僕は開始早々あるものを"想像"する。
「サーモグラフィースコープ!」
頭に装着し、すぐさま服を脱ぐ。
「創さんがその気なら…私もそうします!」
スコープ越しに百姉さんが服を脱いだのが分かる。
「こいつら本気を出すには脱がなきゃいけねえのかよ!?」
「"個性"の都合上仕方ないが…カメラを切った決勝戦はどうかと思うぞ…」
僕の"想像"で物を作るためには『体験から想像する』必要がある。
『体験』は簡単に変えられないが…『想像』の部分が重要だ。
明確なイメージであればあるほど早く作れるが
そのイメージがつかめないといつまでも作れない。
ここで想像してほしい。
目の前で美女、あるいは美男が裸になったらどうだろうか?
思うことは色々あるかもしれないけど、その光景は印象深く残るだろう。
他のことを考えようにもそのことしか考えられなくなるはずだ。
僕にとってそれは致命的だ。何も作れなくなる。
百姉さんの裸なんて見たら百姉さんしか"想像"できなくなる。
まして今の百姉さんは敵だ。二対一になるのは簡単に想像できる。
そのためにサーモグラフィースコープを作った。
百姉さんの裸を見ずに百姉さんの姿を見るためだ。
「そう来ましたか…これならどうです!」
百姉さんが視界から消える。強力な熱源を出したのだろう。
距離を取ったら負ける。百姉さんと僕には致命的なリーチの差がある。
百姉さんは飛び道具を使えるが僕は使えない。
防具を着込んだら生成量で押される。インファイトしかない。
「ファランクス!うおお!」
古代兵士スパルタのイメージで盾を作り突撃する。
固い何かにぶつかる。感覚からマネキンの類
破裂音が響く。思わず体が硬直する。
そして冷たい何かが僕を締めあげる。
「後ろががら空きです!」
おそらく鎧を着こんだ百姉さんだろう。
ゴーグルを外して状況を確認する。
大きな送風機と破裂した風船…これがさっきのトリックか。
「さあ、創さん!『本気で』来てください!」
その言葉の意味は…こういうことなのだろう。
「い、色は黒、姿は鎧、性格は高慢にして不遜…
全てを意のままにする狂戦士…!"被想像"…!」
「おい、イレイザーヘッド…あの姿って…」
「…お前もその反応ということは…ただの偶然ではないな…」
…なんだ?また呼ばれたのか?…どこかの会場?
「さあ、創さん…ここからが本番です。」
裸にガスマスクを付けた百姉さんが何か言っている。
「会場だの本番だの…誘ってるのか?」
「貴方を制御できれば…創さんはもっと強くなれます!」
何かの訓練か。ちょうどいい。
俺を止められる手段があればビビりも少しはましになるだろ。
俺の剣撃を百姉さんは避けていく。流石に大剣では大振りで当たらないか。
大剣を手放し、手甲の連撃で攻める。それでも百姉さんは回避し、受け流す。
「だいぶ鍛えたじゃないか百姉さん!あの化け物よりもやりがいがある!」
「凌ぐだけで手いっぱいですわ…!創さんは本当にお強いですね…!」
当然だ。今でも十分強いが、暴走した俺はもっと強い。ビビりは恐れているがな。
「だったら少し解放しようか!『黒よ、前に(シュバルツ・フォア)』!」
鎧の一部をパワードスーツに変える。拳の破壊力とスピードが増す。
「くっ…!『矛盾の盾』!」
百姉さんが大きな盾を作り、構える。
「ぶっ壊してやる!おおおおおお!!!!!!」
盾にひびが入る。そして砕ける。
「ふわあ…あくびが出ちまうぜ…
何でも防げる盾は存在しないんだよ!俺が砕くからなあ!」
「…これでおしまいですわ…」
百姉さんに拳を振りあ
「…ふえ?」
あれ、なんで?"被創造"が解けたんだ?
「創さん。私の勝ちですわね。」
ももねえさんのはだか
夢を見る。
「してやられたな。まさか負けるなんて。」
「え、僕負けたの?何で?」
「おそらく麻酔か何かを嗅がされたんだろ。」
「送風機にそんな仕掛けが…想像を超えてるよ…」
「まだまだ百姉さんには勝てそうもないなあ?」
目が覚める。
「今度は間近で見てしまったからねえ…無理もないさ。」
「…なんかさっきもこんなことありませんでした?」
「あまり気にしない方がいいよ。…表彰式出れるかい?」
そうだ。僕は百姉さんに負けたんだ。"被創造"を使った上で。
「…やっぱり百姉さんには敵わないか。」
百姉さんのすごさに思わず笑ってしまう。
表彰式で百姉さんと僕はオールマイトにこう言われた。
『本気を出すのは構わないが、もっと人の目を考えた方がいい。』
…その通りだと思います。僕はともかく百姉さんは考えた方がいいです。
『なぜでしょうか?』じゃないですよ百姉さん…
男性がそれ説明するのはセクハラですから…
百姉さんと一緒に帰ろうとしたところを鋭児郎君に呼び止められる。
「すまねえ八百万。ちょっと創を借りるぜ。」
「…?構いませんが…」
百姉さんの許可の下、僕は鋭児郎君に人目のつかないところに連れて行かれる。
「創…なんで『笑って』んだよ?」
鋭児郎君は僕に詰め寄ってきた。
「…だ、だって…百姉さんは僕に勝てるぐらい凄い」
「悔しくねえのかよ!?本気で戦って、そのうえで負けて…何も悔しくねえのかよ!?」
そんなの、そんなの言うまでもないじゃないか。
「百姉さんは僕の憧れなんだ…僕の手を引いてくれる、頼れる姉さんだよ…
だから…いつかは追いつきたいと思っている…今回は本気で挑んだよ…」
「だから…悔しいさ…すごく悔しいさ!
正直、"被創造"を使ったら百姉さんにも勝てると思った!
でも、百姉さんはさらにその上を行った!めちゃくちゃ悔しいよ!」
涙がボロボロ出る。そうだ。死ぬほど悔しい。
「…その気持ちを抑えてまで笑うんじゃねえ。泣いたっていいんだ。
思いっきり泣いて…そして強くなりゃあいい。そうすりゃいつかお前は…
『八百万に並べる』…俺は創を信じているぜ。」
鋭児郎君は僕をぎゅっと抱きしめる。
「ううう…鋭児郎くうううん!!!うわあああん!!!」
僕は思いっきり泣いた。こうして誰かの胸の中で泣いたのは初めてかもしれない。
百姉さんには見せたくなかった。なんか、よくわかんないけど見せたくなかった。
「…すっきりしたか、創?」
「…うん…ありがどう…ぎりじまぐん…」
まだ涙は出るけど、心がすっきりした。
「よし…しかし、八百万にはなんて言うか…」
「素直に言うよ。『悔し泣きする姿は百姉さんに見せたくなかった』って。」
「…そうか。こっからお互い頑張ろうな!創!困ったことがあれば何でも相談しろよ!」
「うん!頑張ろう!鋭児郎君!」
お互いの拳を突きつける。鋭児郎君と僕の新しい友情のサインだ。
狂戦士は強いですが搦め手に弱いです。
事前に準備をすればそこまでの脅威ではありません。
準備できなかった場合は…ねえ?