"創造"と"想像"   作:神剣狩刃

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第26話 亡霊装いてまで世界を望むのならば、あたしのやるべきことはただ一つ

時は数日遡り 警察署内

 

俺は塚内警部から取り調べを受けていた。

調書を作ってもらっていたが…終の発言が気がかりだった。

 

『やっぱり内通者がこの合宿にいるわ。』

以前も言っていたが、雄英高校に敵と繋がっている内通者がいる。

秘密にされた合宿に襲撃を仕掛けたのだから間違いないだろう。

だが、誰が、どうやって伝えているのかはわからない。

 

内通者の件を無視するわけにはいかないが、去り際の一言はもっと無視できない。

『亡霊はレディとランデブーしたがっている。』

終が意味も無くこんな暗号めいたことを言うことはない。

あの場で明言できなかったから、俺に託したのだ。

 

ランデブーは合流ということでいいだろう。

後は『亡霊』と『レディ』が誰かだが…

 

「しかし、泡瀬が言っていた亡霊とは何なんだ…?」

ブラドがぼそりと呟く。

尋ねてみたところ、傷だらけの赤い髪の女性がそう言ったらしい。

おそらく、終の事だろう。つまり亡霊=終ということだ。

 

「亡霊…『亡霊による事故死事件』…あれは終の仕業…?」

終の"事象"を使えば事故死を誘発させるのも可能だろう。

だとしたら、なぜそんなことをするのか?

終の夢は世界を自分の思い通りにすること。

殺しで世界を思い通りにするなんて可能なのか?

 

「塚内警部…『亡霊による事故死事件』の被害者ってどんな人ですか?」

何か掴みかけた。塚内警部の返答次第では確信に変わる。

「詳しくは言えないですが…裏社会で暗躍していた人間が多いですね。

捕まえられるような証拠もなく、警察やヒーローも手を焼く人も多くいて…」

 

間違いない。終は悪人たちを思い通りに操ろうとしていた。

ヒーロー殺しがヒーロー達に警鐘を鳴らしたように

終も犯罪者や敵に殺しで警鐘を鳴らしていた。

 

『悪事を働けば亡霊が殺しにやってくる』

 

子供だましのようだが…悪人だからこそ怯える手段でもあるだろう。

 

亡霊事件の件数から言って、被害者の数は3桁はいる。

いくら終とは言え、個人で証拠を残さずできる事ではない。

何かの組織が関わっていないと不可能だ。そんなことができる組織は…

 

公安。奴らになら事故死で片づけたい人間などいくらでもいるだろう。

公安からすれば『事故死を誘発出来きる』相心終は

『死んだことにして』でも欲しいだろう。

 

終は公安に所属した後、『亡霊による事故死事件』を起こしていった。

そして、公安として敵連合に入ることになったのだろう。

敵を探り、時が来たら殺してでも止めるために。

その中で敵連合の作戦に協力することになった。

公安とのつながりを見せずに公安に協力を要請する方法は…

 

『亡霊はレディとランデブーしたがっている。』

 

これを信頼できる人物に伝えることだ。

つまり『レディ』は公安にいる誰かのことだ。

「塚内警部!今すぐに公安に連絡をしてください!」

「イレイザーヘッド…何かが分かったんですね?」

終の奴め…俺をサイドキックにしたがっていた理由がよく分かったよ。

 

数日後 神野区のバー

 

あたしは今、料理をしながら雄英高校の謝罪会見を見ている。

「なぜヒーローが責められている!?」

「守るという行為に対して対価が」

敵達はあたしの料理をつまみながらいろいろ言っているけどどうでもいい。

この状況から脱出するためには…

 

「ねえ、ちょっと爆豪くんを懐柔してもいい?

あたしの美貌と体とテクニックで骨抜きにするわ。」

とりあえず、爆豪くんと一対一で話をしないとどうにもならない。

「自分に自信がありすぎです。でも、そのテクニックは教えてほしいです。」

トガちゃんと一緒に爆豪くんを個室に連れて行く。

 

「ありがと。あと、ドーナツとアイスミルク持ってきてくれるかしら?」

「終さん、私のことを何だと思っているんですか?」

「かわいいトガちゃん?」

思っていることを素直に言ったら、トガちゃんけらけらと笑った。

なんだかんだで持ってきてくれるあたり、トガちゃんはいい子ね。

 

「いい、トガちゃん?覗き見るのはいいけど、聞くのは駄目よ?」

「えー、何でですか?」

トガちゃんがむすっとした顔で聞いてくる。可愛いわね。

「テクニックを一から十まで教えたらつまらないじゃない。

悪人だったら、五から十ぐらいは盗むものよ?」

むー、と不機嫌そうなトガちゃんを部屋から押し出す。

 

二人きりになったあたしは爆豪くんにドーナツとアイスミルクをあげる。

「おいしい?ならよかったわ。」

「まだ食ってねえだろ赤ロン毛。

お前を見てると赤キノコを思い出してむかつくんだよ。」

爆豪くんは人の見た目から名前を決めてるみたいね…赤キノコ…

 

「もしかして創の事かしら?」

直近で見た赤キノコなんて創しかいない。

「てめえに答える必要はねぇ。」

ツンケンしすぎて可愛くないわね…美形なのにもったいないわ。

 

「とりあえず…ここから出たい?」

「ここに居たそうに見えるか?」

「美しいお姉さんがドーナツをあーんしてくれるから見えるわ。」

「寝言は寝て死ね、赤ロン毛ババア。」

あたしの美貌を前にババアですって…?

 

「『想像せよ』。『爆豪はミルクでむせる』。」

「ごっふぉ!?何しやがる!?」

「あんま酷いこと言うと助けないわよ?」

そう、あたしは敵連合の野望を崩すために来たのだ。

 

「助けるだぁ…?てめぇは敵だ」

「手っ取り早く話すわ。あたしは公安の潜入捜査官よ。

弟の創の"個性"は解放できたから、後は情報をもっておさらばするだけ。

殺して止めたところで裏にいる巨悪が、また別の敵連合を作るだけよ。」

爆豪くんはきょとんとした顔で唖然としている。

 

「相澤が馬鹿じゃなかったら…すべてが揃うわ。」

「待て…話が見えねぇ…教え、てください…お姉さん…」

流石に分かったみたいね。折角だから昔話もしてあげましょう。




終姉さんの正体判明です。
終姉さんによる爆轟救出作戦の開始です。
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