幻想郷は本格的に冬季に入り、白銀の世界に変わる。今年は特に厳しく、吹雪がやまないほどの季節となっていた。
だけど、僕には関係ない。この世界にはあの人がいるのだから。この白銀の世界を愛してやまない、あの人が。
さて、幻想郷といえば春が訪れず、長い期間冬が続いた『異変』があった。霊夢達が解決して今は季節がちゃんと巡っている。
「いやはや、今年は特に寒いね」
あ、どうもどうも。古海鬨です。今日は人里を離れて妖怪の山手前に来てます。
いや〜壮観ですね。秋の紅葉とは違い、白く鎮座する妖怪の山はまた別の趣がある。
「確かこのあたりだったかな…」
まぁ山のことはとにかく、今日僕はある方に会いに来てます。もうそろそろいると思うけど…。
「…あ」
雪に覆われた平原で、空を見ている人がいる。
いや、正確に言えば人じゃない。
「…ん?」
その人?は僕に気付き、空を飛んで目の間に降りて
ハグしてきた
あれだ、主人が呼んだら全速力で体当たりをかます大型犬みたいな感じ。
「ングぅ!?」
その人?は僕に抱きつき、踊るように僕を振り回す。目の前には柔らかくて、いい匂いがするとても素晴らしいお山が、僕を埋めていた。うおっすっげーお胸、Dカップかな?
「会いたかった〜!去年は全然会えなかったから寂しかったんだよ〜?」
「ンググ…!ング…ウォデッカ…」
僕にハグをしている彼女は雪女の妖怪、レティ·ホワイトロックだ。
薄紫または薄水色のショートボブに白いターバンのようなものを巻き、ゆったりとした服装をしている。胸がでかい。
下はロングスカートにエプロンらしきものを着用。また首には白いマフラーを巻いている。服装は防寒着というわけでなく、見た目は普通。あと胸がでかい。
左胸あたりに首から腰までの白いラインが走っており、そこに銀を表す錬金術記号の一つに似た、四方向に矢印がついた槍のようなブローチをつけている。ちなみに瞳は紫ないし薄紫。最後に胸がry
「もぉ〜きいてるの〜?それとも〜恥ずかしがってる〜?」
「ハナジデ…グルジィ……」
このままふくよかなウォでっかお胸に包まれて眠るのはいいが、ちょっと離してほしい。
「んっふふ〜このまま私の胸で〜冬眠、しちゃう?」
「しませぇん!!」
「えぇ〜?古海くん冬眠しないの〜?」
「しまぁす!!」
くっ…俺の中のデ○ジくんが叫んじまったよ…欲望にはかなわないぜ…。
「アハハハ!本当に古海くんは面白いね!」
満足したのか、やっと開放してくれた。
…流石雪女、というべきか。ハグされていた間は少し冷えた。それもそうだ。彼女は雪女。冷気を操るくらいだから冷たいわな。でも、あの胸で休眠できるのなら、俺は死んでもいい!桃源郷はここにあり!
「…大丈夫?もしかして、ハグしたときに少し冷えた?」
レティさんが心配そうに僕を見る。
レティさんのほんのり輝く薄紫色の目が、僕を映す。その瞬間だけでも僕は来たかいがあったというもの。
「いえ、全然冷えてませんよ!むしろ温まりました!ありがとうございます!」
「!も、もう〜何言ってるのこの子は〜!」
「「アハハハハハ!」」
さて、レティさんのおかげで僕も温まったことだし、本題に移ろう。
「レティさん、去年はお会いできなかったこと、本当に申し訳ありません。去年の冬はかなり早く雪解けし始めましたから、その処理と手伝いで会いに行けませんでした」
僕は深々と頭を下げる。本当はレティさんにいの一番に会いたかったが、去年は忙し過ぎて行けなかった。
「いいのよ。こうしてちゃんと会いに来てくれたんだもの。お姉さん嬉しいわ。それに、去年は確かに冬の時期が短かったし、忙しくなるのも仕方ないわ」
レティさんは優しい笑顔で僕を許してくれた。
どうしてレティさんの笑顔は、この日の光か届かない世界で輝いて見えるのだろう?
「ありがとうございます。レティさん」
「うん!これで古海くんの謝罪としんみりは終わり!」
「…レティさん?」
「でも〜会えなかったから〜…罰として、今日はお姉さんとずっといてね?」
ウインクで僕をからかっているが、可愛いが過ぎて好きになりそう。あらやだ困っちゃう!
「はい!お安い御用です!」
「ンフフ、それじゃあ行きましょう!」
レティさんは僕の手を取り、白銀に輝くたった二人の世界を巡った。
雪に埋もれた妖怪の山の麓を訪れ、
「ここはね、私がよく来る場所。下から見る山が美しく感じるの」
「…確かに、他の季節とは違う趣がありますね」
「次はこっち!」
「ちょっ…待ってくださいよ〜!」
二人で雪合戦をしたり、
「そりゃ!どうだ!」
「やったな〜!くらえ!寒符『リンガリングコールド』〜!」
「ちょっ…!スペカはだめでァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"!!」
雪玉と雪玉に似た弾幕が飛び交う中、レティさんの笑い声が雪原に響く。
「ふぅ、楽しかった!ねえ、古海くん、次はかまくら作ろ!」
「え、レティさん、休憩なしですか?」
雪合戦の後はかまくらをつくり、
「ちょっと狭かったね〜」
「僕はレティさんとくっつけて幸せですよ」
「んも〜!この子ったら〜!ホントにも〜!」
「痛い、痛いです。レティさんそんなにバシバシ叩かないで、かまくらこわれちゃう」
楽しい時間はあっという間に過ぎていき、気づけば空は深く暗くなっていた。
「……」
「…もう、帰っちゃうの?」
「そうですね…ちょっと冷えてきました」
いくら動いていたとはいえ、この寒さはきつい。足も腕も少し悴んできた。
「そっか…じゃあ最後に!とっておきの場所に連れて行ってあげる!」
「『とっておきの場所』?」
「うん!ちょっと遠いから飛ぶよ!」
「え?と…とぶ?レティさんってァァァァァァ!」
はい、レティさんにお姫様抱っこでお持ち帰りされちゃいました。
ーーーーー………
「…着いたよ、古海くん」
飛ぶこと約15分。寒さに震えながら目を開くと、そこは氷で固まった大きな湖だった。
「ここが…『とっておきの場所』?」
「そうよ。あなたに見せたかった場所」
白く輝く幻想的な世界を目の前に、僕は息を呑むしかなかった。
「古海くん!見てて!」
レティさんは僕を降ろし、一人湖の中央に立つ。
彼女は優雅に、滑らかに時には大きく跳躍したり、美しいスケートを見せてくれた。
月の光がまるでスポットライトのように、彼女を輝かせる。翻るスカート、風になびくマフラー、レティさんの時折見せる真剣な眼差しに、僕は瞬きを忘れてずっと見ていた。
やがてショーは終わり、レティさんは滑りながらこちらに来た。
「…どうだった?『スケート』って言って、この前チルノに教えてもらったの。初めてだったからちょっとおかしかったかもだけど…」
レティさんは照れながら言う。あの踊っていたレティさんとはまるで別人じゃないかと思ってしまった。
「……いいえ、そんなことはありません。とても、とても綺麗で、儚くて、美しかったです」
言葉にするには難しく、形にするにはあまりにも難しいけど、それでもずっと見ていたいくらいだった。
「そう…嬉しい!」
「はい…!本当に…!」
「…よし!古海くんも踊ろう!」
レティさんは僕の手を取り、氷の湖にたたせる。
いつ割れるかわからない恐怖と、寒さでレティさんにしがみついてしまう。
「レ…レティさ…」
「怖くないわ。私が離さないから」
レティさんは優しく囁いて僕をリードしながら、ゆっくりと踊りだす。
たった二人だけの白銀世界、白く輝く雪が、月光が、僕らを照らしているかのようだ。
「古海くん。私、とっても幸せだよ」
「…はい」
「…この世界も、悪くないでしょ?」
「…えぇ、この世界は、僕たちだけのものです」
「ふふっ、そうね。この世界は私達だけのもの」
寒く、薄暗い世界に、温かい光が2つ。
「また……会えるよね?」
一つの光が僕に問いかける。
「…はい、必ず、会いに行きます」
「…うん、この
やがて2つの光は、ひらひらと舞う雪の中で溶けてしまい、一輪の白銀の花びらが舞っていた。