いつものメンツで昼食を食べている時、あたしは相澤をサイドキックに誘ってみた。
「相澤、あんたの"個性"と装備は『あたしの夢』に役立つわ。
だから卒業したらあたしと組みなさい。」
「いきなりなんだ…『全世界チャートNo.1』に俺が必要…?」
相澤の"個性"を消す"抹消"と捕縛布による戦闘スタイルは、
あたしの"個性"と相性が良すぎる。
あたしの"個性"で敵を捕らえようとすると道具が必要だ。
一応、鎧の下にはそれなりの道具はそろえているが、どれも戦闘を考えたものだ。
捕縛を考えたものを入れる余裕がない。
だから組めと言っているのに、相澤は根暗過ぎて分からないらしい。
「合理的だな…『全世界チャートNo.1』が不可能なことを除けば。」
合理的な夢以外の何物でもないだろう。相澤は夢という概念を知らないのか?
「何言ってんだショータ!相心ならなれる!」
朧があたしの背中を叩きながら言う。痛いんだけど…まあ…許す。
「そうすれば俺たちの事務所は『世界一の事務所』になるからな!」
こいつ…まあ、世界一の事務所も悪くはない。むしろあたしにピッタリだ。
「なるほどそう来たか!こいつは一本取られたぜ白雲!」
山田は相変わらずうるさい。こいつは事務所の宣伝担当にさせるか。
昼食が終わって教室に戻ろうとした時、香山先輩があたしを呼び止める。
「終ちゃん、ちょっとお話してもいいかしら?男子は帰りなさい。
女子のデリケートな話をするから…盗み聞きしたら先生に言うわよ。」
男子たちはそそくさと帰っていった。
「なんですか香山先輩?おすすめのタンポンだったら」
「終ちゃん、白雲くんのこと好きでしょ?」
何を聞くかと思ったら、朧の事だった。
「ええ、好きですよ。香山先輩には渡しませんよ?」
「あら…そんな啖呵を切れるのに何で告白しないのかしら?」
理由は単純だった。
「…先輩は乙女心が分からないんですか?朧からしてほしいんです。」
あいつの口から好きだと言わせたい。それでこそ、あたしのものになったと言える。
「あらあら…これは失礼いたしました。頑張ってくださいね、終ちゃん。」
香山先輩はニヤニヤしながら去っていった。…何なのあの先輩。
だってあたしから告白するの恥ずかしいし、もし断られたら正直立ち直れな
あたしと朧と相澤でインターン先のパトロールをしている時だった。
「あっ!ラウドクラウドだ!マキナもいる!」
保育園児たちがあたし達の下に駆け寄る。
「妾の名はマキナではない…
すべてがそろった時、事象を意のままに操ることができる…デウスエクス」
「ほらほら、マキナのことはいいから雲に乗りな、園児たちよ。」
…あたしのキャラ作りを邪魔するんじゃない朧。
「安全確認をしてから出発しろ。」
その通りだが、あたしの名前を間違えて覚えることの方が問題だ相澤。
園児たちを見送った後、二人に説教をする。
「朧…妾の自己紹介を邪魔するでない。」
「悪かったってマキナ。でも、長いと咄嗟に呼べな」
「平常時はデウスエクスマキナと呼べ。妾が必死で考えたんだぞ?」
「非合理的だな…マキナで十分通じるだろ。」
こいつら…緊急事態なら認めると言っているだろうが…
「それに対してショータは考え過ぎだぜ。
考え過ぎて『自分では無理だ』って思っちまってる。」
おい、話を逸らすな朧。まだあたしの説教は終わっていない。
大体お前はいつもそうやって
「ショータはその気になればなんだってできると思うぜ。
相心を見習えよ!こいつは本当に何でもできると思っちまってるからな!」
朧が急にあたしを抱き寄せる。
「ぴぃ!?」
変な声が出た。落ち着け。朧はこういうやつだ。
好意とかじゃなくて信頼の下こうやっているのであって
「白雲…相心が驚いてるぞ。お前はもう少し考えて行動を、ん、香山先輩から…?」
「相澤くん!付近の市民を今すぐ避難させて!凶暴な敵が市内に侵入したわ!」
あたし達は道を引き返し、園児たちを避難させる。
その間にも、巨大な敵が町を破壊していく。
「『雲』!」
朧が園児たちと先生を瓦礫から雲で守る。
朧に瓦礫が降り注ぐ。
「『想像せよ』!『朧は瓦礫をよける』!」
言ってから気付く。あたしは人生で一度も瓦礫を避けたことはない。
瓦礫の雨に朧が埋まる。
「白雲!!おい白雲!!嘘だろ!?」
嘘でしょ。朧が
「うおおおお…!!」
相澤の声で我に返る。いつの間にか雨が降っていた。
相澤が敵に向かって飛んでいく。あたしにできることは。
「『お願い』!『勝って相澤』!」
泣きながら叫ぶ。これは"個性"じゃない。あたしの願いだ。
相澤が敵を倒した。でも、でも…
あたしは一目散に瓦礫の山に駆け寄る。
「ねえ!朧!返事をしてよ朧!
ふざけないでよ!やっていいことと悪いことぐらいわかるでしょ!?」
瓦礫の山に呼び掛けても朧のバカみたいな明るい声は帰ってこない。
「仕方がないわね!ここにいるんでしょ!?後でグラブジャムン奢りなさいよ!」
瓦礫の山を必死にかき分ける。きっとここにいつものバカ面で
そこには頭がつぶれた誰かがいた。
その近くにはあたしとおそろいのゴーグルがあった。
ああ、きっと流行なんだ。だからこいつは絶対に朧じゃない。
「どこよ…どこよ…おぼろ…はやくへんじを」
「終ちゃん…彼はもう返事をしないわ…」
かやませんぱい…じゃあ、べつのばしょであたしをばかづらで
「相心…もう分かってるだろ…無理すんなよ…」
やまだ…なにいってるんだ、おぼろはきっとちかくに
「…相心、受け入れろ…辛くなるだけだ…」
あいざわ…じゃあ、じゃあ、おぼろは…
「…っあああおぼろおおお!!!」
おぼろはさいごまであたしのおもいどおりにならなかった。
あたしはそれがうけいれられなくて、だから、あたしじゃなくなって
「…歓迎会にはちょっと向いてない話だったわね…」
ドーナツをアイスミルクで流し込む。青春の味がした。
「ご馳走様。お代はツケでいいわね?」
「…ええ、構いません。…またお話ししましょう。」
黒霧さんが泣いていたような気がする。
黒霧さんは意外と良い人なのかもしれない。
今度はあたしが料理を振舞うことにしよう。
…調理器具とか調味料とか欲しいわね。
終姉さんの壮絶な過去でした。