闇のブローカー義爛の紹介の下、あたしはとあるバーにやってきた。
あたしの紫の瞳がバーにいる人間を捕らえる。
そこには可愛らしい女子高校生と、ツギハギイケメン、
出て顔を隠した趣味の悪い男、頭が霧の人といろんな人がいた。
手の人は『死柄木弔』…趣味が悪すぎるからどうでもいいわ。
JKちゃんは『我渡被身子』で連続失血死事件の犯人。可愛いから無罪ね。
ツギハギイケメンは『荼毘』なんて言ってる。本名は『轟燈矢』よ。
森林火災に巻き込まれて死んだって言うけど…あたしと同じく生きているわね。
頭が霧の人は『黒霧』。素顔を見てみたいわ。意外とバカ面してたりして。
トガちゃんと轟くん…今は荼毘くんか。荼毘くんはステインの意志が動機らしい。
「…どいつもこいつもステイン、ステインと…」
死柄木がぼりぼりと喉をかく。
「あたしは違うわよ。動画に『あたしが映っていた』でしょ?」
あたしは赤く、長い髪を手で靡かせる。あの人のシャンプーの匂いがふわっと漂う。
「…自己紹介をしろ。お前までできないわけじゃないだろうな?」
死柄木があからさまにイラつきながらあたしに迫る。ほんと好みじゃないわ。
「まさか。こう見えても雄英卒の30歳よ?」
あたしは一つ深呼吸をして自己紹介をする。
「あたしは『終』…『相心終』よ。ヒーロー『機械仕掛けの神』本人よ。」
「…誰だ?俺は知らないぞ?」
「私も!どんなヒーローなんですか!?」
「…何でもいいだろ?目的はなんだ?」
「ステイン関連ではないと思いますが…」
あたしを知らないとは…まあ、当然よね。活躍は全部あの人に譲ってるもの。
悔しいけど、あたしは一同にここに来た理由を宣言する。
「弟よ。弟に直接会って…この手で地獄に導いてやるのよ。」
「…家族関連か…その弟ってのは誰なんだ?」
荼毘くんは興味深そうに聞いてくる。
「相心創…雄英高校1-Aにいるわ。ちなみに、こういう因縁よ。」
私は着ていた鬱陶しい服を脱ぎ捨てる。
「うわわ、大胆です。セクシーすぎるです。」
トガちゃんが思わず顔を隠す。可愛いわね。あとで頂こうかしら。
「なるほど…その『傷』を弟さんに負わされたと…」
黒霧さんはあたしの体を見て納得がいったようだ。
あたしの体には無数の傷跡がある。
切傷、刺傷、長い髪で見えてないけど頭には銃創…
完膚なきまでとは正にこのことと言わんばかりよ。
おかげで抜群のプロポーションの魅力が半減しているのよ。
「動機は十分でしょ?あとは"個性"なんだけど…説明するのが面倒なのよ…」
あたしの"個性"はものすごく強い。でも、言葉にするのが難しい。
「この中でナイフ持ってる人いる?いたら貸してほしいけど…」
「あ、私持っています。どうぞ。」
トガちゃんがナイフを貸してくれた。後で絶対にトガちゃんを頂くわ。
「ありがとう、トガちゃん。…この中でナイフを絶対に回避できる人はいるかしら?」
「私がやりましょう。回避には自信があるので…」
黒霧さんが申し出てくれた。
「では始めるわ…『想像せよ』。『黒霧さんにナイフが刺さる』。」
私はそう宣言し、手の男に向けてナイフを全力で投げる。
ナイフは『理不尽』な動きをし、黒霧さんに向かって進む。
黒霧さんはワープホールを作り出し、ナイフの軌道を変える。
ナイフはバーの机に刺さる。
「簡単に言うと…『人を対象に事象を誘発させる』"個性"よ。
名付けて…『事象(フェノメノン)』よ。」
紫色の瞳を輝かせながらばっちり決める。
「…いや待て、黒霧に刺さってねーじゃん。」
死柄木がツッコミを入れる。ツッコミのセンスはあるらしいわ。
「そこまで便利な"個性"じゃないのよ…いろいろ条件を説明するわ。」
対象は一人で、自分は対象にできない。
対象を視認し、その名前と誘発させる事象を言う。
(この際の名前は正確でなくていいわ。あくまで対象の認識のためよ。)
誘発できる事象は自分が体験したものに限る。
事象に必要なものがないと事象は発生しない。
宣言時から状況が変わると事象は確立しない。
「すべてがそろった時、事象を意のままに操ることができる…
だから『機械仕掛けの神』なのよ。ピッタリでしょ?」
雄英生時代からの決まり文句だ。
『四人』ではしゃいでいた時代が懐かしい。
奴らはどうしているだろうか。…もう揃うことはないが。
「分かった。間違いなく戦力になる。お前は合格だ。
だが…残りの二人は駄目だ。」
死柄木とトガちゃんと荼毘くんが手を出す。
黒霧さんがそれを止める。交渉決裂だろうか?
死柄木がイラつきながらバーから出て行った。
とりあえず、トガちゃんと荼毘くんはまた後日ということになった。
しまった、トガちゃんを頂くのを忘れたわ…それもまた後日ね。
私はバーに残り黒霧さんと会話する。
「とりあえず…アイスミルク頂けるかしら?」
「お酒は飲まれないのですか?」
「酔いたいときは自分に酔うのよ。」
かっこよく言ったけれど、ただお酒に弱すぎるだけよ。
酔うと自我がなくなって…あの人に凄い迷惑をかけたから。
「あと、グラブジャムンあるかしら?」
世界一甘い食べ物と言われているものよ。
簡単に言うとメチャクチャ甘いシロップに漬かったドーナツよ。
「甘いものがお好きなのですね。…ドーナツならあります。」
分かったうえでドーナツを出してくれるなんて…黒霧さんとは気が合いそうね。
「…ちょっと思い出話に付き合ってくれるかしら。黒霧さん?」
バーという空気のせいか、あたしは自分語りをしたくなった。
「もちろんです。歓迎会も兼ねてお付き合いしますよ。」
アイスミルクとドーナツで乾杯をする。
それは、あたしの青春の思い出とよく似ていた。
本物の終姉さん登場です。言うまでもない超重要人物です。