僕と百姉さんを迎えたのはニコニコしている終姉さんだった。
「お疲れ様。今度はあたし達の番だから。」
「…何も言うな。私たちのこともな。」
今度は僕と百姉さんが待つ番になった。
後片付けをした取調室で終姉さんが口を開く。
「お互いすっきりしたところで今日の本題に入るわよ。」
何で終姉さんは堂々としていられるのだろう。
普通、そういうことをしたって人にばれたら気が気じゃな
「貴方達を公安に入れた理由…内通者に関してよ。」
内通者という言葉に、百姉さんがぴくっと反応した。
「ここだから言うけれど…内通者の存在は百ちゃんと相澤には言っているわ。」
僕は思わず百姉さんに尋ねてしまった。
「本当ですか!?いつ!?」
「合宿前ですが…USJの時にも聞きました。」
その言葉に終姉さんが食いついた。
「USJ?その時はあたしと百ちゃんに繋がりは」
「狂戦士の創さんが言っていました。その時は考える余裕がなかったのですが…」
それを聞いて終姉さんがうんうんと頷く。
「流石私の弟ね…その段階で気付いているなんて…」
「感心している場合ではないだろう。お前が話さないと進まないんだ。」
ナガンさんに指摘されて、終姉さんは嬉しそうに話す。
「貴方達のインターンでの課題は、『内通者が誰なのか』を特定する事よ。」
いくらなんでも唐突過ぎるし、無茶過ぎる。
「お言葉ですが…情報が少なすぎます。それに、むやみに仲間を疑うのは」
「情報ならあるわ。仲間を疑うのは辛いでしょうけど…昨日よりはましでしょ?」
終姉さんは本当に我儘だ。自分の都合で人を振り回す。
それなのに、理屈に適っているからたちが悪い。
あれを防ぐためなら仲間を疑うことぐらい、なんでもなく思えてしまう。
「…あのひどい仕打ちは心を強くするためですか。」
「賭けだったけれどもね。もしも二人ともおかしくなったら…
ここにいる4人、全員公安に消されたわ。」
その言葉に僕と百姉さんは恐怖を覚えずにはいられなかった。
「まあ、創と百ちゃんの仲だったら大丈夫だと」
「泣いていたよな?」
「…若干漏らしたわ。流石のあたしも死にたくないもの。」
終姉さんは一度、死んだ方がいいんじゃないかと思ってしまった。
「とにかく情報の方よ。と言っても、あたしの推測にはなっちゃうんだけど…」
終姉さんはすぐに自信を取り戻して話を取り戻した。
「そもそも、『内通者が誰と通じているか』が重要よ。」
そこから繰り広げられる終姉さんの話はとんでもないものだった。
「USJと合宿の敵襲撃の共通点は動機、『オールマイトを狙っていた』ことよ。
敵は神野区でオールマイトを殺すつもりだったから間違いないわ。
あの顔なし男、AFOはオールマイトを執拗に狙っていたわ。
だったら、オールマイトがいる雄英高校に内通者がいるのは当然じゃない?
だから内通者は『AFOと繋がっている』わ。」
「ま、待ってください…何でそのAFOはオールマイトを狙うんですか?」
流石に質問を我慢できなかった。終姉さんはまたとんでもないことを言った。
「これも推理だけど…オールマイトの"個性"が関わってるわ。
…オールマイトの言い過ぎで頭が変になってきたわ。マイトって略すわね。
昔に比べてマイトは衰えたわ。年の衰えじゃ説明がつかないほどにね。
まるで大切な何かを失った人間のような衰え方よ。
それと同時に開花した人間がいるわ…緑谷出久くんよ。」
「お待ちください…緑谷さんは目覚ましい成長をしていますが、
繋げるのには少し無理がありますわ。」
百姉さんの言うとおりだ。関係がなさすぎる。
「緑谷出久の個性届は"無個性"で登録されていたわ。それが入学してから変わったのよ。
衰えたマイトと急に"個性"が出てきた緑谷…無関係と言い切れるかしら?
私は…『マイトが緑谷に"個性"を渡した』から起きたと考えるわ。」
とんでもない話だ。常識外れにもほどがある。
「"個性"を譲渡する…そんな話聞いたことありませんわ…」
百姉さんの言うとおりだ。聞いたこともない。
「『人間が想像できることは、人間が必ず実現できる』。
とある有名人の言葉よ。あたしが想像できた段階で可能なのよ。
それに…ショッピングセンターで緑谷くんは死柄木に襲われたわ。
敵連合がAFOと通じていてマイトを狙っていたなら…
『マイトから"個性"を渡された』緑谷くんが狙われるのも不思議じゃないわ。」
終姉さんはどこまで本気なのだろうか。
「結論として…『緑谷出久は有力な情報を持っている』。
だから、公安に取り入れたいのだけれど…あたしと緑谷くんに繋がりがないのよ。」
終姉さんはやれやれとため息をついた。
「…もしかして僕達で緑谷さんを誘ってほしいんですか?」
「あまりにも身勝手すぎますわ…お断りしたいですわ。」
百姉さんの言うとおりだ。ただの想像でしかないのだから。
だが、終姉さんの考えは違った。
「まさか。二人が動くのはもうちょっと後よ。
今、あたしと緑谷くんに繋がりを作るのに最高の状況なのよ。」
終姉さんが邪悪な笑みを浮かべる。
「緑谷くんはサーナイトアイの所にインターンしているのよ。
サーでいいわね。サーの事務所は今、死穢八斎會って敵組織を追っているわ。
つまり…あたしが死穢八斎會に居れば繋がりができるわね。
というわけで今から行くわよ、死穢八斎會。反社会科見学よ。」
僕と百姉さんとナガンさんは唖然とすることしかできなかった。
道中の車で終姉さんが説明する。
「あたしはこれから死穢八斎會に捕まるわ。
三人は事務所の構造を可能な限り覚えて。そして、相澤に伝えて。
『あたしは緑谷と会いたがっているだけだ』って。」
本当に終姉さんは我儘すぎる。他人を何だと思っているのだろうか。
「…もしもお前の身に何かあったらどうするんだ?」
ナガンさんは真剣な表情で訪ねていた。
「終さんを助けに行くのも私達では難しいと思います。」
百姉さんの言うとおりだ。公安の人が協力してくれるとも限らない。
事情を知る三人だけではいくらなんでも心もとない。
それでも終姉さんは不敵に笑う。
「大丈夫よ。あたしの思惑通りにならなかったのは一度だけだから。」
何の根拠にもなっていないのに、妙な信頼感があるのはなんでだろう。
死穢八斎會の事務所の前に到着する。
「見てなさい…公安直伝、絶対に出てくるインターホンの押し方よ。」
いうや否や終姉さんはインターホンを連打する。
「ちょ、ちょっと!?何やってるんですか!?」
「出ぬのなら 出るまで押そう インターホン…字余」
「うるさいんだよお前ら!いたずらか!?」
早速おっかない人が出てきた。
「公安だ。インターンでの社会科見学をしに来た。」
終姉さんは動じることなく、その絵筆を進めていった。
終姉さんは自信がありすぎます。
間違っていたら『私も間違うわよ』と切り返すのでたちが悪いです。
合っていたら当然『流石私ね』といいます、