力が欲しい主人公VS代償ありきの魔剣   作:テムテムLvMAX

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理由と因果の3話目の前編です。


3話目 導べの丘を登れ 前

「ほう、そうだったのか……あの村の生き残りだったのかお主」

 

「ま、共感してくれと言うんじゃないが、それが魔剣を求めてた理由だよ」

 

 

 真昼の空にさんさんと輝く太陽は街道を行く3人の影があった、ミザウルはマントに身を包みフードを目深に被って顔を隠して人目を気にしする仕草を見せた、少女は初めての外の世界に興味津々でじいやを質問攻めにしていた。

 

 

「俺の身の上はこれくらいでいいか? 俺は指名手配されてるんだぜ、そっちのほうが問題だろ、窃盗ならともかく……殺人罪だぜ? 明らかに捏造じゃねぇか」

 

「それでも自業自得じゃ、確かにおかしいと言うならそうだがお主、現にわしを斬ったじゃろ」

 

「そりゃそうだが……指名手配されたんだ、俺一人じゃない以上慎重になるだろ」

 

「当然じゃろう、お嬢様の身の安全が第一優先じゃ」

 

「あーもうじいや苦手だ」

 

「年寄りの金言聞き逃すと苦労するぞい? ふぉふぉふぉ」

 

 

 老爺の言う事に彼は耳を塞ぎたくなる、確かに捕まる事も覚悟していた、指名手配も想定していた、想定してなかったのは旅の仲間が出来て慎重な立ち回りを要求されていることだ。

 

 老爺とのやり取りに一息つくと彼の背中をとんとんと軽く叩いて少女が彼の後ろから顔を覗かせる。

 

 

「ねぇどこまでいくの? このさきになにがあるの?」

 

「この先には導べの丘って観光地がある、俺の村より先に魔物の襲撃で大きな被害が出たって噂があってな、魔皇の手掛かりがないか調べるんだ。今日はその手前の宿場を目指してるぞ」

 

 

 そう言いながら懐から手帳を取り出し少女へ見せる、そこにはびっしりと地名と簡単な地図が書かれ、手帳もかなりの年季が入っていることから、昨日今日の情報ではなく時間を掛けて集めた記録であることが分かる。

 

 

「わぁ、ぜんぶいくの? すごい! いろんなところがみられるのね!」

 

「そう言うユリンはどこまでついてくるんだ?」

 

「ずっと、ずぅーっと! じいやもね!」

 

「そりゃ勘弁してくれ、特にじいやはな、名前も教えてくんねーやつとずっと一緒にいたくねぇ!」

 

「ふふふ、じいやきらわれちゃった! じゃあわたしだけついていくね!」

 

「お嬢様、お戯れを……じいやは泣いてしまいますぞ」

 

「「はははは!」」

 

 

 じいやを尻目に二人は声高々に笑う、昨日のことが嘘のような晴れやかな声だった。

 

 こうして三人の会話が途切れることが無く、終始愉快な歩き旅となった。

 そしてたどり着いた先は、イーストドラン王国の首都であるデュークドランがあるデューク平原が見下ろせる小高い丘、導きの丘の手前にある宿場へたどり着いた。

 

 周囲を木の柵で囲われ背後には丘へ続く道があるこの宿場は、人通りが多く、じいやは特に気を引き締めて宿場の入り口を見つめていた。

 

 

「お主、ここから先は軽々しく名乗るでないぞ、もちろんお嬢様の名前もじゃ」

 

「手配犯と王女サマだもんなぁ」

 

「お主は、仮にバレても衛兵止まりだが……お嬢様の事がバレたら奴らが来る」

 

「奴ら?」

 

 

 じいやは言う、国家権力がたった一人に注がれる事態になる、さらに恐ろしいのは、それだけで収まらないということだ。

 

 

護国王従士(ドランナイツ)、イーストドラン王国の最高戦力じゃ」

 

護国王従士(ドランナイツ)って……たった一人のためにここを人が住めない環境に変えるってのか……!」

 

「一人だけとは言っとらんじゃろ、最悪十二人全員で来ることも無いとは言えん、今の王はそこまでするじゃろう」

 

「でたらめだ……王の馬鹿野郎……! 自分の娘を本当に消したいのか……!」

 

 

 怒りに震えるミザウル、じいやはそれ以上何も言わなかった、彼の怒りに震える姿が演技でも嘘でもない真の心であることは分かっていた。

 

 

(良くも悪くも、お主は嘘のつけん男だな、ミザウルよ……だからこそウルトヒウが目覚めたのであろうな)

 

「よしユリン、名前が呼べないらしいので名前を変えるぞ、俺はミハウ、ユリンは〜……リュネ?」

 

「わぁお、まるでひみつのおしごとね! にんむりょうかい! こちらいじょうなし!」

 

「いやまあそうなんだが、なぁ、なんかお嬢様の知識偏ってないか? おい、じいやさん?」

 

「じいやは何も知りませぬ、こっちを見るでない、知らぬ……」

 

 

 ミザウルはミハウ、ユリンはリュネに名を変えて宿場へ進んでいく、宿場の入り口には広場があり幌馬車が所狭しと並んでいる、どの荷台にも由緒正しき商売人の証である商人ギルドの紋章が押されていた。

 

 

「うおー知ってる奴ばかり……じいやの背中に隠れるわ」

 

「ええいそんなに近寄るな」

 

「いやーじいやの無駄に広い背中なら顔見知りから隠れられるかなって、ほら俺って元商人の小間使いだから」

 

「かくれんぼ? ならわたしはにーさまの後ろにかくれるー」

 

「く……お嬢様まで、お主、露骨に隠れるとかえって目立つ、さり気なく視線を切るくらいするんじゃ」

 

「うわ、本職かよ……ただのじいやだったのかぁ?」

 

 

 怪しい三人と思われないように人通りの多い入り口を無事に通過し、今日の宿を取るために宿屋が並ぶ中心地へ赴く、宿屋とひとまとめに言っても大小様々、サービスも様々、懐と事情を考慮して入り口から離れた奥にある安宿に決めた。

 

 早々に部屋へ向かう、下手に外に居てバレてしまえば元も子もない、ユリンは不満そうだが我慢ができる良い子であった。

 

 この日は何事もなく夕飯を済ませ、ベッドに座り手帳を眺めるミザウルと窓の外を眺めて寝転ぶユリン、そのそばに立つじいやと思い思いに過ごし明日を待った。

 

 手持ち無沙汰になったミザウルはふと思い出すこの安宿の宿泊費、一番安いと言えど商人たちが頻繁に立ち寄る宿場だけあって彼の薄給では泊まれない値段だった。

 

 

「安いと言っても1泊3デラル、1日分の食費だぜ? それも素泊まりでだ、俺のような貧乏人にゃ手が出ないぜ」

 

「流石にお嬢様を二晩続けて寒空の下に晒すわけにはいかん、そのおこぼれであることは弁えるんじゃぞ」

 

「うーんこのまくらはかたくてねれない……じいや〜ひざまくら」

 

「はい、ただいま」

 

 

 ユリンはじいやの膝枕で夢の中へ落ちていく、日中は有り余る好奇心を発揮し続けていたことも、前日の野宿で精神的に疲れていたこともあるだろう、とてもリラックスした様子で眠っていた。

 

 ミザウルにはこの光景が羨ましく見えた、執事が居る生活ではなく、じいやのユリンに対する姿勢である。

 

 

「なんつーか、執事ってより親だな、じいや」

 

「親、か……そうだな、お嬢様を我が子のように思う事もある、しかしモノの分別はつけねば執事失格じゃ」

 

「そんなさみしい事言うなよ、母親は居なくて父親には殺されかけた、そんで閉じ込められてた所を抜け出してきたんだぜ? もうじいやだけだから、お嬢様の心の拠り所はよ」

 

「百も承知しておるわ、若造に説教されるほど耄碌しておらん」

 

 

 じいやは優しくユリンの髪を撫でた、少女の過去を鑑みればじいやだけが心の支えである、忠誠心と親心、二つの心で老いた体を動かして来た、これから先もそうなんだろう、ミザウルがこれ以上この事に言及はしなかった。

 

 しばしの沈黙のあと、彼から話を切り出した。

 

 

「そうだ、話は変わるが明日にはここを去ろうと思う、実際見て感じたんだがここは魔皇には関係なさそうだ」

 

「何? ここに来た意味がないではないか、何を持って判断したんじゃ?」

 

「あー、被害者の勘だ、魔皇の気配って言うのかな、村で感じたオーラがここにはない」

 

「そうか、なら異論はない。で次の目的地は?」

 

「こっから北へ行った所にある、サンカッラって街だ、なんでもそこには国内で一番でかい図書館があるみたいなんで、そこで魔皇について調べようかと」

 

 

 こうして夜は過ぎ去って新しい朝を迎える、彼らは手早く出立の準備をして、人を避けるように宿場の外へ抜けていった。

 天気は優れない、白い空に雨雲が混ざる何とも言えない微妙な様相に先行きの不安を感じるのだった。

 

 

「夜に降るかもなぁ……野宿の場所を早めに決めねぇとな、なぁじいや、サンカッラまでの近道知ってるか?」

 

「知っておるが勧められん、なんせ暗鬼の森を通ることになる、しかも放棄されて何十年も経つ街道じゃからな、未熟な剣士とお嬢様を守りきれるほどワシは強くないぞい」

 

「いちいちお小言言わなくていいって、んで暗鬼の森にそんな道があったのか、確かに地図上では直線だが……なんせ森全体がダークゴブリンの巣だ、道を作った奴らはバケモンだな」

 

「ダークゴブリンってなに? じいやわかる?」

 

「お嬢様のような小さな子供を好んで食べる野蛮で小賢しい魔物でございます、くれぐれも黒い魔物にはご注意を」

 

 

 忍ぶ旅ではあるが、急ぐ旅でもない、一刻も早く魔皇を見つけたいが、焦った所でどうにもならないのは、最近思い知った彼である、急ぐ程回り道で行こう、そう決めた。

 

 たが旅に予想外は付き物とばかりに、出立したばかりの宿場がにわかに騒がしくなる。

 

 

「あれ、けむりかな? もくもくしてるよ」

 

「んー……火事だろ? ただの火事さ」

 

「どうやらそうとも言い切れない状況になりそうじゃ、暗鬼の森方面から黒い影が近づいておる、あそこを見ろ」

 

 

 今まで以上に鋭い目で地平線を指さすじいや、言葉に従いミザウルが目を凝らすと、草原を踏み荒らすように歩く背を丸めた小柄な人影が見て取れた、それも陸の上を滑る波のように大勢である。

 

 

「……」

 

「おい、お主何を考えとる……ミハウ、ミハウ……ミザウル!」

 

「俺らぁ行くぜ、じいやはお嬢様を守ってくれ、そんくらいは出来るんだろ」

 

「バカモノ! あの数を相手にするつもりか! 素人が力を手にしたからと自惚れるな!」

 

「違う! 俺のようなやつを生まないために行くんだ!」

 

 

 彼はもと来た道を走り戻る、腰にぶら下げた魔剣を握りながら。

 

 

「じいや……」

 

「お嬢様、ここは危のうございます、さ、離れましょうぞ」

 

「じいや、わたしのこときにしなくていいよ? しんぱいなんでしょ?」

 

「知るものですかあの様な馬鹿者」

 

「……じいや、いっしょにいこう! おかあさまなら、そういう!」

 

「む……、しかし……分かりしました、行きましょう。じいやの側を離れてはなりませんぞ、お嬢様」

 

 

 じいやとユリンもまた、彼のあとを追い宿場へ戻るのだった。

 

 

 ダークゴブリンは高い知能と群れで行動する習性がある、力の強い個体はキングと呼ばれリーダーとして人が軍を率いるように群れを率いる、また初級魔法も使うため魔物の中でも特に危険であると知られている。

 

 ミザウルは聞きかじった知識だがそれを知っていた、そして、自分のような者を生まないという復讐心の中にある信念の元、魔剣を握った。

 

 

 

 

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