殲滅戦争   作:Libro

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第40話

 ドワーフの首都。上空。

 遥か上。地上から見れば何か黒い点があるとわかる程度の高度。

 そこにディロンが翼を広げて飛び、ケントニスを抱えていた。

 その中、ケントニスが問いかける。

 

「しかしディロン。魔王は戦闘能力を有さんぞ。おいて来てよかったのか?」

「……あ」

 

 そいえばそうだったと、今更ながらに思い出した。

 魔王は戦闘能力を有さない。

 相互不干渉。魔物を使わなければ干渉できないという特異性。

 

「……まぁ時間稼ぎぐらいならできるだろ」

 

 魔王はシュッツを倒すことはできない。

 しかしながらシュッツも魔王を倒すことはできない。

 相互不干渉というのは面倒だとディロンは思う。

 気を取り直して翼をはためかせ速度を上げる。

 家々が超スピードで流れて行くが酔う様な事は無い。家の模様も看板もすべて認識できる。

 これが異形の肉体の力かと今更ながらに驚愕する。

 翼を生やして飛翔。人間台の物がそれをすれば衝撃波が発生し家々に罅が入ったりガラスが割れる等の被害を出す。

 何十キロも離れた距離を数分で踏破し、城の前に到着する。

 

「……でかいな」

 

 でかい。

 昔──不破泰二だった頃に観光で見に行った清水寺等よりもよほど大きい。

 

「……しかしこれが城か」

 

 城、というには少々可笑しい形状だ。

 巨大な卵上の物体。それを守る系二十四の塔。

 そしてすべてが白い。白磁の様な白さ。

 

「まぁいいか。突入するぞ」

「ちょおま」

 

 何か言いかけたケントニスを無視し、抱きかかえて急降下する。

 翼を器用に動かし、そこに教えられたばかりの魔術を使用し補助。

 一つの弾丸となって城の城壁をぶち壊した。

 

 ガラガラと音をたてて瓦礫が落ちていく。

 大小様々な瓦礫が綺麗な床に落ち汚れてゆく。

 

「……無茶をする」

 

 ディロンから離れたケントニスが「汚れた」と器用に触手で細かい瓦礫と埃を払う。

 

「……玄関か?」

 

(なんか階段上からボスキャラ出てきそう)

 

 そんなことを思考する。

 たどり着いたのは玄関。大きな鉄扉には剣を構えたドワーフが彫刻されている。

 ディロンの前には巨大な階段。左右に分かれている。

 手すり一つ一つに精巧に彫刻されているのを見るにこの城を作ったのは相当凝ったものだとわかる。

 

「……なんの絵だ?」

「これは……懐かしい絵だな」

 

 巨大な扉よりも大きい。縦横八メートル程の巨大な絵画。

 階段下からでもその全貌が容易に見える程に大きい。

 男が一人。女が二人。一つは人型となった炎の塊。

 全てが剣を掲げており、剣の先には大地が描かれている。

 

「これは世界安定の──」

 

 轟音が響く。

 耳が避けそうな程の音。

 恐らくは金鐘の音。耳元で直接鳴らされているかのように響く。

 

「なんの──」

 

 ガシャガシャと鎧の音を鳴き散らし何かが近づくのを感じる。

 そして異形の肉体だからこそ聞こえる微かなモーター音。

 

「ほう。自立稼働するゴーレムか」

 

 敵兵が現れると同時にケントニスが答える。

 

 現れたのは人型のゴーレム。

 全身鎧を纏った大男とでもいいのか。しかし関節部から垣間見えるは完全な球体。声明ではない。

 バイザーからは赤い瞳。腕には融合した剣と盾。

 完全自立稼働型ゴーレム──神話の時代の名残。古代の遺産(アーティファクト)だ。

 

 そも古代の遺産(アーティファクト)とは何か? 

 一言で言えば文字通りの古代の遺産である。

 遥か昔。人類が文明を得る前から存在する力の総称。

 神々が地上にいた頃からの──世界が楽園だった時の力の残滓。

 それこそ正確に把握しているのは記憶と記録を司るケントニス・ヴィッセンぐらいの物で他の神々は把握していない──あるいは関わっていても忘れている者が大半である。

 失われた力や既に消え失せた神々の力。魔神王が率いた魔神が作り出した兵器等々。

 凡そ楽園時代から神話の時代に作られた神の力の産物とされる。

 つまりそれは。このゴーレム達は神話の時代の技術を用いられた過去と現在のハイブリット兵器。

 過去と現在の融合。力が全ての神話の時代と技術を持つ現代が合わさったゴーレムは並大抵の冒険者や兵士を上回る。

 ガシャガシャと鐘の音と共に不協和音を鳴らし、ゴーレム兵が器用に階段を一段一段降りていく。

 階段はドワーフ様に作られている。つまりは階段は非常に小さいわけだがそれを器用に降りるのはそれだけ正確に動けるということ。

 

「ちょうどいい。ディロン。最小の力で破壊してみろ」

「あ? なんで」

「お前は力に頼りすぎだ。稀には力ではなく技術で対処してみろ」

 

 ディロンが面倒な、とぼやき突撃してきたゴーレムの頭部を掴む。

 そのまま握りつぶし、ゴーレムの破片が散る。

 

 二体目のゴーレムが階段を降り切り、剣を掲げ突撃してくる。

 よく見れば──魔神としての視力で見れば振動している。

 俗にいう振動ブレードという奴だ。更に使われている緋色に輝く鉱石。アダマンタイトというこの世界における最高硬度を誇る鉱石。

 流石に神々が作り出した神器には劣るが逆に言えば神々が作り出した物以外全てに勝る鉱石。

 更によく観察すれば"全てがアダマンタイト"

 手足のパーツから指、ネジの一本に至るまで。全てがアダマンタイト。

 厳密には小さすぎるパーツやアダマンタイトでは動きにくくなってしまう関節部分などはミスリルというアダマンタイトに次ぐ硬度を誇る鉱石。

 しかし両方とも採掘量も非常に少ない鉱石。如何にこの山脈が鉱脈に溢れているとしても一体作るのに何年かかるかわからない代物。

 それが百を超える数が群れと成してやってくる。

 

 シュッツのように声を出すことは無く極めて機械的に体を動かし剣を振るう。

 

 それを回避も防御もせず。ただ受けた。

 

 ギャリギャリと嫌な音が響く。

 包丁同士をぶつけたような音。

 剣は常に振動している。ただ当たっただけで並大抵の者なら豆腐のように斬れる剣はディロンの皮膚を浅く斬るだけで終わる。

 

「邪魔だ」

 

 がしりと人間よりは多少大きい頭に殴る。

 構えもなっていない、腕を動かしただけのパンチはゴーレムを破壊する。

 

「雑兵だな」

 

 上から、横から、後ろから。

 あらゆる角度から斬られるのを無視しディロンは拳を振るう。

 力任せの一撃ではない。

 ある程度ケントニスから戦闘方法という物を学んだ拳だ。

 現代の──地球における格闘家程洗練された技術ではない。まだまだ荒い。

 だがそれでもゴーレム兵には脅威的。一度拳を振るえばそれだけでゴーレム兵が粉微塵に粉砕される。

 ゴーレム兵が十の傷を与える時間でディロンは一体のゴーレム兵を破壊する。

 

 何というごり押し。能力に任せた脳筋戦法。

 しかしながらこれが正し戦方。

 確かにゴーレム兵の剣は脅威。魔神と化したはずのディロンの皮膚を裂くほどに強い。

 ドアイラクならば容易く両断されるほどの威力。

 だがディロンには皮膚を裂く程度。そしてその程度ならば数秒で完治する再生能力を持つ。

 意識すれば全身を貫かれようが腕を斬り落とされようが数秒から数分で完治する自己再生能力を持つ以上この程度の傷気にする必要は無い。

 

 幼子が両手でぽかぽか叩いてくるようなモノ。

 確かにずっと殴られれば痛いし傷が残るかもしれないが叩いてくるものを一体一体確実に潰して行けば問題にはならない。

 

 数分後。そこには残骸となったゴーレム兵が散らばっていた。

 

「……まだまだ荒いなぁ。それでは雑兵は兎も角"勇者"等には苦戦するぞ」

「……わかっている」

 

 ゴーレム兵の破壊。

 最小の力で壊せと言われたがそれは達成できなかった。

 幾つか床や壁にへこみが出来ていたり、階段などは破壊されてしまっている。

 無論ディロンが本気ならば古代の遺産(アーティファクト)製の城だろうが木端微塵にできる。原型をここまで留めているのは力を制御していたからだ。

 だがもっと力を抑えていればここまでの破壊にはならない。

 事実としてディロンは一部制御をめんどくさく……苛ついたりして不用意に足を踏み込んだりゴーレム兵を掴み放り投げりした。

 

「……目的地は何処だ」

「ふむ。ここの丁度真上だな」

「そうか──ちょうどいい」

 

 掌を天井に掲げ、広げる。

 その先に魔力を集中させる。

 ただの魔力の収縮ではない。魔術として形成されていく。

 黒い光となり放たれる。

 射線上の物のみ。綺麗に破壊──消滅する。

 

 時間にして五秒未満。光が通過し城の天井部分まで到達する。

 

「よし、行くぞ」

「……お前はもう少し正攻法という物を知った方がいいぞ」

 

 ケントニスの忠告を無視し、跳躍。

 地面が陥没するもそれも無視し一瞬で頂上部分までたどり着いた。

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