殲滅戦争   作:Libro

75 / 87
第75話

 

『ディロン。能力の実験をしないか?』

 

 ──そんな言葉にホイホイつられてディロンは中庭にやって来た。

 何時もは巨木があるだけの庭にはそれ以外に異質な──平和な風景には似つかわしくないモノがあった。

 それは人の死体。老若男女問わず人の死体を山のように積んである。

 

「実験とは言ったが、何の実験をするんだ?」

 

 何も聞かず暇だった為言われるがままだったディロンはこの段階になってようやく何をするのか問いかける。

 

『新型≪不可解な者≫(アンノウンズ)の制作実験だよ。契約によって繋がったが両者の能力を試したことは無いだろう?』

 

 なるほどと、と相槌を打ち試しに能力を使おうとするもケントニスに止められる。

 

『今回作るのはトーベンの様に複数で一つの≪不可解な者≫(アンノウンズ)にしないか?』

 

「トーベン? あれか……」

 

 ケントニスとの契約によって記憶と記録の権能の一端を得ているディロンは材料さえあれば一度作った≪不可解な者≫(アンノウンズ)を再構築することが可能となっている。

 倒されたところで何度でも創れるという訳だ。正し記憶や経験は引き続かない為ゼロからのスタートとなる為利点ばかり有る訳ではない。

 トーベンを再創造した時を思い出しながら、あれはどういう存在だったか思い出す。

 

 トーベンは歪んだ魂の集合体。言い方は悪いが蚊柱の様なモノだ。数百の魂が集まることで一つの巨大な怪物に見せかけているだけ。

 

『出来るならば狼等の群れで狩りをする動物の模造品と行こう。既に一度動物型は作っているのだからやりやすいはずだ』

 

「いや、そんなのよりもっといいのを作ろう」

 

 ケントニスの提案を蹴り別のを考える。

 かつて作った戦士型の≪不可解な者≫(アンノウンズ)。それをもっと改良できないか、と。

 

「──こうか?」

 

 そうして新しく作ったのは既視感のある者だった。

 

 寸胴体型に異様に長い手足。のっぺらぼうの如く何も無い顔。

 紫色のゴツゴツとした岩の様な肌。関節が一つ多く、異様に大きい手。

 斧、弓。剣等の岩をそのまま削っただけの不格好な武器を手にしている。

 それが合計四体。誕生した。

 

『こうだな』

 

 そこにすかさずケントニスが追加で権能を使う。

 両者とも両方の能力を使える今、ディロンが作った≪不可解な者≫(アンノウンズ)をケントニスが改変するのは容易い。

 

「何をしたんだ?」

 

『同期をしてみた。これでこいつらは常に存在を同期する事で複数で一つ。一つで複数という──まぁ要するに理想的な兵隊となった』

 

 具体的には。経験が共有される兵隊。

 剣を振るって倒されれば剣に対する対策を。槍を使われれば槍への抵抗策を。魔法ならば──といった感じにあらゆる敵に対し数と連携と経験を持って最善最適の行動をもって排除する親衛隊。

 弱点としては初見殺しの広範囲攻撃に弱い。抵抗策を作ろうにも全てを一度に倒されればどうしようもない。更にはあくまでも抵抗策を作り対処してくるだけで"当てれば死ぬ"系の攻撃を避けたりするだけで当てれば死ぬという事は変わらない。

(魔虚羅の適応の下位互換)

 

 ここまで出来るのはケントニスの権能である記憶。記憶の権能を使うことで記憶と同期し続ける事で成り立っている。

 

「権能を使うってのはこういう事か。便利なモンだな」

 

 はぁー、と感嘆のため息をつきながらマジマジと今作った≪不可解な者≫(アンノウンズ)を観察する。

 

『名前を付けたらどうだ?』

 

「あー、どうすっかな……」

 

 今度は自分でつけようと思い。軽く考えてみる。

 自分にネーミングセンス等無いのは承知だが何もかもケントニス任せもまずいだろうと思い必死で記憶を掘り返す。

 多少はプレイしたゲームやアニメなどからいい名称が無いか──と記憶を辿れば目録が出来た。

 なんだこれ、と思うもすぐさまこれもケントニスの権能か、とわかった。

 疑似的な完全記憶能力、と言ったところだろう。思い出そうと思えば記憶の中から検索し抽出する事が出来る。映像記憶能力も入っている。

 契約する以前の──人間だった頃の記憶さえ思い出せるし、小学校から大学まで全ての記憶が見れる。

 こんなのあるなら勉強再開する必要ないのでは、と一瞬思ったがこれがあったとしても勉強はするべきだと思いなおす。

 これは単なるインターネットの検索機能のそれに近い。ここから引き出したとしても身につかない。確かにテストなどでこの能力を使えば百点が取れるだろうが実際に学んだことをする様な事は出来ないだろう。

 やはり勉強は必要かと思いなおしながらそれっぽい名前を探し出す。

 

「名前は──リッターとしようか」

 

 名前の元ネタはドイツ語。意味は忘れている。

 名づけと同時にケントニスの権能を使い詳細を確認する。

 個体名は無く四体──正確にはこの形状の≪不可解な者≫(アンノウンズ)を纏めてリッターという括りになる。

 能力はケントニスが言ったように経験の同期と連携。武具の達人、と言ったところだ。

 戦闘力としては単体での戦闘力はCランク、Bランクには届かない程度。

 正し数を揃えれば時と場合次第ではBランクに打ち勝てる可能性がある程度には強い。

 だが敵が疲労の無効化などを持つ戦士等であればいつ来るかわからない魔力切れを狙うしかない。

 

 余談になるが冒険者ランクの差ではCランクとBランクの間にはこれまで以上に越えがたい壁が生まれる。

 Cランクまでがパーティとしての戦闘力を求められるのに対しBランクからはパーティではなく個人での戦闘力を求められる。

 その為リッター一体でもCランク冒険者パーティと同等の戦闘力となる。

 総合力で言えば単体なら雑兵。数を揃えればBランクならば脅威、Aランクなら数が居ようが雑魚。

 

『では数を揃えよう』

 

 ケントニス──本が開き更に権能を使う。

 本体が近くなってきている関係上地上で行使できる力も増している今ならば権能をより広く使える。

 行使するのは記録の権能。今この場でリッターという≪不可解な者≫(アンノウンズ)を作った記録を複製し量産する──単なるコピーアンドペースト。

 一体でも創ればそこから量産できる。その気になれば万でも億でも、ケントニスの管理能力ある限りは。

 本体ならば一京いようが那由他単位だろうと管理できるが本体がおらず繋がりもまだ四割程度の為数十万程度しか管理できない。

 

「これで兵士も増えた、と」

 

 しみじみと感心するディロンを見ながら兵の種類が増えたという事は私の仕事が増えたという事では──と通りすがりのウードは嘆いた。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。