ビター・スウィート・ビターシティ   作:パンダ2世

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間話『貴族の噂』

 ここ数年のヨルマイアー家とヨーデライ家の関係は険悪である、というのは有名な話だ。

 特にヨーデライ家のヨルマイアー家に対する敵対心は顕著である。

 しかし、オルデマインの民衆は、二家がなぜそこまで敵対するのか詳しくは知らなかった。

 様々な憶測が流れ、根拠の欠片もない噂があちこちへと広まっている。

 そんな突拍子のない噂の一つに、こんなものがあった。

 

 ──曰く、ヨルマイアーの長女は頭がおかしく、ヨーデライの長男を殺してしまった。

 その長女はヨルマイアー家を追放されたが、ヨーデライ家はそれだけで許すはずもなく、二家は溝を深めていった。

 

 オルデマインの貴族は、一部を除きあまり国民の前に姿を見せない。

 そのために、この明らかに嘘に思われる噂は、ただの噂だと切り捨てることができなかった。

 とはいえ、ほとんどの国民はこの噂を信じてはおらず、ある種の冗談として扱われていた。

 二家の仲が悪いのは、単に次期国王として第一王子か第二王子のどちらを支持するのかで、意見が真っ向から異なるからだろう。

 そんな風に民衆は解釈をしていた。

 

 話は変わるが、貴族に関する噂で、これと同じくらい有名な噂がある。

 ──曰く、現在の五大貴族の中には、『能力者』が複数人いる。

 

 能力者は世界に十人前後しか存在しないと言われている。

 そのうちの何人かが、オルデマイン王国に、しかも五大貴族の中にいるという。

 能力者の特徴として、遺伝しやすいというものがあるらしいが、いかんせん絶対数が少ないので真偽のほどは不明である。

 それでも五大貴族は、オルデマイン王国設立にかかわった過去の能力者の末裔だといわれており、もし噂が本当なら、能力の遺伝はあるのだろう。

 

 能力者とはその名の通り、生まれつき特殊な能力を持っている者のことだ。

 確認されている限り、一つとして同じ能力はなく、多種多様である。

 一番有名な例でいえば、オルデマイン王国の初代国王であろう。

 彼は無から望むものを何でも作ることができるという能力を持っていた。

 そして彼は王国が危機的状況に陥るのを防ぐため、王国の未来を読むことができる『未来の書』を生み出したというのはあまりにも有名である。

 しかし、彼の能力は万能ではなかった。

 未来の書を作るのに力を使い果たしたのか、彼は未来の書を生み出したその瞬間、死んでしまったのだ。

 そして、未来の書は全部で二十ページしかなかった。

 一度記された記述は消すことができない仕様だったため、未来を読める回数は限られる。

 彼の能力は命を削り、それでもその産物は完璧なものではなかった。

 万能には程遠い。

 

 現在、未来の書は王が保管しており、その保管場所を知る者は他にいない。

 王は在位期間の間に一ページのみ使うことを許されており、現在の王はオルデマイン王国の第十六代目である。

 そのため、未来の書は残り四ページ、あるいは五ページだといわれている。

 未来の書のおかげで、オルデマイン王国は過去に何度も窮地を脱してきた。

 その恩恵を受けられる時代は、そろそろ終わろうとしている。

 

 他の有名な能力として能力者か否かを判別する能力や、動物と会話できる能力等がある。

 前者は正教のとある司祭が持つ能力で、後者は隣国に住むある人物が持つときく。

 まあ、そのあたりの話は割愛するとしよう。話が脱線しすぎてしまった。

 それで、現在の五大貴族の中には、『能力者』が複数人いるという話に戻るのだが──

 

「噂というものも馬鹿にできないものだ。出所を調べる必要がありそうだな」

 

 新聞から顔を上げ、ガレット・チャーリントンは帽子を深くかぶりなおした。

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