殲滅戦争   作:Libro

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第50話

 

 宿場町を出て三日目。勇者一同はバギーに乗ってアルバ―ロ目掛けて突き進んでいた。

 移動は実に快適そのもの。移動手段がバギー……藤原と出雲もある程度慣れている車というのもありストレス無く進むことが出来た。

 更にはその移動速度。基本的に都市間の移動となれば馬車を使うのが多いがネボの個人資産であるバギーを使えば馬なら発生するあらゆる問題を無視できる。

 馬の疲労や餌代。馬糞の処理等々。

 問題が無いわけではない。魔物は何処にいても襲ってくる。何度か非行型の魔物や動物型の魔物の襲撃はあった。

 しかし全てをクレールの遠距離魔術で撃破し速度を緩めることなく進むことが出来た。

 動物型──初めて殺した魔物に近い狼等の肉食動物を真似た魔物が現れた場合。数度藤原と出雲は戦い撃破したり。戦いに慣れるために。

 

 最初は慣れなかったが二度。三度殺せば慣れてしまった。

 

 これは魔物が死んだ場合。欠片も残らないというのがよかった。

 肉を切った感触や直接向けられる殺意はあれど斬った後の感触や命を奪った後味というのが殆ど残らない。

 死ねば最後の言葉を呟くことなく灰となり消える。灰もまた少し経てば消える。ゲームの様に。

 慣れたからと殺して周る気には成れないが少なくとも殺すのに躊躇は無く。殺した後も普通に過ごせるようにはなったといえるだろう。

 

 

 ──そうして魔物を倒し。何度か宿場町に泊まり。一同は目的地にたどり着いた。

 

 

 

「──見えて来たぞ。あれが林業都市アルバ―ロだ」

 

「あれが……アルバ―ロ」

「一面の黄金色ね」

 

 

 少しやつれた藤原と出雲が呟く。

 流石に高級宿等早々なく。初日以外は普通の宿に一同は泊まった。

 これは"初日ぐらいはいいところの方がいいだろう"というネボの優しが幸いしたのか。疲労困憊といったところだ。

 何日もの移動。というのに慣れていない二人は疲労が溜まる。

 日本においては車や新幹線による移動は数時間──長くても半日で終わるのが殆どだ。

 三日も掛けて移動するなど初めてのこと。更には異世界ということも相まって精神に疲労も溜まる。魔物との戦闘もあったのだから。

 

 しかしその疲労を吹き飛ばす様な光景に二人は眼を奪われる。

 

 広大──それこそ地平線が見える程の領域に実る小麦。

 また少し離れればリンゴの木やジャガイモ畑。大豆の畑。更に遠くまで目を凝らせば田んぼの様な物やビニールハウスの様な物さえ見える。

 所々置かれた大きな風車や都市から流れ出る川の流れを使う水車等。日本では到底見られない光景。

 

 林業都市アルバ―ロ。クリセルダ最大にして周辺国家最大の農耕都市。

 林業という名の通り木材開発や加工もしているが現在では仮面乃人の影響で作物の方が有名になってしまったという少し悲しい過去を持つ一大都市。

 

「まずは中に入るぞ」

 

 運転しているネボがそういい。車を進める。

 街中に近く。また歩行者等も増えたため車は速度を落とす。

 周囲には馬車等の異世界らしい移動手段もちらほらと散見し始める。

 中にはバイクで移動する者もいるが少なくとも馬車の方が多い。

 

 そこまで車等の移動手段は珍しい訳でも無いのだろうかと。藤原と出雲は頭を悩ませる。

 

 速度を落としたことで風景をじっくりと見ることが出来る。

 何となく外に視線をずらせばクワを持ち麦わら帽子をかぶった者や荷車を引いて肥料を運ぶ者もいる。

 中には畑にてコンバインを使い小麦の収穫をする者やショートディスクを使い畑を耕す者も。

 共通するのは機械の様な道具を使うのは全員胸にドックタグをつけた冒険者であることのみ。

 

「……可笑しくないかしら。何で収穫と耕すのを同時期にやってるの?」

「確かに」

 

 言われてみれば。と藤原は出雲の言葉に疑問を抱く。

 よく見れば収穫も耕すのもバラバラ。ジャガイモやトマト等の時期的に収穫はまだであるはずの農作物等も水々しく実っている。

 収穫される小麦畑があればまだ成長途中の小麦すらある。単純に種まきをずらしていたにしては全てバラバラだ。

 それに作物は四季によって左右される。完全な管理下に置けるビニールハウス等なら兎も角この状態で作物をずらして育てるのが可能なのだろうか。

 

 その疑問はすぐさまクレールによって答えられた。

 

『神の奇跡があれば~多少の収穫のずれとか解消できるんです~作物を一気に成長させる奇跡とかありますし~』

「それに魔法だな。魔法も併用すれば連作障害等も無視できるし害虫被害も無くせる。まったく持って便利な世の中だよ」

 

「おぉう……こんなところでも魔法とか奇跡でるんですか。便利ですね……」

「個人の資質に依存する。というのを除けば日本どころか地球の技術上回ってるわね……」

 

 圧倒的な力を持つ個による発展はメリットも大きいがデメリットも大きい。

 地球においても知識人による急激な発展や新技術の発明というのはあるにはある。だがそれらは"それが居る"からこそ発展できる。

 極端な話その個人が死ぬなり病気で動けなくなりすればその技術は死ぬ。誰もわからない謎技術として消滅してしまう。

 現代では製法の失われた日本刀やダマスカス鋼等一部の技術者が居たからこそ成り立っていた技術は技術者が全員死んで失われた。

 

 この世界においてもそれが言えるが地球と違うのはそう言った個が生まれやすいというところだ。

 頻繁にある程度の──単独で都市を破壊出来たりあらゆる病気を癒す奇跡を扱える人材が湧いて出てくるからこそ出来る個人依存の農業技術。

 逆に言えばそういった人材が出てこなくなれば全ての技術が死ぬということだがそんなことは絶対に無いからこそここまで発展してきた。

 

「異世界すげえなぁ」

 

 未だに。異世界というモノを甘く見ていたのかもしれない──そのようなことを考えながら藤原は都市へ入った。

 

 

 

 

 

 

 ■

 

 

 アルバ―ロ都市内。宿屋の前にて。

 車を宿の駐車場に止め。一同は徒歩になる。

 

「車とか止めるところあるんですね……」

「近年は車型の魔道具で移動する奴も増えたからなぁ」

『最近じゃ駐車場問題とかあるらしいですよ~路上に止めたり~馬小屋に勝手に止めたりとか~』

「日本かな?」

 

 

「んじゃ。俺はギルドの方に話しとおしてくるわ。クレール。そっちは任せた」

『了解です~』

 

 そういうとネボはさっさと歩き去ってしまう。

 残ったのは藤原と出雲とクレールの三人。

 

(しまった。女子率が高い!)

 

 両手に花状態。ではある。だが異性経験が乏しい藤原は歓喜よりも困惑が勝る。

 

「それで。私たちはどうしたらいいのでしょうか?」

『そうですね~広場にでも行きましょうか~』

「広場に? 仲間の情報集めるなら酒場とかの方がいいのでは?」

『酒場とかそこら辺はネボさんが調べると思うので~私たちはそれ以外で探しましょう~』

「わかりました」

 

 クレールの言に従い一同は広場に向かって進む。

 その中藤原は異性による緊張よりも異世界という見慣れる風家による興奮が勝り緊張などどこへやら。

 

 街並みは王都に近い。大通りに商店が並んでいる。

 露天商の類は無く全て一軒家の店だ。店舗も単純な服や食料品。簡単なアクセサリーや書店等が並んでいる。

 剣や防具を売る店は見当たらない。恐らくは王都と同じように区分けされているのだろう。

 また最大の特徴は家が全て木造というところだ。王都の家等は木で柱などを作り石材で壁などを作り家としていたがアルバーロの都市は全て木材で出来ている。

 

「これ火事とか起きたら大変なことになりません?」

 

 昔に日本──主に江戸時代等では木造建築が主流であり。また数多くの問題もあった。

 その一つが火事。木材となれば燃えやすく一度火が付くと火は中々消えない。

 昔は消防車等の大量に水を用意する方法も無かった為時には火事周辺の家を壊すことで被害を収めるという脳筋対策をしていたりもした。

 

『昔は消防団等で対策してたらしいですが~最近の家はルーンによる強化が施されているので~まず燃えないんです~』

「凄い便利ですねルーン」

 

 革新的技術にも程があるのでは? と藤原は頭を捻る。

 

「……あの。思ったんですがルーンによる強化ではなく魔道具を使った強化──それこそ魔道具で車が作れるのならば家なども作れたのでは?」

 

 そこに出雲が疑問を口にする。

 

「……魔道具は使うのに才能が居るってことだけど……そこら辺どうなんでしょう?」

 

『あ~そうですね~話すと少し長くなりますが~』

 

 こほん。とわざとらしい咳の音を藤原と出雲に聞かせ。クレールが話し始めた。

 

『魔道具による家~それ自体は理論上可能です~ですがしたところで使うのが民間人~つまり魔術の才能が無い人間ではその力は完全に発揮されないんです~』

「発揮されない?」

『要するに無意味ってことですね~猫に小判。豚に真珠って奴です~幾ら魔道具にしても所詮は家に過ぎませんし~使うのが一般人だと力の一割も発揮できません~』

「えぇ……そんな物なんですか?」

『そういう物なんですよね~魔道具って~使える人間は使えますが使えない人間は一切使えないので~』

「では。魔術や魔法による強化はどうでしょう? 身体能力の強化みたいに強くするのは?」

『一時的な強化は可能ですが~永続的となると無理ですね~一時強化だと長く見積もっても一時間程度ですし~常に強化するとなると幾ら魔力があっても足りません~』

「じゃあ家を強くする、というのは無理なんです?」

『魔術。魔法では無理です~それは断言します~ですがルーンならば可能で~一度文字を刻めばほぼ永続的に効果を常に発動し続けるので強化が出来た。という訳ですね~』

 

 無論ルーンとて万能の技術という訳ではない。

 単純に鋭さや硬さ等の元の物質の機能の強化ならば兎も角冷気を発したり燃えたりするようにすれば追加で魔石を消費する。という欠点がある。

 だがその程度だ。基本的には誰でも使える為魔道具よりも利便性では上回っている。

 しかしながら利便性以外では魔道具が勝る。如何にルーンで強化した武具であっても其処らの魔術師が作った魔道具性の剣の方が強い。

 

 特注品の一点物が魔道具。

 

 既製品の大量生産がルーン。

 

「結構分けられてるんですね……」

 

 

 そのような話をしていれば目的地につく。

 広場──街の中心。

 中央には一際大きい樹木。力強くある木は迷宮都市アンファングの挿し木と伝えられている。

 そして大木の前には少女が一人。

 

「……アイドル?」

 

 出雲が少女を見て呟いた。

 言われて藤原も少女を直視すれば──成程確かに。アイドルに見える。

 ひらひらとした衣服を纏い。持参したであろう台の上で歌っている。

 ダークトーン──純色に黒を混ぜた色をベースにした衣装だ。日本で見かけるアイドル衣装が最も近い。

 ヒールを履き。膝下程度のスカートをつけ。マイクを片手に歌う様は正にアイドル。

 

「~~~♪」

 

 正し。歌の内容は違う。

 

 

「──戦士の心臓を竜は求める。竜の血は流れ。人の血は乾き──」

 

 

 それは竜騎士の歌。竜の背を追いし戦士を称える歌だ。

 

 気づけば二人は。その歌を聞き入っていた。

 いや二人だけではない。気づけば周囲の通行人すら足を止め。少女の歌を聴いている。

 

 遥かな昔。神が地上に近かった時代。超常が日常であった日々。少年は空を駆ける竜を見た。

 その翼に。その背中に。その力強き瞳に。少年は憧れた。

 竜にあこがれ。竜の背を追う少年は何時か何処かで。剣を手に竜と対峙する。

 それは両者にとって望まぬ戦闘。不可解な遭遇戦。

 古の砦にて。狂い傷ついた竜と対峙する少年は。竜と戦い。相打ちと会いなった。

 如何に邪悪なる勢力と戦い。邪悪なる神に来るされた竜は強大。人の身で叶う道理は無く。

 されど。憧れ止まぬ少年は竜を食い止める。

 

 しかし二人は満身創痍。傷などついていない場所が無く。

 そこに。竜に止めを刺さんと邪悪なる先兵がやって来る。

 

 

 ──竜は最後に正気を取り戻し瞼を閉じた。せめて己が傷つけてしまった少年を守らんと。少年の前に出。翼を広げる。

 

 ──少年は竜の好意を無下にし。竜の背から飛び出した。

 

 ──おい。竜。こんなところで死ぬつもりなのか。

 

 ──死ぬつもりはない。だが抗えぬ。奴らの狙いは我一人。我が死ねば奴らも消える。おぬしは隠れておれ。

 

 ──断る。

 

 ──は

 

 ──傷だらけの竜と。傷だらけの人間一人。二人あわせりゃどうにかなるだろ。

 

 少年はにこりと。獣のような笑みを浮かべ剣を構える。

 

 竜にとってそれは不可解な行動だった。竜にとって人間とは守る者。脆弱な吹けば飛ぶ生命。

 だからこそ。竜は少年を傷つけた罪に罰を求め。抗う気力が無かった。

 

 しかし。その傷つけた少年は。自身を守らんと剣をその手に握る。

 

 ──なんと愚かだったのか。人は既に。守られるだけではなかったというのに! 

 

 

 そこからは反逆劇。竜と人が一心同体。竜の力を付けた少年と。人の力を手にする竜の戦い。

 邪悪なる神々の先兵を打ち払い。竜の翼で空を駆け。塔の魔術師に行き先を尋ね。空の魔女より力を得る少年と竜の物語。

 

 

 

 ──そうして少女が歌うこと数分。気づけば何十人という人だかりが生まれ。誰もが少女の歌を聞き入っている。

 男も女も老人も。子供も剣を持つ冒険者も。全員が聞き入っていた。

 

 

「──ご清聴ありがとうございました!」

 

 最後に。少女がそういうと拍手が起こった。

 

 

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