殲滅戦争   作:Libro

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第4話

廃墟となった瓦礫の山の上に男が居た。

空を見上げるのを止め、ふと視線を下に移せば死体の山。

子供を庇おうと子と一緒に死んだ親子。剣を持ち戦うんだと叫び死んだ冒険者。

盾を構え誰かを助けようとし盾ごとその誰かと一緒に死んだ者。

血と臓物。糞尿の混じる異臭の元、男は呟いた。

 

「……どうすっべ」

 

 はぁ、とため息をつく。

 こんなこと……問答無用の大量殺戮をしたのはもちろん元の世界に帰るためである。

 男が元居た世界ーー不破泰二の故郷である世界。日本への帰還方法を得る為。

 それを知るであろう者を探した結果としての虐殺。

 

 結果として言うならば、幾人かは居た。

神を信じるーー不破泰二にしてみれば狂人にしか思えない神官に魔術を極めようとした者。あるいは魔法使い。

転移で得た力で軽く拷問し、聞き出せば全員が口をそろえてこう言う。

 

"世界を渡る秘術を使えるのは神々のみ"

 

つまり神へ反逆したともいえる不破泰二には地球への帰還など土台無理な話であった。

 

 あー、と上を見る。

 雲一つない星空。

 月と星の光しかない空は、地上の光が無くなれば実によく見える。

実に綺麗だと思う。だが。

 

「月が多いの除けばな……」

 

 月が一つ多い。

星空も見たこともない光景だ。夏の大三角形や北極星も見当たらない。

 見えるのは現実より明らかに大きい、あるいは近くにある青い月と黒い月。

 

 日本のどこからでも、地球の何処に居たって見えるわけがない景色。

 

どうしようか、ぐるぐると思考を回せば邪魔をするようにーーあるいは終わらせるように音が響いた。

 

すわ何事か、と視線を向ければ瓦礫が崩れ落ちる音。

原因は何かと思えばゴーレムが歩いた衝撃で崩れたらしい。遠くから何かを持ったゴーレムが歩いてくる。

 人間を生きたまま材料にしたゴーレムは人間に実に近い姿をしている。

 手足が肥大化し三メートル程にサイズが大きくなければ人間に見える。

 手に持つは木箱。命令通りに持ってきたのだろう。

 このゴーレム達は何か、となれば城にあった魔術書で会得した力である。

偶然か何か、何かの意思を感じずにはいられないが城に居た魔術師の部屋に襲撃した際に見つけた本に書いてあった魔術である。

何がどういう原理か知らないが数ページパラパラと捲るだけで理論も何もわからないが"使える"ようになったので使ってみただけの力。

 無論この力も勇者としての力の一端。まるで内容のわからない魔術書でも"一度読んだ"という事実があるのならば過程も道理も無視して行使できるようになる。

 

「あー、ここに置いとけ」

 

 瓦礫の山の上から命令する。

 置かせたのは不破が座っているところの隣。

 安定しない場所だが、崩れたりしないので大丈夫だろうと判断する。

 

「俺の力……じゃないよな」

 

 掌を開き、黒い靄ーー恐らくは魔力か何かを放出する。

 この魔力も身体能力も言葉がわかるのも魔術とやらが使えるのも。

 全部女神の力もの。自身の力ではないと思考する。

 

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 与えられたということは、何時でも剥奪できるということ。

 この力は有限。何時まで持つかわからない不確かなモノに頼るのは危険。

 勢い余って街一個ぶっ壊したから、人間が自身を殺しに来るかもしれないと不安に襲われる。

 

「どーすっかな……」

 

 何度目になるかわからない言葉を呟き隣の置かれた箱から本を手に取る。

 王都中からかき集めたにしては立った一箱分しかなく、ざっと見て30あるかないか程度。

 単に街を破壊した時に一種に壊したか、元々本の数自体が少ないか。

 木製の簡素な箱から適当に本を取る。

 翻訳能力でも与えられたのかーーそもそも異世界人だという物たちと会話が出来ていたのだから今更かと本を手に取る。

 

『主婦の味方! 料理百種』『サルでもわかる魔法の使い方~実際に猿に教えないでください、命の危機が生じます~』『俺の槍を磨け』『観光案内書』『迷宮の仮設。神々の修練場だった可能性』『城下町の歩き方~迷子になっても焦らずに、死にますよ~』『冒険王の足跡』『神々の創成期』『邪神について』

 

 一部訳の分からない本もあるがまぁ異世界らしい本だと不破は思う。

 

「あ? 冒険王の手記?」

 

 何故か……どうしてか。

 彼自身解っていないがどうしても気になる本が出てくる。

 他の雑に作られた本と違い、何処か現代の製本技術で作られたようながっしりとした本。

 黒い背表紙に金の装飾。

 本のタイトルは他と違いミミズがのたうち回ったような訳の分からないものだ。

 それでも読めるということは、この地の文字はどういう物なのか不破は疑問を抱くがまぁいいかと本を手に持つ。

 年季が入っているからか。あるいはそれ以外の理由なのかわからないが開こうとしてもなかなか開かない。

 

「ふん!」

 

 それを力業で無理やり開く。

 バキン、とガラスが割れたような音がする。

 気にすることなく本をパラパラと開く。

 

 本の内容は書籍などではなく、どちらかというと日記の様だ。

 今日も薬草を積んで売った、宿の壁の修理代が結構よかったなど。

 最初のうちはよくある日記で冒険王の手記とは思えない。

 確実に名前負けしている。

 

「つまらん本だな……」

 

 そういいつつも、パラパラめくる。

 何かが割れるような音がした後も、何故かこの本からは異質な気配……恐らくは魔力。それを不破は感じとっている。

 一体何があるか、瓦礫の山の上ということも忘れて読み進める。

 途中からは仲間ができたと、魔法使いの癖に魔法が使えないとかオルカーン・ハイレン様の信者の獣人が仲間になったと。

 そうしたところを流し読みし、──面白いところがでる。

 

 要約するとこの本が正しければ、どうやら別世界への扉を開けるのがあるという記述を見つける。

 一部訳が分からないーー恐らくは固有名詞もある、ゼーベやハイリヒというのは悪魔か何かかだろうかと頭を回す。 

 しかし何と都合のいいことだろうか。

 元の世界への帰路を探した途端見つける? どんな間抜けでもわかる明らかな罠だ。

 

「行ってみるか……」

 

 あまり気は乗らないが、これしか手掛かりがないのも事実。

 異界より来た勇者の向こう先は『迷宮都市アンファング』

 かつて冒険王と呼ばれる者が初めて迷宮の完全攻略をなした地。

 

「ついでに邪魔な害虫(人間)も潰して周らないとな……」

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