"創造"と"想像"   作:神剣狩刃

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第23話 機械仕掛けの神の『終』は誰が夢見たか?

白雲が死んでから相心はおかしくなった。

「どうした相澤?まるで変人を見るような目で『妾』を見るではないか?」

白雲の死を目の当たりにして人が変わってしまったのだ。

「いや…すまない。…ドーナツ食うか?」

「もちろん頂こう。牛乳は無いのか?」

こういうところは変わっていないから、余計に不気味だ。

 

「妾の事なら心配ない。オールマイトのカウンセリングを受けたからな。」

こいつはあろうことにもオールマイトのカウンセリングを要求したのだ。

学校は渋々オールマイトに連絡したのだが、オールマイトの方がこれを快諾…

カウンセリングを終えて、困ったような顔をしていたオールマイトは印象的だった。

 

「それで…インターンはどうするんだ?」

「朧のことを思い出してしまうから、今までの場所は遠慮する…

新しい場所に行くつもりだ。」

そうなっても仕方がない。相心を引き留める権利は俺にはない。

だが…相心の表情が不自然に明るいのは気にかかった。

 

相心は三年生になっても、いや、なってさらに不気味になった。

「あのグラントリノというヒーロー…想像以上だった…くくく…」

インターン先から帰っていた相心は、放課後の教室の中で一人笑っていた。

「相心…お前は何を目指しているんだ…!?」

俺は思わず相心を問い詰めた。こいつを止めないと…何かがまずい。

 

俺に詰め寄られた相心は、まるで子供を諭すように微笑み答えた。

「妾が目指すのは…『世界』だ。世界を統べる。妾の手によってな。」

世界一のヒーローからより尊大で無謀な夢に変わっていた。

なのに…なぜ、俺はコイツの夢を否定できない?情か?それとも…

 

「相澤よ…妾と共に世界を統べるのはどうだ?妾とお主の"力"があれば容易いだろう?」

相心が俺の顎に手を当て、耳元で妖しく囁く。

頷けば…その通りになるんじゃないかと思った。

 

「…っ!非合理的な夢だな…!」

思わず相心から離れる。呼吸が荒くなる。汗が噴き出る。

「くくく…まあ良い。その気になったらいつでも妾の所に来るがよい。

世界を妾のものにすれば…そうすれば…朧も妾のものになるはずだ。」

紫の瞳から涙が一筋だけ流れた。

 

卒業式の日、俺は相心を呼び出した。

「お主から呼ぶとはな…妾と共に行く気になったか?」

紫色の瞳が妖しくこちらを見つめる。気を抜くと吸い込まれそうだ。

「本気で…世界を統べるつもりか…?」

相心は無邪気に笑って答える。

 

「ああ。もちろんだ。世界を妾の思い通りに…

そう…朧さえも…妾の思い通りになるのだ…」

相心は空に向け、手を伸ばす。降り出してきた雨はあの日と似ていた。

「…そうか…引き留めて悪かった…頑張れよ。」

去っていく相心に何をすればいいのか分からなかった。

 

卒業してから1か月もしないうちに衝撃のニュースが世間に出回った。

『相心終が消息不明になった』というものだ。

とある山で血まみれの『機械仕掛けの神』の鎧が見つかったのだ。

 

血のDNA鑑定の結果、相心終のものであることが判明。

出血量からよくても重症、最悪死んでいるとのことだった。

捜査しても死体が見つからず、『消息不明』ということになった。

 

山田から電話がかかる。

「相澤…ニュース見たか?まさか相心の奴は白雲の後を追って」

「そんなわけない。アイツは…そんなことする奴じゃない。」

 

あの狂気を孕んだ相心が自ら死を選ぶとは思えない。

目的のためなら他者を巻き込むことを厭わない奴だ。

『死ぬこと』すら目的のために利用しかねない。

そもそも…『死んだことにする』のが目的という

 

「相澤…辛くなったら…いつでも話し相手になるぜ。」

山田の声で現実に戻される。…動揺で考え過ぎたようだ。

「そうよ、相澤くん。いつでも私たちを頼ってちょうだい。」

香山先輩も心配するほどか…相当参ってるな。

「…ありがとうございます。何かあったら…連絡します。」

電話を切り床に転がる。もしも相心についていっていれば…

いや、今更考えてもどうにもならないか。

 

それから時が流れ、巷である事件が話題になっていた。

「また『亡霊』だぜ…うちの町でも起きるんじゃねえか?」

「止めてくれよ…苦労マンが居なくなったって言うのによ…」

行きつけのカフェ『ホッパーズ』で従業員たちが話してる。

 

『亡霊による事故死事件』だ。

悪人や敵が『不自然』に事故に会って死ぬというものだ。

さらに現場で『黒い鎧』を見た、という人物が何人かいる。

そこから人々は『死んだ相心終が亡霊になって悪を裁いている』という話を作った。

 

俺もその考えにおよそ賛成だ。『死んだ相心終』という部分を除いて。

「亡霊なんかいるわけないだろ…非合理的だ。」

「猫に囲まれながらコーヒー啜って言われても…説得力無いぜイレイザー?」

実に"個性"的な従業員たちからツッコミを入れられる。

「…非合理的だが…『不自然に』集まってきている。」

 

山田と香山先輩が雄英の職員に俺を誘った事、

この鳴羽田で大規模な事件が起きた事、

そこで山田や香山先輩と再会した事、

そして『亡霊による事故死事件』が起きている事…

 

俺は『相心終の存在』を考えずにはいられなかった。

コーヒーを飲み干し、金を払い、店を出ていく。

雄英への旅立ちの餞別には悪くないひと時だった。

 

「こんな形で三人が集まるとはな…」

「いいじゃねえかイレイザーヘッド!青春を取り戻そうぜ!」

「オトナな青春も悪くないと思うわよ?」

昼休み、職員室で俺と山田と香山先輩が揃う。

 

「…ドーナツ食うか?」

『分かってるじゃない相澤。山田…アレはあるかしら?」

「…ああ、もちろんだぜ。アイスミルクも忘れずにな。」

「…グラブジャムンもあるわよ。」

『暗い顔すんなよ!せっかくのドーナツなんだから楽しもうぜ!」

揃ってしまったからこそ、足りないものを意識してしまった。

 

終の弟が入学し、体育祭では終の黒い鎧の姿になり、

職場体験では終の姿になり、ついには終から電話がかかってきた…

歯車はすでに回り始めてる。




相澤先生目線の過去編です。
次回、姉弟再会です。
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