殲滅戦争   作:Libro

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第31話

 ──何も見えない、感じない。

 

 今、足が動いたのか、頭が動いたのか、それすらわからない。

 

 それは、つまり

 

(──呪術は成功した?)

 

 呪術。

 魔術という世界の理から外れた力からも、ことさら特殊な力の総称。

 一般的には『何かを代償にする』力であり、また『永続的に力が発揮する』力だ。

 

 例えるならば、有名な丑の刻参りだろうか。

 ただ相手の髪の毛を藁人形に入れて釘打ちするだけならば意味はないが、それに「自分自身」を代償にすることで呪術が発動する。

 

 例えるならば、利き腕。

 利き腕を失う代わりに、対象に永遠に──と言っても寿命で死ぬまで──地獄の苦しみを与え続けることができる

 もしくは地獄の苦しみを味合わせることなく即座に殺すことも可能だ。

 

 こういった負の側面以外に、『自己強化』が可能な数少ない技術になる。

 本来、人は生まれ持った魔力総量は変わらず、訓練して増やそうにも一定の値で頭打ちになる。

 それをどうにかできるのが、呪術だ。

 

 先の例と同じように、利き腕を犠牲にすれば……本来の魔力総量の倍近い魔力を得られる。

 

 で、あるならば。

 

『両腕』『触覚』『聴覚』『嗅覚』『視力』『眼球』──あらゆるモノを代償にすれば、どれほどの力が得られるのか。

 

(すごい、すごい、すごい!)

 

 少女は、膨れ上がった自身の魔力に歓喜する。

 どれほど鍛錬しても、どれだけ使い切ったりしても増えなかった魔力は増大し、自身が最もよくしる魔術師など比較にならない程の膨大な魔力。

 

 その代償は、余りにも重いが。

 

 今の少女で無事な部分は、余りにも少ない。

 

 両足と、髪の毛と、生存に必要な内臓器官と見てくれだけはいい外見。

 

 それだけ、である。

 子を孕み、命を育てれる子宮はなく、美味を感じれる舌もなく、そもそも粗食できる歯が無い。

 発声するための喉は消え、他者の声を聞き取る耳すらない。

 

 自己強化のためにあらゆるモノを代償にした、狂った少女。

 

 無論、少女と手なにも考えず呪術に手を出した訳ではない。

 幾つかは代替手段があるからだ。

 失った声は念話で伝えればいい。

 失った耳は、魔力感知の応用で感知すればいい。

 失った内臓等、アーティファクトで生命維持ができる。

 そもそも子宮は要らない、子を孕むつもりもその行為をする気もなかったのだから。

 

(ああ、ああ、ああ!)

 

 もしも声がまだあったのなら、少女は大声で叫んでいただろう、それほどに歓喜している。

 

(……あれ?)

 

 ふと、ある程度感覚を掴み、魔力で自身がどうなっているか少女は確認する。

 

 確認すれば、自身は一歩も動いていない。

 それどころか、うつ伏せになって倒れたままだ。

 

 ちょっと恥ずかしいな、と魔術を行使し、念力を発動する。

 強化された魔力による念力は、少女が望む結果を起こし、立ち上がる。

 

 今の少女には触覚も痛覚もない。

 

 ──ゲームで言う、三人称視点だろうか。

 少女は今、そのような状態になっている。

 更には自身も含めて、あらゆるモノがぼやけている。

 凡そ輪郭だけはわかる、その状態だ。

 

 

 遠くから見れば、少女は余りにも哀れなのだろう。

 近くで見れば、少女は余りにも狂っているだろう。

 

 少女は、笑っていた(狂っていた)

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