殲滅戦争   作:Libro

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第54話

 

(これが勇者の力か……)

 

 上半身だけを回転させたタリが。もう一度体を回転し元の位置に戻す。

 そのまま自己再生の魔術を使い体を治す。

 ぐじゅぐじゅと何かが腐敗するような音と共に体の傷が塞がる。

 背骨事回転したため体のダメージは小さくはないがこの程度では死に至らないからこその最強の戦士。

 それこそ一瞬で頭部丸ごと消滅でもさせられない限り死ぬことは無いだろう。

 

 再生しながら。勇者の力について考察する。

 魔力はこの世界の全ての生命が有してしまったエネルギーだ。

 個人での保有量に差はあれど。虫から鼠。赤子から老人までどんな生命であろうと有している。

 例外は神の眷属。聖獣と呼ばれる穢れ無き生命。神話に登場する竜や精霊は魔力を持たず。変わりに神の力である神力(しんりき)を持つ存在。

 藤原から感じたのはそれだ。何故か魔力ではなく神力を持っている。

 

 その力の行使自体は左程問題ではない。問題は祈りの言葉が無かったことだ。

 

 神官。神の力を行使する者達。神を信仰する者も同じようなことは出来る。

 

 だがそれは神が行使するからだ。

 

 行ってしまえば神官は神に力の申請をしているに過ぎない。だれだれに。何処かに。何時。神の力を行使してほしいというお願いだ。

 それを神が受理して実行するだけ。神官は何の力も持たない一般人に過ぎない。

 だからこそ。祈りという神への申請なく神の力の行使を行った藤原の──勇者の異質性に目を開く。

 

「……これが勇者か」

 

 手を抜いていたままでは。負けていたかもしれないとタリは勇者に対する認識を改める。

 無論本気ならば軽く殺せる程度だ。遠距離から飛ぶ斬撃を放ち続けるなり武器を持って殺す気で挑めば殺せる程度。

 だが手を抜いていたとはいえ元Bランクにして最もAランクに近かった自分が本気を出さざる負えないという相手に対し評価を改めた。

 

「ちょっと藤原君! 大丈夫?」

 

 どたどたと。少女──出雲が藤原に駆け寄る。

 

「あ、ああ大丈夫……久しぶりに腹にいいのもらっちゃった」

 

 対人戦はしてたから大丈夫だと思ったが、と藤原が付け加え出雲が馬鹿、と呆れる。

 藤原と出雲は王城に居た。そこでは戦闘訓練もしていた。

 流石に上半身だけを回転してくる等という頓智気戦法をしてく相手は初めてだったため。負けてしまったと藤原は悔しがる。

 

「──ま。何はともあれ、よろしく頼むぞ。勇者様」

 

 倒れた藤原に駆け寄り。手を差し伸べる。

 

「──こちらこそよろしくお願いします。タリさん」

 

 その手を。藤原は強く、強く握り返した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■

 

 

 

 

 

 

 

 ──同時刻。クリセルダ国外。

 

 がしゃがしゃと。何処が機械めいた音を鳴らしながら進む者が居た。

 巨大な体。目算にして二十メートルは優に超える楕円形の巨体。

 楕円形の体からは幅三メートルを超える巨大な手が数えるのも馬鹿らしい程に生え。巨体を支え草原を駆ける。

 草原に生える木々をなぎ倒し。野生の獣を踏みつぶし。異形は前へ前へと進み続ける。

 

 その巨体の上に。三つの影があった。

 一つは玉座に座り、頬杖を突き王の如く振る舞う。

 一つはふわふわと浮遊し。参謀の如く玉座の者に従う。

 一つはごろごろと巨体の上を転がり自由に動く。

 

「で? この先に何があるというんだ」

 

 多少苛ついた声と共に。玉座に座る者が一人疑問を発する。

 その者もまた異形。黒い肌に黒い髪というぱっと見では人間らしいが体の至る所に生えた鱗と星空映る瞳が異形であることを主張する。

 

「戦力は整った。次に得るべきは武具だよ」

 

 その問いに答えたのも異形。

 ピンク色の触手の塊。それがフードを被り知的に振る舞う。

 

「武具ですか? なら潰したドワーフの国から見繕って来ましょうか?」

 

 最後の一人。甲殻類やカブトムシ等を思わせる殻に覆われ。鋼鉄を作鋭い爪を持ち。

 鉄を弾く硬い甲羅。更には口だけの頭部を持つ長身の異形が寝そべりながら話しかける。

 

「ドワーフの武具は均一化され、突出した物が無い。得るべきは強力な武具──魔道具の類だよ」

「ほーん」

 

 興味なさそうに玉座の者──ディロンが浮遊するケントニスに返す。

 

「えーと。今向かっているのは……あぁ。ここですか」

 

 何処からか。ウードが地図を取り出し確認する。

 取り出した地図は勿論ユーカリの地図だ。あらゆる情報の詰まっている地図。

 

「今向かっているのは何処だ?」

 

「パサート。かつてはこの大陸最大の交易国家として名を馳せ。一夜にして滅んだ最小の国さ」

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