"創造"と"想像"   作:神剣狩刃

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第25話 僕の一番大切なものを守りたいから

夢を、いや、過去を見る

 

小さな僕と黒い鎧を着た終姉さんが話をしている。

「終姉さんの役に立てるの?」

「そうだ、創の"個性"と妾の"個性"があれば…何でもできる。」

終姉さんは楽しそうに笑っている。

 

「でも…どうやったらいいのかな?」

「ならば…妾を"想像"するがよい。ここにして唯一…絶対的な頂点…

妾をその身に宿せば…自信が湧くだろう。」

終姉さんの"想像"…もしかして…

 

「今から妾の言うことを繰り返すのだ。

『色は黒、姿は鎧、性格は高慢にして不遜…全てを意のままにする狂戦士』

…どうだ?かっこいいだろう?」

 

ああ、そうだったのか。これが初めての"被想像"だったんだ。

 

「かっこいい!やってみるよ、終姉さん!」

僕は終姉さんの手をぎゅっと握る。

「色は黒、姿は鎧、性格は高慢にして不遜…全てを意のままにする狂戦士!」

小さな頃の僕はオウム返しをして…鎧を着た終姉さんになった。

 

「流石妾の弟だ。それでは」

「『想像せよ』。『剣に全身を斬られる』。」

終姉さんが僕の生み出した剣に斬り刻まれる。

 

「ば…馬鹿な…」

「妾は二人もいらぬ。贋物よ。失せろ。」

そうか。終姉さんの性格を子供の尺度で具現化したから、姉さんを殺そうとしたんだ。

 

「『想像せよ』…『相心創はワイヤーで首が締まる』…」

「『想像せよ』。『全身を鉄杭で貫かれる』。」

僕の首にワイヤーが巻き付くと同時に、終姉さんが全身を鉄杭で貫かれる。

 

「思い出したか?これがお前が俺に押し付けた過去だ。」

狂戦士の僕が話しかける。

「…だから僕は…貴方になれたんですね。」

「他人みたいに扱うなよ。一応、お前なんだぞ?」

狂戦士の僕に小突かれる。

 

「百姉さんはこのことを知っていた…黙っていた理由は分かるな?」

こんなことを言ったら…間違いなく僕は暴走しただろう。

僕はこんなことしていないって。

「もちろん百姉さんに何か言うつもりはないよ。

むしろ…こんな僕を受け入れてくれてありがとうって言うよ。」

 

あれ?じゃあ、今これを知っている僕は?

「やっと気づいたか?もう『暴走した』んだよ。

暴走しながら百姉さんを守ったのはさすがだがな。」

そうだ。たしか肝試しの途中で、終姉さんに会って…

 

それでこの過去を思い出したんだ。

 

「…ありがとう。君のおかげだよ。」

「抜かせ。全部お前のせいだろう?」

「君がいなかったらここまで来れなかったから。」

「…自分ほどどうにもならないものはいないな。」

 

目が覚める。

 

ベッドの上…隣に病院服の百姉さんがいる。

「…もももももも姉さん!?なんで僕の隣に!?」

「創さん…目が覚めたのですね…!」

もももも姉さんが泣きながら僕に抱き着く。

ももも姉さんは頭に包帯をしている。動揺している場合じゃない。

 

「百姉さん…頭大丈夫ですか?」

待て。この言い方マズくないか?まだ動揺が抜け切れて

「ええ、命に別状はありません…でも…爆豪さんが…」

百姉さんは悔しそうに下唇を噛みながら、僕に現状を説明してくれた。

 

爆豪さんが敵連合に攫われた。

敵の一人と終姉さんに発信機を付け、受信デバイスをオールマイトに渡した。

後はプロヒーローに任せれば大丈夫だと。

それなら安心できる、できるけど…

 

「どうして百姉さんはそんな顔をしているんですか?」

百姉さんの表情は険しかった。もちろん、爆豪さんが不安なのはわかるけど…

合宿前と同じような、僕には言えないようなことがあるような、そんな顔だった。

「…いえ、何でもありませんわ…創さんはゆっくり休んでください。」

…そんな顔の百姉さんを見て、ゆっくり休んでなんかいられないよ…

 

翌日の夜、病院前

 

私は轟さん達の救出作戦に同行するつもりでした。

緑谷さんや飯田さんも参加することになり、出発しようとしたその時でした。

「待ってよ…そんなの…行かせるわけにはいかないよ…!」

後ろから、涙をこぼす創さんに呼び止められました。

 

「戦闘無しとか…ルールにギリ触れないとか…ストッパーとか…

そんなの言い訳じゃないか…!皆は何をしようとしているのか分かってるの…!?」

涙ながらの創さんの発言は皆の足を引き留めました。

 

「そんなの…ダチを助けに」

「自己満足の為に…友達を言い訳にしていいの!?」

創さんらしからぬ、厳しい物言いでした。

 

「皆が爆豪さんを助けたい気持ちはよくわかるよ!

僕だって助けたい!でも…正規のヒーローでもないのに勝手に助けに行くなんて…

それってただの自己満足じゃないか!?そのために友達を言い訳にするの!?」

創さんの涙は、より一層激しく流れていきました。

 

「だったら、僕も大切なものの為に自己満足をするよ!

お願い!行かないで!僕は…僕は百姉さんと一緒にいたいんだ!」

 

「爆豪さんに何か起きるよりも…皆を引き留めて嫌われるよりも…

僕が引き留めなかったことで…百姉さんと離ればなれになることが一番嫌なんだ!

救出の際で事故にあったり、救出できたとしても罰で退学になったり…

何かあって百姉さんと一緒にいられなくなったら…僕は一生立ち直れなくなる!」

創さんは膝から崩れ落ちました。

 

「そんなの…そんなの嫌だよ…だって…だって…

百姉さんは僕の大切な人だから…僕を支えてくれて…

僕が支えてあげたくて…一緒にヒーローになりたくて…

だから…行かないで…百姉さんも…皆も…行かないで…」

 

その創さんの姿は客観的に見たらみじめに見えるでしょう。

泣きじゃくりながら、頭を地につけ、我儘に懇願している。

そんな人間を無視して、爆豪さんを救出して何になるのか。

誰かを助けるために、誰かを見捨てていいのか。

 

「…言葉だけではなんとでも言えますわ。」

だからこそ。私は創さんに厳しく出ました。

「八百万さん…?」

緑谷さんの制止を振り切り、創さんに近づく。

 

「泣いて謝れば敵が見逃してくれると思っているのですか?

それだとしたら…私に並ぶ人間にふさわしくありません。」

「ももねえさん…」

涙にまみれた創さんの顔は私の虚勢を崩しかねませんでした。

だからこそ。強く発言しました。

 

「私を止めたいなら!その覚悟をお見せください!

私たちはすべてを失う覚悟で!爆豪さんを助けようとしているのですから!」

私は皆さんに危険が出ないように、ストッパーとして参加するつもりでした。

少なくとも、すべてを失う覚悟などしていませんでした。

だから、この発言は嘘です。虚勢の補強でしかありません。

 

「…そのつもりだよ…僕だって…言葉だけで止められるとは思っていないよ。」

しかし、創さんは最初から己の持てる全てを使ってでも止めるつもりでした。

「…色は黒、姿は鎧、性格は情けなくてビビりで…

でも、百姉さんのためなら何でもできる…

全てを意のままにする必要はない…!守りたいものを守れればそれでいい!

僕は相心創だ!"被再想像(アーマード・リ・イマジネーション)"!」

 

そこには黒い騎士が立っていました。

でも、いつもより小さくて、ガタガタ震えていました。

その騎士は兜を脱ぎました。

「この力を使ってでも…僕は皆を止めるよ!」

 

そこにはキノコのような赤いマッシュヘアーで

髪の隙間から紫色の瞳で睨んでいる、

もう泣いていない、『いつもの創さん』がいました。

 

「…参りましたわ、創さん。そこまでされたら…引き下がりましょう。」

百姉さんは何かの端末を取り出し踏み砕いた。

「八百万くん!?何をして」

「創さんがその気を出せば…私たちを動けなくすることは容易いでしょう。」

百姉さんの一言で、皆はすべてを察したようだ。

 

「創さん…貴方を試すためとはいえ…ひどいことを言って…

ごめんなさい!創さん!本当にごめんなさい!」

百姉さんが泣きながら僕に抱きついて謝る。

「も、百姉さん…っ大丈夫ですよ、百姉さん。今は…泣いていいですから…!」

ぐっと涙をこらえ、百姉さんを抱きしめる。

 

今、この時だけは、絶対に泣いちゃいけない。




作者の好きな演出として
『普段頼りない奴がここぞという場面で決める』があります。
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