殲滅戦争   作:Libro

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第41話

 玉座の間。

 ドワーフが懸命に仕掛けたトラップもゴーレム兵も精鋭騎士たちも無視し、天井を破壊しディロン達は広間にやってきた。

 たどり着いたのは玉座の間。

 輝いている。とでも言えばいいのか。

 長方形の長い長い部屋。

 端から端まで扉まで徒歩十分以上かかる程に巨大。

 柱は合計十二。それぞれに彫刻されている。

 槍を掲げた女。剣を掲げた全身鎧。弓を持ち、獣の顔を持つ者。

 多種多様な──善なる神々が彫刻された柱。

 最奥。玉座の後ろには玄関にもあった絵が飾られている。

 

 凄い、という感銘を受けた言葉を漏らしそうになるのを抑え、ディロンが言う。

 

「お前が王か?」

 

 玉座に座るはドワーフの王。

 他のドワーフと同じディロンの腰ほども無い身長。足まで届く髭。

 服は豪華な衣装。単純に素材がいいだけでなくデザインもまた優れている上、所々に金の刺繍やダイヤモンド等が使われている。

 頬杖をつき、"自分が王"と強く主張している。

 

「如何にも。余が地底の王。世界で最も古き血を持つ最古の王である」

 

 ドワーフの王が答え、立ち上がった。

 

「余はルイゼンベルグ・アリティ・レガン・フィルズ。答えよ。侵入者。何をもってして最古の都に踏み入れ──」

 

 ドワーフの王──ルイゼンベルグが名乗りを上げ、問いかけた。

 

「あっそう。死ね」

 

 回答は無い。そんなものしったことかとディロンが跳躍。

 一瞬。並の物なら認識できない速度。

 ルイゼンベルグは動じることなく、振り下ろされるディロンの拳を見て呟いた。

 

「野蛮人め」

 

 ガン、とハンマーで鉄を叩いたような音が響いた。

 狭い部屋に反響し、ディロンの耳にこびりつく。

見えない壁。それに阻まれる。

 

「あ?」

 

 防がれた、という事実にディロンが驚愕。顔を歪める。

 即座に次の一撃を放とうとするも、それより早くルイゼンベルグが動く。

 

 ルイゼンベルグが片手を上げ、呟いた。

 

「<衝撃波>」

 

 詠唱──あるいはワード。

 ディロンが何か把握する前に、ルイゼンベルグより衝撃波が放たれる。

 暴風の塊。見えない風がディロンに襲い掛かる。

 ディロンを吹き飛ばし、遥か遠く──十メートル以上吹き飛ばされる。

 何メートルもある玉座の向こう側。本来の入り口である扉に叩きつけら、扉にめり込む。

 

「……そう簡単にはいかんか」

 

 ディロンが力を入れ、扉を吹き飛ばすことで扉から脱出する。

 魔術を行使することで扉を破壊。さてどうするかと次の一手を考える。

 

 

「……今ので無傷か」

 

 ディロンはただ吹き飛ばされただけ。その姿に傷は無い。

 単純に何メートルも吹き飛ばされる風を受け、更に頑丈な扉に打ち付けられても傷は無い。

 それを確認したルイゼンベルグは対処法を考える。

 

(真面に戦えば勝ち目は無いな)

 

 それに対しディロンもまた考える。

 能力によるごり押しだけでは駄目だと。そこに思考を交えろと。

 王という地位は戦闘力を表す者ではない。

 例外として魔王という魔の王が居るがあれは例外中の例外。戦闘力と地位は直結しえない。

 だからこそディロンは容易く蹂躙できると高を括る。大方道具か何かを使っただけだろうと。

 確かに道具を使ったことに間違いはないだろう。ならばその道具をどうにかすれば問題ないはず。

 

(大方あの杖か王冠か──あるいは両方か)

 

 どちらだとしても関係ない。踏みつぶせばいいだけかとディロンは構える。

 

 王に求められるのは道具を使う力でも、人を使う力でもない。

 

 王とは国の頭。脳みそだ。脳みそは即断即決。

 何が最も自分()に取って最適化を判断する。

 

 だからこそ──ルイゼンベルグは切り札を切った。

 

「──あ?」

 

 ディロンが玉座の間で最後に見たのは、巨大な手の──指先だった。

 

 

 ■

 

 

「……む?」

 

 あのまま中に居るとゴーレムや兵士に殺される。そう判断したケントニスは外に出ていた。

 ディロンが空けた穴から飛び上がれば難なく外に出れる。

 今のディロンが本気を出せば端末に過ぎないこれは容易く破壊される。それは流石に困るとケントニスは城の外に出ていた。

 そしてそれが功を成した。

 

「……あれは──古代の遺産(アーティファクト)か? だが毛色が違う……」

 

 現れたのは巨大な手だ。

 何がどうやって収まっていたのかわからない程に巨大な手。

 王城よりも遥かに大きい──メートル換算にして500m程か。

 恐らくは右手。それが卵の殻を突き破るように王城から突き出ている。

 その突き出た衝撃か。ディロンがその手からはじき出され遥か彼方に飛ばされているのをケントニスは感知した。

 まぁあれは早々死なないからいいだろう。今はあれを知るべきだ。

 

 ケントニスはそう判断し卵の城から赤子の様に這い出るそれを観察する。

 最初に突き出てきたのは手だ。雛鳥が嘴で殻を破るように。嘴ではなく手で殻を破り去った。

 右腕の次は左腕。自身を守っていたのか。あるいは縛り付けていた城を容易く破壊する。

 城に手をかけ、罅を入れ破壊しその巨体を出さんとする。

 バキバキと城が瓦礫となり、中にいたゴーレムが崩れ落ちる。

 その中にドワーフはいない。瓦礫で死んだか脱出していたか。

 

「……なるほどなるほど。卵のようだと思ったが──そのまま卵だったか」

 

 城だったものの奥から赤い光が漏れる。

 二筋の赤い光。血よりも赤い光。

 

 雷鳴のごとく轟音が響いた。

 瓦礫が落ち不協和音を奏で、巨兵が動き大地を揺らす。

 

(ふむ。城が目算でだいたい500~700m程度。それを上回るとなれば一キロほどかね?)

 

 巨体。その一言で表すにはあまりにも大きすぎるそれ。

 ドワーフの国最後の切り札がその姿を現した。

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