"創造"と"想像"   作:神剣狩刃

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第53話 人の夢と書いて儚いというのなら人が夢を持つ意味って何?

新学期早々俺は授業を抜け、山田と終と共にタルタロスの中を歩いている。

「先に言っておくわ。もしこのことが事実だったらあたしはAFOを殺す。」

敵連合の黒霧は白雲朧の遺体を基にしている濃霧である可能性が高い、

という情報を聞いたのだから終としては無理もないだろう。

 

「ヒーローがたやすく殺すという発言をするのは」

「黙れ国家の犬。お前にあたしの何が分かる。」

ここまで怒りを抱く終を俺は初めて見た。言葉を選ぶ余裕もないのだろう。

 

戦前の人格を残している可能性があるため、白雲朧に関係のある俺達が呼ばれたのだ。

敵連合の情報を引き出し、可能なら終の"事象"によって白雲朧を取り戻す。

これが今回の俺たちの任務だ。

 

「おや…珍しい客だ。死柄木弔は元気ですか?捕まったり」

「寝ぼけてんじゃないわよ朧。グラブジャムンぶち込むわよ。」

 

終は早速始めた。

「そうそう、おもちちゃんだけど香山先輩が飼ってるのよ。

おかげであの人未だに独身よ。若い子侍らせるとか言ってたのにね…」

黒霧は明らかに困惑していた。

 

「話が見えませんね?何を」

「覚えてないの?おもちちゃんとあたし達の出会いを作ったのはあんたよ?

いきなり教室で脱ぎ出して何するかと思えば…

ちょっとドキッとしたのはいい思い出ね。」

こいつの押し付けがこんなに頼もしいと思ったことはない。

 

「話をしに来た」

「4バカでいつもあたし達を引っ張って、おそろいのゴーグルも着けて…

あたしの思い通りにならなて…だからあんたのことが好きになって…!」

終が涙を流す。声も震えている。

 

「相澤と山田は先生やってて、あたしは公安で働いてて…!

でも、あたしはあんたのことを忘れることができなくて…!

大切な誰かができれば忘れるだろうと思ったけどできなくて…!

だから責任取りなさいよ朧!ヒーローになってあたしを助けてよ!」

明らかに黒霧が動揺している。

 

「4人で事務所開きましょうよ!そのためだったらあたし何でもするわ!」

「さっ、先刻から、何、を、仰っている、のか」

「何言ってんのよ!?そこまでバカなの朧!」

「私は黒」

「あんたは雄英高校2年A組あたし達とヒーローを志した

あたしの大好きな白雲朧でしょうが!!!」

 

黒霧の姿が揺れ、朧が現れる。

「病、院。」

「『想像せよ』!『朧は自分を取りもどす』!」

 

終の一言で、黒霧の靄が大きく暴れる。

「おっ、がっ、ぐあああ!」

「頑張りなさい朧!あたしがいるわ!」

「白雲!俺達がいる!負けるな!」

「白雲!また俺達でドーナツ食べようぜ!」

 

そして、俺達の言葉で靄が白雲の形で固定される。

「…あ、あい、しん…?」

「朧…!」

「な、なんか…老けた…?」

「当たり前よ…!何年待ったと思っているのよ…!」

十数年という月日は長すぎた。でも、終のその想いは変わっていなかった。

 

俺も思わず泣いて目を閉じてしまった。

「がっ!?ぐああ!」

とたんに白雲が苦しむ。

「相心!俺を見るな!お前じゃ耐えられな」

そして、白雲が爆発した。

 

何が起きたか分からなかった。朧に戻ったと思ったら急に爆発した。

「なによ…あいつの"個性"はこんなんじゃないでしょ…」

煙幕とが止んだそこには焦げた何かが散らばっていた。

 

認識するな。それを認識するぐらいなら別のことを考えろ。

黒霧はいくつかの"個性"を掛け合わせ強い"個性"になった。

強い"個性"の味方は頼りだが、敵になると脅威だ。

つまり自分自身の手元に居させ続けるか、敵に渡った段階で

 

「オール・フォー・ワンンン!!!」

あたしはAFOの独房に向かって走った。

最重要人物同士だから、そう離れた場所ではなかった。

横たわるそいつは今も眠っている。

 

意識がないということは反抗できないということだ。

「『想像せよ!』『AFOは"個性"を使う!』」

警報が鳴り、AFOに銃弾が撃ち込まれる。

「死ね!死ね死ね!死んで詫びろ!死んで死ね!」

銃声が鳴りやんだ頃には、醜い肉塊が転がっていた。

 

「ざまあみろ!これが『機械仕掛けの神』の力よ!

魔王が何ですって!?所詮人間よ!できることに限りがあるわ!

アッハッハッハ!あたしに思い通りにならないことなんてない」

「終…止められなくて…すまない…」

相澤があたしの肩に手を置いた。

 

「見なさい相澤!巨悪の末路は無様ね!流石あたしだわ!

でも、殺人罪になっちゃうかしら!?あたしがタルタロスに」

「終、受け入れろ…辛くなるだけだ…」

あたしに受け入れる事なんて、受け入れる、事、なんて

 

「…っあああおぼろおおお!!!」

公安なんて入るんじゃなかった。人を殺すことを受け入れすぎてしまった。

だから、朧をあたしの手で殺してしまったことを受け入れてしまった。

あの時みたいに受け入れられない方がましだった。

 

公安に戻ってきた終は明らかにおかしかった。

私はイレイザーヘッドに尋ねた。

「…何もしない方がいいです。終の問題ですから…」

私は思わずイレイザーヘッドの胸ぐらをつかんだ。

「何もするなだと!?愛している人間がこの様で黙って」

 

「あいつは愛する人間を自分の手で殺してしまったんです。」

「訳の分からないことを言うな!私はここにいるぞ!?」

「あいつが…一番最初に愛した人間です…」

その言葉を聞いて、私は我に返った。

 

取調室でイレイザーヘッドからすべてを聞いた。

「…すまないことしてしまった。申し訳ない。」

「いえ、ナガンさんの行動は当然のものです。」

イレイザーヘッドから許しを貰えたのはいいが…

「…ナガンさん。終のことを頼みます。」

私は終に何をするべきなのだろうか。

 

とりあえず、私は終の部屋にやってきた。

「終…入るぞ?」

鍵がかかっていない。かける気力すらないのか。

部屋には窓に向かって、膝を抱えて座っている終がいた。

 

「終…その…災難だったな…でも、お前は悪くな」

「知ったような口きかないでよ!あたしの何が分かるの!」

立ち上がって振り向いた終の目からは、大粒の涙が流れていた。

「悪いとかそういう話じゃないの!あたしは…あたしは…!」

塞ぎこむ終に、私は微笑んで手を差し伸べた。

「大丈夫だ。終には私が」

 

「異能解放戦線のこともあたしに相談しなかった

あんたなんかが朧の代わりになるわけないでしょ!

一緒に任務をこなしたって、体を重ねたって代わりにはならなかったわ!」

終は私の手を振り払って、そう叫んだ。

 

「あっ…火伊那さん…ごめんなさい!」

「まて、終!」

終は左手の指輪を投げ捨て、部屋を出て行った。

 

私はしばらく動けなかった。

今までの終との思い出が色褪せていく。

「…そうだったのか…終は…私のことは…」

私も指輪を外そうとする。

 

火伊那さんは私を助けてくれたんです。私のヒーローなんです。

 

終の言葉を思い出し、その手を止める。

「…いや、私は間違っていない。『機械仕掛けの神』が言ったんだ。

辛い時に手を差し伸べるのが…ヒーローだからだ。」

私はハンドレットとクリエイティに連絡をする。

「緊急任務だ…終を助けてほしい。」

 

ここは終らしくいこう。誰の手を借りてでも、

どんな手を使ってでも、私は終を助け出してやる。

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