殲滅戦争   作:Libro

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第3話

 

「ママ、お城がなんか光ってる──」

 

「え?」

 

 可愛い我が子の言葉に、やせ細った女性が城の方を向く。

 ここはクンラフ国の王都の城下町。

 小国には見合わぬ巨大な城の周りに街を造った都市は少々歪だ。

 道路整理も区画整理もあまりできておらず、ちょっとした迷路のようだ。

 魔法のコンパスを持っていかなければ、一生王都から出られない──

 等と冒険者から噂されているくらいだ。

 

 実際には王都のどこからでも見れる城を目印にすれば、一生出れないなんてことはないだろう。

 精々が一月二月迷うぐらいだ。

 

 そんな国の名物でもある城が赤く光っている。

 

「本当ね、何かあったのかしら……」

 

 少し痩せている女性は呟く。

 城には女性の夫が務めている。

 なんでも勇者を呼び出す儀式とやらをするらしく、近衛騎士である夫が神の使いの護衛として選ばれたとか語っていた。

 まるで子供の頃に帰ったかのように語る夫を子供と共に微笑ましく思ったものだ。

 

「そりゃ奥さん、勇者様を呼び出した記念だろう!」

 

 少し不安げに城を見ていると、隣の串屋の男が話しかけてくる。

 

 勇者召喚は国の一大行事らしく、この王都には人が集まっている。

 集まっていると言っても普段よりは多いかな? 程度のもの。

 他所の国から来た冒険者や、他国の重鎮とそれの護衛等。

 普段より三割マシ程度だが、それでも商人たちにとっては稼ぎ時らしく今も周りには串屋以外にも異世界の勇者が伝えたという『お好み焼き』やたこ焼き、綿あめ等の出店が出ている。

これらは滅びゆく国であるクンラフが文字通り身を削って開いた祭りだ。

"勇者"を呼び出せば元が取れると期待した王都で開かれた祭り。

 

「というわけでどうだい奥さん! クレイジーウーキャットの串焼き! 今ならたったの銅貨六枚!」

 

 すっと店主が串を渡してくる。

 実に商魂たくましい。

 

「ふふ、そうですね……なら」

 

 二つください、という言葉は轟音によってかき消された。

 

 なんだなんだと、周りの人々が騒ぎ出す。

 上の方から聞こえた轟音に、人々は自然と城の方を向く。

 

「なに……あれ……」

 

 そう呟いたのは誰か、冒険者か、騎士か、村人か。

 解るのは城の壁が崩壊し、そこからナニカが湧き出しているということ。

 

 ひっ、と悲鳴が聞こえる。

 しかし誰も足を動かさない。

 動かせない。

 

 この光景があまりのも現実離れしているからか。

 

 ドン、ドンとまたも光ったかと思えば城の壁が壊れてゆく。

 そして今度の穴は最初より大きく、よく見える、見えてしまう。

 

 湧き出すのは異形の者たち。

 人を無理やり大きくしたような、幼い子供が描いた人のような──頭が異様に大きかったり、手足が歪んでいたり。

 子供の空想をそのまま現実に持ち込んだような、異形の者が湧いて出てくる。

 

「に、逃げましょう!」

 

 女性が子供を抱える。

 城から、空から湧いて出てくる異形に街はパニックだ。

 

 

 子を抱え、走り出そうと足を出す。

 しかしそれよりも早く、空からちょうど親子を狙うように異形が降ってくる。

 

「あっ……」

 

 それは奇しくも、子供が壁に悪戯に書いた父親に──

 よく、よく似ていた。

 

「パパ」

 

 

 

 グシャッと、母は子と共に父に潰された。

 

 

 

 

 

 

 ■

 

 首都のメインストリート。

 冒険者ギルドに武器屋などが集まる土地。

 丁度真っ直ぐ歩けば城にたどり着く場所、丁度冒険者ギルドの前。

 他の建物よりも数段高い木製の家だ。

 下手な貴族の屋敷よりも豪華に改築された建物の前に、武器を手に取った者が集まっている。

 そのギルドの前から斧を担いだ禿た男が歩いてくる。

 

「Eランクの冒険者と騎士は市民の避難を! それ以上のランクの者は武器を取れ! 奴らを倒すぞ!」

 

 

 禿げた男の声が城下町に響く。

 何かしらの魔術でも使ったのか、悲鳴にあふれる街中にあっても嫌な程に聞こえてくる。

 

「俺たちの街を! 国を! 化け物にやらせるな!」

 

 ガシャン、と両刃の戦斧を掲げる。

 禿げた男……この街の冒険者のギルドマスターである彼は一戦を引いて久しい。

 装備も全盛期の物ではなく、茶色の普通の服に過ぎない。

 戦うことはもうないと武具は相棒である戦斧のみ。軽装鎧一つもっていない。

 かつては全身鎧に大斧を担いで偽竜をも屠ったが、その力もない。

 

「ウォォォォォ!」

 

 ちょうど近くにいた冒険者約100名が声を上げる。

 

 少なすぎる。

 

 ここらの衛兵の数も200程度。

 あまりにも頼りなさすぎる数だ。

 衛兵は町民の避難に走り回りまわり、冒険者は城から王都中に散った魔物への対処の為走って去っていた。

 目の前から迫る、概算に過ぎないが200程の異形の魔物相手にはあまりにも少ない。

 更には冒険者数100というのは総数の話。

 実際に戦えるのはこれから七、八割程度だ。

 Eランクは新人かそれを脱した程度の者が殆どだ。戦闘に使うよりは避難に使った方がましだと即座に判断する。

 

 ーーこの国はかつて冒険王と呼ばれた者がいた。冒険王に憧れ冒険者を目指す者は他国より多かったがそれももはや過去の話。

 度重なる不運により冒険者も民も、国を捨ててしまった。

 残ったのは行く先のないモノか、この国を愛している人間のみ。

 

 だから戦う、戦い続ける。

 国を、故郷を守るために。

 

 

「来たぞ! 構えろ!」

 

 各々が、剣を。弓を。杖を構える。

 

「魔法使い! 詠唱開始! 魔術師、適当に放て! 打てば当たる!」

 

 魔術。

 魔法とは異なる理論で動く力。

 魔法が"世界"という絶対不変の法則で動く力ならば魔術は己の理論で動くあやふやな代物。

 "自分が正しい、お前が間違っている"という何処までも自分本位の者でなければ使えない力だが非常に強力な力でもある。

しかしながら単純なーー極まった者を除いた場合威力ならば魔法には劣る。

 そのため魔法使いの詠唱時間を稼ぐ為魔術……炎の槍や雷。氷の弾丸がそれぞれ放たれる。

 

 全弾命中とはいかずとも、それでも魔物達に着弾し、その数を減らす。

 その間に魔法使いが詠唱を終わらせるべく言葉を紡ぐ。

 

「「"我らは魔に魅入られし者、魔よ、偉大なる炎よ、我らの意思により──"」」

 

 二十名の魔法使いが総動員して魔法の詠唱を始める。

 魔法は世界に命じ結果を叩き起こす力、一人よりも二人、二人よりも三人で魔法を同時詠唱した方が強くなる。

 

 魔法使いの詠唱が終わるまで、魔術師と戦士たちが時間を稼ぐ。

 

「行くぞ! 俺たちの力を、見せてやれ!」

 

 斧を振り下ろす。

 

「突撃──!」

 

「「オオオォォォ──!!」」

 

 

 弓を構えたエルフが、背に合わぬ大剣を携えたドワーフが。

 杖を持つ魔術師が大通りの向こう側──丁度城の方から来る魔物に向けて走り出す。

 

「ひゃー! 打つぞ! 当たりたくなければ避けな!」

 

 ローブに身を包んだ男の魔術師が魔術を発動させる。

 杖から放たれるは単純な炎の矢。

 しかし人間大の大きさの炎の矢は異形の魔物を貫通し、三体程貫く。

 炎の矢を皮切りに、次々と魔術が放たれる。

 純粋な光の矢、氷の刃、単なる魔力の塊、土の槍──

 魔術師たちが放つ魔術は、魔法よりも威力が低い。

 数体は破壊できても何十。あるいは何百と湧き出る魔物には届かない。

 

「結構かてぇな、おい!」

 

「愚痴言う暇あったら切っちまえ!」

 

 戦士が魔物の腕と交戦する中、ドワーフの戦士が大剣で切り飛ばす。

 魔力を込めた一撃が飛ぶ斬撃となり、そのまま城の方に向かって飛んで行く。

 

「こいつら気持ち悪いな! 悪魔の親戚か!」

 

 女の軽装戦士が叫ぶ。

 異形の魔物は奇怪な姿をしている。

 人を無理やり大きくしたような、幼い子供が描いた人のような──頭が異様に大きかったり、手足が歪んでいたりするピンク色の化け物が、二足ではなく四足でカタカタと歩いてくる。

 気色悪いにも程がある。

 そんな化け物たちが目算数百、あるいはそれ以上が止むことなく四足で歩いてくる。

 

 

「負傷者はこちらへ! 治癒の奇跡を使います!」

 

 

 女の祈祷師(プリースト)が励ます。

 典型的な狩の神を信仰する者の衣服──防御の魔術が込められた動きやすい衣服に、鎖帷子(チェイン・メイル)

 凡そ他の聖職者とはかけ離れた少し露出の多い衣服だ。

 平時ならいいもん見れたと笑い飛ばす格好だが、今は非常時故に誰も軽口を言わない。

 

「『狩の神よ、獣を屠りし狼よ、わが身に獣の膂力を、癒しを与えたまえ』」

 

 

 治癒の奇跡。

 己の力で行使する魔術や魔法と違い、神の力でもって使われる力。

 神官が直接力を行使するわけではなく、神への祈り(トリガー)を持って振るわれる力は、魔の力ではあり得ない──もしくは最高難度の治癒をもたらす。

 

「しゃあ! 行くぜ行くぜ行くぜ!」

 

 治癒の奇跡に獣の力(力強化のバフ)を受けた熟練の戦士が剣を片手に走る。

 もう三十代に思わしき男は愛剣と共に魔物とぶつかり合う。

 

「前線の者! いったん下がれ! 魔法が来るぞ!」

 

 後ろで陣取って特に何もしてない──魔法使いの護衛として立っていたギルドマスターが叫ぶ。

 

「「"我らの魔を持って、眼前の異形の魔物を焼き払え"」」

 

 

 複数人での詠唱は、そのまま高威力の魔法となって放たれる。

 いわば小さな太陽とさえ言える光量と共に、新しく進撃してきた魔物に放たれる。

 

「うわっ!」

 

「あちぃ!」

 

 前線から少し逃げ遅れた冒険者が、暑い暑いと笑う。

 真昼間に輝く太陽よりも赤く光る炎は、敵を焼き払い──

 

 

「げっ、まじか!」

「耐久力ありすぎじゃね?」

 

 

 十数体を残して、魔物が焼かれた。

 無論魔物側も無傷ではなく、生き残ったモノも表面が焼かれている。

 眼球らしき部分は蒸発し、何も見えていないのか悶絶している。

 

 しかしそれでも無理やりに……何かに恐れるかのように、歩いてくる。

 ある者は四足で、あるいは二足で、残った腕だけで。

 

 そのうちの一体が、顔を上に向ける。

 

「GAGAGAGAGYA!」

 

 異形の叫びが冒険者を襲う。

 魔法的な力こそ込められていないが、純粋な大音量の叫びは冒険者たちの耳を、地面を破壊する。

 叫びに答えるように、異形の魔物が大通りに向かって走り出す。

 王都の各地に散った魔物が、集合してゆく。

 しかし肝心の魔物は、叫び声をあげて力尽きたのか頭から崩壊し塵となって崩れ落ちる。

 一体消えた程度では意味がなく、その何百倍もの足音が聞こえてくる。

 

 ふざけるな、と声にやられて地に伏したギルドマスターが斧を杖代わりにして立ち上がる。

 精一杯の声を張り上げる。

 

「魔法使いは再度詠唱! 先の高威力はいらん! 各自で詠唱し放て! 魔術師は魔法使いのサポート! 一体とて近づけさせるな!」

 

 ギルドマスターが斧を強く握り、走り出す。

 走りながら噛むこともなく喋れるのはマジックアイテムの力。

 

「オラ冒険者共! これが終わったら祝勝会だ! 会費は全部ギルド持ちだぞ!」

 

 最後ににかっと、悪ガキのように笑う。

 

 やったぜ、とじゃあ働かないとな、と冒険者が走り出す。

 

「おいギルマス! 二次会の娼館ツアーもギルド持ちだよな!」

「馬鹿言え! それは自分で出せ!」

 

 ぎゃはは、と品の無い笑いが響く。

 

「GA,GAGAGYA」

 

「おおっと!」

 

 ガン、と振り下ろされた異形の腕を斧で防ぐ。

 

 

 ()()()()()()

 斧の刃と、魔物の腕が当たった感触が、どこかで感じたように思える。

 

「オラァ!」

 

 斧を豪快に振り回す。

 元Cランク──神の祝福などを受けていない(受けられない)才ある人間の到達点の一撃は、魔物を腹から両断する。

 

 やはりどこかで、斬ったような? 

 そんな違和感を感じる。

 しかしながら何かの魔物とは思えない。そもそも人型の魔物等オークやオーガ。ゴブリンなどの眼前の異形とは似ても似つかない者ばかり。

 

 失踪し、苦戦している冒険者の元へ一分とかからず肉薄する。

 

 しっ、と小さい叫びと共に斧を振り回し今度は縦に両断する。

 ありがとうございます、という冒険者の声を無視し、今の感触を思い出す。

 

 ──今のは、人を斬ったような? 

 

 遥か昔、数度だけ斬った、嫌でも忘れられない感触を思い出す。

 冒険者は魔物と戦う職業だ。

 魔物を幾度も斬ったことはあれど、人間を斬ったことがある者は少ない。

 犯罪者……邪神崇拝者や山賊や盗賊と戦うのは騎士の仕事だ。

 対魔物専用の戦闘機関。それこそが冒険者ギルドであるが故に。

 ギルドマスターは数度、高ランクになった時に国からの要請──という名の実質命令を受け、騎士団共に邪神崇拝者を斬ったことがある。

 邪神崇拝者の中には魔族を崇める者もいる。そういった魔族を倒す為に騎士と協力して邪神教団の本拠地に攻め入ったりもした。

 その時に仕方なく斬った肉の感触に似て……いや、同じだ、これは。

 

 思わず、という風に魔術を使い、視力を強化する。

 強化された眼球は本来認識でないような皮膚のちょっとした動きでさえ観れるようになる。

 その目で持って、今だ何処からか出てくる魔物を注視する。

 

 そしてわかる、わかってしまう。

 魔物の意味の無いときって捨てた口の動きの意味が。

 叫びではない声なき声が。

 

 た

 

 

 す

 

 

 け

 

 

 て

 

 

動く肉人形(フレッシュ・ゴーレム)──しかも生きたまま素材にしたのか!?」

 

 

 助けて、という口の動きを認識し、思わず叫ぶ。

 動く肉人形(フレッシュ・ゴーレム)

 主に邪神崇拝者が使う魔術で持って作られたゴーレム。

 その名の通り肉を使う。

 本来は肉が残る動物、或いは人間や亜人種の肉を元に造られるゴーレムだ。

 ゾンビ等と違い死の邪神の力を持って造られるアンデッドではな炒め死の邪神を崇拝する者以外も造れ、かつ浄化の力が効かないというメリットを持つ。

 

 そう、使われるのは()()である必要はないのだ。

 本来あり得ない──どうすればできるのか皆目見当もつかないが、

 この異形の魔物と思っていたのは、生きたまま動く肉人形(フレッシュ・ゴーレム)にされた者達だ。

 いや、よく見れば何体かは口が動いていないので、生きたまま素材にされたのは少ないのだろうが。

 

 悪趣味にも程がある、と叫ぶ。

 肉さえあれば造れてしまうゴーレムだ、生きたままゴーレムにされた者は己の意思にかからわず手足が動く。

 創造主の命に従い、勝手に手足が動き、人々を襲う。

 したくなくてもどうしようもない。

 肉だけが材料になるその性質上、残る材料……

 パーツとして不適切──あるいは使われなかった骨や内臓、脳みそは残る、残ってしまう。

 だから彼らは目を閉じることも、自ら死を選ぶこともできない。

 精々が長く見積もっても一日程度しか生き続けられないだろうが──そのたった一日は、当事者たちにとっては永遠に続く地獄だ。

 異形へ変貌した理由は肉だけを無理やりゴーレム化し魔力で増殖なりなんなりされたからか。ゴーレム系の魔術に詳しくないギルドマスターではわからない。

 

「クソッたれぇぇぇぇ!!!」

 

 叫ぶ。

 先ほどまでの冒険者を鼓舞する叫びと違い、どうしようもないことにただ苛立ち、ぶつけ先として叫ぶ。

 そのまま我武者羅に突撃しせめてもの情けとして一撃で葬り去る。

 

「ギルマスに続け! 奴らをぶっ潰せ!」

「「おう!!」

 

 誰ともなく、冒険者たちが叫ぶ。

 現実をわかっていない彼ら、あるいは彼女たちは特に違和感を抱くこともなく動く肉人形(フレッシュ・ゴーレム)を倒していく。

 

 

 何と胸糞悪い光景か。

 冒険者たちが倒すゴーレムがもしかしたら親愛なる友人や家族である可能性がある。

 いつも武器の手入れをしてくれる鍛冶屋か。宿の看板娘。もしくは同業者。

 それはもしかしたらという疑念ではなく確実に起こりうる現実だ。

 

 

 

 

 ヒューと、何処か間抜けな音が聞こえてくる。

 剣の音でも魔法でも魔術でも弓でも無い。

 音源は何処だ、と集中する。

 音源は──上。

 

「上から何か来る! 気をつけろ!」

 

 いち早く気付いた探索職(シーカー)の声に、冒険者たちが一斉に上を見る。

 同時に、ガガガ、と家を砕きながら巨大な楕円形の物体が落ちてくる。

 

「なんだあれ!?」

 

「親玉か!」

 

 冒険者がこれが親玉だと気を引き締める。

 異形の物体……縦横20m程度の魔物。

 

「なに……あれ……」

 

 まだ若い──うら若き少女とも呼べる者が吐き出す。

 昼飯が胃に残っていたのか、固形物が吐き出される。

 

 直視するには余りにも惨い光景だ。

 これの材料は他の動く肉人形(フレッシュ・ゴーレム)と同じく人間。

 違うのはまだ原型を留めているのと、数。

 十や二十ではきかない人数を材料にしたであろう動く肉人形(フレッシュ・ゴーレム)は悍ましく、全裸の人間が無理矢理結合されている。

 中には他のゴーレムと同じく口が動いているのもいる。

 老若男女問わず、片っ端から詰めたような、異形のゴーレム。

おぎゃおぎゃあと意識を保っていた材料の一つである赤子が泣きわめき、冒険者たちに恐怖を与える。

 

「クソがぁ!」

 

 唯一ゴーレムが元人間と認識できていた(しまっていた)ギルマス以外、その悍ましさに怖気付く。

 

 巨大なゴーレムから放たれるのは莫大な魔力。

 一介のゴーレムが放つには多すぎる力。

 

「あー気持ちわりぃ……」

 

 ゴーレムから声。

 声は男の者か。

 しかしゴーレムには発声機能なんてものはつけれない。

 

「ウ、上に誰かいる!」

 

 正気に戻った冒険者の一人が、声を上げる。

 巨大なゴーレムの上からひょこっと、顔を出したのは見知らぬ風貌の男。

 

 黒髪黒目のこの大陸の者ではないとわかる髪と目。

 白めの肌に、見たこともない衣服。

 そして何よりも異質なのが放たれる魔力。

 無尽蔵に放たれる魔力はそれだけで害になる。

 魔力に耐性の無い者に死を与え、例え耐性がある者でも寿命を削り、生物としての機能を削ってくる。

 

 

「お前が──元凶か!」

 

 誰かが叫ぶ。

 ギルドマスターか、冒険者か、あるいは市民の誰かか。

 それを意に介さず、男は手のひらに魔力を集め──

 

 

「”死ね”」

 

 放たれた魔力と魔法が、王都の一角を包み込んだ。

 

 

 魔法が放たれた後に残るは突如死んだ冒険者の死体。

 これまでの苦労を水の泡にする強大な魔法。戦う者も逃げる者も、何もできなかった者達も関係ない。

全てを等しく死に至らしめた。

 

 

 こうして冒険者たちの活躍むなしく、神に縋るしかなかった哀れな国は他でもない神の力によって滅んだ。

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