殲滅戦争 作:Libro
「──かけてくれ」
口も無いのに何処からか声を発する。
念話の類ではない。音として発声されている。
言葉に従い手頃な……出入り口から近い椅子に座る。
「ふむ……」
三人の視線がディロンに集まる。
「それで、ディロン殿。我らに何の用で?」
最初に馬顔の魔族が口を開く。
「……ケントニス・ヴィッセンから魔族に会いに行け、と言われたから来た」
「……それだけで?」
「ああ」
「なるほど、ではディロン殿の最終目標は?」
「も……いや、人類の殲滅だな」
できればこの大陸の人間は皆殺しにしたい、と最後に付け加える。
「──結構、では、ディロン殿の配下等は?」
「確か、今残ってるのは雑魚が四百。強いのが六十ぐらいだな」
「……ふむ、ランクは?」
「……わからん、そっちで判断してくれ」
ふぅむ、と馬の魔族が顎に手を当てて考える。
ケントニス・ヴィッセン──上位存在である邪神からの推薦を受けている『魔族』ディロン。
たった数度話しただけで、この存在の異常性を感じる。
『今すぐにも、跪きたい』
それこそが自然な行為であり、正しいことだと本能が──魂がそう反応する。
まるで神の声を聴いた時の様に。主として崇めたくなる。
無論これはディロンが『魔神』だからだ。
魔族の創造主である邪神の祖である魔神王の眷属神。魔神とされるディロンは邪神と同じようにも魔物、魔族の支配能力を有する。
ちらり、と眼球だけを動かし今の主である魔王を見る。
先ほどからマルで動いていない。時間が止まったかのように止まっている。
「おぉ……」
立ち上がり、ディロンの前まで牛歩の様に歩む。
ゆっくりゆっくり、地に足をつけて。
そのことに疑問を感じながら、この場の者達は全員。その姿を直視する。
「あなたこそが我らが王……いや、神、魔神様だ!」
「……は?」
■
(何言ってんだお前)
「何言ってんだお前」
発言と思考が重なる。
それはそうだ。協力相手だと思っていた相手がいきなり神として崇めてきたら誰でも混乱する。
地に伏せ、膝を付き忠誠を誓う。
人型の渦の塊という異形がそれをすると視界の圧が凄まじい。
「……やはりこうなるか」
虚空から声が響く。
何もないはずの空間にぴしりと罅が入る。
「あ?」
びちゃり、と肉の塊が零れ落ちる。
ドロドロに溶けたピンク色の肉塊だ。
うねうねと肉塊が細くなり触手となる。肉塊からローブが生え纏う。
ケントニス・ヴィッセンの端末だ。
「これは、ケントニス様」
魔族たちが椅子から降り。魔王と同じように膝を付く。
「ケントニス? お前、これたのか」
ただ一人ディロンだけは椅子から降りることもなく普通に対応をする。
「この地は魔族の支配領域だ、忌々しい善なる神々の影響が少ない場所ならばこのように簡単に顕現できる……といっても、流石に本体ではこれないが」
「……そういうものなのか」
「で、なんでこいつは跪いてんの?」
心底わからない、という顔でケントニスに問う。
「ふむ、前にも言っただろう? お前は『魔神』だと
魔神とは即ちすべての『魔』の神だ、魔物や魔族、魔獣でさえもお前に従う
お前が
もっとも、ただの魔物とは毛色が違うようだがな」
「そういうものなのか」
「そういうものだ」
「さて、予想より時間が掛かったがようやく戦力が整った
これより、ドワーフ達を滅ぼそうではないか」
口も、顔も無いのに、ケントニス・ヴィッセンはにやり、と笑った──気がした。