あたしは公安の会長の命令でとある場所に向かっている。
「なんであたしがオールマイトとタルタロスに行かなきゃいけないわけ?
浮気報道とかされたらどうするのよ?火伊那さんに迷惑がかかるわ?」
「相心少女は相変わらずだなあ…まあ、ドーナツ食べながら話でも」
ガリガリになったオールマイトの発言は、あたしの神経をひっかいた。
「今日は火伊那さんとデートの約束だったのよ!?
ドーナツなんかで埋め合わせできると思っているの!?」
「そ、そうだったのかそれは申し訳ない…これはしまって」
「受け取らないとは言ってないでしょ!もらうわ!」
オールマイトがしまいかけたMsドの袋を貰う。
「で、何の話よ?くだらない話だったら帰るわ。」
道中で買ってもらったアイスミルクを飲みながら話を聞く。
「…AFOの話だ。」
100割くだらない話だ。帰ってやる。
「『想像せよ』。『オールマイトは交通事故に」
「待って待って待って!本当に重要な話だから!
君が殺人者になるかもしれないんだよ!」
こいつは本当に的外れなことしか言わない。
「あたしは何人も殺しているのよ?」
「AFOに関しては公安も隠し切れないんだよ!」
公安が隠しきれないとなると話は違ってくる。
「…火伊那さんと一緒にいられなくなるのは困るわね。話を聞くわ。」
神野区での戦いの後、AFOは意識不明のままらしい。
頭への強烈な二発の攻撃に、喉に刺さったナイフ。
致命的な攻撃によりAFOは眠りから覚めないという。
「オールマイトが殺人罪を背負えばいいんじゃない?」
「君は本当に自己中心的だね…羨ましさすら覚えるよ…」
元NO.1ヒーローが殺人罪を背負ったとあれば世間は大混乱し、
ヒーロー界隈が揺らいでる今、そんなことはできないとのことだ。
「まあ、分かったわ。AFOをタルタロス内で事故死させればいいのね。」
「君は話を聞いていたかい?様子を見てこれからを考えていこうって」
「AFOを見ないことには話が進まないじゃない。今、話をしたって無駄よ。」
「…何でそういうところは優秀なんだろうね?」
決まっているじゃない。あたしだからよ。
タルタロスに付き、AFOの独房に案内される。
生命維持装置に繋がれ横たわるそれは、
死んでいないだけで生きているとは到底言えないものだった。
「…楽に殺してやった方がいいわね。あたしの気も楽になるし。」
「たとえ悪人でも命なんだ。気楽に奪っていいものでは」
「あんたが殺しきれなかったから不幸な人が増えたんじゃないの?」
「…それは言わないでくれ…何も言い返せなくなってしまう…」
公安が人を殺すのはそれしか解決方法がないからではない。
それ以上手放しにするとその人を殺した以上の被害が生まれかねないからだ。
つまり、公安が殺した方がいいという判断を下すのは最終手段なのである。
「…まあ、流石にタルタロス内で死んだら事件性を隠し切れないわね。
殺すのは止めておいてあげるわ。でも…必要になったら躊躇なく殺すわ。」
あたしはいつでも殺す覚悟はできている。
それで世界が平和になるならいくらでも殺してやる。
誰が何と言おうと、私は平和のために人を殺す。
平和になって、誰も大切な人を失わない世界のためなら。
オールマイトが目を伏せながらつぶやく。
「…私に君ほどの覚悟があれば」
「過ぎたことを振り返ってもどうにもならないわ。
だったらこれからを考えたほうがよっぽどましよ。」
過去を悔やむと過去から学ぶのでは大きな差がある。
過去から学んだら未来を見ないと意味がない。
「とりあえずAFOのことは一旦放っておくということでいいわね。」
「現状手出しができないし、彼が何かすることも不可能だからね…」
話が決まったということで、あたしとオールマイトはタルタロスを後にした。
帰りの車の中、オールマイトがスマホを見て笑っていた。
覗いてみるとそこには緑髪のもじゃっとした少年の仮免許の写真があった。
「よく人のいる車内でAV見れるわね?…ショタもののAV?
仮免許の提示…こじれた性癖してるわね…」
「緑谷少年だよ!仮免許を取ったんだ!」
オールマイトはからかうといい反応をする。折角だ。
火伊那さんとのデートがなくなった分を少しでも取り戻すか。
「『仮免ショタヒーローを快楽漬け!頑張れ!って感じのディックやね♡』…
ドン引きだわ、オールマイト…死んだほうがましよ…」
「そんな作品ないだろう!?というか君の弟さんも取っているだろう!?」
「あたしの弟はAVなんか撮らないわ?あたしと火伊那さんのAVなら撮った」
「君はもう少しモラルを持ちたまえ相心少女!」
「人殺しにモラルを問うのはナンセンスよ。」
オールマイトが頭を抱えた。あたしの勝ちね。楽しかったわ。
あたしが仮免許を取ったころを思い出す。
4人で協力して取って、その帰りにもドーナツを食べて、
インターンをどうするか悩んでいて…
「インターン…仮免許とはいえ、ヒーローを採用できるのよね…」
あたしの天才的頭脳がいいことを思い付いた。
「相心少女?事務所からのインターン募集はご法度だぞ?」
「家族が職場いいわよって言うのはありじゃない?」
「君は本当に口が達者だね…敵にならなくてよかったと心の底から思うよ…」
もうちょっとオールマイトで遊ぶか。
デートの埋め合わせは全然できていないし。
「一度なったことあるわ。イケメンとカワイ子ちゃんがいたから戻ろうかしら?
…オールマイトの首を手土産にすれば絶対に戻れるわね?」
「勘弁してくれ…」
またオールマイトが頭を抱えた。
一日に二度もオールマイトに勝つヒーローなど居ないだろう。
あたしはスマホを取り出し、創に電話を…
「アイツの番号知らないわ…オールマイト、創の番号知っている?」
「私も知らないなあ…力になれなくて済まない…」
オールマイトが申し訳なさそうに謝る。
「大丈夫よ。あんたなんかより頼れる百ちゃんがあたしにはいるから。」
「君は本当に遠慮がないな…安心すら覚えるよ…」
勝手に関心したオールマイトは放っておいて、百ちゃんの番号を打ち込む。
百ちゃんの番号は当然覚えている。だって、創の未来のお嫁さんだもの。
「…はい、百」
「久しぶりね百ちゃん。仮免受かった?
創近くにいるでしょ?代わってくれるかしら?」
要件を手早く伝え、要件を押し通す。公安直伝の電話のルールよ。
(勝手に変なことを言うな終。誘い文句もこんな感じだからムードがないんだ…)
「…何のようですか、終姉」
「そろそろインターンの時期でしょ?公安に来ない?」
そう言えばインターンって2年からだっけ?
でも、1年で仮免取得させたし、インターンも1年からやるでしょ。
それにあの二人は公安じゃないと成長しない。
なにせ…信じ合っている仲じゃないと学びきれないことがあるから。
ゲロヤバインターン準備終姉さん視点編です。
本当にこの人性格終わってますね…