殲滅戦争   作:Libro

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第9話

「さて、どうするか」

 

 滅びた国の首都。

 かつてはクンラフと言う名で知られた首都の跡地で男が呟く。

 200cmを優に超える巨漢。

 褐色の肌に黒い長髪。瞳に浮かぶは見たこともない星空。

 

 異形の者。もはや『不破泰二』でも『勇者』でもなくなった者は空を見る。

 気づけば夜の暗闇は消え。青い、何処までも青い空色が浮かんでいる。

 

 さてどうするかと不破は考える。

 最優先するべきは元の世界への帰還。

 地球。日本への帰還こそが最優先事項。それ以外はすべて些事。

 家族の元に帰らなければならない。母も心配している。親友に借りた漫画も返せていない。

 

 次にこの世界の生命の駆逐。

 優先事項ではない。元の世界へ帰るのに虐殺してはいけないのならしないし、地球に帰る方法が見つかればほっぽっていいこと。

 だが自らを日本から拉致してきた蛆虫を放置するのも問題。いつまた自分や日本の誰かが拉致されるかわからない以上知的生命体は根絶しておいた方がいいかもしれない。

 

「つうかあの本嘘じゃねぇかボケがよ」

 

 はぁ、と瓦礫の上でため息をつく。

 ともかく、唯一の手掛かりは消え去った。どうするかと頭を悩ませる。

 

(いや、唯一ではない?)

 

 そのことに疑問を覚え、頭を回す。

 そうして、思い出す。

 勇者を呼び出せるのは神々のみ。という言葉を。

 

 

 つまり、神に合えば元の世界に帰れる? 

 

 

 

 しかしどうやって神に合うか。それが問題だ。

 

 そもそも神とはなんだ? 

 

 アポロン。タケミカヅチや天叢雲? あるいはゼウスやヘラ? 

 しかしここは異世界。

 魔法や魔術という地球には存在しない技術がある。

 地球にあったとしてもその名残すらない力。仮にあれば今の情報社会ではインターネットに残るだろう。

 それにここは異世界。地球にその名がある神がこの世界に存在するとは考えにくい。

 仮にここが未来か過去の地球だという可能性は非常に低いと考える。

 そういえば前神について書いてあった本があったなと。ふと思い出す。

 

 さてどこに置いたかと考えるが位置など覚えていない。

 しょうがないので魔力を練りゴーレムを作り出す。

 

 足から魔力を発し。地面に魔力が浸透していく。

 

 不破は動く肉人形(フレッシュ・ゴーレム)を作る時の感覚を思い出し・瓦礫に対して同じようなことを試す。

 特に苦もなく成功。瓦礫が盛り上がり人型となって動き出す。

 と同時に何故か瓦礫が黒く染まり時折赤く脈動し始める。

 顔も爪も眼もない。デッサン人形のようなゴーレムが約五十。

 サイズは三メートル程と前作ったゴーレムと比べれば小さい。

 だが保有する力は動く肉人形(フレッシュ・ゴーレム)よりも強い。

 黒くするように意識を向けた訳ではないが。まぁ使えるのならいいだろうと命令を下す。

 

「本を探して──……行ったか……」

 

 命令途中でこちらの思念を受け取ったのか勝手に動き出した。

 前は意識を集中しないと思念での命令はできず正確な行動は声に出さなければいけなかったが異形の体となり融通が利くようになった。

 

 

 ゴーレムが例の本を探している間。どうしようかと考える。

 

 まずは服だな。と歩き始めた。

 今更だが今は全裸。

 一応文明人なので裸と言うのは羞恥を覚え。不破は服を求めてあるきだす。

 

 けど今着れる服あるかなと腕を見る。

 見れば指先が変形し。鱗と獣のような爪が生えている。

 服を着ようものなら爪で服をボロボロにしそうだ。

 更には腕にまでポツポツと鱗が生えており。こちらも服をひっかけそうだ。

 

 消えてくれないかなと思いながら見つめると徐々に変形していく。

 黒い粘土のようなものに戻ったかと思えば数秒足らずで人の腕になる。

 変身能力か何かか。本人はわからないが使えるならまぁいいかと思考を放棄した。

 

 歩きながら数分。数少ない原型を留めた建物を見つける。

 レンガでできた建物だ。木による補強と装飾が施された気品を感じる建物。

 扉の横には看板が付いており、レーゼの衣服店と書いてある。

 原型を留めてはいるが屋根が壊れ地面が歪んだせいかわからないが扉が開かなかったので腕力で破壊して中に入る。

 

 中に入れば天井が瓦礫で壊れ。砂がパラパラと落ちてきている。

 天井にあったシャンデリアは壊れ破片が落ちているので素足では歩けないだろう。

 

 それを気にせず素足で歩く。

 足に破片などが当たったが異形の肉体にはかすり傷一つ付かない。

 

 なんでもいいか、とかけてあった高級そうな服をつかみ取る。

 上下セットの服。白を基本とし赤い装飾が施されている。

 服のデザインとしては現代のスーツに近いだろう。

 中世っぽくなく。洗練された技術の末できたような服。

 よく考えれば、他の殺した人間とかも服のデザインよかったなと思いながら服を着る。

 少しサイズが合わないか。と考えながら袖に手を通すと服が膨らむ。

 無理に大きくなったわけではない。全体のスケールが急に大きくなったのだ。

 魔術とやらかと考えながら着終わると服が歪みだす。

 

 肉体を変化したときのように。黒い粘土のようなモノに変形する。

 なんだこれと混乱する間もなく。数秒で服が変化し終わる。

 

 白かった服は黒に代わりスーツ上ではなくなった。

 胸部を隠せる黒の羽織に代わり服で隠せた腹筋や素肌が丸見えになる。

 本来臍がある部分も見えているが異形の肉体には臍が存在しないのでまだましか。

 ズボンも変わり短パン上になった。膝までの短く肌に密着するタイプだ。

 腰の方からは左右に鋼鉄を思わせる質感のマントが突き出てている。足元まで伸びているが先の方はボロボロになっているのは何故だと疑問を覚える。

 

 中二病患者を思わせる服に不破は羞恥を覚えるが異世界だからと開き直る。

 しかしたまに服の至る所から牙の付いた口が生えギチギチと歯を鳴らすのはどういう原理だろうか。

 

 しかし靴が無いなと不破は思う。

 足を見れば最初の手と同じように蜥蜴の様に変わり果てた足が見える。

 どういう訳か意識を集中しても足が戻ることはないのでまぁこれなら歩くのに不便は無いな。と不破は諦めて歩きだした。

 

 

 

 股間は隠せたしと堂々と店の壁を蹴り壊してでるとゴーレムが戻ってきていた。

 一体のゴーレムが前にでて他のゴーレムは後ろに膝を付きながら待機している。

 まるで騎士が忠誠を誓っている様に。

 

 先頭のゴーレムが箱から本を出し。名刺のように不破に手渡してくる。

 スッと本を手に取りタイトルを見る。

『ゼーベとハイリヒについて』

 

 床に胡坐をかき座りパラパラと捲る。

 最初の数ページは固有名詞っぽいゼーベとハイリヒについて書かれている。

 

 ゼーベ。異世界からの来訪者。遥か遠くの異次元からやって来た者達。

 アオス・シュテルベン・レーベン。死を司る邪神。かつて世界に顕現し世界を殺すとした神。

 アルブ・トラウム。悪夢の邪神。本人にとっては吉夢を魅せているという。

 ヴァーン・ズィニヒ。何時からかいる邪神。人の狂気を司る。

 

「……なんだこれ」

 

(出来の悪い小説のキャラ紹介か何かか?)

 

 じゃあハイリヒはなんだ、と本を捲る。

 

 ハイリヒ。世界の神々。人類の創造主。

 狩りと癒しを司るオルカ―ン・ハイレン。その矢は魔神を貫いたという。

 シックザール。輪廻と運命を司る神。最も新しい神。

 闘争と武具を司る女神。シュヴェーアト。その剣は魔神を薙ぎ払ったという。

 

 つまるところ神話の本。不破泰二にとっては信憑性のない──そもそも神という存在が何か知らない不破泰二はパラパラと捲る。

 

 変な本だと呟き捲れば、どの神の像──神殿が何処にあるか書かれている。

 ゼーベの情報は一切ないが、ハイリヒの神像は何処にあるのか、どの国で信仰されているのかが詳細に書かれている。

 

(街中……この体だと目立つ──いや。体が変わったなら人間に見られてもバレないか?)

 

 さてどうするかと読み進め、一つ有益な情報が出る。

 オルカ―ン・ハイレンと言う神はエルフや獣人に最も強く信仰されている神。

 エルフが居た──あるいはいる森には神殿が残っているという。

 

 つまり、人にバレずに神殿に行ける。

 

 

 エルフを攻め落とせば、神の情報が手に入る。

 次に目指すべきはエルフだ。

 それに関する情報も集め。攻め落としに行くとしようか。

 

 にぃっと、邪悪な笑みを浮かべた。

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