終姉さんの事件の翌日、公安で見た終姉さんは激変していた。
「これでお風呂時間を成長に使えるわ。」
「私は止めたんだが、心機一転すると言ってきかなくてな…」
なんと坊主になっていた。
姉弟で似るところはあるけど、ここが似るとは思っていなかった。
「あー…まあ、応援しますよ。終姉さん。」
「創さんの時よりも大きな衝撃ですわ…」
百姉さんは相心家の坊主見届け人に向ているかもしれない。
終姉さんはない髪を靡かせて話を始める。
「今回のインターンだけど…まず、あたしの謝罪行脚の見届け人になってもらうわ。」
新しい第一歩を踏み出すために清算しなければならないものが多すぎるという。
それはそうだろうが、早速やろうというのは行動力が高すぎる。
「まずはデヴァーのオ…叔父貴の所に行かないといけないわね。」
「今オッサンって言いかけましたよね?」
一同に不安が募る中、早速エンデヴァーさんの事務所に向かった。
事務所に着くや否や、終姉さんはインターホンを連打した。
「デヴァーの叔父貴ー?菓子折りもって謝罪に来たわよー?」
どこから見ても謝罪する人の態度と行動には見えない。
「ええいやかましい!また嫌がらせ…か…」
出てきたエンデヴァーさんも坊主姿の終姉さんを見て流石に動揺が隠せないようだ。
「この度はお騒がせして申し訳ありませんでした。」
終姉さんは流れるように土下座をした。
「…あれはいつか明らかになる事実だった。
それなりの騒動はあったが、俺はなんとかヒーローを続けられている。
二度とこのような真似はするな。顔を上げろ。」
エンデヴァーさんに言われて終姉さんは笑顔で菓子折りを渡した。
「加齢臭のケアしっかりしないと子供に嫌われるわよ!じゃ!」
終姉さんはルンルンで車に戻って行った。
「…あれでも反省しているほうなんだ。許してやってほしい。」
「いや…ケアはするべきだと思っていた。改めて気を付けようと思う。」
…何だろう、良いことのはずなのに、納得がいかない。
ある日は雄英高校にやってきた。
「はぁい、ドーナツの差し入れよ。あたしの奢りだから好きなだけどうぞ。」
変わり果てた終姉さんを見て、先生方は大いに驚いていた。
「終ちゃん!?何があったの!?大丈夫!?」
「オイオイ…まさかまた壊れちまったんじゃ…」
「二人とも考え過ぎだ。…お前のやりたいようにやれ、終。」
ここでも終姉さんは土下座した。
「三人共、今まで迷惑をかけてごめんなさい。あたし、生まれ変わるわ。」
「…そこまでしなくても大丈夫よ終ちゃん。」
「ああ、お前の覚悟が伝わったぜ。」
「…卒業式の時にお前を止めてやれたら、こうならなかったかも」
「それ以上は言わないで。全部あたしの意志でやった事なのよ。
だから…全部あたしのせいよ。あんたが思い悩む必要はないわ、相澤。」
終姉さんの一言で、相澤先生が軽く笑った。
「…そうか。少し肩の荷が下りたよ。ありがとう。」
「今度焼肉奢ってあげるわ。大人4人で激しいやつをやるわよ。」
終姉さんの青春はここから、再び始まるのかもしれない。
またある日は
「これで謝罪行脚は終わりよ。今日からは訓練していくわ。」
あまりにも堂々と言うものだから、一瞬見逃しそうだったがそうはいかない。
「早すぎません?というか公安の方々への謝罪が必要では?」
「それと…烏滸がましいですが私達やナガンさんへの謝罪も欲しいですわ。」
百姉さんの言うとおりだ。僕達やナガンさんへの謝罪は必須だろう。
終姉さんはカッと笑い、また無い髪を靡かせた。
「あんた達や火伊那さん、公安にはまだまだ迷惑をかけていくつもりだわ。
だったら謝る必要ないじゃない?関わりがなくなる直前に謝るわ。」
終姉さんは反省したんだと、一瞬でも思った自分が情けない。
百姉さんも分かりやすく頭を抱えている。
「だから、あたしの成長に付き合ってほしいの。私は…弱いから。
もっと強くなりたいから。お願いします。相心終の我儘に付き合ってください。」
終姉さんが僕達に頭を深々と下げた。
「私からもお願いしたい。終は…変わろうとしているんだ。」
ナガンさんも頭を下げて頼んだ。
僕と百姉さんは顔を見合わせて、手を差し出す。
「僕達も強くなりたいですから。こちらからもお願いします。」
「よろしくお願いしますわ、お義姉様方。」
4人の手は固く結ばれた。
「…待って百姉さん。もう一度言ってもらえますか?」
「…待って百ちゃん。もう一度言ってくれるかしら?」
僕と終姉さんが全く同じ反応をする。
「…?よろしくお願いしますわ、お義姉様方…」
終姉さんがぱあっと明るい笑顔で、火伊那さんに抱き着く。
「聞いた火伊那さん!?これはもう子供作るしかないわね!」
「気持ちは分かるが、落ち着け。同性同士では子供はできない。」
「だったら創と百ちゃんの子供をあたし達の子供にしましょ!
創、百ちゃん!今すぐ子供作りなさい!で、産みなさい!」
「まずは道徳の勉強からだな?ちょっとこっち来い。」
終姉さんがナガンさんに引っ張られてどこかへ消えていった。
「終さんもひどいことを言いますわ…」
「本当にそうですよ、学生に子供を作れなんて」
「その人数まで子供を産むのは私でも大変ですわ…!」
「あ、そっちですか?まあ、百姉さんがその気なら僕も付き合いますよ?」
「法や倫理が許すのなら、今からでも産みたいですのに…!」
「産む前に作らないといけませんよ、百姉さん。」
公安に入って、僕と百姉さんの価値観が少し変わったかもしれない。
戻ってきたのはナガンさんだけだった。
「さて、今日の訓練だが…お前達にはどこまで人を傷つけていいかを教える。」
物騒すぎる訓練だ。でも、ヒーローには確実に必要な力だ。
「動けない、あるいは死なない程度に痛めつける…
そうでもしなければ止まらない敵はいるだろう。」
ナガンさんに連れられて部屋に入ると
「はぁい。あたしの縛られた姿で新しい癖に目覚めちゃだめよ?」
両手両足を縛られ、壁で大の字になっている終姉さんがいた。
「具体的な致命傷の資料だ。これを参考にやってみろ。」
ナガンさんがポンと資料を渡してきた。
「いやいやいや!できませんって!身内ですよ!?」
気軽にとんでもないことをさせようとしたナガンさんに反論する。
「身内が敵になることなどよくある話だろう。
何より…終のためだ。協力してほしい。」
「協力するって言ったでしょ?ヒーローが嘘つくのかしら?」
終姉さんは磔にされながら、余裕そうに笑っている。
「やりましょう。創さん。」
百姉さんは覚悟を決めた目で、武器を"創造"していた。
「正義に優しく、悪に厳しく…ヒーローのあるべき姿ですわ。」
その通りです。その通りですけど…
「何で鞭を"創造"したんですか?」
「傷を与えず痛みを与える最適な武器ですわ。」
そうかもしれないですけど、私怨は含まれていませんよね?
「折角だからミッドナイトのコスプレ…
じゃなくて衣装でやってくれるかしら?」
何言ってるんですか終姉さん?
いや、百姉さんもノリノリで"創造"しないでください。
「終さん!日頃の恨み!覚悟してください!」
「遠慮なくやってちょうだい!」
日頃の恨みって言っちゃいましたよ…
「すまない…私の終のよくない素直さが感染してしまった…」
「僕の百姉さんも真に受けすぎてるだけですから…」
この後色々な武器で人間の限界をしっかり試しました。
ズタボロになった終姉さんが嬉しそうな顔をしていたのも問題ですが…
ゾクゾクとよくない喜びに震えている百姉さんの方が問題な気がします。
終姉さんはMではありません。弱さを超えるには痛みが必要だと思っているだけです。
それが身体的なものであれ、精神的なものであれです。
百姉さんは…Sに目覚めたかもしれません。
きっと創君にだけ、その面を見せるでしょう。