「つーわけで!体育祭の打ち上げは…ミルクとドーナツで乾杯!」
「YEAH!乾杯だぜ!」
「なんで俺まで…」
「あたしの要望が聞けないって言うの、相澤?」
あたしはクラスメイトの男子たちとMs.ドーナツことミスドに来ている。
白い髪のうるさいバカ面は白雲朧。良くも悪くもクラスのムードメイカー。
金髪のうるさいグラサンは山田ひざし。こいつが静かになるときは絶対来ない。
黒髪の根暗面は相澤消太。暗すぎる。でも"個性"が滅茶苦茶強い。
あたしは相心終。この世の頂点に立つべくして生まれた絶世の美女よ。
赤い絹のようなストレートのロングヘアーに、アメジストと見紛う紫の瞳に、
反則的な"個性"に、抜群のプロポーション…
全世界チャートNo.1ヒーローになるのが夢よ。
「しかし、めっちゃ食うな終!太るぞー?」
様々な事象を引き起こせる私でも、このバカはどうにもできない。
朧がミルクを口に含んだ。仕返しをしてやる。
「『想像せよ』。『朧がミルクでむせる』。」
「ごほっ!?ぼっ!?溺れる…!」
「出たー!朧と相心の夫婦漫才!相変わらずおもしれな!」
「白雲のデリカシーがないだけだろ。」
どうにもできないものこそ、どうにか自分のものにしたい。
だからあたしは…朧のことをあたし思い通りにしたい。
そう思うのはあたしが傲慢すぎるからだろうか。
ある日の戦闘訓練で、あたしは朧と戦うことになった。
「負けたほうが勝ったほうにドーナツを奢る、いいわね?」
「いいぜ!相心の財布を空っぽにしてやるぜ!」
試合が始まり、朧は雲を纏う。あたしの"個性"対策だ。
「流石にそこまでバカって訳じゃないわね…!」
あたしの"個性"は対象を視界に入れる必要がある。
例えそこにいると分かっていても、姿が見えないと事象を誘発できない。
「でも、そこにいるっていているようなものでしょ!」
あたしは雲目掛けて大剣を振るう。雲は真っ二つに割れる。
「正解は上からだぜ!」
朧の棒を掴んだ。見上げると、朧が驚いたバカ面をしていた。
「げっ!?」
「前言撤回、あんたやっぱりバカね。『想像せよ』。『朧は棒を離す』。」
朧が棒を手放す。これで棒はあたしの手に
「…なんてな!ほらよ!」
朧が瓢箪から何か液体を出す。兜の隙間から液体が目に入る。思わず目を閉じてしまう。
「へへっ、隙あり!」
朧があたしの兜を弾き飛ばす。そして、あたしの首元に棒を突きつける。
「勝負ありだな!覚悟しろよ、相心?お前が言ったんだからな?」
朧はあたしの顎を棒でクイクイする。むかつくが…負けは負けだ。
「しょうがないわね…ただし、あんたにしか奢らないからね。
相澤とか山田とか連れてくるのはなしよ。」
こうでもしなきゃ…朧と二人きりになることなんてできないから。
「今日は皆でコレたべよーぜ!」
屋上で4人で昼食を食べてる時、白雲が何かの缶詰を取り出した。
「グラブジャムン…?原材料的にはお菓子の類かしら?」
「オイオイ!世界一甘いって言われてる奴じゃねえか!?」
山田が場のテンションを上げるようにはやし立てる。
「相心はドーナツが好きだろ?だったら世界一甘いドーナツとか好きだろ!?」
「あんたバカ?カレーが好きな人間が世界一辛いカレーも好きだと思う?」
本当にバカすぎる。通販でそれなりの値段したらしいが、あたしの為に買ったらしい。
「白雲の好意を無碍にするものよくないだろ。せっかくだし食べるぞ。」
こんな時に限って相澤も乗り気になった…缶詰を開け、一つ口に
「あああ!?あまいいいい!?」
舌を刺すような甘さ。脳を殴られるような甘さ。とにかく甘すぎる。
「うははは!相心!すげー顔してるぜ!せっかくの美人が台無しだ!」
こいつ…!だが、あたしが食べたということは…あたしは『経験した』ということだ。
「すべてがそろった時、事象を意のままに操ることができる…
『想像せよ』!『朧はグラブジャムンを食べる』!」
朧は大笑いしながらグラブジャムンを口にした。
「みぎゃあああ!甘すぎるううう!」
「だーっはっはっは!白雲もひでー顔だぜ!傑作だな、相澤!?」
「…ふっ、これは確かにそうだな…面白いな。」
こうしてグラブジャムンは、甘すぎるあたしの青春の思い出になった。
インターン前のある日、あたしたちはいつものように屋上で昼食を食べていた。
「俺の『抹消』はひとの足を引っ張るだけの"個性"だ。」
相澤のネガティブ発言は昼食をマズくさせる。
「あんたの"個性"はあたしを完封できるじゃない。」
「じゃあ敵の足引っ張ればいいんじゃねーの?」
朧のバカ面から放たれる単純な発言は場を明るくさせる。
いくらバカ面でも猫にグラブジャムンをやろうとするな。絶対に体調を崩す。
相澤が猫を取り上げ、面倒を見ている。猫ミルクを持ってきているのが相澤らしい。
ちなみにこの猫は朧が連れてきた。あの時の朧は…正直かっこよかった。
そんな青春の匂いにつられて香山先輩がやってきた。
香山先輩の美貌はあたしといい勝負をしている。
でも、戦闘服がほぼ裸なのはどうかと思う。
あたしだって嫌々服を着て、戦闘服は黒い鎧にしているっていうのに…
あたし達の好物の中から、香山先輩の判断で仔猫の名前はおすしに決まった。
グラブジャムンにならなくてよかった。
なんだかんだで香山先輩のインターン先で勉強することになった。
朧のゴーグルをまねて、相澤がゴーグルを着け始めた。
あたしも…いや、鎧の下にゴーグルはやりすぎか…?
でも…山田も着け始めたし…あたしも着けよう。
「4人で事務所作って独立…それが俺の計画。」
朧が面白いことを言った。確かにこの4人ならうまくいくだろう。
私がリーダーで先導し、朧と山田がテンションを上げ、相澤がブレーキで…
「金銭面は終の"個性"で宝くじ当てれば問題なし!」
「あたし宝くじ当てたことないから無理よ?」
「こいつは前途多難だな!相澤!いい金策あるか!?」
「俺はお前らと組むと決めたわけじゃないぞ…」
この時の空は青かった。今のあたし達みたいに。
どこまでも青くて。どこまでも続いていくものだと思った。
終姉さんの青春編です。ヴィジランテ要素バリバリです。
つまり…そういうことです。