"創造"と"想像"   作:神剣狩刃

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第15話 百姉さんが百姉さんであるように僕が僕でありたい

皆で入院した病院での話の中で、僕たちの活躍も処罰も無しということになった。

その活躍について僕は何も知らないから状況を聞きたかったんだけど…

 

「狂戦士化はあんなに危険なんだな…

気安く引き受けるべきではなかった。すまなかった。」

「力を自分で制御できない…僕と同じ悩みがあるんだね…」

「大丈夫だ。あれぐらいで俺達がお前を怖がったりはしねえ。」

狂戦士の制御の仕方は今のところ思いつかない…百姉さん相談したいな…

 

雄英高校

 

俺は保須のヒーロー殺しの事件の動画を見ている。

「おい、イレイザーヘッド…例の動画見」

「今見ている…なぜ創は『終』を"被想像"できたんだ…?」

創の"被想像"はその人物に関する体験や経験がないとできない。

創は姉である終のことを知らない。よって、不可能なはず。

 

「まさか…『終はまだ生きている』…?」

「死体が発見されなかったからって…非合理的な考え方よ、イレイザーヘッド。」

香山先輩が俺に意見する。そんなことは分かっている。

「白雲のことがあるから分かるがよ…今はそんな場合じゃないだろ?」

山田も意見してきた。…そんなことは分かっている…

 

期末試験に向けての勉強会が百姉さんの家で行われることになった。

皆が豪邸ぶりに驚いている。僕はもう慣れた…いや、いまだにちょっと驚く。

特に百姉さんのお母さんのクッキーの味はすごい。なんというか…頭にはいい味がする。

 

「なのでこの問題はこの公式を使って解きまして…」

「この『べし』は前後の文から推量の意味が正解で…」

「willとgoing toの違いは『意志がある』か『予定がある』ですわ。」

「「「流石ヤオモモ!頼りになる!」」」

やっぱり百姉さんはすごいや。

 

勉強会の終わりに百姉さんに話しかける。

「百姉さん…ちょっと…僕の"個性"で相談したいことがあるんだ。」

「創さん…もちろんです。『あの時』のようにすればいいでしょうか?」

百姉さんと僕は前にも"想像"に関して相談したことがある。

 

「うん…ごめんね。これに関しては百姉さんしか頼れないんだ…」

狂戦士化を簡単に止められて、誰にも言わないでいてくれるのは百姉さんしかいない。

「いえ、存分に私を頼ってください。…私は『百姉さん』ですから。」

百姉さんが僕の手をぎゅっと握ってくれる。温かく、頼りになる手だ。

 

僕は百姉さんの自室で椅子に縛り付けられる。

「防音対策も施しました。…遠慮なく使ってください。」

百姉さんの言葉を信じ、僕は"想像"する。

「色は黒、姿は鎧、性格は高慢にして不遜…

全てを意のままにする狂戦士!"被想像"!」

 

…百姉さんの部屋か。そういうことだな。

「百姉さん、職場体験で『終姉さん』になっちまった。」

百姉さんが口元を抑えて青ざめる。

「大丈夫だ…創はそのことを知らない。…仲間が黙ったんだろうな。」

もし知っていたらビビりは…崩壊するだろうな。

 

「…最悪の事態は防げましたね…でも、『終さん』を知ってしまった人が増えて…」

「あいつらは死んだって口を滑らせないだろうよ。創は大切な仲間だろうからな。

それよりも…百姉さん、『創の"個性"を開放』していきたい。」

 

ビビりは姉を殺したトラウマから俺を生み出し、終姉さんの記憶を押し付けた。

そして、二度とそんなことが起こらないように自分の"個性"に制限をかけた。

しかし、敵が襲ってくる昨今、『不完全な"個性"』では俺に頼らざるを得ない。

ビビりはそれをよしとしない。

なら、少しずつ開放していくのがいいというのが俺の考えだ。

一度にすべてを開放するとトラウマを増やしかねないからな。

 

「ということでだ、百姉さん。ボイスレコーダーを頼む。」

「承知しました。…こちらです。」

百姉さんが慣れた手つきでボイスレコーダーを作る。

メイドイン百姉さんが一番安全だ。

 

「いいか創…お前の"個性"はまだまだ強くなれる。

…実はお前の"個性"で作ったものは『手から離れても消えない』。

消えると思っているから消えるんだ。残ると思えば残り続ける。

お前の想像次第だ。百姉さんと一緒に頑張るんだ。

時が来たらもっとお前の"個性"を強くしてやる。」

 

ビビりへのメッセージを残す。そろそろ時間だ。終姉さんがちらついてきた。

 

「…終姉さんに会っておくか、百姉さん?」

「止めておきます。…何が起こるかわかりませんから。」

その通りだ。懐かしい麻酔薬の匂いがする。これであの時も

 

「…どうでした、百姉さん?何か手掛かりはありましたか?」

「狂戦士の制御はまだ難しそうでしたが…

創さんの"個性"を強くすることはできるそうです。」

僕は百姉さんが録音してくれたメッセージを聞く。

 

拘束を解いてもらい、百姉さんの応援の下練習した結果、あっさりできるようになった。

「これで飛び道具も扱えるようになりました…!戦略が増えます…!」

「…そうですわね。創さんが成長して私もうれしいです。」

今、百姉さんが言葉をためらった気がする。なんでだろう。

 

「…創さん。私は創さんが強くなることは嬉しく思っています。

ですが…『私を頼らなくなってしまう』のではないかとも思ってしまいます。」

百姉さんの口から思いもよらぬ言葉が出てきた。

 

「もし、創さんの"想像"が完成したら…

きっと私の"創造"より強いものになると思います。

そうなったら…私の存在意義はどうなってしまうのでしょうか…

想像するだけですぐに作れてしまう創さんに対し、知識が必要な私…

肉体すら作れる創さんに対し、生物は作れない私…

いつか…私は創さんの下位互換になってしまうのではないか」

「そんなわけないじゃないか!!!」

僕は百姉さんに向かって大声を上げる。

 

「僕は百姉さんをすごい人だと思っているよ!

"個性"がどうとかじゃなくって、百姉さんっていう人間がすごいんだ!

頭もよくて!体型もよくて!優しくて!こんな情けない僕にも手を差し伸べてくれて!

百姉さんがいなかったら僕は雄英を目指すこともなかった!

ヒーローになろうとも思わなかった!

誰が何と言おうと…僕には百姉さんが必要なんだ!」

 

百姉さん離れをしようと思ったけど、きっと僕には無理だ。

百姉さんがいなくなったら僕は何もできなくなってしまう。

その場にいなくてもどこかで支えてくれるから僕は動ける。

 

「だから…自信を持って百姉さん!僕は百姉さんとずっと一緒にいたいから!」

百姉さんの右手をぎゅっと握る。震えている。今度は僕が温める番だ。

 

「創さん…そうですわね…!創さんには私が必要ですわ!」

百姉さんがぎゅっと握り返してくる。震えていない。しっかり温められたようだ。




今作の百姉さんは『創の頼れる姉さん』としていられるかが課題です。
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