殲滅戦争   作:Libro

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第51話

 

「あっ出来ればおひねりの方お願いします!」

 

 歌っていた少女は台からおり。料金を求める。

 何人かは言われるがまま。代金を少女が手に持つ籠に入れていく。

 あれだけの人だかりが数分とかからぬうちに去っていく。

 代金はそこそこ入ったようだが籠の半分程度。中身は銅貨や銀貨──貨幣としては価値の低い物ばかり。

 大半が銅貨──日本円にして一枚100円程度の価値なため一週間程度の生活費にはなるだろう。

 

『人もはけましたし。彼女に聞きましょうか』

 

 とことこと。クレールが歩き籠を手に持つ少女に近づく。

 惚けていた二人は慌ててクレールについていき。少女の前にたどり着く。

 

『こんばんは。お嬢さん。少し話がしたいのですがよろしいでしょうか』

 

「は、はい?! え? これ」

 

 少女がクレールの声──頭に直接響く念話に驚き体を跳ねる。

 

『私諸事情で声が出せないので。申し訳ありません』

「あ、いえ。別に……ていうか凄いですね」

 

『これでも高位の冒険者なので──それはそれとして。リートさん。少々お話したいことがあるんですがよろしいでしょうか?』

 

「──なんで私の名前を」

 

 少女──リートがクレールの言葉に驚き。動きを止める。

 

 

 

『あなたのことは有名ですよ? それと自己紹介がまだでしたね。私はクレール。こちらは──』

「藤原礼一です」

「出雲大和です」

 

 二人は軽く頭を下げ。自己紹介をする。

 

「あ。これはご丁寧にどうも。私はリートです。吟遊詩人──アイドルを目指してます」

 

 二人にならない。リートもまた頭を下げる。

 

「それで。お話ししたいことってなんですか?」

 

『それは──』

 

 ちらり。とクレールが顔を藤原に向ける。

 

「あーと。自分たち人を探してまして。タリという人なんですが……」

「タリ? ……それって爽やかそうなイケメンで。ムキムキマッチョな人ですか?」

『その人ですね~』

 

(そんな人なのか……)

 

「──じゃあ。私もタリさんに用事あるので。よかったら一緒についてきますか?」

 

 リートはそう。提案した。

 

 

 

 ■

 

 

 ──アルバ―ロ郊外。

 作物実る地帯を藤原と出雲。クレールとリートは歩く。

 最後の一人。リートはその小さな体で荷車を引く。

 リタに用事がある。というリートは何処からか荷車を持ってきたのだ。

 その荷車にはこれでもかという程に袋が積まれている。

 中身は主に肥料や農薬。錬金術師が作り出した農業用の消耗品である。

 神の奇跡や魔法による農業促進技術は個人に依存する。如何に数が多いとはいえこの広大な農地を全て人の手で済ますには人手が足らずこうして肥料なども使う。

 

「……あの。よかったら俺が引きましょうか?」

 

 見るからに重そう──というか実際重い荷車を引くリートに対し藤原がそう提案する。

 

「大丈夫です! これが私の仕事なので!」

 

 それに対しリートは何ともないようにふるまう。

 いや実際になんとも無いのだろう。汗一つかかず普通の速度──藤原や出雲と同等の速度で歩いている。

 

『駄目ですよ~藤原さん~これが彼女の仕事なのですから~』

「そういうことならば……」

「それと。聞きたいことがあるんですがいいですか?」

『はい。どうぞ~』

「なんで私の名前知っているんですか?」

 

 理人が何故。自身の名を知っているのかとクレールに尋ねる。

 そういえばそうだ。知り合いという訳でも無さそうなのに何故名を知っているのかという疑問を藤原と出雲は抱く。

 

『あなた~結構有名ですよ~七十年ぶりの迷宮踏破者なんですから~』

「……迷宮踏破者?」

 

 聞きなれない単語に出雲が疑問を口にする。

 

「あー、その。したというか……」

 

 ごにょごにょと。言いにくそうにリートは言い淀む。

 

『迷宮という現行人類では解析不能の存在があるのは~お二人も知ってますよね~?』

 

「はい。アンファングや宵闇(よいやみ)の塔。レグサス・グラープ。といった迷宮が存在するのは教わりましたが……」

 

 

 迷宮──神話の時代の遺跡。

 遥か昔。最低でも千年──あるいは一万年以上前の時代。

 神々が直接作り出した前哨基地。あるいは人が作り出した避難地。それが迷宮だ。

 中には神話の時代の先兵や自動防衛のモンスター等も存在する非常に危険な地。

 だが中には古代の遺産(アーティファクト)という今の人類では作り出せない魔道具が数多く眠る為攻略するだけの価値はある。

 

 その完全攻略は。今の人類の管理化(・・・・・・・・)に置かれることを指す。

 

 出現する魔物。生成される古代の遺産(アーティファクト)。迷宮の階層。

 それらすべてが。人類が管理できる状態。

 

 それがなされた迷宮はたったの三つ。

 

 アンファング。大森林。火山。砂漠と幾つもの世界が閉じられ、冒険王が最初に踏破を成した迷宮。

 

 宵闇の塔。無限に続く暗闇。進んでも進んでもあるのは闇の迷宮。

 

 カインザーン。永遠の闘技場。多種多様な魔物と闘技し。百の勝利を収めなければ脱出できない迷宮。

 

 

 それ以外にも先度出雲が上げたレグサス・グラープやコプラーンコメイト等多数迷宮は存在するも管理状態まで出来たのはたったの三つ。

 その三つの内の一つ。カインザーンこそがリートが踏破を成した迷宮。

 となれば確かに有名人だ。クレール等の高位冒険者となればそういった情報に詳しくて当然である。

 

「まぁその。踏破をしましたが。目的とは違ったので……」

「それで冒険者を辞めたと?」

『それほどの偉業ならばら~富も名声も思いのままだったでしょうに~』

「あーその。富は欲しかったんですけど。私。アイドル目指してるんです」

 

「……アイドル?」

「はい! アイドル目指してます!」

 

 キラキラと目を輝かせて。リートは言う。

 

「この世界にもアイドルいるんだ……」

 

 出雲が少し残念そうにそう呟く。

 せっかくの異世界なのに日本要素が余りにも強い。異世界ファンタジーとは何だったのか。

 

「それでその。アイドルするにもお金が要るので。冒険者やって稼いでたんですが……」

「お金稼いでたら迷宮を踏破したって。運がいいのか悪いのか……」

「まぁ。運は悪いんじゃないですかねぇ。踏破した途端変な人とかに絡まれる様になりましたし」

『まぁ七十年ぶりの踏破者ですし~しかも前例は冒険王と精霊術師~それできて三人目となるとまた何か特別何じゃ無いかと期待も来るでしょうし~』

「そうなんですよ! 私はただアイドルなりたいだけなのに急に"君は英雄に成れる"とか"俺にはわかる。君は世界を変える力を持っている"とか! 

 私はただ平和に歌を歌うアイドルになりたいだけなんですよ!」

 

 勢いよく。リートがそう零す。

 

「って。すみません。初対面なのにこんなこと話しちゃって」

「いやまぁ。問いかけたのはこちらなので……」

 

 そうして雑談しながら歩くこと数分。目的地にたどり着く。

 

 風車が風を受け。ぐるぐると回るその下に。目的の男は居た。

 青年──あるいは青年から壮年に変わりかけているころか。

 更には顔がいい。この世界では基本的に美人しかいないが。それでもなお目の前の男は顔が良い。

 地球では顔だけで食っていけそうな程に。

 金の瞳は鋭く。目を合わせれば相手を威圧するかのように思える。

 が金の髪が靡く様は一枚絵の様で少女漫画の様に相手を和らげる。

 服の上からでもわかる筋肉質な体。外で作業しているにも関わらず肌は焼けておらず。白い。

 ベンチに腰掛け。女性と話している。

 

「──やはりB地区から農薬を撒くべきだな。他は神官の奇跡で対処しよう」

「わかりました」

「あとは。今年は害鳥も多い。狩猟ギルドの方から数人だして狩ってもらおうか。

 狩りすぎると今度は作物が駄目になるからそこら辺の調整も頼む」

 

 事務員の様な女性と話す。様は正に農民。

 

『随分と~様変わりしましたね~』

 

 その会話に。クレールが割り込む。

 念話──一定範囲の存在に問答無用で言葉を伝える魔術を用い。男に話しかける。

 

「ん? お前は……クレールか。お前は何時も変わらんな」

 

 よいしょ。と男が立ち上がる。

 

「で? クレール。勇者を引き連れて。俺に何の用だ?」

 

 最強の戦士。タリが現れた。

 

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