居間を出る俺の隣には、凛の姿があった。
「凛」
「ええ。……そうね。どこか、邪魔の入らない場所はある?」
こくり、と一つ頷いて、凛を両腕で抱え上げてから地面を強く蹴る。
いくらか湿ったままの結い上げていない髪が風に靡く。澄んだ空気が頬を撫でる。気持ちいい。
「舌、噛まないように気をつけてください」
「え、ちょっと! まっ……きゃあ!」
凛の顔が赤く染まって慌てだす。たぶん、俺の顔も赤いと思う。でも、残念ながら他に方法はないので、極力感情を排した忠告だけをして一気に上りきる。
所謂、お姫様だっこというやつだった。
あの後、凛は有利となり得る情報を慎二から聞き出し、慎二もまた凛に協力的な姿勢を見せた。多くの質問と説明に長い時間を要してしまったが、かけた時間分の成果はあった。
ある程度の質問を終える頃時刻は午後十時を過ぎていて、時間を認識した途端思い出したように空腹を訴え始めた。急いで夕食の用意をする羽目になり、献立も時間も時間なので軽く摘めるもの――米だけは炊いてあったから、二十数個のおにぎりと味噌汁だけ。
おにぎりを詰め込んで味噌汁で流し込んだ後は、長時間話し込んだ疲れから自然と対策を話し合うのを明日に回して、今日のところは休みを取る運びとなった。
洗い物を終え、体の汚れを落とし終えた時にはもう日付は変わっていた。
慎二の話は誰もに少なからず精神的な衝撃を与えたし、士郎や凛の疲労もちょっとやそっとの休息じゃ取れないだろう。特に、怪我人のイリヤには魔術行使に魔力供給とで相当の負担を強いてしまっている。せめて今だけでも休ませてあげないと。
イリヤは体だけリアに拭いてもらった後、日付が変わるのを待たずにあっという間に寝入っていた。逆に、イリヤから充分な魔力供給を受けるリアは長時間眠る必要がなくなり、しょうがないと言いながらもイリヤの世話を焼いてあげている。
慎二も流石に喋り疲れたのか早々に部屋に引っ込み、士郎も居間で舟をこいでいる。寒そうに身動ぎしていた士郎に毛布だけかけてやり、居間を出てきた。帰り際にでも起こしてやればいいだろう。
その後は冒頭に戻る。
「せめて、一声ぐらい掛けてよね」
安定しない足場に、ようやく落ち着けるところを見つけたらしい凛が非難の声を上げた。すいません、と小さく笑って返し、周りを見渡す。
空気が澄んでいるお陰で、夜空の中の星がよく見えた。凛の口から息が白くあがる。ここは、ちょっとばかり寒かったかもしれない。見下ろすと居間の明かりが屋敷から漏れ、士郎を起こそうとするリアの声が聞こえてくる。
――今、俺と凛は衛宮の屋敷の屋根の上にいた。見回りをしている時に、セイバーの視力を魔力強化すれば屋根上から周辺を把握できることに気づいて、それから偶に足を運んでいる。どうやら今日も、異変らしいことはないようだ。住宅街の中にそびえている間桐の屋敷、坂の上の遠坂の屋敷、山の上に柳洞寺が遠くに確認できる。
「それで、教えてくれる気になったんでしょ? 貴女の正体」
「……ええ。また昨日のように都合良く助けが入るとは限りませんからね。でも、凛も薄々気がついているのではないですか?」
いつかもう一つの真名を教えるという約束。それが果たされる前に敗退させられそうになった。状況から言って、もう余裕はないだろう。この戦も終結に向かって動き始めている。
「まぁ、ね。自信は未だにないけど。まともな精神構造してたらこんな発想、出来ないわよ。魔術世界に置き換えたなら有り得ない事例でも無いけど、対象が英霊でしょ。精神の強度じゃ普通の人間と比べるまでもなし。失敗する要因の方が圧倒的に多いわ」
「……ですよね」
色々と考えてみたものの、確かに凛の言う通りだ。いつも、そこが不可解だった。
「……貴女は、間違いなく魔術に関わる人間。魔術師……それも聖杯戦争のマスターなんでしょ? 有力なのは前回。違うとしたならもっと過去。もしかしたら、これから先に行われる聖杯戦争の参加者かもしれないけど。時期はともかく、そこは違ってないと思うんだけど」
違う? と問いかけられる。間違ってるわけじゃないんだけど、流石に今回の聖杯戦争のマスターという発想は出てこないらしい。つくづく、俺は確率の低いほう低いほうに当たってるみたいだ。
「ええ、その通りです。確かに私は、聖杯戦争にマスターとして参加していました。付け加えるなら参加した聖杯戦争は第五次。凛が言った中で違うところは、魔術師ではなくて魔術使いだったというところですか」
「……は?」
ぽかん、と口を開けて固まる凛。まじまじと俺を見つめて、動かなくなってしまった。
「えーと、聞き逃したのかも。もう一回いい?」
「ええ。私は第五次の聖杯戦争のマスター側で参加しましたが、魔術師ではありませんでした」
「……つまりは、今回の聖杯戦争に参加した、魔術使い?」
こくん、と凛を見て頷く。目をぱちぱちと開いたかと思ったら、ぱっと立ち上がり屋根のふちまで駆け下りていく凛。居間を覗き込んで、きっと見えただろう士郎と俺を見比べる。
「…………冗談?」
「それを言って、どうするのですか」
思わず苦笑いがこぼれる。
「つまり……というかはっきり言っちゃうけど。貴女、中身は衛宮士郎ってこと?」
「ええ。……そうだよ、遠坂。俺は、間違いなく衛宮士郎だ。どういう訳か、セイバーの姿を借りてるけどな」
「……」
「今まで黙ってて悪かった……って、凛!」
腰から崩れるようにへたりこむ凛。ふらり、と屋根の端から落ちそうになったので駆け寄って体を支える。
凛は口元を吊り上げた。かと思えば、顔を真っ赤にして、その内に頭を抱えて振り乱す。
「だ、大丈夫ですか?」
「……ふ、ふふふ」
「ふ?」
「ふっざけんじゃないわよーーー!!」
「いっ~~~~っ!?」
があー、と耳元で怒鳴られる。頭の中で凛の声ががんがん響いてる。きーん、ときた。ご丁寧に顔をわざわざ寄せてからの音波兵器だ。咄嗟に耳を押さえたけどどうしようもなく遅かった。
「アーチャーだけど、アーサー王だって聞いて当たりだと喜んだのは何!? 可愛い子だなぁ、なんて微笑ましく思ってた相手が実は男!? しかもよりにもよって、衛宮くん!? うあー! 詐欺よ詐欺! 私の感動を返しなさい、この馬鹿ー!」
「り、凛。落ち着いて!」
襟元を掴まれて、前後にがっくんがっくん振られる。忘れてるんだろうけど、今俺と凛の位置は屋根の端だ。その行為はとても危ない。
ところで、よりにもよって俺、というのはどういう意味なんだろうか。解釈によっては酷く傷つくんだけど。
「……はぁ、……はぁ」
「凛? 落ち着きましたか?」
「はぁ……で、ええと、それで何? 衛宮くんは、聖杯戦争を終えると貴女になってしまう。そういうこと?」
「え、あ。いや。今回、それはないと思う、けど」
爆発は終わったらしい。すっかり冷静になった凛にじっと見つめられる。あまりの落差に、逆に俺が動揺してしまった。
「ということは、貴女の世界とここは平行世界ってことよね。アルト自体が第二魔法を体現して……いえ、聖杯戦争のサーヴァントシステム自体に第二魔法が応用されてるってこと? ――違う! 何で気づかなかったの! 未来の英雄を呼び出す、そこが平行世界への入り口に繋がってるじゃない。英霊の座に干渉する方法を解析して、平行世界の座標割り出しを確立出来るなら……? その為には聖杯戦争のシステム、基盤の場所さえわかれば。いえ、そうよ! アルト、貴女はいったいどうやって英霊の座に……」
「……はは、ごめん。そっちの方面は、いまいち私にはわからないんだ。気がついた時には呼び出されていたからさ」
「あ……」
そこで凛の顔が沈痛なそれに変わる。ゆっくりと襟元に伸びていた手が戻された。伸びていた襟を払って戻し、苦笑いを浮かべる。
「ここにリアの姿の貴女がいるってことは、貴女の時は、聖杯戦争中に……?」
「……そうだな。うん。そういうことだ」
凛が小さく、「そう」と呟いたきり、沈黙が降りた。
自然と、俺の聖杯戦争での出来事が浮かんでくる。
――――そうして、やっぱり強く思い出されるのは、セイバー。傷つきながらも立ち上がる彼女の姿。俺が護り切れなかった少女。俺の選択に悔いはなかった。ただ、力の無い自分だけが不甲斐なかった。
「……ねぇ、訊いていい? 貴女の時の、聖杯戦争のこと」
「ああ、構わない。……でも、何から話せばいいのかな。最初はそうだな、ここの士郎とまったく同じで、巻き込まれて参加したんだ」
一番初め、学校で遭遇した紅い騎士と蒼い騎士の戦闘から、ギルガメッシュと結果的に相打ちとなるまでを一気に語り終える。長い話。でも、リアの時に続いて二回目だからか、以前よりも要点を整理して説明できたと思う。
付け加えるのは聖杯戦争中に得た知る限りの情報。そのほとんどは既に意味を成さないものになってしまったが、確実に相違点からの誤差はあった。もちろん、その中で一番大きかった違いは俺の存在だ。相槌を打ちながらも凛が興味を示したのも、ここだった。
「……へえ。それじゃ、その貴女の時のアーチャーと、今のアルト。どっちが強いの?」
「そう、だな。難しいな。身体能力だけでいったら間違いなく私の方が上だろうけど。でも正直に言って、実際に戦って勝てるかどうか、自信はないな」
「勝てないの?」
「あ、いや。勿論アイツに負けるつもりは欠片もないぞ」と慌てて手を振り弁解する。
「でも、なんていうんだろ。衛宮士郎の先をいってるっていうのかな。私が考え付くことはみんな見通されそうな……アイツが私を衛宮士郎と認識しなければ、どうなんだろう」
「アルト?」
「あ、いや、何でもない。どっちにしても、底を見せないようなヤツだったからさ」
ここまで共感できて、なのに反発してしまうアイツの正体。きっと、俺はどこかで気づいてる。それを見ない振りしているだけなんだろうとは思う。考えたくないのかもしれない。そんな可能性を、俺は認めたくないのかもしれない。
「ねぇ……貴女がその姿になった理由、見当はついているの?」
「……幾らかは推測しているんだけどさ、どうにも説得力に欠けるんだよな」
融合してしまった、ていうのが俺の中での最有力なんだけど……。
でもさっき凛が言ってたように、存在として弱いだろう俺の意識が残る筈が無い。その前提の上で考えると、俺は『融合』ではなく霊格が上であるセイバーに『喰われる』筈なんだ。
「魔術世界での精神憑依、若しくは入れ替わりと照らし合わせて気がついたことあるんだけど。衛宮くんがそのまま当て嵌まっているかわからない。それでもいいなら、聞くだけでも聞いてみる?」
「――! ああ。是非頼む」
その申し出は願っても無い。一人で考えてみたものの行き詰っていたところだった。そもそも、魔術が絡んでいる以上俺では荷が重いのはわかっていたこと。
「先に言っておくけど、専門じゃないから突っ込まれても詳しくは教えられないからね」
「構わない。こっちは圧倒的に知識と情報が足りないから、本当に助かる」
思わず身を乗り出してしまう。そうだ。凛に相談しておけば力になってくれたんだ。変な自尊心なんか捨てて、もっと早く頼っておけばよかった。
「まず、精神だけで相手の身体を支配するのは相当な力差を持ってないと難しいの。それに、仮に乗っ取ったとしても時間と共に意識は薄れていってしまうみたい。乗っ取っても精神力を消費して行動するから、本来の体の持ち主の精神力を下回った時点で、乗っ取っていた側は喰われて消滅してしまう」
ふむ。つまりは意思だけで人を乗っ取るのは現実的ではないらしい。
「だから、体を他に移す場合は極力、意思の無い人形を選ぶか、相手の精神を消滅させて空っぽにしておくわけ」
「ちょっと待ってくれ。そうするとセイバーは……」
精神が出ていった空っぽの肉体に、俺が納まった……今の俺がこうしていられる、辻褄が合ってしまう。
血の気が引く。そこに思い当たっても、きっと違うと信じずに、何らかの原因があるんだと思ってきたこと。
「待って、まだ途中だから。乗り移った精神が力が失っていってしまうのは、核がないからなの。意志を留め置くモノ。一番有効なのは人間の脳ね。心霊医療でそのまま移し替えてしまえば、拒絶反応さえ起こさなければ体の寿命までは半永久的に有効。次は、体を小動物や無機質に移して、乗り移る対象の体内に含ませること。その場合も、宿主の精神が弱まっていること、若しくは協力的であることが好ましいのだけれど」
「体を無機質に……」
「何か心当たりがあったりはしない?」
…………ある。ただ、移した訳じゃない。俺の体が、無機質に変化したのだ。
身体を代償に、造り替えたものは、鞘。あの地獄から死するその時まで俺の身体に溶け込んでいた、あの鞘。
「ある……。それじゃ、それをこの体から取り除けば……!」
「待ちなさい」
「……え?」
「確かに、その原因を取り除けば奥にあるセイバーの意識が出てくるでしょう。でも、それは少し……いえ大問題だわ」
それの何が悪いんだ? この身体の持ち主であるセイバーに、本来のところに返して何が問題だというのだろう。
「リアとアルト、二人の違いが出ているのは士郎、貴方が彼女を乗っ取っているからじゃないの?」
「あ、ああ。セイバーの身体に埋めた
「なら、尚更よ。いい、アルト。世界っていうのは思っていたより狭量だわ。己に害を為すものを許さない。矛盾のあるものを許さない。――そして、同一の存在を許さない」
「……どういうことだ?」
「貴女がその身体から、変化させているものと一緒に抜けて出たならどうなると思う? 違うマスターと繋がっているとはいえ、精神も肉体も同じ存在が同時期、極近い場所に新たに発生することになるわ。……リアかセイバー。どちらかが確りと肉体を持っているか、それとも思考が違う方向に変化していない限りはね」
「……そうなると、新しくこの世界に生まれることになる、セイバーはどうなるんだ?」
「実際目の当たりにはしたこと無いから何とも言えないけど……この世界から飛ばされて排斥されるか、物理的に排除されるか」
「そん、な……!」
俺だけが飛ばされるなら、消滅させられるならいい。でも、セイバーが被害を被ってしまうのは、俺が許せない。
ただ、それじゃこの世界にいる限りセイバーに身体を返すことはできないことになる。
「リアが消滅するか、リアかアルトが受肉するか、リアの思考が変化するかしない限りは……」
「くそっ!」
「落ち着きなさい。そうだと決まったわけじゃないわ。それに、他に方法があるかもしれないし」
リアが消滅するなんて、許容できるわけが無い。リアの思考の変化なんて、俺がどうこうできることじゃない。
そうなると……?
「そう、だよな。他に方法があるかもしれない。いや、逆に考えれば、聖杯に受肉を求めれば……!」
「そうね。確証は無いけど、そうすればきっと上手くいくと思うわ。――でも、いいの? その身体から取り出されて無機質に戻ることになる貴女は、そのまままた誰かの身体に入るまで眠り続けることになるのよ? もしかしたら、寿命がないだけに永遠に目覚めることがないまま意識だけで取り残されることも……」
「……ええと? そうなるだろうけど、それがどうかしたのか?」
そう答えるなり、凛に睨まれる。何故か知らないけど、不愉快そうな色が見て取れる。
「……はぁ。アルトはやっぱり、衛宮くんなのね」
「……? 凛、何当たり前なことを言ってるんだ?」
「いいの。どうせ言ったところで変わらないんだろうし。再確認しただけなんだから」
こっちの疑問は捨て置かれて、勝手に納得されてしまった。
とりあえず、問題が解決する兆しは見えた。後は全力でこの聖杯戦争を勝ち抜くだけでいい。
流石に昼から考えてばかりだった所為で、頭が重たく疲労を訴えている。でも、問題点が勝ち抜くことで解決すると知って、気分的にも大分楽になれた。
「ん~~!」
大きく、伸びをする。憂いていたことが大分軽くなくなって、安心したら大分眠気が降りてきた。
「あ、そういえば、貴女の呼び方はアルトでよかった? それとも、衛宮くんって呼んだ方がいい?」
「いや、アルトで構わないよ。この世界にはもう一人、衛宮士郎はいるからさ。二人はいらない」
「……そう。リアと同じ姿でも口調がそれだと、やっぱり衛宮くんって感じね。って、そういえば口調戻ったのね」
「ああ、うん。大分前から強制力が弱まってたみたい、だ。士郎や慎二、イリヤの手前じゃ口調、戻せないけどさ」
あの時の令呪の内容は『私の言うことを聞きなさい』というものだった。令呪の影響範囲内のことなので束縛は生まれたが、令呪そのものでの命令ではなかったからそんなに効果は持続しなかったのだろう。
「そうは言ってるけど、ちょっと前から貴女の口調おかしくなってるわよ? 念話で丁寧語で話しかけたり、私って言ったり俺って言ってみたり。口調を戻ってたさっきだって何度も『私』って言ってたしね」
「本当ですか? ……気づきませんでしたが。まぁ、このところはそうでもありませんが、私もセイバーとして疑われないような行動、言動を心がけていたつもりです。抜け切らず、どちらで話したらいいのか混乱しているのかもしれません」
ふふ、と軽やかに笑ってみせると、う、と呻いて凛の顔が紅く染まる。
「卑怯よ、それ。中身が衛宮くんだってわかってても騙されるわ。中身はへっぽこの癖に余裕ぶって、まるで本当の騎士みたいだもの」
「自分では良くわかりませんが。 私としてはですが、セイバーの口調で統一した方が気が楽なんです。対外的なことも含めて。無理矢理そっちに合わせてたもので、半ば自己暗示になってるのかもしれません。大分緩くはなりましたが、強制力も完全になくなったわけではありませんからね」
「ま、しばらくはセイバーの口調で通しなさいね。士郎や慎二には知らせるつもりはないんでしょ?」
「……ええ。私のようにしない為に、私はここにいますから」
「とか言って、そんな姿になったって知られるのが恥ずかしいんでしょ?」
む。確かにそれが大部分を占めてはいるんだが。凛め、解って言っているのだから意地が悪い。
「ま、とりあえず、戻りましょ。ここは寒いわ。風邪、引いちゃうもの」
「ええ、そうですね」
「アルト、ほら早く早く! 女の子は、身体冷やしちゃいけないのよ? 貴女も暖かくして寝ないとね」
にしし、と猫みたいな笑いでこちらを覗き込んでくる。
「…………ぐ」
凛はすごい頼りになる。打ち明けることで精神的に支えになってくれている。けど、やっぱりちょっと、早まったのかもしれない。
ちなみにその後直ぐ、図らずも仕返しすることが出来た。屋根から下りるために俺に抱えられた凛の表情は真っ赤に染まった上にとても罰の悪いもので、俺はうってかわっての彼女の姿に、思わず笑い声を漏らしてしまうのだった。