殲滅戦争 作:Libro
第77話
第一紀四百九年。秋。
かつては栄華を誇り世界で最も栄えたとされる国の跡地。
地理的にはクンラフが最も近い。周辺にクンラフとクリセルダと幾つかの国家に囲まれている。
人などいない大地はどの国も要らないと手を出さない為無人の荒野が広がっていた。
理由としては幾つかある。呪いによって滅びた為に土地に住めば民も呪われるのではないかという懸念と呪いによって怪物に変えられたモノが今だ彷徨っており危険性が非常に高いこと。
最も大きい理由は国々も今ある領土を管理するので手一杯だというのが大きい。下手に領土を増やせば犯罪者や魔物の増加等対処すべき事案が増えてしまう。
そして今では新しい理由があった。魔神が住まう城があったのだ。
その城自体は何百年前──下手したら神話の時代からあるとされる古城であった。──実際は築数年の城だが。
恐らくは
その城に魔神が住み着き。城を造り替えたのだ。
国を滅ぼし都市を滅ぼし魔物を生み出す魔神が住まう城だ。誰も近づきたくないのが当然。
──だがそこに自ら近づく者達が居た。
無知な訳ではない。そこに何が居るか知っているし向かえばどうなるが知っている。それでも彼らは進む。
その一行は実に奇妙であった。
最初の一人。先頭を歩くのはまだ若い青年。肉体年齢は十代後半にしか見えない。だが一定以上の実力者は寿命を延ばし肉体を若返らせるのも容易。外見は年齢を判断する材料には成り難い。
金髪碧眼という一般的な容姿に吹き出物など無い綺麗な肌。身長は百七十と少し程度。平均身長である百七十五より少し小さい程度。
オリハルコンを使った軽装鎧を纏い。背中には剣をさしている。腰にはランタンやポーチなどが付いており冒険者としての基本的な装備は揃っている。
小手と脚とを重点的に守る様に作られた鎧でありそれ以外──服の下にはミスリル性のチェインシャツを付けている。
総重量で言えば全身鎧に匹敵するだろう。ただし全身鎧だと関節部の動きが悪くなるなどのデメリットがあるがこちらには無い。──ただ全身鎧であっても魔道具ならば関節など知ったことかと動かせるが。
二人目は女。白く長い髪に碧眼という少々奇妙な髪色と眼をしている。髪は染めている訳ではなく根元まで老人の髪の様に白い。
背は女性として平均より若干低い百六十。神官服を纏っており太陽を模した刺繍から
自身の背より長い錫杖を持ち、それを杖代わりにして歩いている。
三人目もまた女。女性としての平均身長を大きく越えた百八十。
銀の髪と碧眼。そして尖った耳というエルフ特有の特徴。
本来エルフは金髪と緑眼を持つがこの女にその特徴は一切ない。代わりにかつて栄えたとされる祖たるエルフであるハイエルフに近い長い耳を有している。
またエルフはスレンダーな体系を持つ種族だがそんなの関係ないと胸も尻も手足も長い。出るとこは出てて引っ込むところは引っ込んでいる。言わばモデル体型。
正し整形や過度なダイエットによる歪さは微塵も無くこれこそが自然な体系なのだと体現している。
腰にはエストック。鎧の類は無くそれこそ散歩にでも出かける様な服を着ている。
エストックの刀身には見たことの無い──それこそこの世界の言語でも日本語でも無くルーンでも無い。まったくもってわからない言語が刻まれている。
四人目は男。
百八十という長身と言ってもいい体に服の上からでも分かる程に鍛え上げられたとわかる筋肉を持っている。
身長と筋肉以外は特筆すべき特徴は無い。精々が獣の皮のを使った様に見える軽装鎧を纏っているところと身の丈ほどもある大剣を担いでいるところだろうか。
一行は歩いて歩いて歩き続け──ある地点で止まった。
それと同時に。地面に、空に。異変が起こる。
一歩前まで憎たらしい程に晴れていた空は暗雲立ち込め雷鳴響く異方の地とかし。大地にあった緑は黒く変色し牙の生えた草木に変わる。
更にボコボコと地面から何かが湧き出てくる。地面の土を掘り返しながら現れるのは──アンデッド。死して尚動く不死者たち。
肉も骨も無い。骨だけの怪物であるスケルトンや腐りかけた肉を持つゾンビ。魔術師の恰好をした
一目見て元が人だとわかるアンデッドから熊や狼。鼠に虎等の多種多様な動物のアンデッドである
空の暗雲からは背中から翼が生え、頭部からは角が伸びている異形の人型──知性ある魔物である魔族がやってくる。
その傍らには形容しがたい容姿を持つ魔界の住人である悪魔たち。
「人間共め! よもやよもやここまで来るとは!」
げたげたと品の無い笑いと共に魔族がやって来た一同を蔑み嗤う。
「ここより先は我らが主である魔神の領域! ここに来たのが間違いだったな!」
片手を突き出し。魔力を込めて魔術を発動せんと魔族は構える。
下手な冒険者ならば間違いなく致命傷になるだけの魔力を込めて──魔術が発動する前に一刀の元斬り伏せられた。
「は?」
間抜けな声と共に両断された魔族が灰となって消えていく。
気が付けば──死んでから気づけば自らを斬ったのは背中に剣を携えた剣士であった。一瞬前までは鞘にあったはずの剣は剥き出しになっている。
それが、開戦の合図だった。
地面から湧き出るアンデッドが。空からやって来る魔族が。混沌より飛来する悪魔が。自らの爪で、剣で。魔術で一同に──勇者たちに襲い掛かった。
「──カスが。足止めも満足に出来ないのか」
ちっ、と舌打ちをする。
魔神城──の屋根上から一連の流れを眺めていたディロンは怒りを隠さず怒気で顔を歪める。
「あと少し、あと少しだというのに……!」
ぎり、と奥歯を噛み締める。
儀式の完全終了──つまりは
それだけ待てばディロンの目的は終わる。ようやく故郷に帰れるのだ。
だというのに──いきなり現れた勇者が全てを台無しにした。
最初の報告は三年前の会議。いつもは参加しない会議で知ったのが最初だ。
それ以降。全てが悪しき方向に動いた。
何とも運がいいというか運命に愛されている。
まるでRPGや小説に出てくる勇者そのものだ。世界の危機に何故か唐突に現れる英傑。
無論唐突に出現した訳ではない。過去を見て因果をたどれば全ての原因はディロンにあり自身の行動全てが自らの破滅へと導いている。
だがディロンにはそんなの知ったことではない。本人にとってみればいきなり降って湧いてきたよくわからないバケモンに過ぎない。
「クソが…………」
未だ儀式の途中。自身が城から動くことは許されない。
正し儀式は終盤も終盤。城から動いたことで儀式が最初からやり直し、等という事は無い。動くことで儀式の進行速度が遅くなるだけで済む。
それを考えれば自分という最大戦力が動くのは悪い選択肢ではないはずとディロンは考える──戦力外に成って居なければ。
拳を強く、強く握る。怒りを込めて握ったことで爪が皮膚を破り血を出してしまっている。
本来ならばあり得ないことだ。ディロンの皮膚は自身の爪程度で敗れる程柔い皮膚をしていない。本来ならば。
今のディロンは儀式の核であり触媒であり中心であり全てだ。当然ただそこにいるだけで全部万事うまくいく、なんてことはない。
当然デメリットも発生している。具体的には自信の能力が凡そ六割低下してしまっている。
契約によって上昇した力と前からの力を考えれば、契約前よりも非常に弱くなっている。
素の身体能力で移動に全力を割けば光の半分程の速度で動けたはずの足はたかが音速を超える程度で止まってしまい、大陸さえ砕く程の拳はたかが小さい山一つ消し飛ばすまで下がっている。
再生能力もそうだ。超スピードで戦う中で目に見えて再生する程という事は常人からすれば瞬く間に全快──時間にして三秒程度で再生する力は現実時間で十分以上かかる様になっている。
一番低下しているのは魔力。無限に引き出せるからいいモノのその八割を儀式の進行に割いている。元の魔力量が多いためそれでも全力で強化すれば契約前に近い身体能力まで持っていけるが──逆に言えば当然自己強化をしなければ上位層の戦いについていけなくなったという事。
完全な素の身体能力で上位に食い込んでいたディロンは今や強化しなければランク換算でBランク相応程度にまで下がっている。強化すればAランク程度だろう。
無論身体能力を強化すれば他に割ける魔力は無くなり魔力砲撃や魔法も当然使えない。
「カス共が!」
その自分の状態を知っているディロンは自分と敵に対してそう吐き捨てる。
たかが邪神一人こっちに持ってくるだけなのに何故そこまで抗うのか──とディロンは吐き捨てる。
当然たかが邪神等という生易しい事ではない。記憶と記録を司る者が顕現すれば相応の被害が出る。あらゆる生命──正確には記憶という行為が可能な存在は全てを記憶するようになる。
自らの指が何時何分起床からどれだけ経過した際にどう動き自らの誕生から何がどうなったのか全てを、細胞単位で自らの全てと周囲全てを記憶し続けるようになる。
当然人間──動物の脳は世界の全てを記憶し続けられる構造ではない。記憶のパンクを起こし人は発狂し絶命する。
それが単に顕現、世界にたった一秒だけ現れるだけで起こる被害だ。本体で完全に顕現すれば人類はそれだけで絶滅するだろう。二百年と少し前に死の神が不完全な状態で数分現れただけで世界の人類が二割死んだように邪神とは現れるだけで害と成る。
魔力を籠め。魔術を発動する。
──勉強を再開するまでの二年間。ディロンは暇を持て余していた。これはその間に何となく勉学しちょっとだけ研究していた魔術。
魔術というのは教えてもらう事が出来ない。"自分が正しいと思い込む事"である魔術は先達の魔術理論を参考にすることは出来ない──まぁある程度出来る事出来ないことぐらいはわかるが。
結果得た力は六年前のそれを凌駕する。例えるならば車の免許どころか自転車すら乗ったこと無い人間がF1を運転していた状況から免許を取った所まで改善された。
アクセルとブレーキを知り。構造を知った。ゼロとイチはまるで違う。単に魔力を使うという行為だけでも比べるのも馬鹿らしい差が六年前とある。
だからこそ今の弱体化しきった状態でも身体強化すれば契約前に近い状態まで持っていける訳だが。
そうして学び研究した魔術を用いて緑色のバスケットボール程度の炎の塊を何千、何万と生み出す。一つ一つに込められた魔力もまた膨大。それを無尽蔵に──狙い等付けずに乱雑に城の頂上から地上に向けて放つ。
圧倒的な爆撃。宇宙から見ることが出来ればそれはもう綺麗な緑色の光を拝めたであろう炎の集まりは地形を破壊するだけに終わった。
ディロンが放つ魔術や攻撃は基本味方と認識している存在には効果が無い。
本来ならばあり得ないことだ。たとえ邪神が放つ魔術であろうと敵味方関係なく影響を与える。
ケントニスはそれをディロンの元となった魔神特有の権能と考察しているが確証はない。
兎も角ディロンが放つ魔術は味方であるアンデッドや魔族には一切の影響を与えず、地形と攻めて来た一党にのみ害を与える。一部地形を壊したことで岩や土が魔物にも当たり多少死んだが。
一国全土を包み込む炎。雲の上まで届く火柱。常識的に考えればこれを受けて生存するなど不可能だろう。
だがここは異世界。剣と魔法が通じる異界の理渦巻く魔境。
勇者の一党はそれぞれ何かしらの手段で防御を取る。神の奇跡や防御魔術等で。
当然。ディロンはそれを視認できない。遠距離攻撃に力を割いた以上身体能力は全般低下している。
がん、ガンと自らの城からなる異音も当然──聞き逃す。
ばごん、という轟音と共に飛び出た戦士が眼前にまでやってきてようやく。自分が攻撃されるという事実を認識した。
「は?」
間抜けな声と共に斬り飛ばされ──城から飛ばされた。
サッカーボールか何かの様に数度バウンドし大地に蔓延る魔物とアンデッドを緩衝材にし、両足を地面に突き刺す事でようやく止まり。遅れて身体強化を行う事で相手と同じ領域に立つ。
地面に落ちたディロンを追うように相手もまた城から落下しており相手を視認したディロンは憤怒に顔を歪める。
「お前! あの時殺したはずの!」
「ちゃんと確認しないからだ! バーカ!」
相手の──ネボと剣とディロンの拳が衝突しあい周囲に死を振りまく。
ネボが生存していた理由は単純。ディロンが単に相手を舐め腐っていて、きちんと殺したことを確認していなかっただけ。
ネボの異名である『全裸戦士』は常に全裸で戦う事から付いた名だ。当然常に全裸で戦えることに種も仕掛けもある。
一つは単純に魔道具などで武装しなくとも強い。ディロンが武装無しで上から数えた方が早いぐらいに強いのと同じで装備無しでもその他の冒険者よりも圧倒的に強いという才能の理不尽。
もう一つが再生能力に非常に長けた魔術師であったという事。
それこそ頭部が全損しても肉体が塵となろうと生命の根幹である魂さえ無事ならばそれを起点に再生、復活が可能な──限りなく不老不死に近い再生魔術の使い手であった。
腕が飛ぼうが頭が弾けようが再生できる。だから鎧を纏わず全裸で戦うという趣味を満喫出来ていた。
無論肉体は幾らでも全盛に成るが魂への過度な干渉は出来ない。何れは魂其の物が摩耗するか魂の寿命が来て死ぬだろう。精々が後千年程生きれば魂の劣化が来て死ぬ。
ディロンも魔神の端くれ。当然魂への干渉術は人間に過ぎないネボ等とは違い有している──自覚は無いが。その気になれば魂を破壊することだって出来る。しなかったのは単なる怠慢。やろうとも思わなかっただけ。
まぁ全身が焼かれて灰となった相手を生きていると思えという方が可笑しいが。
スケルトンもゾンビも魔物も何もかも。全てが拳と剣が衝突することで発生する余波に巻き込まれ消えゆき死ぬ。
ただの余波。手でパタパタするだけでちょっとした風が起こるのと同じ。プロボクサーが全力でパンチをすればちょっと風が出るのと同じで──超越者が拳を、剣を振るえばそれだけで暴風が巻き起こり周囲を灰塵とかす。
そして徐々に、徐々に──ディロンが押されていく。
動体視力も当然強化している。だが契約をする前──六年前には既に遠く及ばないディロンと六年前の戦い以降更なる研鑽を重ね武装と整え仲間と切磋琢磨してきたネボには当然、届かない。
一瞬の様で永遠にも続く拳と剣の激突は横やりによって中断される。
横から飛んできた女──エルフがエストック片手に突っ込んできた。
ネボはそれを視認し後ろに跳躍。隙を見せたと勘違いしたディロンが追撃の為に前進しようとしー横から蹴り飛ばされる。
剣を使えやと、心の中で罵倒しながらディロンは背中から翼を生やし体勢を整える。
「アニエェェェェス!」
ディロンが叫び部下の名を叫ぶ。
単なる叫び声であっても強化魔術を自分に掛けた状態ならば害と成る。生半可な防御ならば貫き鼓膜を裂くだけでなく大地に罅を刻み破壊する。
叫び声を聞く前から、ディロンの従者たるアニエスは動いている。
吸血鬼の身体能力と固有技能を合わせて移動速度を上げているもその速度はこの場の全員からすれば蠅が止まる程に襲い。
アニエスの実力はランク換算にしてC相応──単独で下手な街なら滅ぼしうる実力者であるが国一つ滅ぼす怪物たちを前にたかが──というのもおかしいが──街一つ壊せる程度では話に成らない。
何故この程度の雑魚を、とネボと女エルフが疑問に思った時。
「これを!」
アニエスが叫び、懐に抱えていたモノをディロンに向かって放り投げる。
如何にこの場で弱者──吹けば飛ぶ雑兵だとしても吸血鬼という人外の膂力で投げられたそれは空を舞いディロン目掛けて一直線に飛んでいく。
当然それを許す二人ではない。女エルフが一瞬でアニエスの眼前に移動しエストックで体をバラバラに斬り裂き炎で灰も残らぬよう焼き尽くし呆気なくアニエスは死んだ。
投げられたモノにもネボが跳躍し破壊しようと剣を振るうもそれより早くディロンが到着。気負いを込めて殴る事でネボを吹き飛ばし投げられたモノ──解放の剣を手に取る。
「来い! 駒共! 俺を助けろ!」
更に追加で思念をもって、雑に命令を下す。
勇者と女神官に群がっていた一部の魔物と全ての
魔物の指揮権はケントニスにあるが
剣を手にしたディロン相手に昔見た剣だと即座に判断したネボは叫ぶ。
「あの剣は厄介だ! 気を付けろ!」
仲間たちに警告するためにわざと大声を出し隙を晒す。
その隙を見逃すはずが無く。ディロンが剣を手にネボを斬り裂かんと進むもそれを横から女エルフが邪魔をする。
「邪魔をするな!」
剣を振るうことで女エルフを殺そうとするも──出来ない。
当たらない。剣が掠りもしない。
その手に持つエストックで手首に器用に当てて起動をわずかにずらし、半歩動く事で切っ先を避ける。
風の魔術で自らの体を移動させ、ディロンの剣が当たらない位置を取る。
言うは易し行うは難し。ディロンの剣を全て紙一重で避けながらこちらは攻撃するなど──常人の思考と技量ではない。
(ちくちくちく……煩わしい!)
当然ディロンも苛つく。だがこちらが何かしらの行動をしようとすればそれを的確に潰してくる相手に打つ手はない。
腕を振るおうとすれば斬られ、逃げようと踏み込めば横からネボが横やりを入れる。
前までなら範囲攻撃の魔術でも使えば済む状態だ。だが今は能力を身体強化に回している。一瞬でも解けばそのまま押し切られてしまう。
更にちくちく攻撃してくるがダメージは全て今の状態でも再生能力で治る程度の傷というのがじれったい。
(────来た!)
思わず顔を綻ばせる。
やって来たのはリッター。数さえ揃えればBランクを殺しうる戦士たち。
昔作った時よりも洗練され中にはフードを纏い杖を持つ魔術師型もいる。
獣の様な動きでリッター達が接近しそれぞれその手に持つ斧で、槍で。ネボを襲い女エルフを襲う。
ディロンは地面を強く殴り陥没させ、剣をがむしゃらに振るうことで掘り進み戦線から離脱する。
当然女エルフは妨害しようとするも襲い掛かるリッターに意識を反らされ、まんまと逃がしてしまう。
「こ、いつらー!」
弱い。だがうざい。
一体一体の戦闘力はネボの実力ならば雑兵だ。一太刀で殺せる程度。
だが相手はそれを知りそれを前提とした立ち回りをする。
ゾンビ戦法、あるいは肉壁戦術。相手に同胞が殺されればその死体ごと槍で貫き同胞を殺す為に剣が振るわれればその瞬間を狙って攻撃をする。
そこから更に最適化する。
ネボの呼吸。視線の動き。魔力の流れ。癖。それら全てを観察し相手に適した──対ネボと女エルフ専用の戦術をその場で組み立てる。
戦闘理論としてはAIのそれに近い。特定の相手のみに最適化された戦闘兵士はネボと女エルフを攻め続ける。
「──避けてください!」
遠くから声が聞こえた瞬間。二人はそれまでの全てをほっぽって空に飛びあがる。
人の領域など等に越えている二人の跳躍は五十メートル──ビルなどよりも余程上に上がれる。
当然リッターも襲うが無視する。女エルフは周囲のリッターを一纏めに斬り飛ばしたうえで跳べたがネボはそこまで出来ず左足を斬り落とされた。
だがネボは再生にたけた魔術師でもある。数秒あれば再生する。
二人が飛び上がると同時に地表を青い炎が地表を薙ぎ払う。
地上から二十メートル上程もやかれ当然地上に居たアンデッドや多種多様な魔物、リッター等の
そして、全てが死んだ。
先程まで元気に武器を振るっていたアンデッドも関係なく、全てが青い炎に包まれると同時に動きを止めて灰となり消えていく。
「アアアアア!」
その中で、消えずに全身を青い炎に包まれて焼かれ、火達磨に成りながらディロンが地面から飛び出す。
その様は実に無様。幾万の魔物を支配し自らも
「カス共がァァァ!」
怒りで顔を歪めながら徐々に再生していく。
背中から生えた翼で滞空し人外の視力をもってして自らに大ダメージを与えた存在を睨みつける。
金髪碧眼に整った容姿。物語で見る様な鎧に見るだけで不快感を与えてくる聖なる剣。正しく勇者と呼ぶにふさわしい外見を持つ男を睨み続ける。
『第二ラウンドと参ろうか』
──そこに。邪神の介入が入った。