殲滅戦争   作:Libro

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第14話

「──まだ見つからないのか?」

 

 不破が呟く。

 地面を抉った土地から≪不可解な者≫(アンノウンズ)を放って早四時間。

 太陽が沈み始め夜の闇がやってくる。夜は魔の時間。人は灯りが無ければ何も見えないが魔の眷属である不破と≪不可解な者≫(アンノウンズ)にそんなものは関係ない。

むしろ闇は力を与える後押しとなる。

 だが夜が来るということはそれだけ時間が掛かっているということ。配下からの情報が一切上がらないことに不破は苛つく。

 不破泰二は配下との繋がりで≪不可解な者≫(アンノウンズ)が今何処に居るのか把握できる。

 しかし詳しい情報はわからない。

 この場合『エルフを探せ』という命令を≪不可解な者≫(アンノウンズ)は受理した。

 結果エルフを見つけた場合は≪不可解な者≫(アンノウンズ)は一度不破に"見つけた"という思念を飛ばして来るはず。だがそれが無い。

不破は我慢強い方ではない。最優先事項は地球への帰還。一日どころか一秒すら惜しい。早く帰らねばと焦る不破は暴挙に出る。

 

「……森を焼くか」

 

不破は片手を空に向け、開く。

魔術書を読み知った魔術。それを不破は発動する。

魔術の本質は"自分が正しいと思い込むこと"1+1=2は世界の常識。それと同じように11+11=23が正しいと思い込めばそれが結果となって現れる。それが魔術。

手の平に魔力を集中させ、"燃えろ"と念じる。

それだけで魔力が炎となり、拳大の物から徐々に巨大化し、ついにはスティーアを優に上回るサイズへと変貌する。

熱波となり不破に近い森の一部が焼けるが、更にもやさんと動く。

 

「ーーこうか」

 

炎の球体がバラバラに飛び散る。

人間大程度にまで分かれた炎が各地に散る。

炎の軌跡を残し、木々に着弾し燃え盛る。

現実ではあり得ない炎だ。数秒で一つの木を灰にし炎が燃え移り炎は拡大する。

着弾地点はバラバラ。不破を中心とした半径二十二キロ程に飛び散った。

炎は消え、不破は腕を元に戻した。

 

 森を一変させた不破は上空から思念を飛ばし配下に命令を下す

 森をなぎ倒せ。全てを無に還せと。

 

 命令を受理した配下が行動に移す。

 

 ティラノサウルスは大きな口で木を喰らい。スティーアは森の木々を踏みつぶす。

 中型の猿やゴリラの姿をする者達はその拳で木を破壊して回る。

 

 これほどの広大な木々を元に戻すには何年。いや何百年かかるのだろうか。

 

炎に≪不可解な者≫(アンノウンズ)が包まれるが関係ない。魔術は術者が効果を及ぼしたい存在にのみ効果を表す。配下には一切の傷は無い。

これもまた勇者。あるいは異形の肉体の力。習得に数年はかかる力を無理やりに行使できる。

 

 無造作に。無意味に≪不可解な者≫(アンノウンズ)が森を蹂躙して回る。

 

 それをしり目に不破はいまだ≪不可解な者≫(アンノウンズ)が到達していない地点まで飛び降りる。どでかいクレーターを残し。されどそのことを気にせず魔法を発動する。

 

 森が焼けていく。めらめらと。ごうごうと。

 風が強い訳でもないのに炎が燃え広がり。尋常ならざる煙に巻かれる。

 

 森が消えていく。

 たったの一時間足らずで、≪不可解な者≫(アンノウンズ)が制覇した範囲を越え。森が燃えていく。

 ≪不可解な者≫(アンノウンズ)が木をなぎ倒し炎が森を燃やす。

 

 ぎぃぎぃと嘆くように鳥たちが喚き飛び立ち。小さな獣たちが逃げ惑う。

 

流石に炎で森を焼けばエルフが逃げ出すか何かするだろう、という楽観的にも程がある思考。あるいは何も考えていない阿呆のような思考回路。

これでエルフが焼死したらどうするのか。そこまで考えが至っていない不破は"これで見つかる"と安心し玉座にて待つこと数時間。

 ようやく不破はエルフの里を見つけた。

 

 周囲の木々がなぎ倒され。燃えていくというのに一定範囲だけ何一つ影響を受けていない場所。

 周囲の木がすべて消えたことで浮き彫りになってしまった場所。

 エルフの里の一つであり不破がいる場所から最も近い場所である『クアトロ』である。

 

 周囲の木々と同じようにマングローブ林の場所は不破泰二がその『違和感』を認識すると同時に姿を変える。

 ただのマングローブにしか見えなかったそれは堅牢な木造の壁になる。

 木造と言っても木を加工したような形ではない。木を真っ直ぐに。隙間なく植えて育てていった形だ。

 本来植物的には不可能に近いが『魔術』という超常の力で変えられた木はそれを可能とした。

 一ミリの隙間もなく。何百か何千という単位の木で約半径一キロと四百メートル程。

 天井にはこれでもかと生い茂った葉からは少しの隙間だけが残り。他はすべて葉に覆われてまるで一つの巨木を思わせる。

 エルフ最大の里でもあるこの里は人間の都市と比べても尚堅牢である。

 実際に形が変わったわけではない。元からそうだったのを幻術の魔術で認識を変えていただけだ。

 ≪不可解な者≫(アンノウンズ)達は雑兵。こういった術への対策がそもそもできない。

 故に不破から近い場所にあり獣の足なら数時間足らずでたどり着く場所が一向に見つからなかった理由である。

 

 しかし不破にそういった知識は無いため。何で見つけれなかったんだ無能共がと愚痴った。

 

 唯一の出入り口らしきものは他の木と同じように作ったのか地上から何十メートルと離れた位置にバルコニーのように突き出た場所のみ。

 その場所も今は閉じ。不破の視力でも中を見通すこともできない。

 

≪不可解な者≫(アンノウンズ)、あの都市へ……いや。一度こっちまで戻れ」

 

 馬鹿みたいに突撃させようと思ったがアンファングでの一件を思い出し辞める。

 悪戯に戦力を減らすのは避けるべきだ。

 適当なエルフ数人生かせば後はどうでもいい。ならばどうするか。

 

 無い頭を絞りながら不破は考える。

 さてどうするかと。何が最善なのかと。

 

 馬鹿みたいに適当に≪不可解な者≫(アンノウンズ)をぶつければ敗北は必須。

 不破は無い頭を絞り作戦を考える。

 

 それは作戦とも呼べない。拙い物に過ぎない。

 しかしこれ以上考えても意味は無いと、行動に移した。

 

≪不可解な者≫(アンノウンズ)、行け」

 

 

 不破の命令に従い約三百程度の人型の獣が動く。

 動いたのはゴリラや猿等の両腕が使える者達。

 焼けた荒野を二足で駆け木の壁を登っていく。

 それに続くように追加で千のゴーレム兵が動いて壁をよじ登る。

 その様はまるで虫が集まる様。遠目に見れば生理的な嫌悪を醸し出す。

 ゴーレムや猿等が一定の高さまで登るとガン、ガンと鈍い音が響く。

 ゴーレムや獣が壁を叩き始めた音。

 自身の拳が壊れるのを構わず。拳を振りかざし壁を打ち付け始める。

 しかしエルフの魔術で育てられた木は頑丈。並大抵の攻撃では傷一つ付かない。

 壁に張り付いた状態と言う安定しない体制では本来の力も出せずに兵が無駄に消耗するだけに終わる。

 無論不破とてこれで壁が壊せるとは思っていない。

 

 次に飛行型の兵に指示を出し、飛び上がらせる。

 プテラノドンや巨大な鴉や何故か飛べているペンギンや鶏。

 それらが一斉に飛び立ち灰を巻き上げる。

 連れてきた二千の飛行型の≪不可解な者≫(アンノウンズ)達だ。

 

 そのまま都市の壁を越え。上空まで飛び上がる。

 丁度都市の真上まで飛行し本来なら都市が見えるであろう場所に滞空する。

 ≪不可解な者≫(アンノウンズ)が下を見ても木々の葉に遮られ人影一つ見えない。

 これは単に葉が邪魔しているだけでなくエルフの魔術師による認識阻害がかけられているからだ。と言っても不破と≪不可解な者≫(アンノウンズ)はそんなこと知りようがないが。

 それを気にせず何体かの≪不可解な者≫(アンノウンズ)が口に魔力を溜め。予備動作をする。

 不破が指示を出すまでも無く、行動に移す。

 

「GE-GYAGYAGYAGYA」

 

 この中で一番大きいプテラノドン型の≪不可解な者≫(アンノウンズ)が叫び口から自身の体よりも大きい火球を吐き出す。

 火球は重力に従いそのまま都市の天井に落ちていく。

 しかし木の葉に当たる前に何か見えない物があるかのように見えない天井にぶつかり消える。

 

 プテラノドン型の攻撃を始めに他の者達が攻撃を開始する。

 鴉が羽ばたき風の刃を。蝙蝠が足から電気の塊を。鶏が自身の羽を。何故かいるペンギンが口から氷を。

 物理法則など知ったことかと多種多様な魔術攻撃を放っていく。

 いくつかは同胞たる≪不可解な者≫(アンノウンズ)に当たったり。火球と氷の弾が空中でぶつかり合ったりして消えるがそれでも大半は都市の天井にぶつかって消えていく。

 何かしらの攻撃が当たるたびに波紋のような物が広がり都市の天井を覆っているのがわかる。

 これなら時間はかかるが行けそうだなと、不破が思った瞬間に戦況は動く。

 

「HOGE-!」

 

 一体の≪不可解な者≫(アンノウンズ)が叫びをあげ一瞬灰のような物になり霧散する。

 何があったと不破が視線を戻せば、答えがそこにあった。

 城壁だ。

 城壁から槍の様な物が突き出て精確にに≪不可解な者≫(アンノウンズ)の頭部を貫いている。

 城壁に穴があった訳でも。開けられた訳でもない。

 じゃあ何だとよく見れば城壁そのものが変形している。

 幻術等で認識を変えられていた訳ではない。今この瞬間に壁が形を変えたのだ。

 鋭利な植物とは到底思えない木の枝が正確に≪不可解な者≫(アンノウンズ)がいる場所に生えて貫いている。

 それを最初に何体もの≪不可解な者≫(アンノウンズ)が同じように叫びをあげ消えていった。

 

(そんなのありかい!)

 

 不破が嘆くが、直ぐに次の命令を出す。

 今度は上空の≪不可解な者≫(アンノウンズ)に指令をだした。

 

「GOE-!」

 

 ペンギン型の≪不可解な者≫(アンノウンズ)が叫び。垂直に落下する。

 体を丸め嘴を突き出した姿は鳥ではなくミサイルのようだ。

 そのまま障壁にぶつかる寸前に一本の矢がペンギンの頭を貫く。

 次々と新しく矢が木の葉から矢が放たれ正確に。一本とて外れることなく≪不可解な者≫(アンノウンズ)を貫いていく。

 ≪不可解な者≫(アンノウンズ)もただ射貫かれるだけでなく炎や風で防いだり。貫かれる前に里の中に入ろうと落下するのもいるが全て上空で貫かれていく。

 

 それを見た不破が、空を仰ぐ。

 

(……どうする、これ)

 

 

 不破の作戦。完。

 

 単に地上と上空から同時に攻撃すればどうにかなると高を括っていた不破はこれ以上の作戦を考えていない。

 そもそも戦力の逐次投入という悪手の悪手でもあるこの作戦は直ぐに突破された。

 

 これで戦力は削られた。

 最悪なのは飛行できる≪不可解な者≫(アンノウンズ)をすべてやられたことだろう。

 先のような上空からの攻撃がもうできなくない。それに情報収集という点で見れば飛行というのは最大の利点だ。地形を無視し遠くまで行ける者が消えた。

 

「仕方ないな……」

 

 不破がスティーアから立ち上がり、その拳を構えた。

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