殲滅戦争   作:Libro

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第60話

 

「ここか」

 

 空の上。地上など見えぬ雲の上で男がポツリと言葉を呟いた。

 長身。二メートルの大男。その黒い肌には所々鱗が生えている。

 瞳に浮かぶは星空。言うまでも無く魔神ディロンその人だ。

 その後ろには浮遊する本となったケントニス・ヴィッセン。たった二つの厄災が空に浮かんでいる。

 

「行くぞ」

『了解した』

 

 背後に浮かぶ本に一声かけ、地上に向けて落下する。

 浮遊を辞めたことによる自由落下。地上に近づくにつれて加速していく。

 

 そうして地上に近づけば見えてくるのは人の街。特にこれと言った特徴も無い街だ。

 あえて言うならば街の外周──城壁の外側には簡易的な教会と避難民の為のテントがあるぐらいのもの。

 

 商業都市シュテーレンからの避難民。それが集まっている。

 

 英雄級──冒険者ランクにしてBランクやAランク相応の者はただの戦闘の余波で地形を変える。

 ならばその街の前で戦えば街等どう頑張っても消し飛ぶか、あるいは瓦礫の山に変わる。いや、瓦礫になるだけならマシと言ったところか。

 そういった二次被害から守る為、人々は街を捨て逃げ出した。

 

 ただ冒険者や魔術師、古代の遺産(アーティファクト)を振るえば街の再建等数日で終わる。これまで暮らして来た家や家財道具が失われるが命には代えられないと民たちは避難を選択した。

 それでも何人かは捨てられぬと残ったがそんな人間は戦う冒険者や兵士たちにとってはどうでもいい存在だ、残ったのなら何があっても自己責任。守ることはしないし何ならいざという時はおとりとして使う腹積もりでもある。

 

 だがこの場合は、ある意味シュテーレンに残った者の方が運が良かっただろう。

 

 ズドン、と遥か上空から落下したにしては軽い音と共にディロンが街の結界に着地した。

 結界は魔のモノを弾く。それはディロンとて例外ではない。

 降りたったのは街の上。ドーム状に展開された結界の上だ。魔の存在であるディロンは結界の先を見ることは出来ず、街中がどうなっているか把握できない。

 だがそんなものは関係ない。破壊してしまえばいい。

 

「ケントニス」

『わかっている』

 

 ディロンの声に合わせてケントニスが自身の体──本をバラバラと捲る。

 一枚のページを取り出し。そこに込められた魔術を発動する。

 

『壊れる世界』

 

 ディロンが結界に触れ魔術を発動する。

 ディロン本人に魔術の才は無い。出来るのは単に魔力を込めて砲弾として放つかレーザーみたく打つかの二択。

 だがケントニスという邪神の助力があれば努力していない凡夫であろうと超一級の魔術を扱える。

 ケントニスが司るは記憶と記録。ならばこの世界において過去発動された全ての魔術・魔法を扱える。

 発動したのは二百年以上前にとある大悪魔が使った破壊魔術。本来何者であろうと拒む禁則地へ入る為の魔術。

 

 黒い魔力が純白の結界に汚染され削られる。

 薄い紙に墨汁を垂らしたように黒くなる傍から破られていく。

 作った穴から街の中に侵入し避難民が集まる広場に降りたった。

 

「な、何者──」

 

 何か言いかけた兵士に詰め寄り頭部を掴み握り潰す。

 この間に一秒未満。住民は反応できない。

 

『串刺し処刑台』

 

 追加でケントニスが魔術を発動。

 地面から黒い槍を生成し対象を正確に撃ち抜く魔術。

 広範囲に影響を与える魔術だ。その範囲はディロンが降りたった広場全域。

 

「いいね。実にいい」

 

 血の雨が広場に降り注ぐ。

 

 赤子から老人まで。男女問わず見境なく尻穴から口まで綺麗に槍で貫かれて死に、体から血を噴出する。

 死んだのは全員ではない。広場に居た人間の四割程度だ。そして恐怖が伝播する。

 

「ば、化け物だぁぁぁ!」

「にげろぉぉ!」

 

 人々が恐怖の声を上げ、しどろもどろに逃げ出す。

 そのうちの何人か、兵士や冒険者は武器を手に立ち向かおうと一瞬止まる。

 

「蹂躙劇と参ろうか」

 

 立ち向かおうとする兵士を、逃げ出す市民をディロンは虐殺する。

 頭部を掴んで握り潰し、体を縦に割いて殺し、相手を掴み生きたまま棍棒として振るい殺す。

 

 殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。

 

 恐怖で顔を歪める老人を。生まれたてで何もわからぬ赤子を。子を守らんとする親を。殺す。

 

 殺して殺して殺して周り。その数が百に届こうとしたとき。

 

「──あ?」

 

 ガギンと、青年を殺そうとした自身の腕が剣によって止められた。

 

「誰だ。お前」

 

 その剣を握る者を。ディロンは強く睨む。

 

 殺されかけた青年は自らを助けた者を見上げ、目を見開く。

 

「何者か、か。久しく聞かれてないが──そうだな。あえて言うなら勇者の仲間かな?」

 

 全身鎧の上からでも分かる筋骨隆々の体。

 手にするのは宝石がつけられた実用性度外視に思える大剣。

 勇者の仲間にして最強の冒険者ネボがディロンに立ちはだかった。

 

「ああそう。死ね」

 

 正しディロンにそんなことは関係ないし気にもしない。名乗りを聞くだけ聞いて右耳から左耳へ素通りさせる。

 そして殴る。ド素人の腰の入ってない拳がネボがかがけた大楯に阻まれた。

 

「……あ?」

 

 防がれた、という事実にディロンが眉を顰めた。

 如何に技術の無い拳であろうとディロンの肉体は魔神の物。単純な肉体能力だけで言うならそこらの冒険者等容易くミンチになる。

 実際にネボと同ランクであるはずのBランク冒険者に同じように拳を当てた時は盾が拉げて全身が強打された。なのにネボはそうなっていない。

 

「いきなり酷いな!」

 

 ネボはそのままシールドバッシュ。ディロンを吹き飛ばす。

 

 攻撃力ではなく吹き飛ばしに重きを置いた一撃。真面に受ければ空の彼方まで飛ばされるそれをディロンは気合で受け止め、地面に足を突き刺すことで耐える。

 ガリガリと突っ込んだ足が地面を抉り、十数メートル程奥に飛ばされることでディロンは止まる。

 

『気を付けろディロン。こいつの名は"ネボ"全裸戦士として知られる冒険者だ。強いぞ』

「あっそうどうでもいいわ。殺すことに変わりはない」

 

 ケントニスに突っ込みそこから剣を取り出し構える。

 構えると言っても全然なっていない。右手で握っただけだ。

 

「……戦う前に聞きたいんだが、お前は何だ? 魔王じゃないみたいだが……」

 

 ネボの疑問にディロンは顔を歪めるも、目的を思い出し答える。

 

「……俺はディロン。魔神だ。ああ、覚えなくてもいい。どうせ死ぬからな」

 

 は、と鼻で笑うディロンに対しネボはニヤリと笑う。

 

「そうか。俺も覚える気はない。どうせここで殺すからな!」

 

 叫びと共にネボが突進し剣戟を放つ。

 ディロンはそれを魔神の体の動体視力と反射神経で認識し腕を盾の様に構えて防ぐ。

 衝撃全てを受け止め、ディロンは空の彼方まで斬り飛ばされた。

 

「……は?」

 

青い空。先程までいた街が豆粒の様に見える程の空高く。その事実を受け止めきれず一瞬思考が停止する。

 遅れてケントニスが浮遊してやって来る。特定の対象への追従魔術をもって高速移動してくる。

 

「ここまで吹き飛ばしたのか!?」

「そうだよ」

 

 ディロンの答えが来るはずの無い問いに飛翔してきたネボが答えた。

 今度は防ぐことも出来ず。その胴体を斬られまたも吹き飛ばされる。

 

 砲弾の如く飛ばされる超移動。衝撃波(ソニックブーム)をまき散らし轟音と共に更に遠くへ着弾される。

 弾着点は被害甚大。クレーターが生まれ街道が消し飛んでいる。

 

「クソ虫が……!」

 

「……全然ダメージ負ってねぇのな。笑うわ」

 

(いや笑ってる場合じゃないんだが)

 

 街から何十キロも離された地。視力を強化しても薄っすらとしか見えない程に遠い地にディロンを吹き飛ばしたネボは考察する。

 

(斬ったダメージはあるが着弾によるダメージは無いな。亡霊(レイス)系みたいな物理攻撃の軽減か? 

 それよか斬ったってのに薄皮一枚しかきれてねぇ。吹き飛ばしに威力最多にしても硬すぎる)

 

 ネボは何も考えず飛ばした訳ではない。街等で戦えば周囲への被害は甚大。それを防ぐ為に遠くまで飛ばした。

 威力を落としていたとはいえその剣はBランクの冒険者の中でも最高位。勇者の仲間として選抜される者の剣だ。それなのに薄皮一枚切れる程度というのは余りにもふざけている。

 更には目に見える速度で斬った個所が治っていく。

 

(おまけに再生持ちか。めんどくせぇ)

 

 再生能力には二種類ある。

 一つは種族としての特性。吸血鬼や上位魔族に分類される者が持つ自動再生能力。

 もう一つは単純な自己再生系の魔術の行使。

 この場合前者のが厄介だ。意識しなくとも発動する再生能力を持つ者は頭部が吹き飛ぼうが全身を滅多切りされようが再生する。

 

(どちらでも関係ないか。ガス欠まで斬りまくればいい)

 

 ただどちらにしても魔力を消費するというのは共通している。ならば死ぬまで殺せばいいとネボは判断する。

 

「ケントニス」

『はいはい』

 

「──ケントニス?」

 

 有名な、それこそ高位冒険者として活動すれば何度か名前を聞くほどにネボは驚愕した。

 

『破滅の刃』

 

 一手。行動が遅れた。

 

 ケントニスの発言と共に空に巨大な刃が生まれる。

 柄も何も無い黒い刃だけ。ただしサイズは十メートル以上。

 

「死ね」

 

 その一言と共に刃が振り落とされる。

 ネボは受けること無く横に飛ぶことで回避。

 回避しても余波までは避けれない。衝撃波と土埃がネボを襲う。

 

 土埃に紛れるように。ディロンが突っ込む。

 

 ディロンは魔神だ。その能力は多岐に渡るうえ幾つかは概念的な要素を持つ。

 移動阻害無効。己の移動を阻害する全てを無効化する。沼地だろうと足元の悪い森の中であってもただの平原と変わらぬ移動が可能でありあらゆる拘束を無視できる。

 視界阻害無効。己の視界は常に正常。土埃だろうが閃光の中であろうと光の無い暗闇だろうと眼球がある限り真昼間の澄んだ空気と同じ視界を持てる。

 その他を上げればきりが無いが。今回活躍したのはこの二つの能力。クレーターで足場が悪くなったのを移動阻害無効で無視し土埃は視界阻害無効で無視した。

 無論本人にこの能力はわかっていない。”なんかよくわからんが出来る"という程度の認識。

 

 そしてまた、ネボも同じ能力を持つ。

 

 ネボはキャリア十年以上の大ベテランだ。となれば誰よりも多く迷宮に潜り誰よりも多くの古代の遺産(アーティファクト)を会得している。

 タリ愛用の無限の収納箱(インフィニティ・ボックス)だろうが勿論持っている。古代の遺産(アーティファクト)は別にオンリーワンという訳ではないのだから。

 ネボの場合は概念能力ではなく単純な道具の能力に過ぎないためそれ以上の道具や能力を使われれば阻害されてしまうが使用者がネボかつ古代の遺産(アーティファクト)となればまず阻害されない。

 

 馬鹿正直に一直線に突っ込んできたディロンに、ネボは大剣を振るい迎撃した。

 

 綺麗に頭部に命中。兜割が当たる。

 

(硬い!)

 

 本来ならその体ごと両断しても可笑しくないネボの剣は。ほんの少しディロンの頭部を斬るだけに終わった。

 いや、少し斬れた時点で称賛していいだろう。魔神といういわば邪悪なる神々(ゼーベ)とほぼ同格の存在に対し神の祝福を受けた訳でも数奇な運命に囚われた者でもないのに傷を与えれた時点で。

 

 そしてディロンは己の頭が斬れたこと等認識できない。魔神の体に痛覚等無い。"なんか頭に剣当たってるな"程度の認識だ。

 何も考えず口を開き。魔力を集中させる。

 口の中に魔力の球体を生成。黒く輝く光体が生まれると同時に放たれる。

 

「しまっ!」

 

『魔神の閃光』

 かつて街で放ったそれと同じ攻撃をディロンが放つ。

 効果は単純な破壊の光。特にこれと言った特別な能力は着いていないそれはただのエネルギー砲だ。下手な特殊効果付きの攻撃よりも威力だけは高い。

 ネボが吹き飛び、射線上の地面が消し飛び、遥か方の山を抉ってようやく光は収まる。

 

「……化け物が」

 

 そう呟いたのは。ディロンだった。

 

 地面が消えて森が吹き飛び山が抉れる光線を。ネボはその身一つで耐えきった。

 紛れもなく人外の領域。Bランク最高位と称される怪物だ。

 

 地形への被害は甚大。"さっきまでここは何も無かった"等と言っても誰も信じないような大渓谷が生まれている。

 直径にして三キロ。距離にして百キロをは優に超える大被害。

 

「こっちの台詞だ」

 

 大楯を構え何とか防いだネボはディロンの力を見誤っていたと舌打ちをする。

 これだけの被害。地形への影響を及ぼす破壊攻撃。それだけならばネボにもやろうと思えば出来る。

 だが問題なのはディロンから感じる魔力が一切変わっていないということ。これだけの攻撃をしたのに消耗していない。

 

(流石に無限は無い……はず。あっても莫大すぎて量がわからんとかだろ)

 

 若干の楽観を含めた感想だが。そうでも思わないとやっていけないとネボは剣を構えて突撃する。

 ただの突撃ではない。移動で衝撃波が発生する程の超高速移動。速度換算にして初速はマッハ3を超える。

 それに抵抗しディロンも翼を生成し飛翔。戦場は空に移る。

 

 飛翔したディロンを見てネボもまた飛翔。英雄級ならば空など飛べて当然。

 

空を舞う二人は速度を上げる。時速換算にすれば数値が阿保みたいな速度をもって上に下に左右に、縦横無尽に飛翔する。

 

『魔弾乱舞』

 

 そこからディロンが近づけさせまいと魔術を行使。人間代の大きさの球体を生成しネボ目掛けて放つ。

 秒間百を超える弾幕。ネボは反転しディロンから距離を取ろうとするも今度はディロンが近づく為に翼を動かす。お互いの距離は変わることなく空を移動し続ける。

 

 放った魔弾はネボに当たることなく空を飛んでいく。時折地上目掛けてネボが移動したりするため魔弾も地上に着弾する。ディロンの魔力を考えれば射程はほぼ無限。ネボが避けたことによる被害が発生する。

 

「ちょこまかと!」

 

 玉が当たらないことに苛つき始めたディロンが叫び剣を手に飛翔を開始する。

 対しネボも近づけさせまいと魔術を行使。氷の槍を幾多も生成し放つ。

 

 それに対しディロンは──何もしない。何かしら防ぐ為の魔術行使も回避もせず。ただただ突っ込んだ。

 

「は?」

 

 その行動にネボはあっけに取られる。常識的に考えれば弾丸の雨に突っ込む様なモノだ。無事で済むはずがない。単なる自殺行為。

 しかしながらディロンは魔神。常識など通じぬ超越者。

 

 全てその身で氷の槍を受け止め──無傷。まったくもって問題無し。

 

「そんなのありかよ!」

 

 成程確かに理にかなっている。

 受けても無傷で済むならば態々防御の魔術を使う必要も回避する必要も無い。

 若干の納得をしネボは突っ込んでくるディロンに対し剣で迎撃をせんと構える。

 

 対しディロンも剣を構える。と言っても全然なっていない素人の構えだ。

 

 距離約三メートルまでディロンがネボに接近し剣を──解放の剣を振るった。

 それに対しネボは剣で受け止める。

 すっと、己の剣が豆腐か何かのように軽く斬られたのを視認し、咄嗟に横に移動した。

 

「ちっ」

 

 舌打ち共にディロンが剣を横向きに変え体全体ごと回転。ネボはそれも回避する。

 

(あの剣。厄介だ。こっちの力無視して斬ってきやがった)

 

 己の剣が軽く斬られた。ほんの少し、一センチにも見たない程度の損傷を把握したネボはディロンが扱う剣の能力を正確に把握した。

 

 自信の現れでもあった。己の剣が容易く斬られるということは相手の剣が特別なのだ、という圧倒的な矜持。

 

『断罪の輪剣』

 

 突如ディロンからリングが現れる。人一人包んでなお余る輪だ。

 そのリングの周囲には剣──武骨な、何処にでも売っている様な装飾も何も無い剣が付いている。

 

 ぐるん、と勢いよくリングが回転を始めた。

 そして膨張。スケールが大きくなりネボに襲い掛かる。

 

「効くかそんなもん」

 

 それをネボは剣を振るうことで破壊。破壊された輪が砕け散り灰となって消えていく。

 

「クソ虫が」

 

 即座にディロンは飛翔。左手で殴りかかる。

 

 ネボはそれに対し剣で防ぐ。拳と剣だというのに硬い金属音が鳴り響いた。

 

(硬い!)

 

 ディロンが右手に持つ剣で斬りかかり、それをネボは上に飛翔し回避する。

 

「ちっ──!」

 

 舌打ちと共に。ディロンが魔力を発する。

 

(身体能力は俺のが上だがほぼ誤差。ならここから引き離す!)

 

 戦略。戦術。戦闘の基本。それら全てを知らぬディロンが取れる手法はただ一つ。身体能力(ステータス)任せのごり押し戦法。

 これまで戦って来た敵は全てディロンより格下。吹けば飛ぶ塵芥に過ぎなかった。

 

 故に、戦い方を知らない。

 

 これまでごり押しで勝てたのだから、それ以外を取れない。

 

 ディロンが取った手法は単純な身体能力の強化。ネボやタリ。他の一般的な冒険者でさえも使っている事故強化の魔術の行使だ。

 これまでディロンは強化をしたことは無かった。素の身体能力で突破出来たから。ここで一つ札を切った。

 

「……マジ?」

 

 ディロンが自己強化の魔術を行使した事に気づいたネボが思わず言葉を零す。

 自己強化はあり触れたモノだ。誰であっても使える。魔族であっても。

 

 更に強化魔術は元の身体能力に依存して上昇率が上がる。貧弱な者が自己強化しても毛ほども変わらないが、筋骨隆々の大男が強化すれば大岩を軽く砕く。

 

 ならば、素の身体能力で──魔術で自己強化し魔道具で強化しているネボと同等の身体能力を発揮していたディロンが更に強化すればどうなるのか。

 

「……こりゃちょいと、ヤバいかもな」

 

 たらり、とネボは冷や汗を流した。

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