も聞かされていない胡桃が1人驚愕のあまり目を白黒とさせている。倒れそうになった胡桃を抑えながら俺たちの視線が集まったのが分かると、彼女はニコッと笑顔を浮かべてこう挨拶した。

 

 

 

 

 

「皆さんはじめまして!!私はライちゃんの父親の再婚相手の子供の頃の姿

 アルトリア・セイバー・リリィです!!まだ半人前の姿なので、是非リリィとお呼びください!」

 

 

 

「何の何が何?」

 

 

 

 




※ライダー(姉)は過去に摂取した薬はどれでも変身することができます。つまり、現時点で任意にメドゥーサになったり、キスゾンビになったりすることも可能です。
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