"創造"と"想像"   作:神剣狩刃

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第21話 百姉さんだってこんな僕を頼りたくなる時もあるらしい

夏休み初日、僕は百姉さんの部屋に誘われた。

初日に課題をある程度終わらせようとのことだった。

僕もそうしたい。できれば"個性"の開放も進めていきたい。あと"被想像"のことも

「創さん…私不安ですの…」

百姉さんが泣きながら抱き着いてきた。

 

「もももも姉さん…!?…いや、大丈夫ですよ、百姉さん。

いつも助けてもらってばかりですから…僕の胸ぐらいならいくらでも貸しますから。」

百姉さんがいつしか僕にしてくれたように、僕は百姉さんの頭を撫でる。

 

百姉さんはすごい人だ。だから責任とか、重圧とかもすごいはずだ。

僕なんかじゃ想像できない、誰にも言えない問題を抱えていてもおかしくない。

だから、こんな僕でも百姉さんをちょっとでも支えられるなら、できることをやる。

 

「…創さん…」

「こんな僕ですけど、百姉さんのそばにいますから。」

百姉さんは泣き止んだ。よかった。

とりあえず課題をほどほどに終わらせて、"個性"の開放に移る。

 

また百姉さんの部屋か。今回は何を開放

「創さん、この写真を見てください。」

…百姉さんと終姉さんのツーショットだと…?

「本物でしたわ。相沢先生とも確認しました。」

「終姉さんが生きていたのか…いや、これはかなり大きいぞ…」

 

ビビりの"被想像"は存在しない人物を具現化する場合、人格が変わる。

だから俺を具現化すると俺になるし、百姉さんを具現化してもビビりのままだ。

つまり、終姉さんが『存在する』と分かった以上、

俺から終姉さんになることはない…はずだ。

 

「とりあえず今回の開放は『"被想像"での人物の具現化について』だな。

色んな人物になれたほうが便利だろう。

…そいつの"個性"が使えるまでになるといいが…」

「それは…どうなるかわかりませんわね…とりあえず録音しましょう。」

八百万ブランドボイスレコーダーにメッセージを吹き込む。

 

「さて…そろそろ終姉さんの体になる頃だ。念のため猿ぐつわと麻酔銃を頼む。」

百姉さんが言ったとおりの準備をする。ちょっと興奮するな。

さて…俺の意識はどうなる?

 

「どうですか、創さん?」

髪の重さに違和感がある。胸が重い。体が変わったが…意識は俺のままだ。

俺は頷いて答える。

「創さんのままですね…それでは拘束を解きます。」

いろいろ外される。ついでに鎧も外してもらう。

 

「…お会いした終さんとは少し違いますわね…?」

「おそらく『最後に会った』終姉さんを具現化しているんだ。

成長したり、年老いたりで『今の』終姉さんと若干差があるんだろう。」

何にせよ、終姉さんにならなかったのはいいことだ。

これも伝えるか、もちろん終姉さんのことを伏せるために『暴走しなくなった』と。

 

「"個性"はどうなりましたか?終さんの"個性"は…」

「確かめるか…『想像せよ』。『八百万は猿ぐつわを付ける』。」

百姉さんが猿ぐつわを付けようとしたので止める。

「…そういう趣味じゃないよな?」

「違いますわ!?終さんの"個性"です!」

なんだ、つまらないな。百姉さんを縛るのも面白そうだが…

 

「もう一つ…『想像せよ』。『拘束具で拘束される』。」

拘束具を百姉さんに向けて投げたが、何も起きなかった。

「なるほど…『本来の』終姉さんの"個性"になったか…」

「『本来の』…?『あらゆる事象を誘発させる』"個性"ではないのですか?」

百姉さんに『本来の』終姉さんの"個性"を説明する。

 

おそらくビビりは終姉さんが死んで『存在しない』と思っていた。

そして終姉さんの"個性"を『何でもできる』と思っていた。

だから、『あらゆるの事象を誘発させる』『存在しない』終姉さんを具現化していた。

今は『条件下で対象に事象を誘発させる』『生きてる』終姉さんを具現化している。

…終姉さんの生存を知らない方が強かったな?

でも、コントロールできないなら意味がない。

 

「ところで…この状態から創さんの意志で解除できないのですか?」

それができたら一番便利だ。まずは念じてみる。戻れない。

次に、ダメもとで"事象"を試す。

「『想像せよ』。『相心創は元に戻る』。」

戻らない。やはり自分は対象にできないようだ。

 

「なんにせよ大きな進歩だ。…ありがとう、百姉さん。」

「こちらこそ…創さんは頼りになりますから。先ほども…」

なるほどな…ビビりもやるときはやるらしいな。

…ここは一つ聞いておいてやるか。

 

「百姉さんは創のことが好きなのか?」

「は、創さん…!?いきなり何を…いえ、はっきり言うべきですね…」

百姉さんは一つ深呼吸をして、想いを口にする。

「私は…創さんのことを想い慕っています。異性として…好きです。」

俺としてはそこまで意外でもなかったが…ビビりが聞いたら卒倒するな。

 

「私は幼い頃から自信がありませんでした。優秀だと言われてはきましたが…

結局のところは『"個性"も含めて何かの代わり』でしかありませんでした。

そんな時、創さんは『百姉さん』と私を頼りにしてくれました。

…とても嬉しかったです。『八百万百にしかできないこと』ができたんです。

ですから、私も創さんに可能な限り協力しました。勉強も、"個性"のことも。」

 

「誰よりも怖がりで、考え過ぎで、努力家で、私のことを考えてくれる…

そんな創さんのことが…私は大好きです。」

百姉さんは誇らしそうにしている。全く…ビビりも隅におけないな。

「…伝えない方がいい。あいつは間違いなく断るだろうからな。」

「…そうでしょうね…この想いはまだしまっておきます…」

そう言って百姉さんは俺に麻酔薬を嗅がせた。

 

僕に意識が戻る。早速メッセージを聞く。

他の人になれるのもすごいけど、暴走せずに黒騎士を扱えるようになった…!

「やったよ百姉さん!何もかも百姉さんのおかげだよ!」

「そ…そうですわね…」

この間みたいに百姉さんの顔はあまりよくない。

 

「…創さんは…いえ、何でもありません…」

そうつぶやいた百姉さんの顔は…今までに見たことがないぐらい、深刻そうな顔だった。




揺らぐ八百万、戸惑う創君…次回、機械仕掛けの合宿編開始です。
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