モニカ転生   作:パッツンスキー枢機卿

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28.来訪

 テレビの中の男は態とらしく涙ぐみながら、自分を追い詰めたと思い込んでいた兄の死を告げる。ナナリーが息を呑み、モニカが焦りを隠さずに何処かに電話をしているのを認識しながら、ルルーシュはただ呆然とテレビの情報に雁字搦めになっていた。

 

─────誰が、何故クロヴィスを殺した?

 

 この報道は偽装か? 偽装だとして、それをする理由は? クロヴィスの立場で、顔も名前も割れている暗殺者を放置して雲隠れするメリットが無さすぎる。隠れる必要などなく、配下の者たちにただ一言、エリア11に潜伏するルルーシュ・ヴィ・ブリタニアを探せと言えば全てが終わる。

 

 もしクロヴィスの死が偽装でないのなら、一体なぜあの場面で割って入ったのか、その理由をルルーシュは脳裏に渦巻く混沌をどうにか掻き分けながら思考をする。意味がわからない。

 

 救助者と共に逃走しているところを、また別の第三者に暗殺された? あの時、駒に使った連中はまだあの周辺に居たはず。予期せぬ遭遇によって、クロヴィスが殺された可能性。一瞬だけ、それを信じそうになって、すぐに自分自身で否定する。

 

─────俺という究極のイレギュラーを予め察知して、部屋に仕込みをしていたやつがそんなミスをするか?

 

 するわけが無い。

 ならば、これはやはり偽装か? ブリタニア側では無い者がクロヴィスを何らかの形で利用するために攫い、見繕った替え玉を殺して打ち捨てた可能性。

 

─────いや、部外者がエリア総督を務める皇子の遺体を偽装するなんて不可能だ。

 

 内部の人間であってもそのハードルは変わらない。或いは他の皇族なら……。 しかし、それをする理由が無いという問題に戻ることになる。シャルルの意向により蠱毒紛いの継承権争いの中にいる皇族たちからすれば、他の皇子の死など歓迎すべきものでしかないだろう。自分たちの時がそうだったように。

 わざわざ無関係の暗殺者から助けて、生け捕りにしてその上で死を偽装する。メリットなどどこにもない。

 

 考えれば考える程に、状況の不可解さと不気味さが増す。まるで世界という箱庭を無邪気に弄ぶ巨人から、一心に観察されているような気分だ。今の情報では、事態の裏に潜む何者かを測ることは出来ない。この先の思考に待つのは過剰な悲観か、或いは過大な楽観だ。

 

 では、これからどうする? 安全策としては今の混乱に乗じて、ナナリーとともに姿を晦ますことだ。モニカは半ば怒鳴るような口調で、電話の向こうに指示を飛ばしている。恐らく、力を行使するまでもなく、この部屋を後にするだろう。

 エリア11から脱出するのに今夜以上の好機はない。親しくしてくれた人々に別れを伝えられないのは名残り惜しいが、生き残るにあたってそんな生温い思考ではいられない。

 

──────だが、ブリタニアを打倒出来るかもしれない力を手に入れた今、また鼠のように隠れ住めと言うのか?

 

 アッシュフォードの庇護下を逃れ、新天地に身を潜めることになれば今以上に自由は限られたものとなる。

 決して楽観や希望的観測に溺れるつもりは無いが、それでも今の状況を手放すにはあまりにも惜しい。他者に絶対遵守を押し付けるこの力を最大限有効活用できる状況は正に今しかない。手駒となる者たちにも目星が付いているのだから。

 

 では、どうするべきか。ルルーシュは深く思案して出した結論は─────

 

 

 

 ルルーシュがやらかしている場面、有り体に言えばカレンに禁断のギアス二度漬けを行っている所を校舎の2階から眺めながら、私は賭けに勝ったことを実感した。

 昨日の一件、かなり天に祈った箇所が多かった。特に、ルルーシュが学園に通い続けるかどうかに関しては、私にはどうしようもないので今こうしてやらかしてくれてる事を非常に嬉しく思う。「シンジュクってどういうこと?」と我がメル友であるカレンに詰められているルルーシュをお茶請けに、缶コーヒーに口をつける。

 あとは、ナナリーを連れ出しに来た時にギアスを掛けられた場合もどうしようもなかった。これに関しては諸々の観点から大丈夫だろうと踏んでいたが。

 

 何にせよ、ルルーシュの方は暫くは大丈夫そうだ。クロヴィスについても、無事保護出来た。問題は………

 

 

「ならぬものはならん。 なぜようやく捕らえた暗殺者をみすみす放さねばならんのか」

 

「まだ彼が犯人と決まった訳ではありませんよ、ジェレミア代理執政官」

 

 登校する直前の早朝。 ジェレミアの執務室にて、私は直談判を行っていた。無論、枢木スザクの暗殺容疑について、再考をお願いするためである。

 

「やけに庇うな?」

 

「特派の嚮導兵器のテストパイロットに相応しいのは彼、枢木スザクだけです。 そんな得がたい人材が無実の罪で命を散らそうとしているのです。ラウンズとして止めるのが当然では」

 

「ふん。貴様も政治の言い回しを流麗にするようになったな。

しかし、クルシェフスキー。無実だと言い切るのは些か根拠が足りんな。そもそも、イレブンを神聖なる我が国のKMFに騎乗させるという発想が愚かだったのだ。ロイドにもそう言っておけ」

 

 ジェレミアは皮肉げに笑った。ナンバーズも対象にランスロット向けのテストパイロットを探し始めてから、純血派と特派との関係性は悪化しつつあった。今回の件を契機として、特派のトレーラーが純血派の拠点に出入りすることを禁じられたのもその流れだろう。

 

「そも、バトレーを晒し上げにできなかった手前、暗殺者の処遇を曖昧になど出来るか」

 

「バトレー将軍はどこに?」

 

「わからん。ただ大々的に捜索しようとした瞬間、本国から圧力をかけられた。大方、皇族の何方に囲い込まれたか? 胡麻擂りが上手いのは文官の特権だな」

 

「そうですか」

 

 バトレー将軍が某地にて君主と涙ながらに再会しているだろうことを知っている私は、ジェレミアがそれに気付いていないことを静かに確認した。

 

「……また来ます」

 

「その時は歓迎してやろう」

 

 こうして問題だったロイド達への言い訳を土産に手に入れた私は、執務室を後にした。どちらにせよ、スザクの無罪は仮面の男によって明らかにされるのだから、ジェレミアの心象を下げる必要も無い。

 

 

 そんなこんなでごねまくるロイドに、動いてる感をアピールしつつ、囚われのスザクを放置した。早く直接会ってみたいが、立場上そういう訳にも行かない。

 

 下を眺めるとシャーリーの介入によってルルーシュが危機から脱しているところだった。仮にこの時に正体がバレてたらどういう物語になっていたのだろうか。学園でカレンがルルーシュをゼロとうっかり呼んだりしちゃいそうだな。

 

 

 最早、そうじゃない時が珍しいくらいに飾り付けられたクラブハウスの広間にて、やや遅れて参加した私を見て、カレンが大きな声を上げた。

 

「えっ、うそ、センパイって生徒会だったの!? ……じゃなくて、だったんですかぁ?」

 

「知らなかったの?」

 

 既に3年くらいメル友をしているのだが、まさかの新事実が明らかとなった。いや、よく考えればこちらから生徒会だと名乗った記憶が無かった。学校をサボりがちの彼女がそこら辺の事情を知らないのも無理はないか。

 

「ふたりとも知り合いだったの?」

 

 シャーリーが不思議そうに首を傾げた。少し素が出てしまったカレンはあっやべ、と少し咳払いをしてから、病弱な令嬢として答える。

 

「え、ええ…モニカさんには体調を崩しているところを何度か助けていただいて」

 

「へぇ〜、さっすがモニカ先輩!」

 

「生徒会メンバーとして当然のことをしたまでです」

 

 カレンが体調を崩しているところなど一度も見た事がないが、彼女の大雑把な嘘に付き合ってあげることにした。実際はベンチでサボっているカレンを見かける度に隣で座って適当に駄弁っていただけだったのだが。しかし、ひょっとすると生徒会メンバーであることを知らないということは、もしかして軍人であることも知らない? 流石にそれはないか。

 

 そんなやり取りをしているうちに調子に乗ったリヴァルとルルーシュがシャンパンを持ち出して、最終的にカレンに内容物が噴射されてしまった。

 

 各々がその処理に追われているのを傍目に、私はテレビを点けた。そろそろか。ルルーシュとカレンが戻ってきた頃、見計らったようにジェレミアたち純血派の演説が開始された。

 

 物語での経緯と違いクロヴィスの死は報道されている。よって、本題はスザクの公開処刑についてだろう。テレビの中で、千両役者のようにクロヴィスへ哀悼の辞を述べ、そしてテロリストへの徹底抗戦を力強く訴えた。

 

 そして発表される名誉ブリタニア人枢木スザクの拘束。狼狽えるルルーシュを横目に、私はゼロがどう生まれるかを考える。何者かの陰謀に怯えるルルーシュが、物語のように派手な産声を上げるかどうか。

 

 或いは、こちらからも背中を押すべきか。

 

 

 枢木スザクの公開処刑当日。扇とカレンが一晩で仕立てあげた御料車もどきの車内にて。

 毒ガスのカプセル……と思われている物体を調達したルルーシュは、スザクを救出するにあたり、どう名乗りを上げて介入すべきかを考えていた。

 仮にクロヴィスを殺したのが自分だったのならば、自分こそが真犯人だと喧伝してスザクの無実を証明しつつ、ゼロという偶像を反撃の狼煙として知らしめるというやり方を取れていた。

 

 しかし、クロヴィスを殺した或いは死を偽装した人間が明確に存在している以上、それをするには相応のリスクが生じる。もしその相手が対抗して名乗りを上げた場合、ゼロという偶像にノイズが生じることになるからだ。

 

「俺よりも後にクロヴィス殺しの名乗りを上げたところで、その信憑性はたかが知れている。だが、それでもゼロという仮面の訴求力が落ちるのは避けられん」

 

 更に言えばクロヴィスの死が偽装だった場合は最悪だ。 クロヴィスの生存を明かされることにより、ゼロは道化の代名詞となってしまう。

 裏に居る誰かの目論見が分からない以上、派手なやり方は難しい。だが、勘案した計画を踏まえるとここで舞台に上がらなければかなりの遅れが生じる。

 

 若干の焦燥とともに思考を巡らせていたが、控えめな声掛けで中断させられた。舌打ちの後、御料車のように仕立てあげた車両から顔を出す。

 

「あー、えっと…ゼロ?」

 

「なんだ」

 

「アンタと話したいって人が」

 

「少なくとも今回の件が終わるまでは、貴様を通して意思疎通を行うと他の者達に言ったはずだが?」

 

「いや、ウチのメンバーじゃないんだ」

 

「………なに?」

 

「とりあえず、これを受け取ってくれ」

 

 扇は気まずそうに使い捨ての携帯電話を差し出した。ルルーシュは暫しの逡巡の後に、それをひったくるように奪い取る。画面を見ると、既に誰かに繋がっていた。無言で扇の方を見ると、聞いてもいないのに言い訳じみた事情の説明を始める。

 

「いや、それは本人から受けとったわけじゃないんだ。ただ、たまにキョウ……俺たちのスポンサーから物資を受け取った時に使い捨ての携帯電話が混じる時があって……そいつは」

 

『やぁ、こんにちは。 扇くんたちの新たなリーダーさん?』

 

 扇が何か言い終わる前に、携帯電話から声がした。加工音声。声から性別を読み取るのは無理か。ルルーシュは煮え切らない扇から情報を読み取ることを諦め、電話を掛けてきた者に応答する。

 

「初めまして。 まだこちらに名乗る程の名前が無い上で聞くのは失礼だが、私は貴方をなんと呼べば?」

 

『湖の貴人、とみんなには呼ばれてるよ。 君も是非そう呼んでくれたまえ』

 

「……そうか、湖の貴人」

 

 ブリタニアの意匠を感じるネーミング。傲慢さが隠せていない口調。ルルーシュは話しながらも脳裏で、電話の向こうの誰かの人物像への解像度を急速に向上させる。

 

「それで? ブリタニアを長年騒がせている貴方が私に何の用だ?」

 

『おや、随分と情報通だねぇ』

 

 当たり前だ。2014年頃から定期的にマスメディアで名前が上がる謎のフィクサー。ブリタニアを潰すのに使えそうな材料を探していたルルーシュが、それを知らないはずがなかった。尤もブリタニア側の人間が軍部での政争のために暗躍している可能性が高いと判断してからは、早々に見切りをつけたが。

 

『いやなに。もしや同志かと思い連絡してもらったんだよ』

 

 同志。なんのだ? 政争に明け暮れるブリタニア人としてのか?

 

─────そもそも、何故こいつは俺がこのグループの指揮を執るようになったことを知っている?

 

『ああ、君を知ってるワケを知りたいのかな? 簡単な話、あの日私もあそこに居たからだよ。 いやぁ、素晴らしい指揮だった』

 

「……」

 

 あの日。それは間違いなく力を手に入れ、クロヴィスが表舞台から姿を消した日のことを指している。だが、そうだとすると。

 

『今回電話させてもらったのは、同志かもしれない君の不安を打ち消そうと思ったからでもあるんだ』

 

「不安……なんのことだ?」

 

『──────クロヴィス殺しについてだよ』

 

「……ッ」

 

 姿が見えない謎の巨人、それが電話を通して接触を取ってきた。愈々、その真意が分からなくなってきた。

 

「……貴様がクロヴィスを殺したと?」

 

『いや、正確には私ではなく、捨て駒が……だがね。 まぁそれは後でいいか。今の本題はそれではないだろう』

 

「なに?」

 

 クロヴィスを殺した実行犯は捨て駒だということか? いや、それは当然か。政争に明け暮れる推定貴族が、皇族を殺すのに自分の手を汚すとは考えにくい。だとするのなら……いや、それを期待するのは楽観的すぎるか。ルルーシュは兎に角、対話相手の人格を正確に読み取ろうと雑念を捨てた。

 

「本題とは?」

 

『非常に遺憾ではあるが、あの偉業は私単独で為されたのではない。君が愚鈍なクロヴィス配下を翻弄してくれた功績も大いにあるというわけだ』

 

 まぁ尤もクロヴィスの首は私の駒が獲ってくれたが、と厭な嗤い方をする湖の貴人。対してルルーシュは、湖の貴人に対してある種の失望を抱きつつあった。こいつは、自分の顔を知らない。知っているのなら、この傲慢なフィクサー気取りが脅しの材料に使わないはずがない。あの時に割って入った何者かはこいつではなく、またその何者かは報告すらする暇もなく始末されている。楽観か? いや。

 

「早く結論を言ってくれないか? こちらは貴様と違い時間が惜しいのだが」

 

『……高飛車だね。まぁいい。

簡単な話だよ。クロヴィス殺しの名声は君に譲る。ナンバーズのゴミにかっさらわれるよりはマシだからね』

 

──────俺はこんな馬鹿に恐れ慄いていたのか?

 

 途端、ルルーシュは先程までの自分が酷く滑稽に思えてきた。

 

「貴様は表に出る気はないと?」

 

『何故表に出る必要が? ……おっと失礼。君は目立ちたがり屋だったんだね。まぁ、君を目立たせてあげるんだ、それ相応のリターンは期待しているよ』

 

「これが借りと言うのか」

 

 この借りで扇グループを、いや自分を操ろうとしているのか? だとしたら浅はかが過ぎる。

 

『当たり前だろ? 下らない質問はやめてくれ。 ……まぁ、感謝の言葉は譲ってあげた名声を上手に使ってからでいい。その時はまたこちらから電話しよう。 それでは』

 

 一方的に言って、電話が切れた。

 ルルーシュは暫しの沈黙の後に、扇に計画を伝えた。電話の向こうのフィクサー気取りに譲られる形になったのは癪でしかないが、舞台を俯瞰する巨人の非実在が証明されたのはルルーシュに大きな余裕を齎した。残る疑問としてはなぜ離れた場所でクロヴィスを殺したか、か。

 

 何にせよ、今は親友を助け出さなければ。電話の向こうの賢者気取りの愚者の料理など、どうとでもなる。

 

 

 黄緑色に塗装されたグロースターのコックピットの中で、湖の貴人としての資金の出処として利用しているフロント企業が開発・販売している使い捨て携帯電話を弄ぶ。

 枢木スザクの公開処刑。私はそれに警備の一人として自らの意思で参加していた。表向きはテロリストへの警戒から。本音はルルーシュいや、ゼロの誕生に予想外の横槍が入った場合にリカバリーがしやすいように。

 

 ルルーシュにはゼロになってもらわなければならない。それも、物語以上に強大な、ブリタニアの敵としてのゼロに。

 

 クロヴィスを救出した理由の中の一つは、そこにあった。彼を死なせないことで、シャルルにとってのゼロが正体不明になる。まぁ、ある程度の当たりは付けるだろうがそれでも物語と違い、ルルーシュの反逆があの人の掌という構図は生まれなくなるのだ。

 問題はマリアンヌだが。それに関しては()()の頑張り次第と言ったところか。

 

「おっと、始まりましたね」

 

 ファクトスフィアが、スザクを磔にしている護送車の対面から走ってくる白いクロヴィスの御料車を捉えた。幕が燃え上がり、黒い仮面の男の姿が顕になる。

 

「─────私は、ゼロ」

 

 瞼の裏で何度も繰り返し見ることになった、仮面の騎士による逆転劇。それを現実のものとして見ることで、胸が高鳴った。これが歴史の転換点。

 

「クロヴィスを殺したのは、この私だッ!!!」

 

 ゼロの名乗りに、私はあの一手が上手く作用したことを確信した。

 

「いいのか、公開するぞ。 オレンジを!」

 

 その後は、物語の通りの経緯を辿りジェレミアは全力で見逃すことを実行した。

 

「ジェレミア卿! 貴方は何を…ッ!?」

 

『黙れ、クルシェフスキー!! 私は見逃さなければならんのだ!!』

 

 全力で見逃すことを遂行しているジェレミアは手強かった。いくらナイト・オブ・トゥエルブとは言え、混乱の最中では苦戦してもおかしくない程度には。この言い訳のために、ランスロットの兄弟機ではなくグロースターでやって来たのだ。

 私のグロースターが、ジェレミアの指示を受けた純血派の騎士により消極的に囲まれた頃、ゼロたちはスザクを連れて霧のように消えた。多少の差異はあるが、概ね物語の通りゼロが産声を上げた。今回の件は、これで終わり。そう思った刹那────

 

──────トウキョウ租界を、大きな影が覆った。

 

『なっ!? あれは────なぜ、あれが此処に…!?』

 

 ヴィレッタが、驚愕とともに空を見上げた。群衆からも大きな困惑の声が聞こえる。私もそれにつられて空を見上げる。そこには───

 

「アヴァロン…!?」

 

 かつての主の旗艦たる浮遊航空艦アヴァロンが降臨していた。であるのなら、あの艦の中には─────

 

『────やぁ、久しぶりだねモニカ。大変なことが起きた直後で申し訳ないが、少々話さないかい? 君の口から直接、聞かせてもらいたいことがあるんだ。 コーネリアも君に会ってみたいと言っている』

 

 グロースターの無線が、無機質な声を私に届けた。やはり、この世界に物語の修正力なんてものは存在しないと、物語より早く登場したアヴァロンを前に改めて痛感した。

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